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2部 1章

天啓スキル

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「それでは皆様の『天啓スキル』をお教えください」
「うん?……天啓スキル?」


 ミオンさんの言葉に私は頭の中にハテナを浮かべる。
 天啓スキルってなんだろう?
 

「………はい?天啓スキル……ですが、どうされました?」


 天啓スキルっていうのを知らないのはおかしいことなのか、ミオンさんが不思議な顔をしている。


「おいおい、まさか天啓スキルを知らないなんて言うんじゃないだろうな?誰もが3歳の頃に、女神様からもらうスキルだぞ?ない奴なんてこの世にいねぇだろう?」


 モルバが困っている私達に説明をしてくれる……くれるが……そんなスキルを貰った覚えはない。
 いや、結界の外ではそれが常識なのだろう……だけど、私達結界の中の人間にそんなものは女神は配っていない……だって、その女神が私たちの横でナニソレ?って顔をしているのだから……。


「ディ、ディータ……」
「いや、私もレナもそんなもの配ってないわよ……結界の外にいる女神がそういうやつなんでしょ……」
「どうしよう……クオン」
「うーん……その天啓スキルというのはどんなものがあるんですか?例えば『剣術』とかがそれに入りますか?」


 考えていても結果は出ないのでクオンは素直に聞くことにした、スキルを持っていないと思われると疑われる可能性もあるので、あたかも天啓スキルと言う言葉だけが分からないふりをして……ただ、剣術というスキルがなかったら怪しまれてしまうかもしれないが……。


「おいおい、本当に知らねぇのか……かぁっ~、一体どんな田舎から来たんだよ……啓示を伝える教会もないのか?」
「まあまあ、そんなこともありますよ、モルバさん……先ほどクオンさんがいった剣術というのは天啓スキルで間違いありません」
「ああ、俺の天啓スキルも剣術だしな」


 どうやら、天啓スキルに剣術と言うのはあるらしい……しかし困った、クオンは無難に剣術と言えるが、私達はどうしよう………下手にないものを言ってしまっても怪しまれるし、かと言って適当に言ったら見せてみろと言われたときに困ってしまう……『魔法』とかってスキルになるのだろうか?



「ちなみに他にはどんなものがあるのでしょうか?」
「はは、本当に知らねぇんだな……驚いた」
「世界は広いですから……小さな村などでは教会がないなんてこともあると聞いたこともあります……恐らくカモメさん達はそう言う場所から来たのでしょう……あまり詮索はしないものですよモルバさん」
「ああ、確かにな、すまん」
「いえ」


 どうやら、この大陸の住人が絶対に知らないといけないというわけではないらしい……よかった。
 これでまた、この大陸の人達に追われるようなことになったら私泣いちゃうよ?


「他の天啓スキルでしたね……ありふれたものですと、火の魔法や水の魔法、後は剣術の他に格闘や槍術などでしょうか」
「とはいえ、たまーに聞いたことも無いような天啓スキルもあるからな、お前さん達の天啓スキルが変わっていても気にしなくていいんだぜ?……普通の坊主が聞いてきたってことはそういうことなんだろう?」


 どうやら、モルバさんはクオン以外の私たちの天啓スキルが変わっているもので教えるのを躊躇っていると思ってくれたらしい……。
 ………さて、なんと言ったものか。


「そう、なら言わせてもらうわ私は『闇の魔法』、エリンシアは『魔導銃』、カモメは『合成魔法』よ」
「…………」


 ディータが私たちの天啓スキル(嘘)を言ってくれる……聞いた感じはありそうな感じにものに聞こえるけど……大丈夫かな?


「確かに変わってるな……どいつも聞いたことがねぇ」
「ですね……では確認のためにそちらのスキルを見せてもらうことになりますが構いませんか?」
「ええ、問題ないわ」


 あ、やっぱり確認されるんだ……よかった、適当に言わないで……。
 ディータが言ってくれたのならあたかもそれがスキルのように見せられるしね……それにしても……やっぱり、結界の外の世界は私達結界の中の世界と、違うところがあるんだね……気を付けないと……ただでさえ、私達は魔海なんて呼ばれている場所から来ているのだ……それがバレたらここでも追われる身になりそうだよ……。


 ミオンさんに促されて、私達はギルドの裏手にある訓練用の広場まで歩いてきた。
 広さはかなりあり、広場には何人かの冒険者が己の技を磨いている。槍を振っているもの、風の魔法を放っているもの……中にはロープみたいなものをクルクルと回している者もいる……変わったスキルを持っている人ってのも確かにいるみたいだね……。


「それでは、皆様のスキルを順番に見せて頂いてもよろしいですか?」
「すまんな、たまに自分たちをでかく見せようと、嘘のスキルを報告する奴らがいるんだ」


 なるほど、結局使ってみないと、本当にそいう言うスキルを持っているかは他人には解らないのだろう……だとすれば問題ない……あたかもそう言う天啓スキルをもっていると思わせればいいのだ。


「じゃあ、僕から行きます」
「おお、なら、俺が相手をするぜ」


 剣術のスキルは相手がいないと分からないだろう?とモルバさんが相手を名乗り出る。
 確かに相手がいたほうが解りやすいかもしれないが……モルバさん、ただ単に戦ってみたいだけじゃないのかな?すごい楽しそうな顔をしているよ。

 でも、それなら、ここの世界の人の強さもわかるだろう……門番をやっているのだ、この世界の兵士の腕がどれくらいか分かるというものだ。


 クオンは「お願いします」と言い、クレイジュを抜きモルバさんと対峙するのであった。
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