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一章

7話

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 新しく手に入った『高揚』のスキルを試してみたかったが、道中ではもう敵と出会う事はなかった。
 

「あれがアイクル村だ」


 レイラの指さす方向を見ると申し訳程度に柵で囲われた村が見えてくる。あの柵では魔物が来ても村が守れないだろう。そう思いながら近づいていくと柵の前には数人の鎧を着た兵士が警戒をしていた。


「騎士団長!?どうしてここへ?」


 俺たちが近づくと、兵士の一人が慌てて近づいてくる。レイラって騎士団長なのか・・・おばけが怖い騎士団長って大丈夫なのか?


「ご苦労、手配魔獣の討伐に来たのだ」
「騎士団長自らですか、助かります。それでそちらの方は?」
「アメリア様の客将だ。」


 そうでしたかと頷くと、兵士はこちらに敬礼し来る。とりあえず、敬礼を帰しておいた。
 そういえば、客将としてアメリアの下に置いてもらえるんだったな。敬礼されるって事は普通の兵士より上の立場なのか?あまり軍関係のことは知らないのでよく解らないが、きっとそうなのだろう。


「村長に会わせてもらおう」
「はっ!」

 
 案内しますと、前を歩きだす兵士にレイラは続く。本当はすぐにでも手配魔獣を探したいところだが、アメリアに状況の確認をしろと言われていたので俺も渋々ついていった。村は小さい為、それ程歩く必要はなかった。だが、村の外側だろうか?柵のすぐその先には流星群でも落ちたのかと思うくらいに小さなクレーター状の穴が無数にあいていた。手配魔獣と兵士が戦った後なのだろうか?だが、血のようなものは見えないので違うのかもしれない。


「レイラ騎士団長様、騎士団長様ほどの方に来ていただけるとは・・・これで村の者も安心できます」
「いや、私はただの付きそいだ。今回アメリア様から討伐の命を受けたのはここにいる者だ」


 村の一番奥の家に入ると、白髪と白ひげが似合う老人が俺たちを迎え入れる。恐らくこの人が村長なのだろう。かなり疲れている様子だが、魔物の被害はそれだけ酷いのか?


「ソースケ=クロガネだ。アメリアからの命令でこの村の被害状況と手配魔獣の討伐を頼まれた」
「そうでしたか、ありがとうございます」


 堅苦しいのは苦手なんだが、こういうところではちゃんとしないとな。


「ですが、被害状況でしたら以前お知らせしたと思いますが?」


 ん?そうなのか?それじゃ、アメリアは何で被害状況を聞いてこいって言ったんだ?


「この者は最近軍に入ったばかりなのでな、改めて教えてもらえると助かる」
「おお、そうでしたか」


 なるほど・・・ん?でもそれならこの村に来るまでにレイラが教えてくれてもよかったような?俺は一刻でも早く魔物と戦いたいのだが・・・。


「被害は我が村の作物全てですじゃ」
「・・・・・・は?」


 全てって・・・全部?いや、いくらなんでもそんな・・・。元の世界だってイノシシとかの被害があってもかなりの損害が出たとか言ってても全ての作物が駄目になったなんてことあるのか?それじゃまるで・・・意図的に・・・。


「私の家の前には広大な畑が広がっておりました・・・ここに来る途中見られたと思いますがそれをすべてつぶされてしまったのです」


 あの小さなクレーターか!?ということは、魔獣が食料の為に畑を襲ったというわけではないということだ・・・食料の為ならあんな風に潰す必要はない。また食べるためにも畑は残しておくべきだ・・・としたら、あそこで魔獣が暴れた?・・・だとしたらもっとおかしいんじゃないか?


「なあ、村人に被害はないのか?」
「はい、幸い誰一人として傷ついてはおりません」


 つまり狙いは畑だけということか・・・魔獣が畑を狙って一体どうするんだ?くっそ、俺の頭じゃわかんねぇ。


「つまり、それ以降は襲われてないんだな?」
「いえ、毎日のように朝になると畑を襲いに来るのです、そのせいで畑を整備することも・・・」


 ・・・・・・それ、本当に魔獣か?完全に狙ってるよな?・・・だーーーーわっかんねぇ!とにかくその魔獣と殴り合ってみないとなんにもわからねぇ!


「解った、とりあえず俺はその魔獣を探して退治してみるわ!」
「え、ですが、あの魔獣は本当に凶暴で・・・おひとりではさすがに・・・」
「何言ってんだ、ケンカはタイマンに決まってんだろ!俺が一人で戦うぜ!いいよな、レイラ」
「好きにすればいい」


 よし、レイラのお墨付きも貰ったし、とにかく魔獣を探してケンカをふっかけてみよう。拳で殴り合えば相手が何を考えてるかわかるってもんだぜ!


「ほんじゃ、さっそく行ってくるぜ!」


 そう言って、俺は村長の家を飛び出した。
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