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2部 3章

魔女の戦い

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 エルフの集落の近くにある洞くつの奥……その中にある少し開けた空洞で、二人の魔女が戦いを繰り広げていた。


「とにかく、あいつの持っている杖を壊さないと……闇の刃オプスラミナ!」


 私の放った闇の刃が空中を自在に動き回りながら、災厄の魔女の持つ杖を狙う。


「ふふふ、そんな簡単にいくわけないでしょう?影槍シャドウランス!」


 だが、災厄の魔女はそれを軽々と打ち落とす。
 魔法だと勝負がつかなそうである……それなら……。


「はああ!!」


 私はバトーネを取り出すと、魔力を流し、風を纏わせる。
 そして、風の刃を災厄の魔女に向けて放った。
 もちろん、威力はオプスラミナ程はない、その為、先ほどと同じように簡単に迎撃されてしまうが、私はその隙に災厄の魔女の懐へと潜り込む。


「!?」
「てえええい!!」


 私はバトーネを振るい、魔女のお腹に一撃を加えた。


「くっ……」


 魔女は顔を歪めると後ろに後ずさり、膝をつく。
 魔女と言うだけあって魔力はかなりの高い……それこそ、私と同じかそれ以上だろう……だけど、接近戦は得意ではないみたいだ。


「チャンス!」


 災厄の魔女が膝をついたところに私は杖目掛けてバトーネを振るう。
 

「舐めないで欲しいわね!」


 私のバトーネがあと少しで杖に届くというところで、災厄の魔女が赤い魔力を放出させる。
 その魔力の衝撃波により私は吹き飛ばされてしまった。


「な、何!?」


 私は転がりながらも態勢を整え、魔女を見る。
 魔女の周りには赤い魔力が今まで以上に噴出しており、まるで魔女を護るオーラのようにも見えた。


「吹き出す魔力で体を護ってるの……?」
「あら、お利口ね……その通りよ。貴方のその棒っきれはもう私には届かないわよ!」


 くっ……接近戦を封じてきたということだろうか……いや、それでも完全に封じるということは出来ないはずだ……スキを突いて今度こそ。
 あの量の魔力を常時展開させるというのは普通であれば不可能だろう……私でもキツイ。
 恐らく、災厄の魔女もあの状態でずっといられるわけではない……なら、魔力を使わせて、維持できなくしてやる。


氷牙咆哮アイシクルルジート!」


 風と氷の合成魔法が、災厄の魔女に襲い掛かる。
 狭い洞くつの為、あまり爆発力のある魔法は使えない。
 もし洞くつが崩れてしまえば、私も生き埋めになってしまうからだ。
 もちろん、それは相手も一緒である……だけど、災厄の魔女の得意な影の魔法はこの場所でも十分、力を発揮できるだろう。それに比べると私の闇の魔法は破壊力の強いものが多い……得意な魔法が使いにくい分魔法勝負は私が少し不利である。
 でもそこは、今までの経験と勘でなんとかしてみせるよ!

 私の放った合成魔法が災厄の魔女に襲い掛かる。
 災厄の魔女はその攻撃を影風結界シャドールシールドで防ぐが私のまき散らした氷は残る。
 魔女には届かなかったものの、魔女の周りは氷で埋め尽くされる。


「これにはこういう使い方もあるんだよ!変則合成魔法アレンジ!」


 私はさらに氷の魔法をもう一度合成させると、魔法をさらに変質させる。
 魔女の周りを埋め尽くしている氷が突如氷柱のように鋭くなり、魔女へと襲い掛かる。


「なっ!?」


 災厄の魔女は予想外だったのか、不意を突かれそれを回避できる様子はない。


「小癪ね!!」


 その為、再び体に纏っていた赤い魔力を噴出させ、私の氷の魔法を粉々に砕いた。
 相手の意識が相手の周りの氷に移ったのを見て、私はさらに合成魔法を唱える。


「ここだっ!魔水風圧弾アクアウィレス!」


 弾丸のように放たれた魔水風圧弾アクアウィレスが魔女の中心を捉える。
 私の魔法の中で一番の貫通力を持つ魔法である魔水風圧弾アクアウィレスだ。
 これまた、不意を突けている……これなら、仮に魔力を噴出してもかき消される前に魔女に届くだろう。
 確実にダメージを与えられると確信していたが……私の予想は大きく外れる。


影魔召喚シャドウ・サーバント!」


 突如、災厄の魔女の目の前に、ローブを羽織った骸骨が召喚される。
 その骸骨が魔女の代わりに私の魔法を受け止めたのだ。
 ローブの骸骨は私の魔法の直撃を受けると魔女の後ろの壁にまで吹き飛ばされて粉々に砕けた。
 だが、私の魔法はその骸骨を弾き飛ばすのほとんどの威力を使ってしまい、魔女の元には届かなかったのだ。


「身代わり召喚……ってところかしらね♪」


 余裕の表情で私を見る災厄の魔女……思った以上に相手も戦い慣れている。
 だけど、今の戦いでもかなり相手の魔力を使わせることが出来たはずだ……もちろん、こちらの魔力もだいぶ減ってしまっている……魔力レースになったところで私に勝ち目があるのだろうか?
 正直、絶対に勝てるという自信はない……なら、このまま続けても悪手だよね。
 少ない魔力で相手の魔力を削るには……はは、やっぱり、突撃あるのみかな!


闇雷纏シュベルクレシェント


 私は黒い雷を纏い、再びバトーネを手にする。
 身体能力を強化して、相手をぶっ叩きまくる……これなら、魔力消費を抑えて相手に魔力を使わせることができるのだ。


「はああああ!!」
「特攻かしら……見苦しいわね」


 体を武器に変え、魔女目掛けて突進する私は、再び魔力を噴出させて弾き飛ばす災厄の魔女。
 私は大きく吹き飛ばされて、地面を転がるがすぐに態勢を整えて再び突進する。
 だが、それもまた、魔力の噴出で弾き飛ばされる。
 私はまた突進して、弾き飛ばされて、突進して弾き飛ばされる。
 これなら、魔力を使わず、相手に魔力を使わせることが出来る……ただ、この作戦の欠点はかなり痛いということである。
 黒い雷で体を護っているとはいえ、吹き飛ばされるたびに私の身体はボロボロになって行く。
 仕方ないよね、か弱い少女だもん!
 それでも私は、攻撃を止めない……この行動に意味はあると私の勘が告げているのだ……そう、勘が!
 意味なかったらどうしよう……。


「うっとしいわね!!」


 私が何度目かの突進を繰り返していると、災厄の魔女がイラついたように今まで以上の魔力を噴出させた。私はその魔力に吹き飛ばされ、今度は反対側の壁まで叩きつけられる。


「かはっ!」


 くぅ~……今のは効いたぁ……。


「もう飽きたわ……とっとと死になさい」


 そう言った災厄の魔女を見ると、災厄の魔女はこちらに手をかざしている。


影氷槍シャドウアイシクル!」


 私に向けて影と氷の合成魔法を放ってきた。
 私はそれを咄嗟に風の結界で防ごうとするが、風の結界は相手の魔法とぶつかり合い砕かれてしまう。
 相手の魔法の威力も殆ど死んでいたが、持っていた氷の特性が弾け飛び、私の身体と周囲を凍らせた。


「しまったっ」


 氷によって身動きを封じられた私は焦る。
 それを見た災厄の魔女が再び魔法を放ってくる。

「これで終わりね……影槍シャドウランス!」


 マズい……あれをまともに受けたら致命的だ。
 迫りくる影の魔法を躱すために、私はさらに魔力を高めたのだった。
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