上 下
279 / 361
2部 1章

今後の方針

しおりを挟む
 シルネア達と別れて、私達はラリアスの街にある、武器屋に来ていた。


「どう?いい感じのあった?」


 ディータが私に尋ねてくる。
 というのも、武器屋に足を運んだのは私の武器である棒術用の棒を探す為である、以前使っていた、お母さんの形見でもある魔法棒マジックバトーネは『魔』との戦いで折れてしまった。
 その為、新しい棒を探しているのだが……。


「うーん、どれもいまいちかなぁ」


 棒術用の棒自体は、数は少ないがいくつか置いてあったのだが、どれも余りいいものではない。
 以前使っていたバトーネがとてもいいものだっただけに、これらのものを使っても使いにくさが目立ってしまうかもしれないのだ。

 まあ、以前のバトーネは戦闘時以外は、小さな筒になっていて、魔力を流すと普通の人の身長くらいに伸びたり、魔力を込めると威力が上がったりと、とても使いやすい武器だった。

 だが、お店に置いてあるのはそのまま棒を加工しただけの、ちょっと強度の高い棒という感じなのである。

 持って歩くにも邪魔になるし、威力もたいして無さそうな感じであった。


「まあ、そうよね……」
「どうします?別のお店にもいきますかですわ?」
「もしくは魔導具を売っているお店に行ってみるのもいいかもね」
「……うん」


 それから、いくつかのお店を回ってみたのだが、武器屋にも魔導具屋にもいい感じの物は無かった。
 やっぱり普通の棒で妥協するしかないのだろうか……でも、あれを装備していてもあまり役に立てるとは思えないんだよね……それなら後ろからクオン達の援護をした方が良いような気がする。


「これは本格的にダンジョンらへんを攻略するしかないかもしれないわね」
「もしくは、特注で腕のいい職人に作ってもらうかだね」


 ディータとエリンシアの言う通りかもしれないね、でも、どちらにしてもすぐにとは行かないだろう。
 ダンジョンに潜るにはランクCまで冒険者ランクを上げないといけない、クルードに頼めば一緒に連れて行ってもらえるかもしれないけど、宝箱から出た武器を頂戴なんて言えないしね。
 もしくは、クオンの言う通り、特注で作ってもらうかだ……その場合、魔導具職人の方がいいのだろう……でも、作れる人を探すのも大変なうえに、今の私達にはそこまでお金がない。
 こちらもやはり、時間が掛かってしまうだろう。


「はううう」


 すぐにでも武器を手に入れられなかったことに、私は落ち込む。
 私たちのパーティは前衛と言えるのはクオンだけで、後の三人は基本後衛なのである。
 私とディータは魔法が得意だし、エリンシアも魔導銃が得意分野だ。
 その為、クオン一人で抑えきれない場合は私とエリンシアが前に出るという形になるのだが、武器が無い以上、私は出ることが出来ない。
 そうなると、エリンシアの負担が大きくなっちゃうんだよね……とほほ。

 まあ、出来ないものは仕方がないので、前衛は二人に任せるしかないのだけど……出来るだけ早く武器を手に入れたいね。


「まあ、ダンジョンに入れるようになるには大分掛かりそうですから、先ずはお金集めを優先致しましょうですわ」
「そうだね、それが一番かもしれないね」
「ごめんね、結界の中で手に入れておけばよかったよ……」
「あの状況じゃ、悠長に買い物なんて出来なかったわよ、仕方ないわ」


 確かに、各国のお偉いさんに追いかけられながら、ショッピングなんて出来ないかも……うう。


「まあ、今日の所は宿屋を探して、ご飯でも食べよう」
「そうですわね、さすがにお腹がペコペコですわ」
「えへへ、私も……」
「そうと決まれば、宿屋を探すわよ!」
「「「おー!」」」


 結局、武器は手に入らなかったため、無駄足になってしまったが、私達は、ラリアスの街のメイン通りから少し外れた場所にある宿屋を見つけ、そこに泊まることにした。

 宿屋のご飯は美味しく、お替りを三回もしてしまった。
 宿屋の女主人である、おばちゃんが、私たちの食べっぷりを気に入ったらしく、気さくに話しかけてくれる。


「へー、アンタらこの街に来たばかりなのかい、何もないところだけど、領主さまはいい人だから、ここは住みやすいよ……いつまでいたっていいんだからね」
「あはは、ありがとう、うん、とりあえずはこの街を拠点にしようと思ってるからしばらくお世話になるよ」
「ああ、いつまでもいておくれ……ああ、お金はちゃんともらうけどね」
「あはは、ちゃんと払うよー」


 なんとも気の良いおばちゃんである、でもしっかりもしていそうだ。

 そして、私達は少し話し合ったりもしたけど、しばらくはこのラリアスの街で冒険者をすることにした。
 謎の大陸であるこの大陸がどういう場所なのか、色々なところ見て回りたいけど、それをするにもやっぱり情報と言うのは大事である。

 何も考えずに旅をして、入った瞬間、その国に怪しいものとして捕まったりしたら目も当てられない、それならこの街でここ以外の場所の情報を集めながら冒険者として名を上げていく方がいいだろうと思ったのだ。

 SランクやSSランクになれば嫌でも名前が広がるらしいし、そこまでなれなくても、ランクの高い冒険者というだけで身分を証明してくれる。
 なので、焦らずじっくりと、情報を集めて行こうということになった。

 
 私達は美味しいご飯を食べ、ふかふかのベッドに入ると、そのまま、眠りにつく。
 それにしても、今日一日で色々あったなぁ……オーク討伐に行ったらオークの村があって、シルネア達と出会って、変なゴリラ冒険者に絡まれて……そして、一つ気になることがある。

 ミオンが言っていた『邪鬼』と呼ばれる存在だ……一体どんな存在なのだろう……私達は以前『魔鬼』と呼ばれる魔族の操り人形となった人間の成れの果てを知っている……あの『魔鬼』みたいな存在なのだろうか……語感は似ているよね……もしくはもっと別の存在……私たちの……結界の中にはいなかった存在なのだろうか……私はそんなことをベッドの中で考えながら、徐々に意識を眠りへと落としていった……ぐう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

【完結】陛下、花園のために私と離縁なさるのですね?

ファンタジー
ルスダン王国の王、ギルバートは今日も執務を妻である王妃に押し付け後宮へと足繁く通う。ご自慢の後宮には3人の側室がいてギルバートは美しくて愛らしい彼女たちにのめり込んでいった。 世継ぎとなる子供たちも生まれ、あとは彼女たちと後宮でのんびり過ごそう。だがある日うるさい妻は後宮を取り壊すと言い出した。ならばいっそ、お前がいなくなれば……。 ざまぁ必須、微ファンタジーです。

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。 しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。 相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。 そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。 無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

処理中です...