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8章

カモメvsリーン

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「私を滅ぼすですってぇ……」


 血走った目でこちらを睨むリーン……うう、ちょっと怖い。


「たかが人間がっ、私を滅ぼせるわけないでしょう!身の程を知りなさい!」
「うわっとと!?」


 リーンの掌から風の刃が飛んでくる。
 私はそれをギリギリのところで躱す……でも、さっきまでと違い、さっきの籠った攻撃だった。
 やっと、まともに戦う気になったってことだね。


「貴方の存在を私は認めない!認めるわけにはいかないのです!!」
「………」


 怒りからだろうか……リーンの眼に殺意が籠る。
 先ほどまでの余裕は無くなり、私を殺したいという気持ちが伝わってくる…………まるで獣のように。
 その豹変ぶりに普通ならば恐怖を覚えるのかもしれない……でも、今の私はそんなものに怯えたりしない……だって……。


「頭に来てるのはこっちも一緒だよ……クオンを攫って、ツァインの皆を操って……そしてお父さんとコロを侮辱した……絶対許さないんだから!!闇魔滅砲イビルスレイヤー!!」
「今更、そんな魔法が効くわけないでしょう!!!」


 私の闇の魔法をリーンは避けようともせず掌から風の魔法を放ち相殺する。


「それならっ!闇雷纏シュベルクレシェント!」
「ちょっと体を強化したくらいで私にダメージを与えられるつもりですか!!」


 私の強化された一撃をリーンは左手で受け止める……いや、受け止めようとする。


「ちょっとじゃないよ!闇の魔法だけじゃない、気でも強化してるんだから!!」
「ぐ……ぬ……があっ!?」


 私の攻撃を堪えきれず、体にバトーネを受け、リーンは吹き飛ばされる。
 闇の魔法と気の同時強化だ……私の今の一撃は普通の攻撃の何倍にもなっている筈である。
 その分、体力と魔力を使うけど……これが最後の戦いだ、出し惜しみをする必要はない。
 私の全力で……リーンを倒す!


「よくもよくもよくも!!」
「魔法!?」


 リーンが両手を前に出すと、そこには風が集まり始める。
 

「唯の魔法じゃありませんよぉ……『増幅』……『増幅』!!!」
「な、なに……?」


 リーンの掌に異様なほどの魔力が溜まっていく。
 なにあれ、あんな魔力の量ありえないよ!?

 そして……。


「死ねぇええええ!!」
「きゃあああああ!?」


 まるで嵐のような風が私を襲う。
 私は咄嗟に闇の魔法の強化を解き、風の魔法で結界を張るが……リーンの風はそれを軽々と破り、私に襲い掛かった。



「カモメ!!」


 外で結界を維持しながら見ているディータが心配の声を上げる。


「お姉さま、結界は!!」
「問題ないわ、壊れてはいない!」


 レナは自分たちの張った結界が壊れていないか確認する。
 それほどまでに今のリーンの攻撃は強力だったのだ。
 結界の中、いっぱいに、嵐が巻き起こる。
 当然中にいた私はその嵐に巻き込まれている……。


「くっ……いたた……」


 気で体を強化していた為、致命傷にはならなかったが、かなりのダメージを受けた……。
 あんなことも出来るのか……。


「うふふふふ、どうです?私を殺すなんて無理でしょう!」
「……そんなことないよ」


 私は不敵に笑う……そして、右手を前に出すと魔力を集中さえ闇の魔法を出現させる……最初と同じ闇魔滅砲イビルスレイヤーだ。


「その魔法は効かないと言ったでしょう……馬鹿なんですか?」
「私は良くエリンシアにバカバカ言われるけど……今回は違うよ……さっきの真似させてもらうね」
「……なんですって?」


 私は先ほどリーンがやっていた、『増幅』を見よう見まねで真似をする。
 さっきの『増幅』という技、あれは闇の力を利用したものだ……私の『合成』に近い。
 別の魔法を『合成』するんじゃなくて、同じ、力を重ね合わせる感じだった。
 ……それなら、私にも出来る。


「『増幅』」
「……なっ!?」
「レナ、集中なさい!ヤバいのが来るわよ!」
「はい!」


 闇の魔法に更に闇の力を合成する……行けるっ!



闇魔滅砲イビルスレイヤー!!!」


 増幅版のイビルスレイヤーである。
 その威力は最初のイビルスレイヤーの数倍……まるで闇の竜が襲い掛かったのかと錯覚するほど一撃であった。そしてその闇の魔法はリーンを飲み込み結界へとぶち当たる。


「がああああああ!?」


 リーンの悲鳴が聞こえる。
 そして、結界にぶち当たり、闇の魔法は四散する……結界にはすこしヒビが入っていた。


「なんて威力よ……私とレナの全力の結界が闇魔滅砲イビルスレイヤーでヒビが入るなんて……レナ、ヒビをすぐに修正するわよ!」
「はい!」


 ついたヒビはすぐさま修復し元の結界へと戻る。
 

「どう、効かなかったかな?」
「ぐ……が……ムカつく人ですねぇ……」
「お互い様でしょ……さあ、トドメを刺させてもらうよ!」
「調子に乗るんじゃないですよ!!!」


 リーンの周りから闇の棘のようなものが出現し私に襲い掛かってくる。


「なっ!?」


 これは、まるで魔族の攻撃のようだ、私は不意を突かれたが、バトーネを使いなんとかそれを弾き、避ける。


「リーン……アンタ……?」
「魔族か……ですか?残念、違いますよ?」
「でも、今の攻撃は……」
「ええ、魔族の方がよく使う攻撃に似ているでしょう?……ふふふ、でも、別物ですよ?」


 違うものなのか……でも、厄介だ。


「ああ、そうそう、今のは別に私の周りからじゃないと出せないって訳じゃないんですよ?」
「え……きゃっ!?」


 私の後ろから黒い棘のようなものが私の肩を貫いた。


「カモメ!?」
「くっ……」


 私は肩を黒い棘から引き抜くと、その場から離れる。
 黒い棘は私のいた地面から出ていた。


影棘シャドウニードル
「これも、魔法なの!?」


 見たことも聞いたことも無い魔法である。
 それがまたも私の周りから出現する……だけど、油断してなければ……。


闇の刃オプスラミナ!!」


 闇の刃で黒い棘を斬り裂く。


「残念」
「そんな魔法があるなんてね……」
「ふふ、結界の中ではない魔法ですからねぇ……」
「結界の中では?」


 つまり、結界の外では結界の中と違う魔法が存在しているってことか……。
 よく考えてみれば、私の使う闇の魔法はディータの魔法である……そして、そう考えるならば光の魔法はレナの……なら、結界の外にはそう言った魔法が他にもあるかもしれない……今使ったリーンの魔法のように……。私の知らない魔法をリーンが使えるというのは厄介だけど……不謹慎かな……外の世界にちょっと興味がわいてきた……冒険したい。


「考えている場合じゃないわよ、カモメ!!」
「わわっっと!?」



 ディータの声に反応すると、私の周りにまたも黒い棘が出現している。
 だけど、もう、そう簡単に貫かれたりしないよ……。


「光よ!!」


 私は自分の周りに光の壁を出現させる。
 黒い棘は光の壁にぶつかるとあっさりと折れてしまった。


「ちっ」


 リーンが舌打ちをする……この魔法で私をいたぶりたかったんだろうけど……そうはいくか。
 私は立ち上がり、再度リーンを睨み付けるのであった。
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