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2部 3章

不安

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 ローブの骸骨が赤い光球を三体同時にクオン目掛けて放ってくる。
 それをクオンは、高速で移動をし躱すがローブの骸骨達は、その動きを捉えクオンを追いかけるように連続で光球を放つ。

 クオンはそれをも躱すが、光球の数の多さに、敵に近づきにくい為、クオンは光球の合間を縫ってクレイジュを振るう。
 すると、光の斬撃が一体の骸骨へ向かって飛んでいった。
 光の魔法と斬撃を合わせた技である。


 だが、ローブの骸骨はその攻撃を杖でなぎ払い、かき消してしまう。


「くっ……」


 あの杖、材質は恐らくあの骸骨達と同じ骨である。
 とするのであれば、杖があれだけの強度を持っているのだから、あのローブの骸骨達の身体も同じくらいの強度だと考えるべきだ。


「普通の攻撃じゃ、あの杖を掻い潜っても弾かれるかもしれないね」
(ああ、渾身の一撃をくらわせねぇといけねぇな)


 だが、そう簡単に渾身の一撃を放つスキなんて見せてくれないだろう。
 ならどうする……いや、待てよ?


「やってみるか」


 クオンはそう呟くと、再び高速で移動を開始した。
 だが、その動きは相手を惑わすためなのであろうか、一貫性がない。
 敵の背後を捕ろうとしたような動きだったり、距離をとるような動きだったり、はたまた唯々横に移動する動きだったりと何を狙っているのか解らない動きであった。

 その動きに敵の骸骨達にも動揺が見える……いや、顔は骸骨なので表情が動くことは無いのだが、明らかに翻弄されたようにおろおろとし始めたのだ。


「こっちだっ!」


 クオンが翻弄されている骸骨の一番真ん中にいる奴の懐に潜り込んだ。
 敵はクオンの接近に即応できず、対処が遅れる。
 そのまま攻撃をすればいいだろうに、クオンは何を考えているのか自分の存在をアピールした。

 それに慌てたのか、ローブの骸骨は持っている杖を振るう。
 クオンもそのまま攻撃をするのかと思いきや、何もせずにその場から飛びのいた。

 敵の骸骨の杖が何かを破壊するような鈍い音を上げる。
 杖を振るった骸骨の隣にいた骸骨がその場に崩れ落ちた。
 真ん中にいた骸骨の振るった杖は隣にいた骸骨の足を破壊していたのだ。

 クオンに翻弄され、隣にいた骸骨が自分に近づいていることに気づかず、杖を振るってしまった為である。


(はっ、さすがだぜ相棒)
「上手く行ってよかった」


 クオンが安堵の息を漏らす。
 もし敵が何らかの方法で味方や敵の位置を把握できる能力があったり、慌てると言った感情を持たない者であればこの作戦は上手く行かなかっただろう。
 だが、彼らは一体がやられそうになったときに咄嗟に庇った……それを見て、思考能力を持つ相手なのではないだろうか……とクオンは考えたのだ。

 もしそうであるのならば、惑わせることが出来る。
 そして惑わせることが出来れば、同士討ちを狙えるのではないか……その考えは上手く行った。
 
 さらに、同士討ちを経過するようになったローブの骸骨達は、お互いに距離を置く。
 そうなれば簡単である。
 一体を自分と他の骸骨の射線上に置き、他の骸骨の援護を出来ないようにすれば1対1の状況に持ち込めるのだ………とはいえ、それもクオン程のスピードと判断力のある人間でなければ不可能な話なのだが。


 クオンは外側にいた骸骨と先ほどの真ん中の骸骨が一直線になる場所へ移動をし、その瞬間、光の斬撃を放つ。

 それを骸骨は杖でかき消すが、その光の斬撃のすぐ後をクオンが追っていた。
 振りぬいた杖を戻す前に、クオンが懐へと潜り込む。
 この位置ではもう一人の骸骨はクオンだけを狙えない。
 近くに固まっていた先ほどまでであれば少し角度を変えれば行けるかもしれないのだが、この密着の状態を遠くから敵だけ撃ち抜くと言うのは無理である。

 その為、骸骨は攻撃を躊躇った。
 そして、その躊躇った一瞬のスキに、クオンは懐に潜り込んだ骸骨の首を渾身の一撃で跳ね飛ばしたのだ。


「まずは一体」


 残り二体のうち一体は足を壊され地面をもがいている状態である。
 実質、残り一体だ。

 ローブの骸骨が光球を放つ。
 だが、今度はクオンがそれをクレイジュを振るい斬り裂いた。
 そして、一直線に骸骨へと迫る。
 それを見た骸骨は杖を捨て、両手で赤い光球を発生させると、連続で放った。
 何発、何十発もの赤い光球がクオン目掛けて飛んでくる。
 クオンはそれを斬り飛ばそうとするが、数が多い。
 一発……一発と斬り裂いていくうちにその衝撃で舞い上がる粉塵がやがて、クオンの姿を隠していく。
 だが、それでもお構いなしに骸骨は光球を放ち続けた。
 すでに百発近く放ったのではないだろうか……やっと、骸骨が光球を放つのを止める。
 これだけの数の光球を斬り裂くのは不可能であろう……恐らく骸骨はそう思ったのだろう………だが、次の瞬間、骸骨の首が飛んだ。

 いつの間にか背後に回ったクオンが、一撃でその首を叩ききったのだ。


「二体目」


 首を跳ね飛ばされた骸骨はその場で消滅をする。
 そして、地面でもがいている骸骨へゆっくりと近づくと、その骸骨の首も斬り落とし消滅させるのであった。


「何とかなったね」
(ああ、だけどコイツはかなりマズいんじゃねぇか?)


 クレイジュの言う通りである。
 ディータであれば、今の敵も問題はないだろう……だがもし、レンやメリッサたちの所に今の敵が現れたら……彼女たちが危険かもしれない。

 そう思ったクオンは持ち場を離れ、メリッサたちの方へと向かおうとするのであった。
 だが、クオンが走り出そうとしたその瞬間……周りの地面が盛り上がり始めていたのだった。
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