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ゴブリンの村
74:的屋
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「な」の方の神社に向かうことにする。
そろそろ昼やし、伏見課長も来てはるかもしれんしな。
参道あたりまで来たのか、良い匂いが漂い出す。
人間が増えてくる。
見た感じ、普通の人間ばかりで、化け物っぽいのはいない。
やっぱり、ファーストコンタクトからして、それに続く一連の出会いからして、ちょっと濃すぎたんやな。
最初にカマしといたろという高次元意識体の作為を感じる。
などと考えていると、カラフルな屋台が見えてくる。的屋かな?元世界とこの辺は変わらんな。
カステラ フランクフルト リンゴアメ ワタアメ 金魚すくい お好み焼き
おぉ、まさしく定番。
じゃまにならないように全員を端に寄せてプチ説明会でプレゼン。バスガイドさんが引率してるみたいやな、旗でも持たんとあかんな。
「はいみなさーん、ここから少し先に縁日の屋台という、小さなお店が並んでいますよー。屋台によって売ってるものが違います。食べ物屋さんが多いですが、当て物とか当たり付きのくじ引きとかもあると思います。今からお小遣いを渡しますので、好きなことに使ってくれて構いません。お昼も屋台で済ませればいいと思っていますので、色々食べてみましょう」
おいとさんが縁日の屋台は経験があるというので、バカップルは別行動、10円札と1円札を数枚渡す。とつかさんはこっちに付いてくるという。まあそのほうがいいやろね。
やつかさんにくれぐれも念を押す。
「祭りというのは、気が大きくなって騒ぐ輩がいたりします。そういうときは身を引いて、騒ぎを起こさないように。おいとさんがからかわれても、よっぽどのことがなければ、力づくでどうこうしないようにお願いしますね」
「わかりました!」
あかん、年甲斐もなくおっさんテンション高すぎるわ、大丈夫かいな。
「私が手綱を取りますから、人あしらいも任せてくださいな」
ああ、ベティブ◯プやな、男あしらいは特に上手そうや、ならいいか。
待ち合わせを拝殿の手前にあるであろう手水舎の付近に設定し、その場で別れた。迷子についても念を押した。最悪手洗いで幽体離脱したら見つけられると思うけどな。
「じゃあ、欲しい物やしたいことがあれば、遠慮なく言うように。お金は充分にあります。ただし見る限り食べ物は色んな種類があるので、先に食べすぎるとお腹が一杯になって、欲しい物があっても食べられなくなります。そこを考えながら、まわりましょう」
「「「「「『『『はい!』』』」」」」」
皆ええ返事や、杖も猫も烏も、りくにあおいさんに狐まで……
『主殿!私も食べたいです!』
「じゃあ、あ、ちょっとまって、ちょ、まてよ!」
あわてて背中を人波から隠すようにするとドロンと音がして杖が人化する。着物は着ているが、座布団と紐に引っかかって苦しがっている。
「あ、あ、あるじ、く、苦しい、です」
「ばかが」
二人減って一人増えたが、まあのんびりいきましょうか。
そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
もうね、ぴゃーっと。ぴゅーっと走りますね、子供は。だしゅっと走りますね、とつかは。あおいさんまでしゅるしゅると見えなくなります。そしてそれぞれがすぐに帰ってきて口々に喚いています。
「フランクフルト!おいしそう!」
「にゃー!(フランクフルトってなんにゃ!)」
「かーっかーっ(フランクフルトは串に刺さった肉です!食べたいです!)」
「フランクフルトもいいけど、ワタアメなにあれすごい!」
「たこ焼きってなんですか!たこって赤くてくねくねしてます!」
「リンゴアメが気になります」
「お酒もありますな。ビールもいいですけどな」
「べっこうあめがありましたえ、バナナもありましたえ」
「イカ焼きが向こうに見えましたわ、後フランクフルトとキュウリ」
年を数えるほど欲深くなるのか?フランクフルト人気すぎ。後、狐に酒を飲ませたらやばいやろ!
的屋の兄ちゃんやおっちゃんや姉ちゃんには、ちょっと人ならざる感じのものがいる。が、まあ、問題はないやろ。
とりあえず一番手前のフランクフルトを文字通りの狸親父に10本注文する、マスタードは少なめにしてもらう。1本50銭、高いのか安いのか。食べながら歩き、猫と烏には俺が噛みちぎったものを手で与える。
要望通りのものをお金を渡して買いに行かせる。ちょっと多めに買わせて、適当に分け合って食べる。
案の定、すぐに腹一杯になる。たこ焼き・お好み・焼きそば、フランク・アメリカンドッグ・とうもろこし、チョコバナナ・パイナップル・リンゴアメ・ワタアメ。子供組がギブアップしたものをとつかさんとあおいさんがぺろりと平らげる。持て余し気味のリンゴアメすら、バリバリと食い尽くしたので、ちょっとひく。
金魚すくいを交代で楽しみ、輪投げ、当てもん、射的は別れてやる。俺は迷子が出ないように後ろから監視やね。狐は当てもんにハマって、しょうもないものさしとか鉛筆ばかり増えている。すてが輪投げで小さなぬいぐるみをゲットして喜んでいる。れいかとあおいさんは射的で、明暗が分かれる。れいかは堅実にキャラメルをゲット、あおいさんは大物を狙って、倒れなくて悔しがっている。とつかさんはまだ食っている、イカ姿焼きとお好み焼きみたいなイカ焼き、ダブルでガツガツ食っている。
猫はある程度満足したのか懐で微睡む。烏も肩の上でおとなしい。コイツラはちっこいから燃費がええんやろな。鹿は俺の周りでウロウロキョロキョロして、不審者感が高いが、ちょっと足らない子扱いで周りに見られているような気がする。
途中の微妙な空きスペースで休憩する。子どもたちは型抜きなんぞやってる。俺はビールを買って、久々の一杯、うめえ。りくと狐が物欲しそうにしているが、あかん、やらんに決まってるやろ。
そこにやつかのおっさんとおいとさんが凭れあうようにやってくる、どっちも顔が赤い。くそ、酔っ払ってるぞ大丈夫か。俵担ぎとかすんねんぞおっさん。
「へい!大丈夫れす!」
ほんまかいな。
酔い醒ましもかねてゆっくりすすむ。
あ、5円落としやん。水槽の中にお猪口があって、それに5円を落として上手く入ればなんかもらえるやつや。あ、10銭銅貨になっとる。ひとしきり遊ぶが、上手く入ったのはれいかとすてだけだった。木の葉のようにフラフラしながら落ちるので、なかなか難しい。
しかしにぎやかやな、こんなに屋台が多いのなんて、三輪山並みのような。天満の天神さんは超えてるなあ。まあ、あそこは場所ないからなあ。
そうこうするうちに参道前の鳥居に辿り着く。少し入ったところに手水舎があって、きれいに手を洗う。
鳥居の真ん中はくぐらへんけど、手水の作法は、どっちでもええんちゃう、と思ってしまう派やね、口を直つけるのはやめてほしいけどね、とつかさん、そんなごくごく飲むもんちゃうんやで、食べまくって喉乾いてたかも知らんけど。やつかのおっさんも、そんな飲むもんちゃうねん、ああ、みんな真似したらあかん、こら、カラスや猫まで来んな、おい、みんな、ちょっと話し聞けこら!
そろそろ昼やし、伏見課長も来てはるかもしれんしな。
参道あたりまで来たのか、良い匂いが漂い出す。
人間が増えてくる。
見た感じ、普通の人間ばかりで、化け物っぽいのはいない。
やっぱり、ファーストコンタクトからして、それに続く一連の出会いからして、ちょっと濃すぎたんやな。
最初にカマしといたろという高次元意識体の作為を感じる。
などと考えていると、カラフルな屋台が見えてくる。的屋かな?元世界とこの辺は変わらんな。
カステラ フランクフルト リンゴアメ ワタアメ 金魚すくい お好み焼き
おぉ、まさしく定番。
じゃまにならないように全員を端に寄せてプチ説明会でプレゼン。バスガイドさんが引率してるみたいやな、旗でも持たんとあかんな。
「はいみなさーん、ここから少し先に縁日の屋台という、小さなお店が並んでいますよー。屋台によって売ってるものが違います。食べ物屋さんが多いですが、当て物とか当たり付きのくじ引きとかもあると思います。今からお小遣いを渡しますので、好きなことに使ってくれて構いません。お昼も屋台で済ませればいいと思っていますので、色々食べてみましょう」
おいとさんが縁日の屋台は経験があるというので、バカップルは別行動、10円札と1円札を数枚渡す。とつかさんはこっちに付いてくるという。まあそのほうがいいやろね。
やつかさんにくれぐれも念を押す。
「祭りというのは、気が大きくなって騒ぐ輩がいたりします。そういうときは身を引いて、騒ぎを起こさないように。おいとさんがからかわれても、よっぽどのことがなければ、力づくでどうこうしないようにお願いしますね」
「わかりました!」
あかん、年甲斐もなくおっさんテンション高すぎるわ、大丈夫かいな。
「私が手綱を取りますから、人あしらいも任せてくださいな」
ああ、ベティブ◯プやな、男あしらいは特に上手そうや、ならいいか。
待ち合わせを拝殿の手前にあるであろう手水舎の付近に設定し、その場で別れた。迷子についても念を押した。最悪手洗いで幽体離脱したら見つけられると思うけどな。
「じゃあ、欲しい物やしたいことがあれば、遠慮なく言うように。お金は充分にあります。ただし見る限り食べ物は色んな種類があるので、先に食べすぎるとお腹が一杯になって、欲しい物があっても食べられなくなります。そこを考えながら、まわりましょう」
「「「「「『『『はい!』』』」」」」」
皆ええ返事や、杖も猫も烏も、りくにあおいさんに狐まで……
『主殿!私も食べたいです!』
「じゃあ、あ、ちょっとまって、ちょ、まてよ!」
あわてて背中を人波から隠すようにするとドロンと音がして杖が人化する。着物は着ているが、座布団と紐に引っかかって苦しがっている。
「あ、あ、あるじ、く、苦しい、です」
「ばかが」
二人減って一人増えたが、まあのんびりいきましょうか。
そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
もうね、ぴゃーっと。ぴゅーっと走りますね、子供は。だしゅっと走りますね、とつかは。あおいさんまでしゅるしゅると見えなくなります。そしてそれぞれがすぐに帰ってきて口々に喚いています。
「フランクフルト!おいしそう!」
「にゃー!(フランクフルトってなんにゃ!)」
「かーっかーっ(フランクフルトは串に刺さった肉です!食べたいです!)」
「フランクフルトもいいけど、ワタアメなにあれすごい!」
「たこ焼きってなんですか!たこって赤くてくねくねしてます!」
「リンゴアメが気になります」
「お酒もありますな。ビールもいいですけどな」
「べっこうあめがありましたえ、バナナもありましたえ」
「イカ焼きが向こうに見えましたわ、後フランクフルトとキュウリ」
年を数えるほど欲深くなるのか?フランクフルト人気すぎ。後、狐に酒を飲ませたらやばいやろ!
的屋の兄ちゃんやおっちゃんや姉ちゃんには、ちょっと人ならざる感じのものがいる。が、まあ、問題はないやろ。
とりあえず一番手前のフランクフルトを文字通りの狸親父に10本注文する、マスタードは少なめにしてもらう。1本50銭、高いのか安いのか。食べながら歩き、猫と烏には俺が噛みちぎったものを手で与える。
要望通りのものをお金を渡して買いに行かせる。ちょっと多めに買わせて、適当に分け合って食べる。
案の定、すぐに腹一杯になる。たこ焼き・お好み・焼きそば、フランク・アメリカンドッグ・とうもろこし、チョコバナナ・パイナップル・リンゴアメ・ワタアメ。子供組がギブアップしたものをとつかさんとあおいさんがぺろりと平らげる。持て余し気味のリンゴアメすら、バリバリと食い尽くしたので、ちょっとひく。
金魚すくいを交代で楽しみ、輪投げ、当てもん、射的は別れてやる。俺は迷子が出ないように後ろから監視やね。狐は当てもんにハマって、しょうもないものさしとか鉛筆ばかり増えている。すてが輪投げで小さなぬいぐるみをゲットして喜んでいる。れいかとあおいさんは射的で、明暗が分かれる。れいかは堅実にキャラメルをゲット、あおいさんは大物を狙って、倒れなくて悔しがっている。とつかさんはまだ食っている、イカ姿焼きとお好み焼きみたいなイカ焼き、ダブルでガツガツ食っている。
猫はある程度満足したのか懐で微睡む。烏も肩の上でおとなしい。コイツラはちっこいから燃費がええんやろな。鹿は俺の周りでウロウロキョロキョロして、不審者感が高いが、ちょっと足らない子扱いで周りに見られているような気がする。
途中の微妙な空きスペースで休憩する。子どもたちは型抜きなんぞやってる。俺はビールを買って、久々の一杯、うめえ。りくと狐が物欲しそうにしているが、あかん、やらんに決まってるやろ。
そこにやつかのおっさんとおいとさんが凭れあうようにやってくる、どっちも顔が赤い。くそ、酔っ払ってるぞ大丈夫か。俵担ぎとかすんねんぞおっさん。
「へい!大丈夫れす!」
ほんまかいな。
酔い醒ましもかねてゆっくりすすむ。
あ、5円落としやん。水槽の中にお猪口があって、それに5円を落として上手く入ればなんかもらえるやつや。あ、10銭銅貨になっとる。ひとしきり遊ぶが、上手く入ったのはれいかとすてだけだった。木の葉のようにフラフラしながら落ちるので、なかなか難しい。
しかしにぎやかやな、こんなに屋台が多いのなんて、三輪山並みのような。天満の天神さんは超えてるなあ。まあ、あそこは場所ないからなあ。
そうこうするうちに参道前の鳥居に辿り着く。少し入ったところに手水舎があって、きれいに手を洗う。
鳥居の真ん中はくぐらへんけど、手水の作法は、どっちでもええんちゃう、と思ってしまう派やね、口を直つけるのはやめてほしいけどね、とつかさん、そんなごくごく飲むもんちゃうんやで、食べまくって喉乾いてたかも知らんけど。やつかのおっさんも、そんな飲むもんちゃうねん、ああ、みんな真似したらあかん、こら、カラスや猫まで来んな、おい、みんな、ちょっと話し聞けこら!
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