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2部 2章
王女の決意
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「おばちゃ~ん、モーニングセット一つお願~い!」
「あいよ!」
私達が止まっている宿屋では数組の冒険者らしい人達が泊っている。
今朝も起きてすぐに一階にある食堂へ来ると、二組程の冒険者だろう……一組は3人ほど、もう一組は2人程のパーティらしき人達がご飯を食べていた。
私もお腹が減ったぞ!と主張するお腹に従い、朝からそれなりのボリュームがあるモーニングセットを注文する。
10分しないうちに、おばちゃんがモーニングセットを持って来てくれた。
「わぁお、おいしそう!」
出てきた料理は、おいしそうに湯気を立てていた。
利用客のほとんどが冒険者だからなのか、普通の食堂の五割増し位の量がある。
私は、ホクホクのポテトサラダをスプーンで掬い、口に放り込んだ。
「おいし~い♪」
「あら、おいしそうですわね」
「おはようございます、魔女様!」
私がポテトサラダに魅了されていると、エリンシアとメリッサも食堂へ入ってくる。
「ふぁ、おふぁほ~♪」
「ちゃんと、口の中の物を飲み込んでからしゃべりなさいまし……」
食べながらしゃべる私に、エリンシアはあきれたように言った。
だって、おいしんだもん。
「あ、ワタクシにもモーニングセットを……メリッサさんはどうされます?」
「私も同じで大丈夫です」
二人もモーニングセットを注文すると、私のいるテーブルに座る。
「それで、カモメさん……今日はどうされますの?」
「……ごくん、うーん、そうだなぁ」
私は口の中に入っているポテトサラダを飲み込むと、頭を捻る。
もしヴァルガンやローランシアから使者が来れば、私達にも知らせてもらえるようになっている。
でも、もし私達がこの街を離れてしまうと、使者が来ても待たせることになってしまうので街を離れることは出来ない。
………と、なると。
「街を離れられないし、ここかギルドで待機かなぁ」
「あら残念、この街を観光したかったのに」
「好きにすればいい、それでのたれ死んだところで、俺達には影響がない」
「あら、ひどいわね」
私達が話し合っていると、今度はローラとレンが食堂に入ってきた。
ローラがメリッサの横に座ると、レンが椅子ごとローラを移動させ、自分が間に入る。
「ああん、もう。襲ったりしないわよ」
「どうだかな」
レンはまだ、完全にはローラを信用していないようだ。
「メリッサ、どう?」
「嘘はついていないと思います」
メリッサが自分のスキルに反応がないことを確認すると、頷きながら返してきた。
襲ったりしないというのは本当らしい。
「ローラ、確認しておきたいんだけど。昨日の話は全部本当の事……なんだよね?」
「私の言った情報の事?」
「そう、傭兵団や王様の事」
「ええ、嘘は一つもないわ」
そのローラの言葉に、私がメリッサを見ると、メリッサは頷いていた。
「他に隠していることもない?」
「言い損ねていることとかはあるかも……でも、故意に隠したりはしてないわよ。言い損ねていることがあっても、気づいたらすぐ言うようにするわ」
「嘘は言ってません」
「あら、どういうこと?っていうより、王様の事、王女ちゃんに言っちゃってよかったの?」
メリッサがはっきりと言うと、ローラは疑問に思ったらしい。
「ごめんね、ローラを信用していいかどうか試したんだ」
「それは構わないけど………王女ちゃんにそれがわかるってこと?」
「はい、私の天啓スキルは『看破』です。嘘や隠し事は私には出来ません」
「へぇ~、すごいスキルを持っているのね。でも助かるわ、これで少しは信用してもらえるってことでしょう?」
「まぁね」
確かにこれで自分が死にたくないから情報を全部喋っているということは間違いなさそうである。
少しは安心できるかな。
「それで、カモメ達は今日はどうするんだ?」
レンが話を戻してきた。
「居られる場所がこの宿かギルドになっちゃうから、基本的にはギルドにいるかな。メリッサも窮屈かもしれないけど私の傍にいてね」
「窮屈なんてことありませんよ……私こそ、私のせいでごめんなさい」
「あはは、メリッサのせいじゃないでしょ」
「……はい」
「皆はどうするの?」
私が聞くと、皆も答えてくれた。
「ワタクシもカモメさんと一緒にいますわよ。特にやりたいこともありませんし」
「私も当然、魔女ちゃんから離れないわよ♪一番安全そうですもの」
エリンシアとローラも行動を共にするようだ。
ローラはともかく、エリンシアが傍にいてくれるのは助かるね。
「レンは?」
「俺も基本的には行動を共にするつもりだ。だが、ギルドにいるときは訓練場で武器の練習をしようと思う」
「了解♪」
レンも一緒にいてくれるらしい。
武器の練習か……私も新しいバトーネの練習をしようかな……と、考えているとメリッサが話しかけてきた。
「あ、あの!」
「ほえ?どしたの、メリッサ?」
「えっと……ま、魔女様にお願いがあるんです」
「何?」
メリッサが意を決したように言ってくる。
どうしたんだろ?
「私に、戦い方を教えてください!」
「え?」
メリッサの口から出た言葉は意外なものであった。
「え、どうしたの?いきなり」
「私、強くなりたいんです……私が魔女様くらい強ければ……お母様を護れたかもしれないジュダやアンバーを助けられたかもしれない……もう、嫌なんです、何もできずに失うのは!……だから……」
「メリッサ……」
メリッサの手は震えていた。
私に断られることを怖がっていたのか……ううん、違うよね……自分の弱さに怒っていたんだろう……その気持ちはなんとなくわかる……私ももっと強かったら、お母さんとお父さんを守れたのにと泣いたことは何度もあるもん……。
「お願いします、魔女様」
「解った。じゃあ、ギルドの訓練場で教えてあげるよ♪」
「……ありがとうございます!!!」
私がそう言うと、メリッサは満面の笑みで返してくれた。
私達はモーニングセットを平らげると、ギルドへと向かったのだった。
「あいよ!」
私達が止まっている宿屋では数組の冒険者らしい人達が泊っている。
今朝も起きてすぐに一階にある食堂へ来ると、二組程の冒険者だろう……一組は3人ほど、もう一組は2人程のパーティらしき人達がご飯を食べていた。
私もお腹が減ったぞ!と主張するお腹に従い、朝からそれなりのボリュームがあるモーニングセットを注文する。
10分しないうちに、おばちゃんがモーニングセットを持って来てくれた。
「わぁお、おいしそう!」
出てきた料理は、おいしそうに湯気を立てていた。
利用客のほとんどが冒険者だからなのか、普通の食堂の五割増し位の量がある。
私は、ホクホクのポテトサラダをスプーンで掬い、口に放り込んだ。
「おいし~い♪」
「あら、おいしそうですわね」
「おはようございます、魔女様!」
私がポテトサラダに魅了されていると、エリンシアとメリッサも食堂へ入ってくる。
「ふぁ、おふぁほ~♪」
「ちゃんと、口の中の物を飲み込んでからしゃべりなさいまし……」
食べながらしゃべる私に、エリンシアはあきれたように言った。
だって、おいしんだもん。
「あ、ワタクシにもモーニングセットを……メリッサさんはどうされます?」
「私も同じで大丈夫です」
二人もモーニングセットを注文すると、私のいるテーブルに座る。
「それで、カモメさん……今日はどうされますの?」
「……ごくん、うーん、そうだなぁ」
私は口の中に入っているポテトサラダを飲み込むと、頭を捻る。
もしヴァルガンやローランシアから使者が来れば、私達にも知らせてもらえるようになっている。
でも、もし私達がこの街を離れてしまうと、使者が来ても待たせることになってしまうので街を離れることは出来ない。
………と、なると。
「街を離れられないし、ここかギルドで待機かなぁ」
「あら残念、この街を観光したかったのに」
「好きにすればいい、それでのたれ死んだところで、俺達には影響がない」
「あら、ひどいわね」
私達が話し合っていると、今度はローラとレンが食堂に入ってきた。
ローラがメリッサの横に座ると、レンが椅子ごとローラを移動させ、自分が間に入る。
「ああん、もう。襲ったりしないわよ」
「どうだかな」
レンはまだ、完全にはローラを信用していないようだ。
「メリッサ、どう?」
「嘘はついていないと思います」
メリッサが自分のスキルに反応がないことを確認すると、頷きながら返してきた。
襲ったりしないというのは本当らしい。
「ローラ、確認しておきたいんだけど。昨日の話は全部本当の事……なんだよね?」
「私の言った情報の事?」
「そう、傭兵団や王様の事」
「ええ、嘘は一つもないわ」
そのローラの言葉に、私がメリッサを見ると、メリッサは頷いていた。
「他に隠していることもない?」
「言い損ねていることとかはあるかも……でも、故意に隠したりはしてないわよ。言い損ねていることがあっても、気づいたらすぐ言うようにするわ」
「嘘は言ってません」
「あら、どういうこと?っていうより、王様の事、王女ちゃんに言っちゃってよかったの?」
メリッサがはっきりと言うと、ローラは疑問に思ったらしい。
「ごめんね、ローラを信用していいかどうか試したんだ」
「それは構わないけど………王女ちゃんにそれがわかるってこと?」
「はい、私の天啓スキルは『看破』です。嘘や隠し事は私には出来ません」
「へぇ~、すごいスキルを持っているのね。でも助かるわ、これで少しは信用してもらえるってことでしょう?」
「まぁね」
確かにこれで自分が死にたくないから情報を全部喋っているということは間違いなさそうである。
少しは安心できるかな。
「それで、カモメ達は今日はどうするんだ?」
レンが話を戻してきた。
「居られる場所がこの宿かギルドになっちゃうから、基本的にはギルドにいるかな。メリッサも窮屈かもしれないけど私の傍にいてね」
「窮屈なんてことありませんよ……私こそ、私のせいでごめんなさい」
「あはは、メリッサのせいじゃないでしょ」
「……はい」
「皆はどうするの?」
私が聞くと、皆も答えてくれた。
「ワタクシもカモメさんと一緒にいますわよ。特にやりたいこともありませんし」
「私も当然、魔女ちゃんから離れないわよ♪一番安全そうですもの」
エリンシアとローラも行動を共にするようだ。
ローラはともかく、エリンシアが傍にいてくれるのは助かるね。
「レンは?」
「俺も基本的には行動を共にするつもりだ。だが、ギルドにいるときは訓練場で武器の練習をしようと思う」
「了解♪」
レンも一緒にいてくれるらしい。
武器の練習か……私も新しいバトーネの練習をしようかな……と、考えているとメリッサが話しかけてきた。
「あ、あの!」
「ほえ?どしたの、メリッサ?」
「えっと……ま、魔女様にお願いがあるんです」
「何?」
メリッサが意を決したように言ってくる。
どうしたんだろ?
「私に、戦い方を教えてください!」
「え?」
メリッサの口から出た言葉は意外なものであった。
「え、どうしたの?いきなり」
「私、強くなりたいんです……私が魔女様くらい強ければ……お母様を護れたかもしれないジュダやアンバーを助けられたかもしれない……もう、嫌なんです、何もできずに失うのは!……だから……」
「メリッサ……」
メリッサの手は震えていた。
私に断られることを怖がっていたのか……ううん、違うよね……自分の弱さに怒っていたんだろう……その気持ちはなんとなくわかる……私ももっと強かったら、お母さんとお父さんを守れたのにと泣いたことは何度もあるもん……。
「お願いします、魔女様」
「解った。じゃあ、ギルドの訓練場で教えてあげるよ♪」
「……ありがとうございます!!!」
私がそう言うと、メリッサは満面の笑みで返してくれた。
私達はモーニングセットを平らげると、ギルドへと向かったのだった。
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