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2部 3章
足止め
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領主の館を飛び出して、館の外にまで出ると、セリシアナはあたりを見回しながら訪ねてきた。
「カモメ殿、兵など何処にもいないぞ?一体、どういうことだ?」
「兵士の準備なんて待ってられないよ、それはアンリエッタに任せる」
「ん?ならば我々は何をしに外に来たのだ?我々も手伝って少しでも早く準備を整えるべきではないか?」
「何言ってるの、私達はすぐにでも救援に行くんだよ!」
そう言うと私は、セリシアナの後ろから手をまわして、彼女を抱きかかえると、風の魔法で空へと飛びあがった。
「なっ……えっ!?……ちょっ……!?」
「飛ばすからしっかり捕まっていてね!」
「きゃあああああああああああああああああああああああああ!?」
先ほどまで凛々しかったセリシアナとは思えないような悲鳴を聞きながら、私はクオン達の元へと急ぐのであった。
==========================
時は少しさかのぼり、セリシアナがラリアスへ単独で向かう前、ラリアスからまだ少し離れた街道をクオン達が移動していた。
先頭にはセリシアナとクオンとディータが歩き、後ろにはギリアムが仲間が疲れ脱落していないかを見ていた。時には暗い顔をしている仲間を励ましながら。
「では、ラリアスにはディータ殿たちの仲間がいるのだな?」
「ええ、頼りになる仲間がね……それにしても、歩くと遠いわね……予定では昨日には帰ってるはずだったんだけど……カモメ、心配しているかしら」
「気になるなら先に魔法で飛んで帰るかい?」
「馬鹿ね、敵の追手が来るかもしれないのに、私だけ先に帰れるわけないでしょう」
そう、恐らく敵は追手を出してくるだろう、今のところ、追いつかれたりは不思議なことにしていないのだが……このまま見逃してくれるとは思えない。
……少人数の追撃部隊を出してくると思ったんだけど……敵は何を考えているのかしら?
少人数の精鋭部隊を出してくればこちらも被害なしでは行けないだろうと思うのだが……現在の所、追手に追いつかれると言うことはなかった。
数を多くしすぎて追いつけていないとか?………そこまで馬鹿な相手なら良いんだけど……ね。
「セリシアナ様!あれを!!」
ディータが追手の事を考えていると、後ろにいた兵士が前方を指さす。
その兵士の指す先を見てみると、小さな村があり、その村から黒煙が上がっていた。
火事?……いや、それにしては変だ。黒煙は一つではなく、村のあちこちから上がっている。
………もしかして……。
「根暗坊主、あれって……」
「ああ、恐らく何者かに襲われているんだろう」
「山賊だ……近頃、近辺の山賊が力をつけていると報告があった……」
山賊……か……こんな時に……どうする?見捨てる?
もし追手が来ているのだったらここで時間をとられれば確実に追いつかれるだろう。
………ふふ、あり得ないわね……困っている人を見捨てて帰って、どの面を下げてカモメに会えると言うの?……私は女神……だけどそれ以前に冒険者カモメのパーティメンバーよ……冒険者は困っている人を放ってはおけないってね!
「根暗坊主……解ってるわね」
「ああ……もちろんだ」
「ま、待ってくれ、あなた方の気持ちは分かる……確かに我らは逃げる身だ、ここで足止めを喰らえば敵に追いつかれるかもしれん……だが、我ら近衛隊……騎士として民を護らねばならん!……どうか、頼む……あの村を救うのを手伝っては貰えないか……?」
そう訴えるセリシアナの後ろで、他の近衛隊の兵士達も口々に嘆願してきた。
どうやら、誰一人として、村を見捨てたいと願うものはいないようだ。
……良い兵士……いや、いい騎士ね。
「何を当然のことを言っているの?私達は貴方達が来なくても助けに行くつもりよ?」
「……え?」
「僕らは冒険者だからね、困っている人を見捨てるなんて出来ないよ」
冒険者ってそう言うものだっけ?という顔で近衛隊の人達が見てくる。
しょうがないではないか、私達が知っている冒険者はみんなそう言う人なんだから。
「根暗坊主、私は先行するわ。貴方は近衛隊と一緒に敵を殲滅して」
「解った」
そう言って、ディータは空を飛び、空中から村の中へと飛び込んでいった。
「僕らも急ぐよ!」
クオンの掛け声に、近衛隊の人達は声を上げ続く。
アンダールシア軍の思惑通り、クオン達は足止めを喰らうことになるのだった。
「カモメ殿、兵など何処にもいないぞ?一体、どういうことだ?」
「兵士の準備なんて待ってられないよ、それはアンリエッタに任せる」
「ん?ならば我々は何をしに外に来たのだ?我々も手伝って少しでも早く準備を整えるべきではないか?」
「何言ってるの、私達はすぐにでも救援に行くんだよ!」
そう言うと私は、セリシアナの後ろから手をまわして、彼女を抱きかかえると、風の魔法で空へと飛びあがった。
「なっ……えっ!?……ちょっ……!?」
「飛ばすからしっかり捕まっていてね!」
「きゃあああああああああああああああああああああああああ!?」
先ほどまで凛々しかったセリシアナとは思えないような悲鳴を聞きながら、私はクオン達の元へと急ぐのであった。
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時は少しさかのぼり、セリシアナがラリアスへ単独で向かう前、ラリアスからまだ少し離れた街道をクオン達が移動していた。
先頭にはセリシアナとクオンとディータが歩き、後ろにはギリアムが仲間が疲れ脱落していないかを見ていた。時には暗い顔をしている仲間を励ましながら。
「では、ラリアスにはディータ殿たちの仲間がいるのだな?」
「ええ、頼りになる仲間がね……それにしても、歩くと遠いわね……予定では昨日には帰ってるはずだったんだけど……カモメ、心配しているかしら」
「気になるなら先に魔法で飛んで帰るかい?」
「馬鹿ね、敵の追手が来るかもしれないのに、私だけ先に帰れるわけないでしょう」
そう、恐らく敵は追手を出してくるだろう、今のところ、追いつかれたりは不思議なことにしていないのだが……このまま見逃してくれるとは思えない。
……少人数の追撃部隊を出してくると思ったんだけど……敵は何を考えているのかしら?
少人数の精鋭部隊を出してくればこちらも被害なしでは行けないだろうと思うのだが……現在の所、追手に追いつかれると言うことはなかった。
数を多くしすぎて追いつけていないとか?………そこまで馬鹿な相手なら良いんだけど……ね。
「セリシアナ様!あれを!!」
ディータが追手の事を考えていると、後ろにいた兵士が前方を指さす。
その兵士の指す先を見てみると、小さな村があり、その村から黒煙が上がっていた。
火事?……いや、それにしては変だ。黒煙は一つではなく、村のあちこちから上がっている。
………もしかして……。
「根暗坊主、あれって……」
「ああ、恐らく何者かに襲われているんだろう」
「山賊だ……近頃、近辺の山賊が力をつけていると報告があった……」
山賊……か……こんな時に……どうする?見捨てる?
もし追手が来ているのだったらここで時間をとられれば確実に追いつかれるだろう。
………ふふ、あり得ないわね……困っている人を見捨てて帰って、どの面を下げてカモメに会えると言うの?……私は女神……だけどそれ以前に冒険者カモメのパーティメンバーよ……冒険者は困っている人を放ってはおけないってね!
「根暗坊主……解ってるわね」
「ああ……もちろんだ」
「ま、待ってくれ、あなた方の気持ちは分かる……確かに我らは逃げる身だ、ここで足止めを喰らえば敵に追いつかれるかもしれん……だが、我ら近衛隊……騎士として民を護らねばならん!……どうか、頼む……あの村を救うのを手伝っては貰えないか……?」
そう訴えるセリシアナの後ろで、他の近衛隊の兵士達も口々に嘆願してきた。
どうやら、誰一人として、村を見捨てたいと願うものはいないようだ。
……良い兵士……いや、いい騎士ね。
「何を当然のことを言っているの?私達は貴方達が来なくても助けに行くつもりよ?」
「……え?」
「僕らは冒険者だからね、困っている人を見捨てるなんて出来ないよ」
冒険者ってそう言うものだっけ?という顔で近衛隊の人達が見てくる。
しょうがないではないか、私達が知っている冒険者はみんなそう言う人なんだから。
「根暗坊主、私は先行するわ。貴方は近衛隊と一緒に敵を殲滅して」
「解った」
そう言って、ディータは空を飛び、空中から村の中へと飛び込んでいった。
「僕らも急ぐよ!」
クオンの掛け声に、近衛隊の人達は声を上げ続く。
アンダールシア軍の思惑通り、クオン達は足止めを喰らうことになるのだった。
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