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2部 1章

新メンバー

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 謎の男の助け(?)もあり、なんとか残りの魔物を街に入れることなく撃退できた。
 冒険者の人や兵士たちは自分たちが生きていることに大いに喜んだ。
 そして、魔石の回収などを終えると、私達はギルドへと戻る。

 戻る途中、街の人達から感謝の声が私達に投げかけられる。


「魔女様!俺たちの街を守ってくれてありがとう!」
「アンタたちはラリアスの英雄だよ!」
「他の冒険者や兵士さんたちもありがとうねぇ!」
「アンタらは俺たちの街の誇りだぜ!」
「キャー、クオンさんかっこいいー!」


 と、口々に、私達にお礼を言っていた。
 ………最後がちょっと不安である。

 喜ぶ街の人達の間を抜けて、ようやくギルドに到着すると、ギルドの中でも感謝の声が飛び交った。


「カモメさん、ありがとうございます!」
「ミオン、あはは、なんとか勝てたよ」


 ギルドの受付嬢たちが湧き上がる中、ミオンが私に近づいてきてお礼を言ってくれた。


「それに、街に被害を出さないで済んだのは他の冒険者や兵士の人のおかげだしね」
「何言ってんだ、アンタらがいなかったら、俺たちだけじゃどうにもならなかったんだ、アンタらのおかげだよ、なあ、ギルドマスター?」
「ああ、間違いなく、この街を守ったのは魔女殿達だ」


 面と向かってそう言われると、ちょっと恥ずかしいね。
 でも、皆の笑顔が護れてよかったよ………私はギルドに帰るまでに見た、街の人達の笑顔を思い出す。

 っと、そう言えば、最後にキングを自爆しながら倒した、あの生首の男はどこいったんだろう?
 そう思って、きょろきょろと周りを探してみる………あ、いた。


「ギルドマスター」
「ん、どうした、魔女殿」
「さっきの戦いでキングを倒してくれたあの人だけど、冒険者になりたいみたいだよ?」
「おお、そうなのか?……キングを倒すほどの実力であるのならこっちは大歓迎だ」


 そう言うと、ギルドマスターは生首の男の元へと歩いていった。


「おう、俺はここのギルドマスターをやってるんだが、魔女殿から聞いた、冒険者ギルドに入りたいんだって?」
「肯定だ」
「キングを倒したと聞いたが、本当か?」
「肯定だ、先ほどの戦いでキングとその取り巻きを倒している」
「そうか、じゃあ、登録をするからこっちに来てくれるか?」
「了解した」


 マスターに連れられて、生首の男はカウンターまで移動していた。


「あら、マスター、どうしたんです?」
「この男がギルドに登録したいらしくてな、手続きをしにきた」
「そうなのですか、では私が……」
「いや、たまには俺がやろう」


 ギルドマスターがカウンターの椅子に座った。


「名前は?」
「レン=リョウギだ」


 どうやら、生首の男はレンという名前らしい。


「天啓スキルは?」
「超再生だ」
「ん?初めて聞くな?一体どんなスキルなんだ?」


 どうやら、レンの天啓スキルは超再生というらしい、それが体がバラバラになっても生首状態でいきていられ、数分もすれば元に戻ることができるスキルの様だ。


「体が完全に消滅をしない限り、どんな状態からも元に戻ることのできるスキルだ」
「それが、本当ならすごいが……確認のために見せてもらうことはできるか?」
「問題ない、実演してみよう」


 そう言うと、男は懐から爆弾を取り出す……え?ちょっと?
 そして、火をつけると人のいないところまで移動し、自分の懐に爆弾を戻した。
 ―――――――――爆発。

 キングの時と同じように男の体はバラバラに吹き飛んだのだ。

 ――――――――そ、そこまでする必要はないでしょうが!!!

 再生できることを見せればいいんだからちょっと手を傷つけるとかそれくらいでいいのに、なんでまた、生首状態になるの!?


「このように、バラバラになろうとも、俺は死なん」
「…………」


 ちょうどギルドマスターの座っているカウンターの机に飛んできた、レンの首が、まるで何事もないかのように話始めた。
 さすがのギルドマスターも驚きのあまり、眼を見開き言葉が出てこない。


「な、なんだ今の爆発は!?」
「ひ、人がバラバラに!?」

 
 勝利の喜びに酔いしれていた、他の冒険者たちが一気に現実へと引き戻される。
 仕方ないよね……。


「ん、ギルドマスター殿、スキルの確認にはこれくらいでは不十分だろうか?何ならもう少しバラバラに……」
「い、いや、十分だ、それ以上やるな!」
「そうか、だが、必要ならば俺の体に残っている爆弾でさらに粉々に……」
「するなっ、ですわ!」


 エリンシアが見かねて、男をハリセンで叩く。
 あのハリセンどっから出てきたの?


「痛いじゃないか?」
「あら、痛覚はありますのね?」
「肯定だ、痛いものは痛い」


 ってことは、バラバラになる痛みもあるってことだよね……なんでやったの!?


「だが、俺のスキルを信じてもらうにはこれくらいやらないとなるまい」
「や・り・す・ぎ・ですわよ!普通にもっと小さな傷でも十分ですわ!」


 エリンシアの言葉にギルドマスターが無言で頷いている。
 やっぱりそうだよね、傷が治るところを見せるくらいで十分なはずだ。
 キングを倒したってことで、ギルドに入るには十分な力を見せているのだから、天啓スキルは確認程度で十分だろう。


「そうなのか?」
「そうですわ、貴方、限度というものを知りませんの?」
「むぅ」
「むぅ、じゃありませんわよ……見なさい、勝利の喜びが一気に覚めてしまっているじゃありませんの!」
「すまない」


 エリンシアは生首の男の頭を鷲掴みにすると、周りの様子を見せてやった。
 よく鷲掴みにできるね……。
 まるで敵の首を取った武将みたいな光景になっているよ……。


「皆、すまない……せっかくのムードを壊してしまったようだ……責任を取って俺は腹を切ろう……」
「やめんかあああああああああああ!ですわ!」


 体が超再生の能力で戻り始めており、すでに体に四肢がくっついた状態になっていたレンの体は、これまた懐からナイフのようなものを取り出すと、自分の腹に刺そうとしていた。
 だが、そこに、頭を鷲掴んでいたエリンシアがその頭を体に向かって投げ飛ばす。
 見事命中した体は、その衝撃でナイフを落としていた。


「何をする、痛いじゃないか!」
「何をするはこっちのセリフですわ!」
「だから、責任を取ろうと……」
「余計悪くしてますわよ!そもそも、貴方の天啓スキルじゃ腹を切ってもすぐ戻りますでしょう!」
「む……確かにその通りだ……すまない……しかし、ならば俺はどうすれば……」
「どうもしなくていいんですわよ、普通にしてなさい!」
「俺はいたって普通だ」
「微塵も普通じゃありませんわよ!!」


 再び、エリンシアのハリセンが炸裂した。
 私は見た、エリンシアのスカートの中からハリセンが飛び出してきた、どうやら、足にベルトのようなものを巻いて、そこに収められるようにしているらしい。


「まったく、おバカなカモメさんように用意したハリセンをこんなところで使うとは思いませんでしたわ」


 …………まさかの私用だった。


「ま、まあ、とりあえず、天啓スキルの確認はした。レン、お前のギルド加入を認める、今日からお前は冒険者だ」
「感謝する」
「………で、だ………見たところ、お前は一人だな?」
「ああ、俺は一人だ、仲間と呼べるものはいない」
「うむ、だが、ランクの低いうちは一人では何かと不便だろう……そこでちょうど良いことに別の場所で冒険者としての知識を持っているが、ここにきて冒険者として改めて登録したばかりの者たちがいる、その者たちはお前と同じFランク冒険者だ」
「ほう、そんな者たちがいるのか?」
「ああ、どうだ?その者たちのパーティに入ってまずは冒険者としての常識を学ぶのがいいのではないか?」
「肯定だ、冒険者のノウハウを俺はまだ知らん……教えてもらえるならそれに越したことはない」
「うむ、では、レンを頼むぞ魔女殿」
「はい!?」


 他の場所で知識を持っているFランク冒険者って私たちの事!?
 っていうか、よく考えたら私達しかいないよね!?
 なんでそうなるの!?……正直この人怖いんだけど!?


「ま、魔女殿……頼む、あいつの面倒を見てくれ、何をしでかすかわからんのだ」
「だったら、ギルドに入れなければいーじゃない!」
「うちのギルドは人手不足なのだ、キングを倒せるほどのものを手放したくはない」
「だからって私達に丸投げするなぁああ!」
「無論、ただとは言わん!魔女殿達はダンジョンに入りたがっていると、クルードから聞いた。そこでだ、ランクをCまで上げることは出来んが、ギルドマスターの権限で、魔女殿達に特別ダンジョンに入る許可を出そうじゃないか……あくまでこのラリアスの管理下にあるダンジョンだけだが」
「!!っ……わかった、レンの事は任せて!」
「ちょ、カモメさん!?」


 だって、ダンジョンに潜れるんだよ!Cランク以上じゃないと潜れないダンジョンに!
 ランクがC以上になるのを待っていたら何年かかるか分からないんだもん……それを潜れるようになるんなら……ちょっと……いや、かなり怖いけど、レンをパーティに入れたっていいじゃない!



「まあ、ダンジョンにはいれるようになるのならいいんじゃないかしら?少し変わってはいるけど悪い人間ではなさそうよ?」
「それはそうですけれども……クオンさんはいいんですの?」
「うん?まあ、僕は歓迎だよ……パーティに男は僕しかいなかったし、彼のスキルが超再生なら少なかった前衛を任せることもできるだろうしね」


 クオンの言う通り、私たちのパーティは今前衛が少ない。
 というのも私がバトーネを折ってしまったせいなのだけれど……。


「クオンさんまで……はあ、先が思いやられますわ……」
「大丈夫か、頭痛か?」
「貴方のせいですわよ!」


 エリンシアを心配するレンの頭を再びハリセンで叩くエリンシアであった。


「では、レンの所属パーティは星空の太陽にしておこう……ようこそ、冒険者ギルドへ」
「感謝する、そしてよろしく頼む」
「はいはい、よろしくですわ」

 
 こうして、私たちのパーティに新しいメンバーが加入した。
 さてさて、謎の大陸の冒険も、波乱万丈になりそうだ。
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