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6章

里への入り口

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「しかし、ラガナさんもそうですけれど、人間の姿になると本当に私達と見分けがつきませんわね?竜の皆さんは全員、返信が得意ですの?」
「そうでもないのじゃ、完璧な姿に変身できるのは上位の竜だけじゃ、変身の苦手なものは尻尾が生えてたりするぞ?後はリザードマンみたいになったりじゃな」


 リザードマンというのは二足歩行をし、武器を扱う蜥蜴人間のようなモンスターである。


「上半身だけ人間になった奴を見たときは大爆笑したのじゃ」
「くく、着ぐるみを脱ぎかけているような姿になっていたな」


 ラガナの言葉にレガロールはその時の光景を思い出したのか小さく笑った。
 

「あら、ラガナさんとレガロールさんは仲がよろしいんですのね?」
「おお、子供の頃からよく遊んでおったからの」
「ふん、貴様が里を出た時に終わった友情だがな」
「なんじゃ、寂しいのう」


 ラガナが里を出たことが気に入らなかったのか、レガロールはその時の事を思い出し、怒りを露にする。
 だが、そんなレガロールにラガナは相も変わらず呑気な答えをしていた。


「お地雷でしたわ……」
「レガロールさん、おこちゃったみたいだね」


 眼が見えないからか、余り状況を分かっていないカモメは、クオンに手を引かれながら苦笑いをしていた。


「……そこの人間」
「カモメさんですの?」
「そうだ、貴様、竜の秘宝を使い、何をするつもりだ?」
「え?……えっと、私の中の魔力が制御できなくなっている理由を知りたいなと思ってるんですけど」
「………そうか」


 納得をしていないのか、まるで疑うような目でカモメを見るレガロールに、近くで見ていたディータが文句を言う。


「嘘なんて言ってないわよ、本当にカモメの今の状態を治したいだけ……せめて、真実を見せるというその魔導具を使って、魔力の乱れの理由が解ればと思っているのよ」
「ふむ……貴方がそういうのであれば、信じよう」


 レガロールはディータが古の戦いで死んだ、闇の女神だと気づいているのか、ディータに対しては敬意をもって話しているように聞こえる。


「さて……里に着いたぞ」
「え…?ここですの?」


 エリンシアが間の抜けたことを聞くのも無理はない、目の前には小さな洞窟がひとつあるだけなのだ。
 竜達は洞窟を住処としているのか?
 

「ん?どこなの?」
「洞窟ですわ……それもちっちゃな」


 魔族たちの襲撃にあったと言っていた、だから見つかりにくいように小さな洞窟にしているのか?
 それにしても小さすぎるような……人間に化けられないドラゴンは入れないんじゃないんだろうか?


「そういえば、ベインスさんもほら穴のような洞窟に住んでいたね」


 ベインスと言うのは以前、レディたちに変身の指輪を作ってくれた竜である。
 変わり者という話だったが、住処は変わっている訳じゃなかったのかな?


「あの物好きと一緒にするな」


 そう思った。カモメであったがそうではいらしい。


「ここは唯の入り口だ」


 そう言うと、レガロールは洞窟の中に向かって歩き出す。
 そして、入り口に入ったと思った瞬間、レガロールの姿が消えてしまった。


「なるほど、空間魔法で繋がっているのね」
「じゃあ、この先は別の場所に?」
「いいえ、恐らくは異空間でしょう、別の場所につながっていてはここに入り口を作る意味がなくなるわ」


 魔族から隠れるという意味でここに入り口を作っているのであれば、この世界の別の場所につなげても意味がない。魔族からしてみればここから入ってもいいし、別の場所その物を見つけてもいいのだから。
 襲撃される場所が二か所に増えただけである。
 となれば、この先は異空間、つまりこの世界から切り離された空間という事になるだろう。
 それなら、この入り口さえ見張っていれば魔族と言えどもそう簡単には入ってこれないのである。



「じゃあ、行くわよ」



 ディータの掛け声とともに一行は竜の里へと足を踏み入れるのであった。

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