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2部 3章

本気

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氷柱弾アイシクルショット!」


 私は氷の氷柱をララ王女に向かって放つ。
 この魔法であれば盾にして防がれてもララ王女の半身事、氷結させられ少しの間は相手の動きを封じることが出来るはずだ。
 そう思って打ったのだが、ララ王女は鉄を盾には変えず、薙刀のような形状の武器に変えると、それを振り、見事、私の魔法を砕いた。


「闇の魔女!」
「ふぇ!?」


 私が失敗失敗と思っていると、ララ王女がこちらを睨みながら声を上げてくる。


「手加減なんかしてんじゃねぇ!アタシは本気のアンタと戦いたいんだよ!」
「ほ、本気と言われても……」


 まさか、大技使ってこの街事吹き飛ばすなんてことは出来ないし……。
 チラリとアンリエッタとフランクさんの方を見ると、全力で首を横に振っていた。
 うーん……街を壊さないように調整できる魔法で行かないと……調整って苦手なんだよね。
 こう、どーんっと壊す方が得意である。

 どうしよう……魔水風圧弾アクアウィレスだと貫通した魔法が訓練場の外まで貫いて行っちゃうし……暴風雷撃エクレテンペストは見てる人全員巻き込むだろうしなぁ……あ、暴風轟炎ヴィンドフラムならうまく調整すれば、周りを巻き込まずに済むかな?……よし。


「なら、大技行くよ!」
「ハハ、そうこなくちゃ!」
暴風轟炎ヴィンドフラム!」


 風と共に炎がララ王女の周りを包む、それが竜巻のようになって上空へと駆け上がりながら、風と炎の刃でララ王女を切り刻む。


「う、おおおおおお!?」


 突然の炎の竜巻の出現に、ララ王女の驚く声が聞こえる。


「あ……やりすぎた?」


 私の後ろで、アンリエッタが泡を吹いて倒れた。
 それはそうだ、下手をすると王女を殺してしまう程の一撃である。
 でも、ララ王女は強い……さすがにこれくらいじゃ死んだりはしないと思うんだけど……。


 ちょっと心配になってきていると、炎の竜巻が突如、弾け飛ぶ。


「わっ!?」


 私の暴風轟炎ヴィンドフラム!にはそんな性質はない……となると。

 弾けた中心を見ると、ララ王女が満面の笑みを浮かべながら悠然と立っていた。
 魔物をまとめて吹き飛ばすほどの威力を持つ、私の魔法を余裕をもって弾け飛ばしたのだ……やっぱり、ララ王女は強い。


「次はアタシの番だ」


 そう言うと、ララ王女はこちらに向かって突っ込んできた。
 手に持つのは大剣……特にフェイントの類も見られず、一直線にこちらに突っ込んでくる。
 力勝負をしようとしているのかな……確かに力勝負ならこちらの分が悪そうに思える……けど。


「こいつを喰らってみな!」
「なっ!?」


 振り上げた大剣が変化を起こす。
 そうだ……私は大変な勘違いをしていた、先ほどから、ララ王女は鉄を様々な武器に変え、攻撃してくる……だから、私はララ王女のスキルはそう言うものなのだろうと思い込んでいた。だけど……彼女は言ったじゃないか、アタシの天啓スキルは『鉄操作』だと……、鉄の形状変化ではなく、鉄を操作できるのだ。

 そして、目の前ではまるで、ドリルのように高速で回転をする大剣が迫ってきていた。
 これでは、仮にバトーネで受け止めようとしても弾かれるだけだ……そして、魔法で撃退するほどの余裕もない……くっ。


「何っ!?」


 ララ王女が驚きの声を上げる。
 完全に捕らえたと思った私が、突如その前から消えたのだ。


「ほう……先ほどお仲間が使っていた『気』というやつか」


 私の身体が光り輝く……ララ王女の言う通り、気を発動させたのだ。
 それにより、私の身体能力は何倍にも跳ね上がる。


「一気に行くよ!」


 私の黒い魔力が変化を起こす。
 黒一色だった私の魔力に輝きが加わる……お祖母ちゃんから受け継いだ、女神の魔力を合成したのだ。
 『魔』との戦いのときには常に合成していた、女神の魔力。
 だが、この魔力を合成すると魔力がすさまじく上がる……その反面、やりすぎてしまうこともあるのだ。
以前、ツァインを助けようとして魔族を倒したのだが、勢い余ってそのままお城の端っこを吹っ飛ばしてしまったこともある。

 なので、必要なとき以外は合成しないようにしていたのだが……私の合成魔法を防ぎ、予想外の攻撃をして驚かせて来てくれるララ王女に、彼女の望み通り、私の本気を見せたくなった。
 だが、さすがにこの街を吹っ飛ばすわけにはいかない……なので。


闇雷纏シュベルクレシェント!」


 闇の雷を纏い、私は自分の身体能力をさらに強化する。
 この状態の私の動きについてこれるのはクオンくらいのものである。


「何っ!?」


 一瞬にして、間合いを詰めた私に、ララ王女は驚く。


「がっ!」


 そして、鳩尾に一撃……これで決まりだと思ったのだが。
 なんと、ララ王女は鉄を操作して、鳩尾の部分に盾を作り防いでいた……この状態の私の動きに反応したのだ。


「やるねっ!」


 自分の予想以上に強いララ王女に、私の口元は緩む……それはララ王女も同じだったようで、彼女の口元も笑っていた。


「闇の魔女!いいや、カモメ!すごい、アンタ凄いよ!だけど、これは防げるか!」


 ララ王女の周りから、無数の武器が出現し襲い掛かってくる。
 そうか、操作できるのなら態々、腕で振らなくてもいいのか……剣、槍、大剣、短剣、薙刀、鉄球…‥様々な武器が私目掛けて襲い掛かってくる……鉄操作って質量も操作できるのかな……確実にあの球だけで賄える量じゃないと思うんだけど……。

 いや、そんなことは無粋か……ララ王女の全力だ打ち破ってやろうじゃないか!


「風よ!」


 私は、私の周りに風の結界を発動させる。
 そして、ララ王女の攻撃を受け止めるのだが……。


「甘い!」


 ララ王女は武器全てを超速で振動させることで、その切れ味を増した。
 このままだと、私の風の魔法は持たないだろう……だが……。


「……変則合成魔法アレンジ


 元々、防ぎきるつもりで風の結界を出したわけではない、一瞬でも受け止めればよかったのだ。


「変則……火風爆烈フレアバースト!!」


 私の風の結界が爆発する。
 そして、その周りにあった、ララ王女の武器達を跡形もなく吹き飛ばした。


「うお!?」


 大きな爆発の後、静寂が訪れる……爆発の中心にいた私は、もちろん、自分の魔法なので私に当たらないように制御している為、無事である。

 爆風で何人かの冒険者たちが地面を転がっているが、周りへの被害もほとんどない。
 さすが、私!

 そして、もちろん、ララ王女もあの爆発で死んでしまうなんてことはなかった。


「くっ……アタシの鉄が……」


 ただ、残っていた鉄、全てを防御に回したようで、私の魔法で持っていた鉄、全てが消滅していたのだ。



「勝負ありだな」


 レオ王子が言う。
 ララ王女の武器で防具でもある鉄が、無くなったのだ。
 もう、戦えないだろう。


「あーあ、負けちまったぜ!」
「怪我はない?」
「はっ、当たり前だよ!しっかし、強いなぁ闇の魔女!」
「あはは、ララ王女もすごかったよー」


 私達はお互いを褒め合い、握手をした。
 なんか、ララ王女を見ているとラガナを思い出すなぁ……ラガナも戦いが終わった後はスッキリしたような顔をしていつも楽しそうにしていた。


「それより、闇の魔女!アタシの事はララでいいぞ……アタシはアンタの事気に入った!」
「いいの?……じゃあ、ララ……私の事もカモメって呼んで」
「ああ、カモメ……アタシはまだまだ強くなるからな、また勝負しようぜ」
「うん、いいよ♪」


 私が快くそれを受け入れると、なぜか周りで見ていた冒険者たちの顔が青ざめていた……フランクも。
 ……なぜだろう?ちょっと、最後に爆風で吹き飛ばしたりしたけど、周りに被害は出してないはずなんだけどなぁ……。

 エリンシアに聞いたら「化け物同士の戦いを見たらそうなりますわ」とか言ってた……誰が化け物か!
 っていうか、エリンシアも同じようなもんでしょ!と文句を言いたかったが……それより前に……。


「ララ」
「ああ、領主さんの館に戻ろうぜ……話の続きだ」
「うん、ありがとう!」


 話の続き……つまり、私たちの事を信じてくれたと言うことだろう……信じていなかったら話をする必要はないのだから。

 私達は、気絶したアンリエッタを引きずりながら領主の館へと戻るのであった。
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