上 下
12 / 14
一章

12話

しおりを挟む
 トレーニングという言葉に興味をそそられる俺は、とてもこのトレーニングブックを試したい衝動に駆られる。見た感じはコレクションブックと一緒なので中にいる魔物を召喚することが出来ると思うのだ。そして、トレーニングブックという名前・・・これはもしや?

 俺は心の中でフォレストゴリラよ出ろ!と念じると、再びトレーニングブックが光り出す。
 トレーニングブックから光球が飛びだし、地面に近づくと一瞬眩しく輝き、そこにフォレストゴリラが現れた・


「なっ、復活しただと!?」
「待った!大丈夫だ!」

 レイラが驚き、剣の柄に手を掛けたが、それを俺が制止する。フォレストゴリラがこちらを見て佇んでいる。先ほど戦っていた時と違い綺麗な目をしている。戦闘時は赤い瞳だったのだが、今普通に黒い瞳をしている。戦闘時になると赤い瞳になるのだろうか?


「どうやら俺の能力らしい」
「魔獣を召喚する能力だと?」


 魔獣を召喚する、つまり手配魔獣の元凶が俺なのではと思ったのかレイラは今度は俺の方を向いて剣に手を掛ける・・・違うと否定するか・・・レイラと戦うか・・・むむむ、迷う!というか戦ってから誤解を解いても遅くないんじゃなかろうか!!いや、きっと遅くない!そうしよう!!!!!


「遅いわ!!・・・ったく、誤解だというなら説明をしろ」


 しまったぁあああああ!また声に出てたあああああ!!!!!!
 せっかくのレイラと戦うチャンスが・・・がっくり。


「いいから説明をし・ろっぉおおお!!」


 地面に膝から崩れ落ち項垂れていると、レイラが胸ぐらをつかんで俺の頭をシェイクする。やめろぉおお、脳みそがバターになっちまうぅううう!
 
 レイラシェイクのダメージで頭がフラフラになりながら俺はトレーニングブックの説明をした。


「つまりコイツを使役し鍛錬の相手に作り替えたというのか?」


 その言い方だとなんか俺ってヤバイ奴な感じに聞こえるが間違ってはいない。だが、外聞がよろしくないので否定しておこう。


「俺の愛の拳で愛に目覚めた魔獣が改心し、俺と友情を語らう為に俺の下に来てくれたんだ」
「ああ、殴り殺し生き返らせて従僕させたのだろう。解っている」


 ぜんっっぜん!解ってねぇええええええ!!!愛なの!友情なの!拳は会話なんだよぉおおお!!!!

 俺が何度訴えてもレイラの認識は覆らない。終いには「恐ろしい能力だな」などと言われてしまった。
 恐ろしくないもん・・・男と男の友情なんだい・・・熱血なんだい。・・・そういえばこのフォレストゴリラは雄なんだろうか?・・・まあいいか。確認する気にはならなかった。


 理解力のない頭がくるくるぱーのレイラに愛を説くのは諦め、フォレストゴリラをトレーニングブックに戻すと、俺たちはアイクル村へと足を向ける。アイクル村に着いた頃には朝日が昇っていた。手で太陽を隠しながら戻ると兵士の人が出迎えてくれる。


「レイラ様、ソースケ様お戻りなられましたか。直に手配魔獣が現れる時間となります。ご準備を」
「いや、手配魔獣は討伐済みだ。死体も処理したので問題ない」
「す、すでに討伐済みですか!?さすが、騎士団長・・・村の者も喜ぶでしょう」
「倒したのそっちの阿呆のソースケだ」


 誰が阿呆だ!・・・あれ?そういや名前を呼ばれるのは初めてな気がする・・・大体貴様とか阿呆とか言われてたしなぁ・・・まあ、いいけど。

 俺がむくれていると、兵士が俺に敬礼をし礼を述べてきた。なんというかむずかゆい。
 そんな俺を放っておいてレイラは村の奥へと進んでいく。そうか、村長へ報告するのか。しかし、この村の警備はどうするんだ?正直、あの魔獣をたおして終わりというわけにはいかない気がするが・・・それに、作物が全て潰され畑まで無くなってしまっては、暮らしていけないんじゃないだろうか?

 そんなことを思いながらレイラの後についていくと、予想通りレイラは村長の家の中へと入っていった。


「おおぉ!あの魔獣を退治していただいたのですか!ありがとうございます!これで、村の者も安心して暮らせますじゃ・・・・・・」


 魔物が退治されたと聞いて村長は一度明るい顔になり喜ぶ。だが、言葉を続けるうちに顔色は曇っていった。やっぱそうだよなー。つっても、どうしようもないだろうしな。


「その・・・騎士団長様」
「我々はこれで城に帰る」
「そ、そうですか・・・」


 村長は恐らく村の復興に手を貸してもらえないかと期待したのだろう。だが、レイラはそんな村長に冷たく言い放った。確かに、他にも被害にあっている村や町があるのだ。この村の為だけに人員を割いたり出来ないのかもしれない。だとしたら、仕方ないけど・・・。


「なあ、レイラ。」
「なんだ?」
「俺ここに残って村の復興手伝おうか?ほら、俺が力持ちなのは知ってるだろ?それにまた魔獣が現れるかもしれないしさ。強い魔獣と戦えるなら俺は本望・・・」


 と、そこまで俺が言うとレイラはいきなり剣を抜き放ち俺の喉元に剣先を突き付けた。戦うのは本望だが・・・・なぜだ?


「貴様、アメリア様を侮辱するのか?」
「は?なんで今のがアメリアを侮辱したことになるんだよ」
「き、騎士団長様、落ち着いてください。ソースケ殿も申し訳ない。私が無理を言ったばっかりに」


 いや、村長は悪くないだろ?それに俺だって悪くないはずだ・・・ん?アメリアを侮辱した・・・もしかして?


「失礼した。村長我々は城に帰る。この阿呆もな」
「は、はい」
「だが、元よりこの村を守っていた兵士たちはそのまま置いていく」
「は?・・・どういうことで?」
「ここに来ていた兵士たちはこの村の出身の者や農家で育った者たちだ。アメリア様はもとより、魔獣の討伐の後、兵たちに復興の手伝いを命令していた」


 おいおい、それじゃ俺は剣を突き付けられただけ損だったのか?っていうかさっきのって・・・そう思ってレイラの方を見ると、してやったりという顔でほくそ笑んでいた。つまり、さっきの怒ったのは演技で元からアメリアの命令で村の復興の準備は進めていたって事か!


「それに、当面の税は免除。後、今年は城から食料の援助を行う」
「あ、ありがとうございます!なんと・・・お礼を申し上げれば・・・子供たちを飢えさせずにすむとは」
「復興の後、以前と同じようにいや以前以上の麦の生産を期待しているぞ」
「はい!必ずや!!!」


 そう言うと、レイラはその場を後にし、村長の家からカッコよく出ていく。そして・・・


「おかしのおねーちゃーん!おかしちょうだいー!!」
「おかしよこせー!」
「ポケットをひっくりかえせー!」


 格好よく家を出た瞬間、子供というモンスターに襲われ身ぐるみ(とっておきのおやつ)を奪われていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

裏アカ男子

やまいし
ファンタジー
ここは男女の貞操観念が逆転、そして人類すべてが美形になった世界。 転生した主人公にとってこの世界の女性は誰でも美少女、そして女性は元の世界の男性のように性欲が強いと気付く。 そこで彼は都合の良い(体の)関係を求めて裏アカを使用することにした。 ―—これはそんな彼祐樹が好き勝手に生きる物語。

処理中です...