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6章
カモメの『魔』
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「くっ……」
カモメが手をかざし、クオンに目掛けて闇の刃を放つ。
体勢を崩して、その刃を躱すことのできないクオンは覚悟を決める。
………が、その刃がクオンに届くことは無かった。
闇の刃はクオンの横をすり抜け、大地を抉っていた。
「……え?」
「ク、クオンっ……逃げてっ……ドラゴン達も連れて……早くっ!」
そこには苦悶の表情を浮かべながら、必死に自分の右手を左手で抑え込むカモメの姿があった。
「カモメ……なの?」
「お願いっ、長くは持たない!!」
「っ!!――――――ドラゴンの皆さん!魔族は倒れ結界はすでに無くなってます、今すぐこの場から逃げてください!」
クオンの言葉を聞いたドラゴンたちが、結界が亡くなっていることに気付く。
カモメのあまりの恐怖にドラゴンたちは動けなくなっていたのだが、今のカモメからはその恐怖も感じられなくなっていた。よく見ると赤く黒い魔力も瞳も無くなっている。
そのことに気付いたドラゴンたちは我先にと広場から逃げ出していくのだった。
「クオンも早く!」
「カモメを残していけるわけないだろ?僕はここにいるよ」
「駄目っ、じゃないとクオンを私が殺しちゃう!」
「カモメはそんなことをしない、現に今だって僕を救ってくれたじゃないか……負けないでカモメ!戦うんだ!君は決して『魔』なんかに負けたりしない…ヴィクトールさん譲りの暖かい君の心は『魔』なんかに負けたりしない!だから、諦めるな!」
「クオン……っ!………ざぁ~んねん♪」
再びカモメから赤黒い魔力が溢れ出すと、持っていたバトーネを横に振り、クオンの横腹を薙ぐ。
クオンはそれを防ぐことが出来ず、地面を転がりながら吹き飛ばされた。
「アハハハハ!人間が私を抑え込むなんてできるわけないじゃぁ~ん♪、クオンも馬鹿だねぇ」
「何言ってるのさ……少しだけだけど、抑え込まれてたじゃないか……」
「あんなの、まぐれだよ~、もう二度と出てこさせないもんね!」
「カモメ!絶対に負けないで!君が戻ってくるまで僕が君の体を抑えとく!君の身体で他の誰かを傷つかせたりなんかしない!だから、負けるな!君は『闇の魔女』だろ!『魔』に『闇』なんかに負けるな!『闇の魔女』なら闇なんか従えてしまえ!」
「無理だってのにぃ~♪」
再びバトーネを振るカモメをクオンはクレイジュと共に防ぎ続けるのであった。
=========================================
「クオン!!」
カモメは闇の中にいた、ここには見覚えがある。
ディータと出会った場所、そして世界と話した場所でもある。
カモメの心の中だ。
「また、ここに……急がないと、クオンを傷つけちゃうっ……でも、どうしたら……」
カモメの身体から外で起きていることの情報はカモメにも届いていた。
「そうだね、クオンの言う通り、闇の魔女が闇に負けるなんて格好悪すぎだよね……」
『まだ、意識あるんだ、すごいねぇ~』
不意に自分しかいないこの場所で声を掛けられ驚くカモメ。
いや、自分だけじゃない……そうだ、ここが心の中であるのならもう一人いておかしくない。
「あなたが『魔』なの?」
「そうだよ~、っていっても本来の『魔』じゃないけどねぇ」
「どういうこと?」
「そりゃあ、そうでしょ?本来の『魔』は今はリーンに憑りついているんだから、私はイレギュラーの『魔』だよ、貴方とともに生まれた……言ってしまえば、『貴方の姉妹』かな♪」
世界を憎む存在『魔』、その存在には姿と言う物がない。
だからこそ、『魔』は世界を破壊する為、リーンの身体に侵入した。
だが、今カモメの中にいる『魔』は本来ならば存在するはずのものではないのだ。
『魔』を身体に宿した状態のリーンが子供を産んだため、『魔』の力もその子供に受け継がれてしまった。
そして、その子供の子供であるカモメにも『魔』の力は受け継がれている。
その力が、今カモメの体を乗っ取っているものの正体なのだ。
「じゃあ、貴方は『魔』であって『魔』じゃないの?」
「私は私、カモメだよ~♪」
「ふざけないで、カモメは私だよ!」
「私だよ……だって、あなたは今、ここから出られないじゃない……ううん、今だけじゃない、これからずっと、ず~っと出られないんだよ?」
ケタケタと笑う、その姿に、カモメはイラつきを覚える。
「あはは、もっと怒っていいよ!そうすれば私の力はもっと上がるんだもん!」
そう、カモメの怒りの感情と共に現れた、この『魔』はカモメの負の感情を吸収して力をあげるのだ。
「くっ……なんで……なんであなたは世界を殺そうとするの?……ううん、世界だけじゃない、人間もドラゴンも!」
「え~~、だって人間は私に酷いことをしたし~、ドラゴンもリーンを裏切ったしぃ~、世界は私を不幸にするじゃない?」
「そんなことない!優しい人間だっているし、ドラゴンもリーンを裏切ったわけじゃない!『魔』に憑りつかれたリーンを止めるために戦っただけだよ!それに世界は私達に干渉しない!!」
「そうかもね~、でも、そうじゃないかもしれないし、やっぱり裏切られる前に殺しちゃうのが一番だよ」
駄目だ、話が通じない。
なぜこんなにも、殺したがるのか……そもそも『魔』って一体なんなのだろうか……なぜ、世界を憎むの?なぜ、他人を信用しようとしないの?
――――――――わからない。
でも、一つだけ分かったことがある……この目の前にいる私の姿をした『魔』は……。
「裏切られるのが怖いんだね」
「っ!……別に、怖くないよ~、でもうざったいからそうされたくないだけだよ~、さっ、話も飽きたし、私はクオンを殺しにも~どろっと……早く、消えてね、お姉ちゃん♪」
自分の事を私の姉妹だと言い張る『魔』はそう言い残して消えた。
「待って!!……くっ」
再び暗闇の中に取り残されるカモメ。
カモメの気がさらに焦る、急がなければクオンが殺されてしまう。
とにかく何とかして、もう一度、体のコントロールを得ないと……さっきはクオンが危ないと思ったらなぜか体を動かすことが出来た……。
「さっきのはなんで出来たんだろう……駄目だ、どうやったのか全然覚えてない!」
カモメは焦る。
そして、焦るせいで思考が纏まらなくなる。
纏まらない思考では次の行動すら起こすことも出来なくなっていた。
泥沼にはまり、周りも見えなくなっていたカモメの背後に、小さな光の玉が浮かんでいた。
カモメが手をかざし、クオンに目掛けて闇の刃を放つ。
体勢を崩して、その刃を躱すことのできないクオンは覚悟を決める。
………が、その刃がクオンに届くことは無かった。
闇の刃はクオンの横をすり抜け、大地を抉っていた。
「……え?」
「ク、クオンっ……逃げてっ……ドラゴン達も連れて……早くっ!」
そこには苦悶の表情を浮かべながら、必死に自分の右手を左手で抑え込むカモメの姿があった。
「カモメ……なの?」
「お願いっ、長くは持たない!!」
「っ!!――――――ドラゴンの皆さん!魔族は倒れ結界はすでに無くなってます、今すぐこの場から逃げてください!」
クオンの言葉を聞いたドラゴンたちが、結界が亡くなっていることに気付く。
カモメのあまりの恐怖にドラゴンたちは動けなくなっていたのだが、今のカモメからはその恐怖も感じられなくなっていた。よく見ると赤く黒い魔力も瞳も無くなっている。
そのことに気付いたドラゴンたちは我先にと広場から逃げ出していくのだった。
「クオンも早く!」
「カモメを残していけるわけないだろ?僕はここにいるよ」
「駄目っ、じゃないとクオンを私が殺しちゃう!」
「カモメはそんなことをしない、現に今だって僕を救ってくれたじゃないか……負けないでカモメ!戦うんだ!君は決して『魔』なんかに負けたりしない…ヴィクトールさん譲りの暖かい君の心は『魔』なんかに負けたりしない!だから、諦めるな!」
「クオン……っ!………ざぁ~んねん♪」
再びカモメから赤黒い魔力が溢れ出すと、持っていたバトーネを横に振り、クオンの横腹を薙ぐ。
クオンはそれを防ぐことが出来ず、地面を転がりながら吹き飛ばされた。
「アハハハハ!人間が私を抑え込むなんてできるわけないじゃぁ~ん♪、クオンも馬鹿だねぇ」
「何言ってるのさ……少しだけだけど、抑え込まれてたじゃないか……」
「あんなの、まぐれだよ~、もう二度と出てこさせないもんね!」
「カモメ!絶対に負けないで!君が戻ってくるまで僕が君の体を抑えとく!君の身体で他の誰かを傷つかせたりなんかしない!だから、負けるな!君は『闇の魔女』だろ!『魔』に『闇』なんかに負けるな!『闇の魔女』なら闇なんか従えてしまえ!」
「無理だってのにぃ~♪」
再びバトーネを振るカモメをクオンはクレイジュと共に防ぎ続けるのであった。
=========================================
「クオン!!」
カモメは闇の中にいた、ここには見覚えがある。
ディータと出会った場所、そして世界と話した場所でもある。
カモメの心の中だ。
「また、ここに……急がないと、クオンを傷つけちゃうっ……でも、どうしたら……」
カモメの身体から外で起きていることの情報はカモメにも届いていた。
「そうだね、クオンの言う通り、闇の魔女が闇に負けるなんて格好悪すぎだよね……」
『まだ、意識あるんだ、すごいねぇ~』
不意に自分しかいないこの場所で声を掛けられ驚くカモメ。
いや、自分だけじゃない……そうだ、ここが心の中であるのならもう一人いておかしくない。
「あなたが『魔』なの?」
「そうだよ~、っていっても本来の『魔』じゃないけどねぇ」
「どういうこと?」
「そりゃあ、そうでしょ?本来の『魔』は今はリーンに憑りついているんだから、私はイレギュラーの『魔』だよ、貴方とともに生まれた……言ってしまえば、『貴方の姉妹』かな♪」
世界を憎む存在『魔』、その存在には姿と言う物がない。
だからこそ、『魔』は世界を破壊する為、リーンの身体に侵入した。
だが、今カモメの中にいる『魔』は本来ならば存在するはずのものではないのだ。
『魔』を身体に宿した状態のリーンが子供を産んだため、『魔』の力もその子供に受け継がれてしまった。
そして、その子供の子供であるカモメにも『魔』の力は受け継がれている。
その力が、今カモメの体を乗っ取っているものの正体なのだ。
「じゃあ、貴方は『魔』であって『魔』じゃないの?」
「私は私、カモメだよ~♪」
「ふざけないで、カモメは私だよ!」
「私だよ……だって、あなたは今、ここから出られないじゃない……ううん、今だけじゃない、これからずっと、ず~っと出られないんだよ?」
ケタケタと笑う、その姿に、カモメはイラつきを覚える。
「あはは、もっと怒っていいよ!そうすれば私の力はもっと上がるんだもん!」
そう、カモメの怒りの感情と共に現れた、この『魔』はカモメの負の感情を吸収して力をあげるのだ。
「くっ……なんで……なんであなたは世界を殺そうとするの?……ううん、世界だけじゃない、人間もドラゴンも!」
「え~~、だって人間は私に酷いことをしたし~、ドラゴンもリーンを裏切ったしぃ~、世界は私を不幸にするじゃない?」
「そんなことない!優しい人間だっているし、ドラゴンもリーンを裏切ったわけじゃない!『魔』に憑りつかれたリーンを止めるために戦っただけだよ!それに世界は私達に干渉しない!!」
「そうかもね~、でも、そうじゃないかもしれないし、やっぱり裏切られる前に殺しちゃうのが一番だよ」
駄目だ、話が通じない。
なぜこんなにも、殺したがるのか……そもそも『魔』って一体なんなのだろうか……なぜ、世界を憎むの?なぜ、他人を信用しようとしないの?
――――――――わからない。
でも、一つだけ分かったことがある……この目の前にいる私の姿をした『魔』は……。
「裏切られるのが怖いんだね」
「っ!……別に、怖くないよ~、でもうざったいからそうされたくないだけだよ~、さっ、話も飽きたし、私はクオンを殺しにも~どろっと……早く、消えてね、お姉ちゃん♪」
自分の事を私の姉妹だと言い張る『魔』はそう言い残して消えた。
「待って!!……くっ」
再び暗闇の中に取り残されるカモメ。
カモメの気がさらに焦る、急がなければクオンが殺されてしまう。
とにかく何とかして、もう一度、体のコントロールを得ないと……さっきはクオンが危ないと思ったらなぜか体を動かすことが出来た……。
「さっきのはなんで出来たんだろう……駄目だ、どうやったのか全然覚えてない!」
カモメは焦る。
そして、焦るせいで思考が纏まらなくなる。
纏まらない思考では次の行動すら起こすことも出来なくなっていた。
泥沼にはまり、周りも見えなくなっていたカモメの背後に、小さな光の玉が浮かんでいた。
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