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4章
潜入
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私たちは今、クーネル国の王都、クーネルにいる。
8人で来た私たちは一旦、三手に分かれて目立たないよう潜入しようということになった。潜入後の合流地点は王都の教会である。その為場所を知っている、シェリー、アルバート、レイモンドは三つそれぞれに分かれている。
アルバートは最後までシェリーと別れるのを拒んでいたけど、シェリーの説得でなんとか納得してもらった。
「思ったより簡単に潜入で来たね」
「まさか、見張りがいないとは思いませんでした」
私はシェリーと一緒に行動をしている。シェリーと行動を共にすることで、国民と出会っても、自分が協力者であることをアピール出来るためである。
「完全に油断しているのか絶対の自信があるのか・・・」
「あんまり、別れた意味なかったかしらね」
「はい・・・ですが、何があるかわかりません」
「そうだね、先ずは住宅の様子を見ながら教会に移動しよう」
「はい、お姉さま」
私とシェリーとディータの3人は王都の南側から、そして、エリンシアとレイモンドは西側、ミャアとコロ、そしてアルバートは東側から潜入をしていた。
しかし、私とシェリーの潜入した南側の門には魔族どころか普通の兵士すらいなかった。どうやら魔族たちはこの街を守る気はないのだろう。
仮に盗賊やモンスターが来ても撃退などしませんよ、ということなのだ。
街の中には人が何人かいるけど、どれもまともな人間には思えない。
魔族とか異形とかそう言う事じゃなくて、堅気の人間じゃないような感じの眼付きの男たちがチラホラ歩いているという感じなのだ。
少し歩いていると道に倒れた人がいる。喧嘩でもしたのか・・・ううん、どちらかと言うと集団でリンチでも受けたのかというくらい全身が腫れあがっていた。
「大丈夫!」
シェリーが倒れている男に近づく、男は小さな呻き声を上げるだけでちゃんと返事が出来なかった。
「治癒魔法」
私は、治癒魔法をその男性に掛けてあげた。腫れは見る見るうちに引いていき、男性の意識もはっきりしとしてくる。
「あ、ありがとうございます」
「大丈夫?何があったの?」
私が尋ねると、男性は暗い顔をして俯いてしまった。
「私がわかりますか?」
シェリーは被っていたフードを取ると、自分の顔を男性に見せる。
すると男性は目を丸くして驚いていた。
「シェリー王女様?」
「はい、よければ今の王都の状況を教えてはもらえませんか?」
「・・・・・・最悪です」
「?」
シェリーに気付いた男性が一瞬明るい顔をするが、今の自分たちの現状を思い出したのかすぐさま暗い顔へと戻る。
「帝国がこの国を乗っ取った後、帝国の兵士たちは街から金目の物やめぼしい食べ物をすべて持っていきました。」
「そんな、では今、国民たちはどうやって生活をしているのです!」
お金はともかく、食べ物まで持っていかれたとなると生きていくことができない。
「神父様が菜園している野菜を頂いて、なんとか・・・量は少ないですが」
話を聞くと、どうやら教会で育てていた野菜を国民みんなで分けながら何とか生き延びて来たようだ。
丁度これから向かう教会に、国民すべてが避難しているらしい、なぜ避難しないと行けなかったのかと言うと先ほどからこちらを見ている男たちが原因のようだ。
「アイツらは一体何なの?」
「この国を縄張りにしていた盗賊たちのようです、帝国の兵士に雇われたらしく、監視の真似事を」
なるほど、通りでいやらしい目つきをしているわけだ。
「おいおい、見かけねぇ奴がいると思ったら、旅人か何かか?こんな国に来ちまうなんてお嬢ちゃんたち付いてないねぇ」
周りにいる男たちは王女の顔を知らないのかニヤニヤするだけでシェリーの正体に気付いていない。
「私達も教会に行く予定なんだけど一緒に行かない?」
「え、ですが、あいつらは男は気が済むまで殴り続け、女性はその・・・」
そこまで言って、男性は口ごもる・・・なるほど、やりたい放題なわけだ、気に入らないね。
「大丈夫、大丈夫」
「お姉さまはとっても強いんです!」
「あんな雑魚、カモメに掛かれば一瞬よ」
「え?」
「ってことで、電爆撃!!」
「「「「ぎゃああああああああああ!」」」」
私が雷の魔法を放つと、私たちの周りを囲んでいた盗賊くずれ達は汚い悲鳴を上げて黒焦げになった。
「いっちょあがり~♪」
「さすがです、お姉さま!」
「お見事」
「・・・・・・・」
その光景に、男性は口をあんぐりと開け驚いていた。これくらい、ちょろいもんよ♪
「それじゃ、教会に行こう、私たちの仲間もそこに行くはずだから」
「は、はい・・・あ、いえその・・・」
「何かあるの?」
「この状況で教会から出てきているのだもの、何か理由があったんでしょ?」
私が行こうと言うと、男性は口ごもった。
ディータの言う通り、よく考えてみるとこの男性が外にいるのは理由がありそうだ。
「その、妻が病気で・・・薬局に薬を取りに・・・」
「なるほど、じゃあ、そこに寄ってからいこっか」
「いいんですか?」
「当然」
「ありがとうございます!」
私たちは改めて薬局に寄ってから教会に向かうことにした。
不幸中の幸いというか、街の人たちが同じ場所にいてくれると言うのは助かるね、避難誘導がしやすいよ。後は、今つけている私のフードをいつとるか・・・だよね。
実を言うと今までずっとフードを被った状態でいるのだ、黒い髪を見られると闇の魔女だとバレしまうので・・・でも、ずっと隠したままというのは無理だろう。
いつとろうか、そう考えながら私たちは薬局へと足をむけるだった。
8人で来た私たちは一旦、三手に分かれて目立たないよう潜入しようということになった。潜入後の合流地点は王都の教会である。その為場所を知っている、シェリー、アルバート、レイモンドは三つそれぞれに分かれている。
アルバートは最後までシェリーと別れるのを拒んでいたけど、シェリーの説得でなんとか納得してもらった。
「思ったより簡単に潜入で来たね」
「まさか、見張りがいないとは思いませんでした」
私はシェリーと一緒に行動をしている。シェリーと行動を共にすることで、国民と出会っても、自分が協力者であることをアピール出来るためである。
「完全に油断しているのか絶対の自信があるのか・・・」
「あんまり、別れた意味なかったかしらね」
「はい・・・ですが、何があるかわかりません」
「そうだね、先ずは住宅の様子を見ながら教会に移動しよう」
「はい、お姉さま」
私とシェリーとディータの3人は王都の南側から、そして、エリンシアとレイモンドは西側、ミャアとコロ、そしてアルバートは東側から潜入をしていた。
しかし、私とシェリーの潜入した南側の門には魔族どころか普通の兵士すらいなかった。どうやら魔族たちはこの街を守る気はないのだろう。
仮に盗賊やモンスターが来ても撃退などしませんよ、ということなのだ。
街の中には人が何人かいるけど、どれもまともな人間には思えない。
魔族とか異形とかそう言う事じゃなくて、堅気の人間じゃないような感じの眼付きの男たちがチラホラ歩いているという感じなのだ。
少し歩いていると道に倒れた人がいる。喧嘩でもしたのか・・・ううん、どちらかと言うと集団でリンチでも受けたのかというくらい全身が腫れあがっていた。
「大丈夫!」
シェリーが倒れている男に近づく、男は小さな呻き声を上げるだけでちゃんと返事が出来なかった。
「治癒魔法」
私は、治癒魔法をその男性に掛けてあげた。腫れは見る見るうちに引いていき、男性の意識もはっきりしとしてくる。
「あ、ありがとうございます」
「大丈夫?何があったの?」
私が尋ねると、男性は暗い顔をして俯いてしまった。
「私がわかりますか?」
シェリーは被っていたフードを取ると、自分の顔を男性に見せる。
すると男性は目を丸くして驚いていた。
「シェリー王女様?」
「はい、よければ今の王都の状況を教えてはもらえませんか?」
「・・・・・・最悪です」
「?」
シェリーに気付いた男性が一瞬明るい顔をするが、今の自分たちの現状を思い出したのかすぐさま暗い顔へと戻る。
「帝国がこの国を乗っ取った後、帝国の兵士たちは街から金目の物やめぼしい食べ物をすべて持っていきました。」
「そんな、では今、国民たちはどうやって生活をしているのです!」
お金はともかく、食べ物まで持っていかれたとなると生きていくことができない。
「神父様が菜園している野菜を頂いて、なんとか・・・量は少ないですが」
話を聞くと、どうやら教会で育てていた野菜を国民みんなで分けながら何とか生き延びて来たようだ。
丁度これから向かう教会に、国民すべてが避難しているらしい、なぜ避難しないと行けなかったのかと言うと先ほどからこちらを見ている男たちが原因のようだ。
「アイツらは一体何なの?」
「この国を縄張りにしていた盗賊たちのようです、帝国の兵士に雇われたらしく、監視の真似事を」
なるほど、通りでいやらしい目つきをしているわけだ。
「おいおい、見かけねぇ奴がいると思ったら、旅人か何かか?こんな国に来ちまうなんてお嬢ちゃんたち付いてないねぇ」
周りにいる男たちは王女の顔を知らないのかニヤニヤするだけでシェリーの正体に気付いていない。
「私達も教会に行く予定なんだけど一緒に行かない?」
「え、ですが、あいつらは男は気が済むまで殴り続け、女性はその・・・」
そこまで言って、男性は口ごもる・・・なるほど、やりたい放題なわけだ、気に入らないね。
「大丈夫、大丈夫」
「お姉さまはとっても強いんです!」
「あんな雑魚、カモメに掛かれば一瞬よ」
「え?」
「ってことで、電爆撃!!」
「「「「ぎゃああああああああああ!」」」」
私が雷の魔法を放つと、私たちの周りを囲んでいた盗賊くずれ達は汚い悲鳴を上げて黒焦げになった。
「いっちょあがり~♪」
「さすがです、お姉さま!」
「お見事」
「・・・・・・・」
その光景に、男性は口をあんぐりと開け驚いていた。これくらい、ちょろいもんよ♪
「それじゃ、教会に行こう、私たちの仲間もそこに行くはずだから」
「は、はい・・・あ、いえその・・・」
「何かあるの?」
「この状況で教会から出てきているのだもの、何か理由があったんでしょ?」
私が行こうと言うと、男性は口ごもった。
ディータの言う通り、よく考えてみるとこの男性が外にいるのは理由がありそうだ。
「その、妻が病気で・・・薬局に薬を取りに・・・」
「なるほど、じゃあ、そこに寄ってからいこっか」
「いいんですか?」
「当然」
「ありがとうございます!」
私たちは改めて薬局に寄ってから教会に向かうことにした。
不幸中の幸いというか、街の人たちが同じ場所にいてくれると言うのは助かるね、避難誘導がしやすいよ。後は、今つけている私のフードをいつとるか・・・だよね。
実を言うと今までずっとフードを被った状態でいるのだ、黒い髪を見られると闇の魔女だとバレしまうので・・・でも、ずっと隠したままというのは無理だろう。
いつとろうか、そう考えながら私たちは薬局へと足をむけるだった。
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