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2部 3章

レンの思い

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 エルフの集落の中心にある広場、ここでも戦いは繰り広げられていた。
 ディータが西へと向かったすぐ後に、ここにも骸骨達が現れたのだ。

 骸骨達は石化させられた者を見ると、それを壊そうと襲い掛かる。
 だが、石化させられたものに近づいた途端、地面が爆発し、骸骨を跡形もなく吹き飛ばした。
 それも一体だけではない、他の石像に近づいた骸骨も同じように地面が爆発し吹き飛んでいる。


「爆発の距離、爆発量、共に問題なし……石像に損傷はないな……よし」


 エリンシアの石像の近くで、別の場所で吹き飛ぶ骸骨を見てそう呟くレン。
 骸骨達の足元で爆発したのはレンが仕掛けたトラップであった。
 レンたちの人数で集落すべてのエルフたちを護るのは不可能であった……だが、罠を仕掛け、近づいた敵を倒せれば可能性は残る。
 そこでレンは敵が来る前に、集落にある全ての石像付近に罠を仕掛けたのだ。
 もちろん、ディータ達もそれを知っているため、石像には近づかない。
 罠にかかるのはそれを知らない敵だけということである。

 レンは銃でエリンシアに近づいてくる骸骨を撃ち抜く。
 レンの銃はあれからも改良されており、飛び出た弾丸が敵に当たると炸裂したり、弾丸に当たった敵が氷漬けになったりする。
 それは、銃の改造というよりも弾の改造であった。
 暇な時間を見つけると、せっせと属性効果の付いた魔導玉を買い、弾へと埋め込んだのだ。
 そのおかげか、レンの攻撃力はかなりアップした。
 自爆をしなくても弱い敵であれば軽々倒せるようにはなっているのだ。

 しかし………。


「鎧を着た骸骨だと……?」


 レンはその敵を見た瞬間、あれは鎧の重さをどうやって支えているんだ?と疑問に思う。
 骨の強度では重さに負けて折れてしまいそうなものだが……と。
 その実、骸骨達は赤い魔力で強化されているため、普通の骸骨とは比べ物にならない程の強度を持っているだけなのだが、あまり魔力に精通していないレンはついつい疑問に思ってしまうのだ。


「問題ない、敵である以上、倒すだけだ」


 レンは銃を構えると、炸裂の弾を敵に打ち込んだ。
 弾は敵に当たると、小爆発を起こし敵を吹き飛ばそうとする……が、鎧の骸骨はその程度の爆発ではびくともしなかった。


「何!?」


 鎧の骸骨はレンには目もくれず、後ろにあるエリンシアの石像へと突進する。
 骸骨がエリンシアの近くへと行くと、ここでも足元が爆発を起こした。
 その爆発で、鎧の骸骨の足は粉々に砕け、上半身が地面へと落ちる。
 そして、地面に落ちた上半身が、別の地雷の上へ乗ってしまう。
 ここでまた爆発……鎧の骸骨は完全に粉々になり、赤い魔力へと変わり消えていった。

 それを見たレンはホッと、安堵するが……再び前を向いた瞬間、硬直する。

 先ほど倒したはずの鎧の骸骨が今度は二体、同時に現れたのだ……いや、鎧の骸骨だけではない……数十体の普通の骸骨も同時に現れている。

 これはマズい……自分ひとりでこの数を倒すことができるのか……レンは不安に襲われる。
 もし、自分が負けてしまえば、エリンシアも破壊される……それだけは絶対に避けたい。
 彼女は自分にとっても大切な友人であり仲間なのだ……そして、自分がそう思えるようになったのも彼女のお陰である。

 レンは白の傭兵団にいた頃は、何にも興味を持たない人間であった。
 他人の命も、自分の命ですらどうでもいいと思っていた……唯々、与えられた任務を遂行するだけの心無き人形だったのだ。
 そんな自分がある切っ掛けで今の自分に疑問を抱き、白の傭兵団と決別する。
 そして、自分に必要なものを探していた時に出会ったのがカモメ達、星空の太陽であった。
 彼らは自分が傷ついた時に自分を心配してくれた、超再生のスキルで元に戻れると言うのに、自分を大切にしろと怒ってくれる……これが本来の人間の優しさなのだとレンは思ったのだ。

 だから、自分はそんな優しい人たちを護るために、戦おうと決めたのだ。
 

「そうだ……俺は負けるわけにはいかない……例え、腕一本になろうが、頭一つになろうがお前たちを殲滅する………来い!エリンシアには指一本触れさせん!!」


 レンは覚悟を決める。
 たとえ自分がどうなろうが、必ずエリンシアを護ると……こんな事を言えば、エリンシア自身にはまた怒られてしまうだろうがそれでもいい。自分にとって彼女はそれだけ大切な人間なのだ。


 レンは銃を構えると、先ずは普通の骸骨を撃ち始める。
 敵を観察すると、普通の骸骨は今まで通り、石像を狙っている……だが、鎧の骸骨はどうやらレンを邪魔者として認識しているようで、レンへと向かってきているのだ。

 それならば、鎧の骸骨は後回しにしていいだろうとレンは考えた……なぜなら。



 レンが、銃弾で骸骨達を撃ち抜く、そのことによって普通の骸骨達も石像からレンへと敵意を向け始める。そうだ、少しでも敵の眼を自分に惹きつけないと……トラップがあるとはいえ、そのトラップにも限りがある。出来る限り消費したくはない。
 それでも何匹かはレンの方へ向かず、石像に近づき爆発していたが、数にして20体くらいの骸骨達はこちらに注意を向けることが出来た。

 それに安堵した瞬間、レンは背中を鎧の骸骨に斬られる。


「がぁっ!」


 だが、それ程は深くなかったのか、レンの天啓スキルである超再生がその傷はみるみると治した。
 それでも、斬られた際の痛みが無いわけではないのでレンは顔を歪める。


「だが、十分敵の注意は惹きつけた……さあ、来い!」


 レンが吼えると、20の骸骨と鎧の骸骨二体がレンへと向かう。
 鎧の骸骨を先頭にレンへと雪崩のように突っ込んでくる。
 それをレンは腰につけていたボウガンを引き抜き、骸骨達の方へ構え、にやりと笑った。


「殲滅完了だ」


 レンがそう呟き、ボウガンのトリガーを引くと、ボウガンの鏃の部分が小さな爆発を起こし、弦の勢いと合わさって、とんでもないスピードで飛び出した。そして爆発の加減で調整したのか、矢は回転を加えて貫通度を増す。

 その矢が一番先頭の鎧の骸骨に接触した瞬間、今度は魔力を放ち、爆発を起こしたのだ。
 この爆発は銃の弾につけた魔導玉で、中には爆発の魔法が詰まっている。その魔導玉を、米粒ほど小さく改良し、大量に矢の先端に収めていたのだ。それが敵と接触した瞬間周りに飛び出す仕掛けになっていた。

 そして、最後に鏃《やじり》に仕込んだ風の魔導玉が、風の力でその爆発の範囲を広げる。
 結果、貫通性を持ち、周りの敵を爆発と風で壊滅させる。恐ろしい武器となったのだ。


 骸骨達はこの攻撃に耐えることが出来ず、一匹残らず消滅をした。


 レンは小さく息を漏らすと、自分の持っているボウガンを見る。
 ボウガンは弦が爆発により切れてしまっており、弦を張り替えなければ使えない状態へとなっていた。


「やはり、連射は無理か」


 まだまだ、改良の余地があるなと呟きながらもエリンシアを護れたことに口元を緩めるレンであった。
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