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6章
カモメの全力
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ツァインの外れにある砦で帝国の兵士たちであった者たちが蠢く。
―――――――魔鬼。
魔族が人間の死体を使い自分たちの使い魔として操る怪物である。
その力は人間の力を遥かに超え、一体でもいれば人間の兵士10人分にはなるほどの強さを誇る。
帝国の兵士であった者たちの数は十万以上……そのすべてが同時に魔鬼へと姿を変えたのだ。
「マズいですわね」
「うん、僕らはともかくこのままじゃ砦にいる兵士の人達が……」
「それだけじゃありません、もしここにいる魔鬼達が街へ辿り着いたら……」
街の人の被害は甚大になるだろう……。
「皆!砦の中の人達を連れて出来るだけここから離れて!」
「え、でも、砦の外で魔鬼に捕まったら……」
「大丈夫、一匹もこの砦の向こうにはいかせないから!まだ動き始めてない今のうちに早く!」
「わ、わかりました、リーナ行くよ!」
「何か、考えがあるのねぇん」
「考えって程じゃないけど……うん、任せて!」
「解ったわぁん、ミャア、コロ行くわよぉん!」
コハクとリーナ、そしてレディとミャア、コロが急いで砦の中へと向かい、中にいるソフィーナさんと兵士たちを砦の外へと誘導する。
「クオン達も早く!」
「皆が砦の外に逃げるまで、魔鬼を外に出さないようにしないといけないんだろ?」
「まだ、魔鬼は動き出しておりませんが、動き始めたらカモメさんだけでは手が足りないのではありません?」
確かにとカモメは言葉を詰まらせる、もし、この数が同時に動き出したらカモメ一人では対処しきれない、もし、多くを取り逃がせば魔鬼達が何処に行きどんな被害を与えるか見当もつかないのだ。
「解った、私は上空から魔法を撃つから、魔鬼達を砦の近くから出さないようにお願い」
そう言うと、カモメは上空へと飛び上がる。
砦の方ではレディたちがソフィーナに知らせたのか、ツァインの兵士たちが砦の外へと移動を始めていた。
このまま、魔鬼が動き出す前に兵士たちが砦から脱出出来ればよかったのだが、そうはいかないようだ。
近くで人間のものとは思えない咆哮があがる。魔鬼達の眼が赤く光り、ゆっくりと動き始めたのだ。
「とりあえず、こっちに注意を引くんだ!」
「はいですわ!」
「エリンシア!根暗坊主!」
「ディータさん、丁度いいですわ!これからカモメさんがおデカイの撃ちます。それまで魔鬼がこの砦の近くから移動しないよう気を引いて欲しいんですの!」
「デカイのって……うわ、すごい魔力を溜めてるじゃない……」
空を見上げると、カモメの周りには黒と白の魔力が溢れ出していた。
それを見たディータはギョッとするが、すぐにそれしか方法が無いのだろうと理解し、行動に移る。
「ソフィーナ達がこの砦から離れるまで時間を稼げばいいのね」
「そう言う事ですわ!行きますわよ!」
「おう!」
三人がそれぞれ、魔鬼へと攻撃を始める。
出来るだけ派手に、出来るだけ魔鬼の注意を引けるようにと動き回り、その甲斐もあってか魔鬼達が逃げるツァインの兵士たちに向かう事は無かった。
そして、ソフィーナ達が十分に離れると、カモメが大声で叫ぶ。
「三人とも!離れて!!」
「「「!!っ」」」
カモメの声を聴き三人がその場を離れ始める、全力で。
(相棒、死にたくなければ全力だ!)
「解ってる!」
クオンは目の前にいる魔鬼に目もくれず全速力でその場を離脱した。
「エリンシア、捕まりなさい!」
「ありがとうございますわ!」
クオン程のスピードのない二人はディータの飛行の魔法でその場を離脱する。これまた全速力で。
そして、三人が離れ始めたのを確認するとカモメは溢れ出していた魔力を掌へと集中させる。
「魔力が復活してから初めての全力……どれくらいの威力が出るか分からないけど……全力で撃たせてもらうよ!――――――光と闇よ!私に力を貸して!!」
カモメの掌で光と闇の魔法が混ざり始める。
以前の戦いで使った光と闇の合成魔法だ。
以前はそれで視力を失ったが、魔力をコントロールできるようになった今のカモメならば完全に扱うことが出来る。
「混沌消滅破!!!」
カモメの掌から、特大の魔法が放たれる。
それは一瞬で魔鬼を……砦を飲み込みそのすべてを消滅させた。
クオン達はその魔法を見て、さらに逃げる足を速める……その顔を必死そのものであった。
カモメの魔法が放たれたその後には何も残っていなかった、地面は抉れ、魔鬼は一匹たりとも残っていない………もちろん砦だって無くなっている。
「わ、我が国の砦が……」
ソフィーナは遠く離れた場所から自分たちが先ほどまでいた砦が一瞬にして無くなる光景を見ていた。
さしものレディやミャアもその威力には口を開け唖然としている。
(あ、あぶなっ……姐さん、加減てもんを知らねぇのかよ)
「カモメだからね……」
何とかギリギリカモメの魔法の範囲から逃げ延びたクオンは肩で息を切らしながら乾いた笑いを上げていた。
同じく上空へと逃げたエリンシアとディータも、その威力に笑うしかなかった。
「あ、あはは……とんでもない威力ね……」
「魔鬼の方々に同情いたしますわ……」
帝国の人達は、兵士でもないのに操られ、殺され……醜い魔鬼の姿に変えられた。
その上、一瞬で跡形もなく消滅させられたのだ同情の気持ちしかない。
「ふぃ~、大成功だね♪―――――ぶい!」
Vサインを出しながら満足そうにしているカモメにクオンもエリンシアもディータも溜息を吐いた。
確かに魔鬼を全滅させたのは良いが、国境の砦も跡形もなく消し飛んだのだ……フィルディナンド王の心労を心配する三人であった。
―――――――魔鬼。
魔族が人間の死体を使い自分たちの使い魔として操る怪物である。
その力は人間の力を遥かに超え、一体でもいれば人間の兵士10人分にはなるほどの強さを誇る。
帝国の兵士であった者たちの数は十万以上……そのすべてが同時に魔鬼へと姿を変えたのだ。
「マズいですわね」
「うん、僕らはともかくこのままじゃ砦にいる兵士の人達が……」
「それだけじゃありません、もしここにいる魔鬼達が街へ辿り着いたら……」
街の人の被害は甚大になるだろう……。
「皆!砦の中の人達を連れて出来るだけここから離れて!」
「え、でも、砦の外で魔鬼に捕まったら……」
「大丈夫、一匹もこの砦の向こうにはいかせないから!まだ動き始めてない今のうちに早く!」
「わ、わかりました、リーナ行くよ!」
「何か、考えがあるのねぇん」
「考えって程じゃないけど……うん、任せて!」
「解ったわぁん、ミャア、コロ行くわよぉん!」
コハクとリーナ、そしてレディとミャア、コロが急いで砦の中へと向かい、中にいるソフィーナさんと兵士たちを砦の外へと誘導する。
「クオン達も早く!」
「皆が砦の外に逃げるまで、魔鬼を外に出さないようにしないといけないんだろ?」
「まだ、魔鬼は動き出しておりませんが、動き始めたらカモメさんだけでは手が足りないのではありません?」
確かにとカモメは言葉を詰まらせる、もし、この数が同時に動き出したらカモメ一人では対処しきれない、もし、多くを取り逃がせば魔鬼達が何処に行きどんな被害を与えるか見当もつかないのだ。
「解った、私は上空から魔法を撃つから、魔鬼達を砦の近くから出さないようにお願い」
そう言うと、カモメは上空へと飛び上がる。
砦の方ではレディたちがソフィーナに知らせたのか、ツァインの兵士たちが砦の外へと移動を始めていた。
このまま、魔鬼が動き出す前に兵士たちが砦から脱出出来ればよかったのだが、そうはいかないようだ。
近くで人間のものとは思えない咆哮があがる。魔鬼達の眼が赤く光り、ゆっくりと動き始めたのだ。
「とりあえず、こっちに注意を引くんだ!」
「はいですわ!」
「エリンシア!根暗坊主!」
「ディータさん、丁度いいですわ!これからカモメさんがおデカイの撃ちます。それまで魔鬼がこの砦の近くから移動しないよう気を引いて欲しいんですの!」
「デカイのって……うわ、すごい魔力を溜めてるじゃない……」
空を見上げると、カモメの周りには黒と白の魔力が溢れ出していた。
それを見たディータはギョッとするが、すぐにそれしか方法が無いのだろうと理解し、行動に移る。
「ソフィーナ達がこの砦から離れるまで時間を稼げばいいのね」
「そう言う事ですわ!行きますわよ!」
「おう!」
三人がそれぞれ、魔鬼へと攻撃を始める。
出来るだけ派手に、出来るだけ魔鬼の注意を引けるようにと動き回り、その甲斐もあってか魔鬼達が逃げるツァインの兵士たちに向かう事は無かった。
そして、ソフィーナ達が十分に離れると、カモメが大声で叫ぶ。
「三人とも!離れて!!」
「「「!!っ」」」
カモメの声を聴き三人がその場を離れ始める、全力で。
(相棒、死にたくなければ全力だ!)
「解ってる!」
クオンは目の前にいる魔鬼に目もくれず全速力でその場を離脱した。
「エリンシア、捕まりなさい!」
「ありがとうございますわ!」
クオン程のスピードのない二人はディータの飛行の魔法でその場を離脱する。これまた全速力で。
そして、三人が離れ始めたのを確認するとカモメは溢れ出していた魔力を掌へと集中させる。
「魔力が復活してから初めての全力……どれくらいの威力が出るか分からないけど……全力で撃たせてもらうよ!――――――光と闇よ!私に力を貸して!!」
カモメの掌で光と闇の魔法が混ざり始める。
以前の戦いで使った光と闇の合成魔法だ。
以前はそれで視力を失ったが、魔力をコントロールできるようになった今のカモメならば完全に扱うことが出来る。
「混沌消滅破!!!」
カモメの掌から、特大の魔法が放たれる。
それは一瞬で魔鬼を……砦を飲み込みそのすべてを消滅させた。
クオン達はその魔法を見て、さらに逃げる足を速める……その顔を必死そのものであった。
カモメの魔法が放たれたその後には何も残っていなかった、地面は抉れ、魔鬼は一匹たりとも残っていない………もちろん砦だって無くなっている。
「わ、我が国の砦が……」
ソフィーナは遠く離れた場所から自分たちが先ほどまでいた砦が一瞬にして無くなる光景を見ていた。
さしものレディやミャアもその威力には口を開け唖然としている。
(あ、あぶなっ……姐さん、加減てもんを知らねぇのかよ)
「カモメだからね……」
何とかギリギリカモメの魔法の範囲から逃げ延びたクオンは肩で息を切らしながら乾いた笑いを上げていた。
同じく上空へと逃げたエリンシアとディータも、その威力に笑うしかなかった。
「あ、あはは……とんでもない威力ね……」
「魔鬼の方々に同情いたしますわ……」
帝国の人達は、兵士でもないのに操られ、殺され……醜い魔鬼の姿に変えられた。
その上、一瞬で跡形もなく消滅させられたのだ同情の気持ちしかない。
「ふぃ~、大成功だね♪―――――ぶい!」
Vサインを出しながら満足そうにしているカモメにクオンもエリンシアもディータも溜息を吐いた。
確かに魔鬼を全滅させたのは良いが、国境の砦も跡形もなく消し飛んだのだ……フィルディナンド王の心労を心配する三人であった。
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