11 / 11
第1章 Closed β
11話 地平線のその向こうに
しおりを挟む
この大きな神に登る際、時間が少しかかりそうなので、王宮を出る前にシロはバロンドールから壁の話をされていたのを思い出す。
「シロ様がこの王宮から、出る際幾つか注意があります」
今まで、ちゃんと説明してくれなかった魔術師はこんどは注意をしてくれるみたいだった。
「注意?」
「はい、今はお時間がないので全面戦争まで踏み込んだ経緯は割愛させていただきます、しかし、この国にとっては大事なものが一つあります、それは国王と同じ、いやそれ以上のモノと思っている民はすくなくありません」
それを聞いてシロはすぐに分かった。
「壁か...」
「お察しの通りです、この国では昔から壁はこの国で一番、天に近い存在...つまり神とされてきました、そして、その神が我々と同じ地上に降り立ち、そして、この国を守ってくれている、そのような言い伝えがあります、そして、ある時国は壁は神の加護と唱え、それを信じる者はヴェヒター教の信者と国中に広めそして、この国の信者は100%となり、国の政治を行いやすくしました」
「なるほどな、その信者の掟が危ないのか...国王もよく考えたものだ」
「まぁ、あまり縛りのない宗教なのでみんな入っているのですが、その中でも幾つかの細かい信者達の集まりがあります、なかでも暴力的な集団には気お付けてください、一応取り締まってはいるのですが...」
「わかった」
そんな、集団がいるという注意は受けたのだがここら辺にはいなかったみたいだ。運動を全くしていなかった、シロにとってはエスカレーターがない時代は上に上がるのもやっとだった。
壁は分厚く、そこでどんなに寝相の悪い人が寝ても落ちないくらいの厚みはあった。
そして、顔を壁の向こうにに向けたとき、シロの目には太陽が西の地平線の向こうに消えかかっているのが見えた。
「うわぁ...」
思わず声に出てしまった。普段、自然とは縁のないシロにとってそれは神秘的なモノに見えたのだった。
「あんちゃん、綺麗やろ...」
「はい...綺麗ですね...」
シロの顔は太陽の方に向いたまま上の空で返事をした。
そのあと、誰かに声を掛けられていたに気づき、驚きを見せた。
「わしもな、70年毎日登っとるんや...」
「70年ですか...」
その、おじいさんは、両目とも見えないみたいだった。
「わしわなは、20歳のときに戦争に行ったんや、この国は昔から鎖国はしてたが、小さな戦争や、内戦はよく起こってたねん、それを止めるために軍隊が派遣された」
「...」
返事はせずに聞くことにした。
シロは壁の上に立って、おじいさんは壁の上に座り、酒を飲んでいた。
「で、わしは、家が貧乏でな金の入る王国軍隊に入ったんじゃよ、もう忘れたがの、いつのときかの戦争で目を失ったんや...でもな、生きてこの壁の前まで帰ってこれた、そのとき、剣で切られた目に...微かな光がみえたんよ、そして、視力が僅か回復した...そんなことがあったら、あんちゃんはどう思うねん?」
「どう思うですか...切なくなりますね」
おじいさんは声を出して笑った。シロにはそれが理解出来なかった。
「あんちゃんは面白い奴やな」
「そうですか?」
シロの瞳にはまだ景色か色濃く残っていた。
「わしはな、戦った仲間、家族の顔を最後に頭に記憶することが出来ただけで満足だったわ、当然今はなんも見えないがね」
少し苦笑いをして言った。
「酷な話ですね...」
「わしは、酷なんて思わへん、奇跡やと今も思っとるわい」
謎のエセ関西弁だったが、まぁそういうおじさんは珍しくないのに、なぜかすごくマッチしていた。
「あんちゃん、つまりな...わしが言いたいのは、あんちゃんはどんなに闇の中に落ちても、この二つの偽物目でみたらあかん、こころの目で見極めるんや」
「こころの目?」
「そうや、あんちゃんあんたはここのものじゃない、だからわしにはようわからんが、でもあんちゃんがここにいるのは何かの縁、そして、このことを伝えなければならないと、こころの目が言っとった」
このおじいさんはシロの事をまるで最初から知っているかのような言いようだった。
しかし、もうそういうことにも慣れてきた。
「わかったよ、じいさん」
素直に受け入れ、清々しく返事した。
「また、どこかでゆっくり話そうや」
少ししか、話にもなっていない話をしたのにずっと長くそこにいた気がした。
そして、この場をあとしようと思い、階段を下ろうとしたとき、ふっと疑問が頭をよぎった。
「じいさん!おじいさん、ここまでどうやって来たの?」
そう、言いながら後ろを振り返ったがもうそこにはいなかった。
「あれ?」
確かにそこに居た、不思議な影はもう月の光で見えなくなっていた。
(名前も聞いてなかったな...)
ちゃんと壁の調査はこの目で行った。確かにさっきは謎のおじいさんと会話していただけだったが、ちゃんと調査はした。高さは40mその大きな壁は街をぐるっと1週覆っており、厚さは7m近くあった。材質は現代の物質で表すとコンクリートと言ったところだろうか、これを跡形もなく破壊となるとゲームの中の高位魔法か幻獣、などの実力が無ければ成せない技である。つまり、この壁は相当安全ということが現代の知識を踏まえても理解出来た。
「シロ様がこの王宮から、出る際幾つか注意があります」
今まで、ちゃんと説明してくれなかった魔術師はこんどは注意をしてくれるみたいだった。
「注意?」
「はい、今はお時間がないので全面戦争まで踏み込んだ経緯は割愛させていただきます、しかし、この国にとっては大事なものが一つあります、それは国王と同じ、いやそれ以上のモノと思っている民はすくなくありません」
それを聞いてシロはすぐに分かった。
「壁か...」
「お察しの通りです、この国では昔から壁はこの国で一番、天に近い存在...つまり神とされてきました、そして、その神が我々と同じ地上に降り立ち、そして、この国を守ってくれている、そのような言い伝えがあります、そして、ある時国は壁は神の加護と唱え、それを信じる者はヴェヒター教の信者と国中に広めそして、この国の信者は100%となり、国の政治を行いやすくしました」
「なるほどな、その信者の掟が危ないのか...国王もよく考えたものだ」
「まぁ、あまり縛りのない宗教なのでみんな入っているのですが、その中でも幾つかの細かい信者達の集まりがあります、なかでも暴力的な集団には気お付けてください、一応取り締まってはいるのですが...」
「わかった」
そんな、集団がいるという注意は受けたのだがここら辺にはいなかったみたいだ。運動を全くしていなかった、シロにとってはエスカレーターがない時代は上に上がるのもやっとだった。
壁は分厚く、そこでどんなに寝相の悪い人が寝ても落ちないくらいの厚みはあった。
そして、顔を壁の向こうにに向けたとき、シロの目には太陽が西の地平線の向こうに消えかかっているのが見えた。
「うわぁ...」
思わず声に出てしまった。普段、自然とは縁のないシロにとってそれは神秘的なモノに見えたのだった。
「あんちゃん、綺麗やろ...」
「はい...綺麗ですね...」
シロの顔は太陽の方に向いたまま上の空で返事をした。
そのあと、誰かに声を掛けられていたに気づき、驚きを見せた。
「わしもな、70年毎日登っとるんや...」
「70年ですか...」
その、おじいさんは、両目とも見えないみたいだった。
「わしわなは、20歳のときに戦争に行ったんや、この国は昔から鎖国はしてたが、小さな戦争や、内戦はよく起こってたねん、それを止めるために軍隊が派遣された」
「...」
返事はせずに聞くことにした。
シロは壁の上に立って、おじいさんは壁の上に座り、酒を飲んでいた。
「で、わしは、家が貧乏でな金の入る王国軍隊に入ったんじゃよ、もう忘れたがの、いつのときかの戦争で目を失ったんや...でもな、生きてこの壁の前まで帰ってこれた、そのとき、剣で切られた目に...微かな光がみえたんよ、そして、視力が僅か回復した...そんなことがあったら、あんちゃんはどう思うねん?」
「どう思うですか...切なくなりますね」
おじいさんは声を出して笑った。シロにはそれが理解出来なかった。
「あんちゃんは面白い奴やな」
「そうですか?」
シロの瞳にはまだ景色か色濃く残っていた。
「わしはな、戦った仲間、家族の顔を最後に頭に記憶することが出来ただけで満足だったわ、当然今はなんも見えないがね」
少し苦笑いをして言った。
「酷な話ですね...」
「わしは、酷なんて思わへん、奇跡やと今も思っとるわい」
謎のエセ関西弁だったが、まぁそういうおじさんは珍しくないのに、なぜかすごくマッチしていた。
「あんちゃん、つまりな...わしが言いたいのは、あんちゃんはどんなに闇の中に落ちても、この二つの偽物目でみたらあかん、こころの目で見極めるんや」
「こころの目?」
「そうや、あんちゃんあんたはここのものじゃない、だからわしにはようわからんが、でもあんちゃんがここにいるのは何かの縁、そして、このことを伝えなければならないと、こころの目が言っとった」
このおじいさんはシロの事をまるで最初から知っているかのような言いようだった。
しかし、もうそういうことにも慣れてきた。
「わかったよ、じいさん」
素直に受け入れ、清々しく返事した。
「また、どこかでゆっくり話そうや」
少ししか、話にもなっていない話をしたのにずっと長くそこにいた気がした。
そして、この場をあとしようと思い、階段を下ろうとしたとき、ふっと疑問が頭をよぎった。
「じいさん!おじいさん、ここまでどうやって来たの?」
そう、言いながら後ろを振り返ったがもうそこにはいなかった。
「あれ?」
確かにそこに居た、不思議な影はもう月の光で見えなくなっていた。
(名前も聞いてなかったな...)
ちゃんと壁の調査はこの目で行った。確かにさっきは謎のおじいさんと会話していただけだったが、ちゃんと調査はした。高さは40mその大きな壁は街をぐるっと1週覆っており、厚さは7m近くあった。材質は現代の物質で表すとコンクリートと言ったところだろうか、これを跡形もなく破壊となるとゲームの中の高位魔法か幻獣、などの実力が無ければ成せない技である。つまり、この壁は相当安全ということが現代の知識を踏まえても理解出来た。
0
お気に入りに追加
5
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
面白かったです!!
続きが楽しみです。これからも、頑張ってください
ありがとうございます!
まだまだ下手ですがこれから面白くしていきたいのでよろしくお願いします!