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4章

城の異変

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 私たちは一般の人の避難をアルバートとレイモンドに任せて、城へとやってきた。シェリーが街の人に聞いた話だと、城には帝国の兵士が街とは違い多くいるとの事だったのだが、今、私たちの目の前には違う光景が映っていた。

 いや、確かに多くの帝国の兵がいる・・・いや、「いた」と言った方がいいのだろうか、目の前にいる帝国の兵士たちはそのほとんどが地面に倒れ、血を流していた。


 そして、その血を流した兵士の傍にはリザードマン系の魔物が立っているのだ。


「どういうこと?」
「魔物が襲ってきたのかな?」


 たまに、大量発生した魔物たちが国を襲ってくるという事はあるのでそう言ったのだが、それはおかしい。
なぜなら、この城に来るには街を通らなければならないはずだ。そして、街を通ってこの城を襲っているのであれば、街にいた盗賊紛いのやつらとも戦闘になっているだろうし、街の人達とも遭遇してるはずだ。

 だけど、誰もそんなことを言っておらず、そんな様子もなかった。


「いえ、確か、我が国を襲った帝国の兵の中には魔物を操る者がいたはずです、おそらくあの魔物は・・・」


 魔物使いか・・・それは厄介な相手だね。
 でもだとしたら、なぜあの魔物の持っている剣には赤い血が付いているのだろう?
 そして、その魔物の目の前に倒れている兵士が流している血は、まだ固まっておらず、今しがたその魔物に斬られたのだというのが解る。


「反乱?」
「なんとも言えませんわ、ですが・・・」
「こっちに気付いたみたいね」


 その言葉に魔物を見ると、こちらに気付いたのか、数匹がこちらへと武器を持って近づいてくる。


「とにかく、やるしかないね」
「相手が帝国の兵だろうと魔物だろうと国を取り戻すためには戦います!」


 シェリーは杖を握りしめるとそう言った。
 彼女は多少の魔法であれば使えるらしく、戦いでは後方支援をお願いすることにしている。
 コロも同じように後方支援をするので一緒にいてもらうことにした。


「来たわよ!」


 ディータの声に私はバトーネを抜く。
 そして、飛び掛かってきたリザードマンを一閃、薙ぎ払った。

 見たところこの場にいるのはリザードマンと、その上位種であるリザードウォリアーの2種類のようだ。
リザードマンはランクEの魔物であり、その上位種であるリザードウォリアーはランクDである。

 どちらも、今の私たちにはたいして強敵ではない。
 数で言えば、恐らく20匹くらいであろうか、これもまた多い数ではないので魔力の温存も兼ねて、私はバトーネでエリンシアは拳で、ディータは飛んで攪乱をしていた。

 ミャアはそもそも魔力を使って戦うタイプではないのでそのままであるが。


 「ド根性ニャー!」


 ミャアはそう叫ぶと、リザードマンの尻尾を掴み、グルグルと大車輪のごとく回し遠くにいるリザードウォリアーへと投げつける。

 その威力はすさまじく、投げつけられたウォリアーはヒットしたと同時に胴と下半身が真っ二つに千切れた。


 「どういう勢いで投げたらああなるのよ・・・」


 その光景を呆れてみているのはディータである。
 ウォリアーを撃破したミャアは次の標的を見つけると飛び掛かるように走っていく、そして、拳を握るとまたも「根性ニャ!」といいながら地面にクレーターが出来るほどの威力で殴りつけ、敵を粉々にした。

 ミャアは猫系の魔物であるケットシーであるにもかかわらず、爪も牙も使わず戦っている、その姿はまさに武闘派であった。
 
 同じ拳を使って戦う、エリンシアは華麗に敵の攻撃を躱し、急所に重い一撃を放ち昏倒させるという戦い方なのに対して、ミャアは力任せに、ただ思いっきり拳を叩き付けている感じである。
 どちらかと言うと、お父さんに近い戦い方だ。

 見ている分には少し爽快であるが、やられている側はたまったものではないだろう、あれは歩く爆弾だ。



「う~、もういなくなったニャ」


 ミャアの活躍もあり、あっけなく魔物たちを撃退した私達。
 ミャアはまだまだ戦い足りないと言う感じだったが・・・。


「とりあえず、城の中に進んでみようか?」
「そうね、城の前の橋でこの状況なら、城の中はもっとひどいかもしれないわね」


 ディータの言う通り、城の中に入るとその状況はまさに混沌としていた。
 帝国の鎧を着た兵士と、先ほどのリザードマン系の魔物が戦っている。一体何があったというのだろうか?


「無視して進む・・・ってわけにはいかないか・・・」


 せっかく、敵だ同士討ちみたいなことをしているので、それを無視して親玉を叩くという作戦で行こうかなと思ったのだが、城の中に入ると、帝国の兵士も魔物もこちらに気付き襲い掛かってくる。

 ただ、やはり帝国兵とリザードマンは争っているのかどちらも警戒や小競り合いをやめる気配はない、勢力的には三つ巴のような形になった。

 とはいえ、帝国兵は普通の人間の兵士でそれほど強くなく、リザードマンたちと、どっこいどっこいの強さである、その為・・・・・・。


「根性ニャ―!!!」


 根性猫が片っ端から吹き飛ばしていった。


「この先はちょうど城の中央になっていて、少し広めの部屋になっています」


 普段であればパーティなどが開かれる場所であるらしく、大きめの部屋であるその場所はちょうど、城の中心に位置する場所になっている為、警備も厳しいはずとのことだった。

 だが、今のこの状況ではどうなっているのかわからない、とにかく警戒は怠らないようにしないとね。


 扉を開けると、そこには意外・・・いや、意外でもないのか予想していたのとはちょっと違う光景があった。
 予想では、大人数の帝国兵とリザードマンが戦っているだろうと思っていたのでミャアに何とかしてもらおうと思ったのだが・・・。


「あら、お客さんかしら?」
「おほほ、そうみたいね姉さん」
「でも兄様、あの人たち、誰?」


 異形の姿の者・・・恐らく、魔族であろう3人が、一人の帝国兵を切り刻んでいるところであった。


「よかったわね、姉さん、新しいおもちゃが来たわよ」
「うふふ、そうね。今度はどうやって殺そうかしら?」
「兄様、姉様、私もおもちゃで遊びたいですわ」


 姉と呼ばれた中央の魔族は、両腕をハサミのようにしており、そのハサミにはべっとりと、赤いものが付いていた。
 そして、兄と呼ばれた女口調の男魔族は両腕が鞭のようになっており、やはり、その鞭は赤く染まっている。
 そして、末っ子(?)であろう小さな魔族はまるで普通の女の子のような姿をしていたのだ。


「魔族・・・」
「ですわね」


 魔族が3体・・・それも、教会やツァインであった魔族とはちょっと強さの桁が違いそうである。
 これは苦戦しそうかな・・・。


「ニャニャ、獲物ニャ」
「ミャアさんは魔族にダメージを与える術がありませんわ」
「そうね、あなたは今回下がっていなさい」
「嫌だニャ」
「嫌だニャ・・・って」


 私たちが下がっていてというとごねる、ミャア。


「あなたは戦う術がないでしょう?」
「あるニャ、じいを使うニャ!」


 ミャアがそう言うと、私とエリンシアとディータとシェリーは皆同じように、コロをぶん回しながら戦うミャアを想像した。


「ちょ、そんなかわいそうな真似させませんわよ!?」
「そ、そうだよ」
「ニャ?」
「あ、多分ミャアさんは僕に魔力の付与をお願いしたいんじゃないかと・・・」


 私たちが慌てていると、ぶん回される本人のコロがミャアをフォローする・・・・うん?魔力を付与?


「そんな魔法があるの?」
「魔法では無いんですけど、僕の歌には人によってさまざまな効果を受けることがあるんです」


 歌?・・・そういえば、クリケットバグであるコロは歌がとっても上手だ。私も前に聞いた時は心が癒される感じがしたけど、その歌のことなのかな?


「普通の人であれば、ほとんどはちょっと回復したりとかそう言う程度なんですけど・・・なぜかミャアさんは・・・」
「根性がみなぎるのニャ!」


 根性がみなぎるって何!?とりあえず、コロの説明によると、コロの詩を聞いたミャアはとんでもなく・・・とんでもなくなるらしい・・・一体どうなるのか・・・まあ、それで魔族と戦えるなら問題ないけど・・・本当に魔族と戦えるの?私は不安に思いながらも、ミャアが戦うことを了承した。
 もし、駄目そうであればディータにフォローしてもらおう。
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