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2部 1章

新たな旅立ち

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 青い空……青い海……そして……軽快に鳴り響く4つの音……。

 私達は今、大きな海の上にいる。
 なぜ、そんな場所にいるかと言うと、もちろん冒険の為である。
 この海を越えた先には私たちの大地が封印されていた結界の外……謎の大陸と呼ばれていた大地がある。
 その大地がどれくらいの大きさか分からないけど、私たちの大地が封印された場所ということならば、それより大きいのではないのだろうか。自分たちが住む場所より大きいところを封印したりなんてしないだろうし。

 私は期待に胸を膨らませながら、そこがどんな場所か想像し、夢を膨らませていた。
 だが…………その冒険は、謎の大地に着く前に終幕を迎えるかもしれない。


 私はカモメ……カモメ=トゥエリア……夢見る冒険者である。


 ぐううううう~~~。


 私が詩人のようなことを思っていると、またも警戒のな音が私のお腹から聞こえてきた。
 そう、私達4人は今、船の上で空腹に倒れているのだ。
 なぜ、こんなことになっているのかというと……事は二日前に遡る。





 
 私達は追われている……全力でなりふり構わず走っている私たちの後ろには気配が……1、2、3、4、5、6、7……ううん、数えるのが面倒なくらいいっぱいである。


「ちょっと、ディータ!私たちが先遣隊として謎の大陸に行くって情報、まだ知られてないんじゃなかった!?」


 そう、私達は他国の人から自分たちの国に来て欲しいという願いを躱す為、ツァインの王様フィルディナンドの協力もあり、結界の外……謎の大陸と呼ばれた場所の調査という名目で逃げ出すところだったのだ。
 謎の大陸まで行ってしまえば、そこは未知の場所である、他の国の人達もそうそう追っては来れないだろう。

 その為、善は急げと、その話を聞いてすぐにツァインを出立、そして、王様が用意してくれた船のある港まで来ていたのだが………。


「どっかから漏れてたんじゃない!?完全に待ち伏せされてたわよ!」
「それにしても人数ってものを考えられませんの!?一体何人いますのよ!?」
「絶対逃がさないって気迫が伝わってくるね!」


 全力で走りながら、私の仲間、ディータ、クオン、エリンシアの三人は推察しあう。


「だぁああ、もう!こうなったら!」
「ちょっ、カモメ、まさか吹き飛ばそうなんて考えてないよね?!」
「するかぁっ!」


 クオンは私を何だと思ってるのかな!?
 いくら私でもそんなことしないよ!?…………ごめんなさい、ちょっと頭の隅をよぎりました。


「じゃなくてっ、ディータ、空を飛んでそのまま船に乗り込むよ!」
「了解!」


 私とディータが風の魔法で空を飛び、クオンとエリンシアを抱えて猛スピードで船へと向かう。
 さすがの各国のスカウトたちもそのスピードにはついてこれないようで地上から必死に追いかけながら叫んでいた。


「新たなる聖女様ー!是非、是非、我が国に!!」


 あれはベラリッサの人か……いやだよ、聖女なんて……それに私は光の魔法そんなに得意じゃないからねっ!?………どちらかと言えば私は治す魔法より、壊す魔法の方が得意である。


「女王様!あなたは我が国の女王様なのですよ!お願いします!帰ってきてくださーい!」


 あの人はグランルーンの人かな……いやいや、ちゃんと王子がいるでしょ、私は確かに血を引いてるらしいけど、悪いけど女王なんてやる気ないよ………面倒そうだもん。
 ツァインのフィルディナンド王を見ていればわかる……王様って大変そう……気苦労も多そうだし。


「お姉さま!我らがお姉さま!シェリー様がお姉さまとのお茶会を所望してます!どうぞお越しくださいませ!」


 うん……クーネル国……なんか私はあそこが一番怖いよ……私はあなた達のお姉さまじゃないからね!?
 なんであなた達までお姉さまって呼んでるの!?

 大の男……それも身体のごつい如何にも兵士といえる人たちが私の事をそろいもそろってお姉さまと呼ぶ……どうしてそうなったクーネル国……。

 私は背筋に冷たいものを感じながら、全速力で船へと逃げた。
 後はそのまま、船に乗り込み、用意してくれていた人たちには悪いと思ったが、挨拶もせず、そのまま帆を降ろし出発したのだ。


 ………うん、それが失敗だった。
 船はまだ、準備が完了してなかったのだろう……それなりに大きな船で船員も数十人は必要な感じのものである……帆船っていうのかな……その帆を降ろし、私は帆に向かって風の魔法を撃ち超スピードで出港したのだ………そして、陸地が小さくなってきたころに落ち着いて、船を操縦する人たちに挨拶しようと思い、船の中に入った……だが………。


 ………だれもいない。


 港にはこの船しか見当たらなかったと思ったのだが、どうやら、建物影に隠れていたのが本当の用意された船だったらしく、私たちが乗り込んだのは別物……誰のものか分からない船だった。

 つまり私達は船泥棒をしてしまったのだ……いや、それはまあ、仕方ない……ごめんね、持ち主!
 だが、それ以上に問題があった。

 私達は誰も、船の操縦を出来ないのだ……最初は帆に、風の魔法を放って進ませれば何とかなるだろう、なんて簡単に思っていた……思っていたがそれが間違いであった。
 船は思ったようにまっすぐ進まず、それどころかすでに元の陸地も見えなくなり、自分たちが何処に向かっているのかもわからなくなっていた……そして、問題はそれだけではない。

 この船の持ち主は近いうちにこの船を使う予定がなかったのだろう……船の中には食べ物や飲み物の類がなかったのだ………。

 飲み物に関しては魔法でなんとかなるが……食べ物はどうにもならない……おさかなを釣ろうと釣りをした時もあったがなんでかこういう時に限って全然ヒットしないのだ……。

 飛んでる鳥でも撃ち落とそうかと思ったが空腹で目がかすみ狙いを定められず無駄に魔力を使うだけに終わった。


 ああ………私たちの冒険はここで終わりなのかなぁ……かなしいなぁ……うう……。


 何度目かの軽快なお腹の音がなる……ああ、乙女にあるまじき醜態である……しくしく。


「っ!?」


 そんな風に、自分の死に方に涙をしていると、四人同時に何かに反応した!
 これは………。


「美味しそうな匂い!!!!!!!」
 

 香ばしい匂いに、私達はその発生源を探す、こんな海原にこんないい匂いを出すものがあるのか?
 私達全員、幻の匂いでも感じているのでは……そんな疑いを持ちながらも、私達は海原を探す……すると、小舟に乗った白ヒゲをこさえたおじさんが、釣り糸を垂らしながらスープのようなものを飲んでいた。


「なんじゃ、お主等、でっかい船に乗って、こんなところで何しとるんじゃ?」


 ちょっと間の抜けた声で白ヒゲのおじさんがこちらに声を掛けてきた……だが、私たちの視線はもう、そのおじさんの持っているスープにのみ釘付けである。


「なんじゃぁ、そんな目をして…‥なーに、見とるんじゃ?」


 そんなのんびりした口調のお爺さんが、自分の身体や船を見ながら、私たちが何を見ているのかと確認し、よくわからず、もう一度、私たちの方を向く……すると、そこにはまるで飢えたゴブリンのような顔をした4人がお爺さんに向かって船から飛び降りてきていた。



「ひょえええええええええええええええええええええええええ!?」



 その恐怖に、お爺さんは歳に似合わないほどの大声で悲鳴を上げた……空から降ってくる飢えた顔をした4人組………うん、怖いよね……私も怖いと思う、ごめんねおじいさん!
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