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3章

神将アルメルダ

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「さて、魔女のお嬢ちゃんは生け捕りにしろっていわれてるんだよねぇ」
「私を生け捕り?なんで?」
「さあねぇ、そいつはお兄さんもしらねぇや、上からの命令ってやつでね」


 上?・・・魔族の上と言ったら魔王だよね?
 魔王が私に何か用があるのかな?・・・それとも他に魔族に命令できる奴が?


「魔王の命令ってこと?」
「・・・へえ・・・・はははっ、残念だけどそいつも言えねぇな・・・しかし、魔女の嬢ちゃん魔王さまの事・・・知ってるんだ?」


 魔族の目が怪しく光る、魔王の事を口に出したのは迂闊だったかな・・・むぅ、こういう頭を使った話ってのは苦手なんだよね。


「どうして魔王さまの存在を知っているのかお兄さんに教えてくれないかい?」
「アンタが誰から命令されたのか言ったらね!」


 私はそう言うとバトーネを振りかぶりながら魔族へと突撃する。


「それは残念」


 魔族は素早い動きで即座に別の場所に移動して私の攻撃を躱す。この魔族、かなり動きが速い。
考えながら戦ってっちゃ捉えきれないね――――――――。

 私はそう思うと、即座に次の行動へ移る。


 「闇雷纏シュベルクレシェント


 私は闇の魔法で身体能力を上げ、雷の如き速さで魔族へと接近した。


「なに!?」


 バトーネに魔力を込め、思いっきり魔族を攻撃する。
その攻撃はお腹に命中し、魔族は声を漏らした。


「くっ・・・予想以上に危険な相手だねぇ・・・それにその魔法・・・闇の子か」
「魔族はみんなそう言うね・・・闇の子ってなに?」
「嬢ちゃんみたいに闇の魔法を使う人間の事さ・・・闇の魔女の遺産とでもいうべきか?」


 そうか、魔族の中ではディータは死んだことになっているんだね、そもそも、異空間に魂を逃がしただけで肉体は死んでいるのだから当然か。でも、そうするともう一つ疑問が出てくる。


「なんで、闇の女神がこの魔法を残したと思うの?」


 ディータが生きているのを隠しながらしゃべるのは難しいね・・・こういうの私苦手なんだけど。とはいえ、ディータが生きているのがバレたら魔王が直接ここに来てしまうかもしれない、それは避けないとね。


「ははっ、あのお方の眼はごまかせないということさ」
「あのお方?」
「喋り過ぎたかな・・・」
「!!っ」


 魔族は私に向かって細い針のようなものを飛ばしてくる。私はそれをバトーネで撃ち落とした。


「おしゃべりは終わりにしようか!」


 魔族はすごいスピードでこちらに向かってくる、だが、闇の魔法で強化した私はそのスピードにもついていける、敵の攻撃をバトーネで受けて蹴りを喰らわす。


「ぐっ」


 顔に蹴りを喰らってのけ反った魔族に私は闇雷纏シュベルクレシェントを解き、大技を喰らわせる。


闇魔滅砲イビルスレイヤー!!」


 私の突き出した両掌から闇の波動が吹き出す。


「なっ・・・ぐ、ぐおおおおおおおお!!」


 闇の魔力が魔族を呑み込む、この魔法はオプスラミナほどの器用さは無いがその分、広範囲の高威力を敵にたたき出す魔法である。ただし、直線上にしか放てない為、敵の体制を崩してから出なければ簡単に避けられてしまうので使いにくいが、決まれば弱い魔族であれば一撃で消滅させられることが出来る威力があるのだ。


「・・・仕留めきれてないかな」


 私は、魔法を撃った感触でなんとなくまだ魔族を消滅させられていないことを直感する。そして、すぐさま追撃を放った。


闇の刃オプスラミナ!!」


 闇の刃が私の勘が告げている敵のいる場所に目掛けて飛んでいく、だが、その刃は目標に届く前に打ち砕かれてしまった。


「いてーいてー、やるねぇお嬢ちゃん?」


 確かにイビルスレイヤーを直撃させたはずだというのに、魔族はダメージを受けているのもののまだまだ元気という感じであった。


「それなら――――」


 以前、魔人との戦いに使った黒炎滅撃フレアザードであればあいつを消滅させられるか、街への被害とかを考えればおいそれとは撃てないが、とはいえ、負けるわけにもいかないのだ。


「こえぇなぁ、まだまだ切り札はあるって顔しちゃってらぁ」


 確かに、今ので倒せなかったとしてもフレアザードを始め、まだまだやりようはある。


「こいつは辛いねぇ、まあ、情報だけでも持って帰った方がいいか―――」


 それはまずい、私が闇の魔法を使えることはまだ魔王に知られていないから、今まで追われるのは人間だけで済んでいたのだ。ここでこいつを逃がすわけにはいかない!私は敵を逃がさない為にも最大の技で一気に決めようとした――――――が。


「フレアザ――――――」
「おっと、そうはいかねぇ!」


 魔族は私とは違う方向に掌を向けると、針のようなものを放つ、そして、その向かう先にはリーナの姿があった。


「・・・え?」
「リーナ!!」


 私はフレアザードを使うのを中断し闇雷纏シュベルクレシェントでスピードを上げリーナの方へと走った――――――そして。


「カモメさん!?」


 身を挺してリーナを護った。


「おやおや、闇の魔女ちゃんは優しいんだねぇ」


 針は私の背中に深々と刺さる・・・私の背中を伝って、赤い血が地面へと落ちる。


「くっ・・・」
「これはチャンスかねぇ・・・いや、まだまだ諦めてねぇって面してるねぇ、ここで無暗に突っ込んだら返り討ちにあいそうだ」


 是非、無暗に突っ込んできて欲しいものである、そうすればカウンターでフレアザードをブチかましてやるのに・・・。


「俺は十二神将が一人、アルメルダだ・・・闇の魔女の嬢ちゃん、また会おうぜ?」


 そう言うと、アルメルダはあっさりとその場から消えた。
 十二神将というのは聞いたことがある、確か昔からある帝国の将軍職の筈だ・・・そんなのに魔族が紛れているというのなら、帝国はすでに魔族に乗っ取られているということか・・・いや、帝国の王が魔王の可能性もあるよね・・・。


「カモメさん!!」
「リーナ、無事?」
「は、はい・・・ごめんなさい、私のせいで・・・」
「リーナのせいじゃないよ、それにこれくらいなんてことないから」
「い、今、回復魔法を」
「ありがと♪」


 私は背中の傷をリーナに治してもらう。
 しかし、アイツを逃がしてしまったという事は、私が闇の魔法を使えることが魔王側に知られてしまったということだ・・・これからは魔族にも狙われることになるのだろうか・・・。いや、どちらにしても帝国を放っておくわけにはいかないんだ・・・ディータの悲願を叶える為にも、戦いの時が来たということだろう。


 私は一人、覚悟を決めてすでに姿の無いアルメルダのいた場所を見据えた。背後にいる魔王を見据えるように。
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