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3章

襲撃

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私達はドラグ山脈からツァインへと戻る道中にいた。
ツァインへはあともう少しで着くところまで来ていた。


「でも、すごいよねその指輪、人間にしか見えないもん」
「本当ね」
「ディータも貰ったらよかったんじゃない?そしたら、昔の姿に戻れたかもしれないじゃん」
「駄目よ」
「どして?」


変身の指輪で姿を変えたところで昔の魔力が戻るわけじゃない、魔石を食べてソウルイーターの体を成長させなければならないのは変わらないのだが、それでも、あのぬいぐるみみたいな姿じゃなくなるのはディータとしては嬉しいんじゃないだろうかと思ったのだけど、そうでもないのかな?
まあ私は、あの姿、可愛いと思うからいいんだけどね。


「私の本来の姿は魔王には知られているわ、もし、その姿で出歩こうものなら魔族に私やカモメの存在を知らせてしまうことになる。魔王が私の存在をしれば力の戻っていない今のうちに襲ってくるでしょうしね」
「なるほど・・・」



そっか、そうなると厄介だもんね。
私達の事が知られる前に魔王を見つけてこちらから仕掛けるのがベスト。ディータはそういうけど、闇の魔女の私の名前ってすでに世界中に知れ渡ってると思うんだよなー。
なんで、魔王に知られてないんだろう?


「あらぁん?」


私が、そんなことを考えていると、レディが何かに気付いたのか声を上げる。
レディの見ている方向を見ると、街道の上に何か大きなものが落ちているのが見えた。


「うーん、あれは人かニャ?」
「そうですよ、人が倒れてます!」


のんびりとみるミャアに対して、コロは慌てたように言った。
怪我をしているのかもと思い、私は倒れている人に駆け寄ると、倒れていたのはツァインの兵士の鎧を着た男性であった。


「大丈夫!?」


駆け寄った私は男性の傷を見て、息を飲む。
お腹のあたりを何かに貫かれたような傷があり、重症だ。


「これは・・・」


私の治癒魔法では到底治しきれないような傷であった。


「くっ・・・これは治せないわね・・・」


もっと治癒魔法に長けた者でもいれば治せたのかもしれないが、私やディータの魔法では治すことが出来ないほどの重症だ。
私は唇を噛む。


「あ、あの・・・僕なら・・・治せるかも・・・」
「コロ?」


コロがオズオズと声をあげながら言う。


「あなた魔法が使えるの?」
「回復魔法と防御魔法だけですけど・・・」
「じいの回復魔法はすごいのニャ!」
「そうよぉん、カモメちゃん、コロちゃんに任せてあげてぇん」
「もちろん、お願いコロ」
「は、はい!」


そういうと、コロはこちらに駆け寄ってきて倒れている男性に回復魔法を掛ける。


「すごい・・・」
「驚いたわね」


私とディータはそれを見て驚愕する。
この世の中にこれだけの回復魔法を使える者がどれだけいるだろうか?
それこそ、ベラリッサ法国の女神の化身と言われているメリアンナ法王くらいではないだろうか?

重傷を負っていた男性の傷は見る見るうちに治り、青ざめていた顔は血色もよくなり、呼吸も安定してきた。


「う・・・」


男性は傷が治り、気が付くと、私の顔を見て慌てたように掴み掛ってきた。


「ま、魔女様!!」
「わっと!?」
「ごほっごほっ!!」


回復したてで大声を出したためか男性は咳き込む。
私は背中をさすりながら男性を落ち着かせようとしたが・・・。


「落ち着いてなどいられません!帝国が宣戦布告を!」
「・・・え?ツァインに?」


帝国からこのツァインにくるにはいくつもの国を通らねばならない、軍隊を派遣するにしてもかなり難しいはずだ。
そう思ったからこそ、私はドラグ山脈に行ったのだから。


「いえ、全世界にです!すでにいくつかの国は攻められており、そして、どうやっているのかわかりませんが、帝国から遠く離れている国でもすでに滅んだという報告が!!」
「なっ!?」
「早すぎるわ・・・宣戦布告はいつされたの!?」
「グランルーンが滅んだ少し後です・・・グランルーンの街の様子を報告に向かわせたすぐ後に、宣戦布告をされ・・・慌ててさらに報告を向かわせようと思った矢先に帝国の兵士らしき者たちに襲われました」


く・・・とすると、かなり日数は立っているのか・・・グランルーンからここまで馬を走らせたとしても10日くらいはかかる・・・そんな中、すでに攻め滅ぼされた国まであるとなると・・・。


「みんな、とにかくお城に戻ってこの事を王様に・・・」



王様に知らせないと!と私が言おうとした時、遠くに小さく見えるツァインの街で大きな爆発が起きた。


「ちっ、遅かったみたいね!」
「ディータ、私達だけでも飛んで戻るよ!」
「私も行きます」
「アネルさん空を飛べるの?」
「ええ、大丈夫です」
「わかった!」


私と、ディータとアネルさんは空を飛んで急いでツァインに戻ることにした。


「レディ達も急いでツァインに向かって、その姿なら魔物には見えないはずだから、街の人たちを助けてあげてほしいの」
「わかったわぁん♪カモメちゃんも気を付けてねぇん」
「うん!」


そういうと、私達は魔法で空を飛び、急いでツァインへと戻るのであった。




====================================================



カモメさん達がドラグ山脈に出掛けてからそろそろ丸一日が立つ頃、先ほど、クオンさんにお説教まがいの事のを言ってしまった事を思い出しながら凹んでおりました。


「クオンさんの気持ちも考えず無責任でしたかしら・・・」


自分の好きな人が危険な目に遭っていると思えば何も考えず行動を起こしてしまうなど、当然のことですわ・・・。
ワタクシだって、あの時、カモメさんの魂が取られたと思って敵の懐にまんまと飛び込んでいってしまったのですから・・・人の事言えませんのにね。

でも、あのままクオンさんを行かせてしまったらきっとカモメさんを悲しませることになってしまったと思いますもの言ったことは間違えてはいないと思いますわ・・・。
それでも、後から思い返すと、もっと他に言いようがあったんじゃいないんですの・・・クオンさん、怒ってないといいですわ・・・。


クオン自身はエリンシアに感謝こそすれ怒ってなど微塵もいなかったのだが、友達付き合いの少ないエリンシアは自分の言ったことが良かったのか悪かったのか判断できずにいて悶々と悩み続けていたのだ。


「ああ・・・鳥は自由に空を飛べて気持ちよさそうですわね」


・・・すでに悩みすげてよくわからない状態である。



「ああ、悩んでも仕方ありませんわ!言ってしまった言葉は戻りませんのよ!それに、あそこまで大見えを切ったんですもの無様な姿はさらせませんわ!」


自分の両頬を叩きながら、エリンシアは自分を叱咤する。



「少し買い物でもして気分を変えましょうかしら・・・」


バルコニーから大通りの方を見てそう溢すと・・・大通りの上空に一人の男が浮いているのが見える・・・。


「なんですの?」


男は鎧を身に纏っており、一般人ではなくどこかの兵士であることが解った。


「あの鎧は確か帝国の・・・?」


なぜ、帝国の兵士が一人こんなところで宙に浮かびながらツァインの街を見下ろしているのかわからないがその男の表情を見てエリンシアは嫌な予感を覚える。
男は見下したように冷徹な表情で眼下の街を見下ろしていた。

そして、おもむろに手を上げると、まるで地獄の炎なのではと思う程の黒い炎が掌の上に現れる、そして、それを眼下へと投げ落としたのだ。


「いけませんわ!」


理由はわからないが、グランルーンを滅ぼした帝国の鎧を着た男が、ツァインの街へと攻撃を仕掛けたのだ。
エリンシアは咄嗟に魔導銃を抜き、黒い炎へと全力のフルバスターを放った。

黒い炎はフルバスターの光とぶつかり合うと大きな爆発を起こす。
その爆風だけでも下の街には被害が出てしまったのではないだろうか・・・だが、あれをそのまま落とせばもっと酷いことになっていただろう・・・。
エリンシアは黒い炎放った、男を睨みながらも銃を構え、バルコニーから飛び降り、街の方へと疾った。 
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