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一章

6話

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「アメリアを護る騎士が血くらいで卒倒してどうするんだ?」


 再び目を覚ましたレイラに俺は小言を言う。もちろん、今回はちゃんと近くの川で血を洗い流してきた。


「阿呆!血くらいで卒倒などせんわ!血塗れのおばけのような姿で現れたら誰だって卒倒するだろう!!」


 おばけが怖いのか・・・。


「大体、何をどうしたらゴブリンと戦っただけであれ程血まみれになるんだ!」
「何をどうしたらって、普通に愛を込めた拳をゴブリンに叩き込んだら爆散しただけだぞ?普通だろ?」
「今の説明のどこに普通さがあった!!ふつう殴っても敵は爆散せんわ!!」


 えー、おかしいな。普通爆散するよな?血が飛び散るなんて当たり前だと思うのだが・・・。


「まあまあ、そう興奮するなよ今度はお前の鼻血で血濡れおばけになっちまうぜ?」
「鼻血などだすかぁ!!」


 素晴らしいツッコミに俺はうんうんと頷きながら歩きだす。俺が歩き出したのに気づいてレイラも再び歩き出した。その後も何匹がゴブリンを爆散しながら歩いていくと、不意にレイラが立ち止まる。どうやらまたも魔物が現れたようだ。しかも、今度は大物!わっほい!


「イビルボアだな」
「ゴブリン以外にもいるんだなー?」
「普段は見かけない魔物だが別の場所から移動してきたのだろう。あれはゴブリンと違って一般人が出会うと殺される・・・確実に倒すぞ・・・あれ?」


 レイラの長い話が終わる前に俺はすでにイビルボアに飛びついていた。俺の愛のこもった拳を叩きつけると、イビルボアは吹き飛び、地面を10メートルほど転がった。だが、すぐに立ち上がるとこちらを睨みつけてきたのだ。イビルボアが俺めがけて突進を繰り出す・・・お、いいねいいね。かもーんかもーん。


「阿呆、避けろ!イビルボアの体当たりは岩をも砕く威力があるんだぞ!」


 岩をも砕く威力!!それは是非!!この身で受けねば!!!!
 俺はイビルボアの突進に合わせて頭突きを繰り出した。まるでダンプカー同士がぶつかり合ったような衝撃音が辺りに響く。


「阿呆!!」


 レイラの焦る声が聞こえるが、俺とイビルボアはお互いを見つめあう・・・俺が口端を上げると・・・イビルボアは白目をむいてその場に転がった。


「なん・・・だと・・・」


 レイラの驚愕する声が聞こえる。当然だろう、これほどいい体当たりは俺も初めて受けた。俺の前頭に響き渡った天使の鐘のような衝撃は今も俺の心に響いている。これはゲームでは味わえなかった感触だ・・・さいっこう!


「貴様、本当に人間か?」
「当たり前だろ、清く正しい澄んだ心の戦闘を愛する普通の人間だ」
「清く正しくと一緒にしちゃいけないような単語が並んだ気がするが・・・そして微塵も普通ではない」


 おかしいな、俺の住んでいた日本では普通のことなのになー。普通だよね?
 
 おや、イビルボアを倒したからかステータスのレベルがまた一つ上がっている。経験値の表記が無いからどれくらいで上がるのかわからないのは面倒だな。もしくは経験値で上がるわけじゃないのかもしれないな。

 ソースケ=クロガネ
 職業 ケンカ屋 LV 3
 スキル 『挑発』 『高揚』New


 今度のスキルは高揚というらしい。高揚って確かテンションが上がるみたいな感じだったかな?うーん、名前だけじゃよく解らないな。内容を見れたりしないのかな?

 俺はじーっと高揚の文字を見てみると、スキルの内容が書かれたウインドウが新たに現れた。

  『高揚』
   戦いが長引けば長引くほど身体能力が上がる。

 短いがなるほど、要は戦ってテンションが上がる程、強くなるって事か。便利そうなスキルだが、身体能力が上がるって書いてあるな・・・ステータスが上がるって書いてないって事はこの世界にステータスの概念はないってことなのか?


  『挑発』
   挑発された相手は貴方を殺したくなる


 説明文こえーな!使うか迷っちまうよ!でも挑発は思った通りの効果であった。これは中々使えそうだ。


「虚空を見て何を百面相している?」

 
 ステータスウインドウを見ていた俺を見て怪訝そうな顔でレイラが見てくる。そうか、そういえば他の人にはこのウインドウは見えないんだったな。


「いや、俺の状態を確認していたんだ」
「む?虚空を見つめると自分の状態が解るのか?」
「まあな」
「ただ、ぼーっとしている阿呆にしか見えんが」


 酷い!とはいえ、人前でウインドウを見ると変な人に思われるのは確かだな。今後は周りを確認してから見るようにしよう。俺は普通の人間なのだから。


「お前は完全に変人だ」


 おおう・・・またも心の声が漏れていたのか、レイラはジト目をしながらそう言ってきた。ふん、変人っていう奴の方が変人なんだいっ!俺は今度はわざと心の声を漏らしてみたが、レイラは俺の声が聞こえないふりをしてそのまま歩き始めた。しょんぼり。


 
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