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4章

教会の魔族

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 私たちは、薬局に寄って男性の必要な薬を持ち出すと教会へと移動した。
 道中、何回かごろつき紛いの奴らに絡まれたが、ほとんど魔法ひとつで倒してしまう。


「カモメさんはお強いんですね」
「まぁね、これでも冒険者だから♪」
「なるほど、そうなんですね。でもなぜ、顔を隠されているんですか?」
「うっ」


 やっぱり気になるよね、シェリーはすぐにフードを取って歩くようになったのだが私は未だフードを被ったまま、実際王女であるシェリーの方が付けてないといけないはずなのだけど、会うごろつきすべてが王女の顔知らないのだから隠す必要がないということで被らなくなった。

 帝国もなんでこんな奴らに見張り紛いの事をさせてるんだろ・・・意味あるのかな。
 

「あ、すみません、お気分を害してしまいましたか?」
「あ、ううん、そんなことは無いよ」
「カモメ、フードを取りなさい」


 私がしどろもどろにしていると、ディータがフードを取るように言う。


「え、でも・・・」
「ずっと隠したままには出来ないわ、この国の人がどういう反応をするのか見ておくためにも彼に見せると言いわ」
「う、うん・・・」


 そう言われて、私はフードを取る。
 フードを外すと黒い私の髪が露になった。


「黒い・・・髪・・・闇の魔女・・・?」


 私の髪を見た、男性は驚きのあまり腰を抜かして尻餅をついてしまう。


「まあ、大声を出されなかっただけましじゃないかしら?」
「だね、えっと・・・私は確かに闇の魔女って言われてるけど、この国に害をなしに来たわけじゃないんだよ」
「ほ、本当に・・・?」


 私の言葉を信じられず、男性はシェリーの方を見る。
 するとシェリーは大きくうなずき笑顔で男性に話しかけた。


「私も砦でお姉さまに命を救われました、そして、この国を取り戻す手助けをしてくれると言ってくれたのです」
「・・・・・・僕は・・・信じます。助けてもらいましたし、妻の薬も取りに行かせてもらいました・・・何より、先ほどから話をさせてもらっていて悪い人じゃないと思います・・・だから、信じようと思います」
「ありがとう」


 この人には信じてもらえた、でももし、助ける前にこの髪を見せていたらどういう反応だったのだろう。


「ですが、他の人達が信じてくれるかは・・・」
「だよね」


 私と同じことを考えたのだろう、男性は言いにくそうにそう言う。


「私が先に入って、説明をしてきます、お姉さまはこちらでお待ちください」
「ぼ、僕も及ばずながら皆にカモメさんの良さをお伝えします!」
「わかったよ」


 私とディータを残して二人は教会に入ろうとする・・・が。


「きゃああああああああああああああああああああ!」


 突如、教会の中から大きな悲鳴が聞こえた。


「何が!?」
「っ!」


 悲鳴に驚くシェリーと男性を置いて、私とディータはその声に反射的に動き出す。
 扉を開いて中に入ると、そこには異形の者とそれにおびえる人たち、そしてそれと対峙するエリンシアの姿があった。


「エリンシア!」
「遅いですわよ、カモメさん!」
「ごめん!」


 薬局に寄ってから来た分、私達は遅れて着いている、先に着いたエリンシア達はすでに教会の中に入っていたようだ。

 異形の物は恐らく魔族であろう、しかし、なぜ魔族がここに?


「エリンシア、状況の説明をお願いするわ」


 ディータがエリンシアに状況を訪ねるとエリンシアは異形の魔族と戦いながら状況を説明してくれた。
 

「ワタクシとレイモンドさんがこちらに着くと、レイモンドさんのお陰もあって・・・わっと!聖滅弾セイクリッドブリッツ!!・・・・・・すんなりとここの人達と打ち解けましたのっ・・・あぶなっ・・・・ですけど、いきなりこの魔族が現れて、人々を襲い始めましたのよっ!・・・光纏拳リヒトポワン・・・・おうざったいですわ!!」


 拳を光らせるとエリンシアは異形の魔族の顔面らしきところを思いっきり殴りつけた。
 魔族は殴られ吹き飛ぶと壁にまで跳んでいき叩きつけられる。


「すごい、魔族を素手で・・・」


 その様子を見たシェリーは驚きの声を上げた。


「カモメさん、こちらはワタクシに任せて怪我人の治療をお願いしますわ!」
「了解!」


 あの魔族はエリンシアに任せて、私は怪我をしている人の方へと駆け寄る。
 そこにはレイモンドさんがいて、傷の深い人の止血をしていた。


「ひっ・・・黒い髪・・・闇の魔女!!」


 私に気付いた女性が悲鳴をあげる。そしてその悲鳴を聞いて、私に気付いた人たちが恐怖に顔を歪めた。
 

「大丈夫、治療をするだけだよ」
「その方は私たちの味方です!」
「お姉さまはこの国を救うために来てくれました・・・私が保証します」
「王女様・・・」
「本当だ、シェリー王女様だ・・・」


 恐怖に顔を歪めた人たちがシェリーの姿を見て驚きの表情へと変わるが、まだ、私を信用できずにいるようで、私に対して警戒をしている・・・すると。


「まじょのおねーちゃん・・・怪我治せるの・・・?」
「え、うん・・・どこか怪我したの?」
「ううん、ぼくじゃなくて、おかーさんが・・・」
「え?」


 少年が指を指す方向を見ると、かなりひどい傷を負った女性が壁にもたれて座っていた。
 多く血を流しているのかその顔はすでに青みがかっており、かなりひどい状態なのが見て取れる。


「いけないっ」


 それを見て、私は慌てて、走り寄った。


「大丈夫!?・・・ひどいっ・・・・|治癒魔法《ヒーリング」


 その女性は腹部を抉られていた、もう少し遅かったら私じゃ助けられなかったかも・・・。
 そう思いながら今ならまだ治せると治癒魔法を全力で掛けた。



「うっ・・・」
「おかーさん!!」


 傷が塞がると、女性は目を覚ます。怪我が治り顔色が良くなった女性に子供は喜び抱き着いた。


「大丈夫?結構血を流しちゃってるから、しばらくは安静にしててね」
「・・・え?、あ・・・はい、ありがとうございます」
「他に怪我をしている人は?」


 その様子を見ていた他の人達も恐る恐るという感じではあるが、私に歩み寄ってきてくれた。
 とにかく今は、怪我人を治さないとね、コロがいればもう少し簡単だったのかもしれないけど・・・はあ、私も変身の指輪貰っとけばよかったかなぁ。

 小さくため息を吐きながら私は怯える怪我人の治療を続けるのだった。


 
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