172 / 361
6章
経緯
しおりを挟む
「なんてこと!すでに新しい女神がこの世界に来ていたなんて!」
リーンは憎らしそうに魔王と対峙する黒髪の女性を見ている。
(あれって……)
カモメはその黒髪の女性を見ていると、不思議と心が安らぐ……目の前にこれ程、恐怖を与えてくるリーンという存在があるにもかかわらず、あの黒髪の女性はカモメを安心させるのだ。
「ふははは、闇の女神よ……なかなか楽しめるではないか!」
「こっちは詰まらない男のダンスを見て飽きてきたころよ」
「言ってくれる!」
(やっぱり、あれがディータだ!)
カモメは初めて本来の姿のディータを見て、その美しさに心を躍らせていた。
ディータってあんなに綺麗だったんだ、背が高いね!かっこいい!など、まるで今まで見てきたことを忘れてしまったかのようにディータの事を見て、心を荒ぶらせていた。
ディータと魔王の戦は互角の勝負を見せながらもついに決着の時を見せる。
結果は相打ちである、ディータの放った闇の魔法が魔王のお腹に大きな風穴を開けるがそれにカウンターで放った一撃がディータの胸を抉っていた。
「姉様!」
倒れたディータに一人の女性が近づいてくる、あれが恐らくレナさんなのだろう。
必死に回復魔法をディータに掛けるが、ディータの傷は治ることが無かった。
「あの三流魔王、嫌らしい呪いを掛けたみたい。治癒が効かないわ」
どうやら、魔王の呪いで回復魔法をうけつけないらしい。
そんな力もあの魔王にはあるのか、気を付けないとね。
「リーン様、ここは撤退を!」
「ちっ……そうですね、ここは退きましょう」
忌々しいという目つきで女神たちを見るリーンであったが、旗色はこちらが悪いのを理解している為、渋々、撤退を了承する。
「……あの女神たちは殺しておかないと、今後も邪魔をされそうね、一匹は今回の戦いで死んだみたいだから……もう一匹。」
魔王たちが異世界に撤退をしたため、それを追いかけて他の魔族も戻ろうとする、そんな中、リーンは足を止めた。
「いかがされた、リーン殿?」
「このままではこの世界の闇は我々の世界を飲み込んでしまいます」
「で、ですが……」
「ですから、私はここに残り闇の進行を食い止めて見せます」
「そんなことが出来るのですか!?」
「ええ、魔王様が復活なされるまでの時間稼ぎでしかありませんが……」
リーンの言葉に周りの魔族たちは目を輝かせた。
そう、魔族たちの世界は天変地異の前触れのように災害が起き、すでに生き物が住むには辛い場所となり始めている。
そして、その原因がこの世界の闇だとリーンは魔王たちに入れ知恵をする。
もちろん、これは嘘である……いや、その災害を起こしているのがリーン本人なのだから、嘘とは言えないのだろうか?だがリーンは祈りでその災害を和らげることが出来る者として魔族たちに信頼されていたのだ。そして、そのリーンがこの世界に残り、闇を食い止めると言ってくれたのだ。魔族たちはそれを信じ喜んでしまうだろう。
「解りました、魔王様にお伝えしておきます……リーン殿もお気を付けて」
「ええ」
ニッコリと笑うその表情には以前の慈愛の女神の面影がある……が、その笑顔の裏側にはやはり狂鬼の顔が隠れていた。
「行ったわね……まずはあの光の女神とかいうのを殺しましょう」
場面は移り変わり、今度は人間と竜が戦っている場面となった。
だが、人間たちの様子がおかしい、目の前でドラゴンのブレスが迫っているというのに避ける気配も見せず、そのまま消し炭になる。それを見た他の人達もその光景に恐怖するでもなく、ただ闇雲にドラゴンたちに向かって行くのだ。
(様子が変……あ、あれって!?)
戦いの中、倒れている女性と、それを護るようにしている竜が一人、そして人間の女性が一人周りを警戒していた。
倒れている女性はレナである。
そして、レナに近づいていくリーンはレナ達の話が耳に届く。
「へー、良いことを聞いたわね。そう、闇の女神も生きているのね」
そう、偶々、ディータの事を話してしまっていたのだ。
ディータはすでに死んでいると思っていたリーンであったが、ここで邪魔ものがまだ残っていることを知ってしまった。
だが、今は目の前の光の女神を殺すことを優先している。今度は逃げられる前に止めを刺してしまおうという事だった――――――だが、あと一歩のところでアネルによって阻まれる。
(さすがアネルさん!……あれ、でもアネルさんって一体いくつなんだろう?)
そう、これは過去の話で千年前の戦いから数日しか経っていない。つまりアネルは1000年以上生きていることになるのだ。アネルの身体にレナが入ったことを知らないカモメは「アネルさんってすごいおばあちゃん!?」などと、とんちんかんな事を思っている。
「くっ……何よ、今の……左腕が動かない?入れ物が故障したのかしらね……ちっ、まあいいわ、放っておいても光の女神は死ぬ……ここは一旦退きましょう」
アネルの使った気というもので大きくダメージを受けたリーンはその場を離れた。
そして、動かなくなった左腕を支えながら遠く離れた森まで移動したのだ。
「くっ……なに……これ……体の様子が……」
そう口にするとリーンは眠るように意識を失った。
だが、それも一時のことである、目を覚ましたリーンは左腕も動かせるようになっていた。
………だが、その様子は少しおかしい。
茫然と自分の左腕を見たり、思い出したかのように空の星を見ていたりする。
(どうしちゃったんだろう?………え!?)
カモメが不思議に思っていると、リーンの頬を伝う一筋の雫に気付く。
――――――リーンが泣いていた。
予想外の事にカモメの思考か一瞬停止する。だが、次のリーンの言葉にカモメはさらに驚くことになった。
「私はなんてことを……私の愛しい竜達に酷いことを……異世界の関係のない者たちにも……『世界』は何も悪くないのに……なぜ、世界を憎んだりしたの?……わからない……自分が解らないよ」
そこには悪女の姿は無く、自分の行動を公開する慈愛の女神の姿があったのだ。
リーンは憎らしそうに魔王と対峙する黒髪の女性を見ている。
(あれって……)
カモメはその黒髪の女性を見ていると、不思議と心が安らぐ……目の前にこれ程、恐怖を与えてくるリーンという存在があるにもかかわらず、あの黒髪の女性はカモメを安心させるのだ。
「ふははは、闇の女神よ……なかなか楽しめるではないか!」
「こっちは詰まらない男のダンスを見て飽きてきたころよ」
「言ってくれる!」
(やっぱり、あれがディータだ!)
カモメは初めて本来の姿のディータを見て、その美しさに心を躍らせていた。
ディータってあんなに綺麗だったんだ、背が高いね!かっこいい!など、まるで今まで見てきたことを忘れてしまったかのようにディータの事を見て、心を荒ぶらせていた。
ディータと魔王の戦は互角の勝負を見せながらもついに決着の時を見せる。
結果は相打ちである、ディータの放った闇の魔法が魔王のお腹に大きな風穴を開けるがそれにカウンターで放った一撃がディータの胸を抉っていた。
「姉様!」
倒れたディータに一人の女性が近づいてくる、あれが恐らくレナさんなのだろう。
必死に回復魔法をディータに掛けるが、ディータの傷は治ることが無かった。
「あの三流魔王、嫌らしい呪いを掛けたみたい。治癒が効かないわ」
どうやら、魔王の呪いで回復魔法をうけつけないらしい。
そんな力もあの魔王にはあるのか、気を付けないとね。
「リーン様、ここは撤退を!」
「ちっ……そうですね、ここは退きましょう」
忌々しいという目つきで女神たちを見るリーンであったが、旗色はこちらが悪いのを理解している為、渋々、撤退を了承する。
「……あの女神たちは殺しておかないと、今後も邪魔をされそうね、一匹は今回の戦いで死んだみたいだから……もう一匹。」
魔王たちが異世界に撤退をしたため、それを追いかけて他の魔族も戻ろうとする、そんな中、リーンは足を止めた。
「いかがされた、リーン殿?」
「このままではこの世界の闇は我々の世界を飲み込んでしまいます」
「で、ですが……」
「ですから、私はここに残り闇の進行を食い止めて見せます」
「そんなことが出来るのですか!?」
「ええ、魔王様が復活なされるまでの時間稼ぎでしかありませんが……」
リーンの言葉に周りの魔族たちは目を輝かせた。
そう、魔族たちの世界は天変地異の前触れのように災害が起き、すでに生き物が住むには辛い場所となり始めている。
そして、その原因がこの世界の闇だとリーンは魔王たちに入れ知恵をする。
もちろん、これは嘘である……いや、その災害を起こしているのがリーン本人なのだから、嘘とは言えないのだろうか?だがリーンは祈りでその災害を和らげることが出来る者として魔族たちに信頼されていたのだ。そして、そのリーンがこの世界に残り、闇を食い止めると言ってくれたのだ。魔族たちはそれを信じ喜んでしまうだろう。
「解りました、魔王様にお伝えしておきます……リーン殿もお気を付けて」
「ええ」
ニッコリと笑うその表情には以前の慈愛の女神の面影がある……が、その笑顔の裏側にはやはり狂鬼の顔が隠れていた。
「行ったわね……まずはあの光の女神とかいうのを殺しましょう」
場面は移り変わり、今度は人間と竜が戦っている場面となった。
だが、人間たちの様子がおかしい、目の前でドラゴンのブレスが迫っているというのに避ける気配も見せず、そのまま消し炭になる。それを見た他の人達もその光景に恐怖するでもなく、ただ闇雲にドラゴンたちに向かって行くのだ。
(様子が変……あ、あれって!?)
戦いの中、倒れている女性と、それを護るようにしている竜が一人、そして人間の女性が一人周りを警戒していた。
倒れている女性はレナである。
そして、レナに近づいていくリーンはレナ達の話が耳に届く。
「へー、良いことを聞いたわね。そう、闇の女神も生きているのね」
そう、偶々、ディータの事を話してしまっていたのだ。
ディータはすでに死んでいると思っていたリーンであったが、ここで邪魔ものがまだ残っていることを知ってしまった。
だが、今は目の前の光の女神を殺すことを優先している。今度は逃げられる前に止めを刺してしまおうという事だった――――――だが、あと一歩のところでアネルによって阻まれる。
(さすがアネルさん!……あれ、でもアネルさんって一体いくつなんだろう?)
そう、これは過去の話で千年前の戦いから数日しか経っていない。つまりアネルは1000年以上生きていることになるのだ。アネルの身体にレナが入ったことを知らないカモメは「アネルさんってすごいおばあちゃん!?」などと、とんちんかんな事を思っている。
「くっ……何よ、今の……左腕が動かない?入れ物が故障したのかしらね……ちっ、まあいいわ、放っておいても光の女神は死ぬ……ここは一旦退きましょう」
アネルの使った気というもので大きくダメージを受けたリーンはその場を離れた。
そして、動かなくなった左腕を支えながら遠く離れた森まで移動したのだ。
「くっ……なに……これ……体の様子が……」
そう口にするとリーンは眠るように意識を失った。
だが、それも一時のことである、目を覚ましたリーンは左腕も動かせるようになっていた。
………だが、その様子は少しおかしい。
茫然と自分の左腕を見たり、思い出したかのように空の星を見ていたりする。
(どうしちゃったんだろう?………え!?)
カモメが不思議に思っていると、リーンの頬を伝う一筋の雫に気付く。
――――――リーンが泣いていた。
予想外の事にカモメの思考か一瞬停止する。だが、次のリーンの言葉にカモメはさらに驚くことになった。
「私はなんてことを……私の愛しい竜達に酷いことを……異世界の関係のない者たちにも……『世界』は何も悪くないのに……なぜ、世界を憎んだりしたの?……わからない……自分が解らないよ」
そこには悪女の姿は無く、自分の行動を公開する慈愛の女神の姿があったのだ。
0
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる