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2章
ツァインの魔女様
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崩れた門の周りに崩落から生き残った兵士たちが傷つき倒れていた。
「ぐっ・・・一体何が・・・」
「わからん、いきなり衝撃が走ったと思ったら門が崩れていた」
傷つきながらも生き残った兵士たちは何が起きたのか見ておらず、なぜ門が崩壊したのか解らず、戸惑っていた。
そんな不安と困惑を抱える兵たちを嘲笑うかのように街では爆音と炎が上がっているのだ。
「あれを起こした何者かが門を壊し街に侵入したのか・・・」
「だとしたら、街の人たちは!」
「すぐに助けに行かないと・・・ぐっ」
必死に立とうとするも傷が響いて立ち上がれない。
ツァインの危機という焦燥が兵士たちをさらに不安にした・・・そして。
一際大きな爆音が響き街の中で大きな爆発が起きる。
「な、なんだ・・・今の・・・」
「くっ、住民は無事か!・・・俺の生まれたばかりの赤ん坊と女房が街にいるんだぞ!」
「俺だって母ちゃんがまだ・・・くそっ、這ってでも助けに・・・」
足を折ってしまっている兵士の男が這ってでも門の瓦礫を登ろうとする。
だが、男が瓦礫に手を掛けた瞬間、男の上を何かが通ったのか影が移動した。
「な、なんだ?」
影の飛んでいった方向に視線を向けると少し離れた場所に砂煙が上がっていた。
あそこに落ちたのだろう。
煙が晴れると、そこには赤い悪魔のような姿をした異形の化け物がいた。
「な、なんだよ・・・あれ!」
兵士たちは魔人の姿を見るだけで恐怖に襲われた。
絶対的な強者に対する動物の本能なのだろう、腹の底から湧き上がる恐怖が傷ついた体をさらに動けなくした。
「あれは・・・魔人だ!」
一人の青年があの悪魔のような姿をした化け物の正体を言った。
「知ってるのか?」
「ああ、以前知り合いの学者が言っていたんだ、昔のこの国を襲った赤い魔人の話を。その魔人は人間の魂を生贄として呼び出される、そしてその呼び出された魔人は呼び出した人間の願いを必ず叶えるんだと」
「じゃあ、誰かがこの街を襲えって願ったって言うのかよ!」
「きっとそうだ、学者の言う昔の話だとその時は、ツァインの貴族に殺された家族の仇を取ってほしいと願ったらしい」
「それでどうなったんだよ・・・」
「その貴族の屋敷は跡形もなく消え、近くにいた人たちも巻き添えに当たり一面が焦土となったらしい・・・」
「見境なしかよ・・・」
「そんな化け物・・・どうしろって言うんだ・・・」
兵士の話を聞き他の者たちは絶望した表情になった。
遠目に見える赤い魔人はそれを軽々こなすだろう、そして、もし街全てが破壊の対象だとしたら・・・。
そんな怯える兵士たちの上をまた一つ小さな影が飛んでいく。
その影は魔人のいるところに着地すると魔人と会話をしているのかなにやら言い合っている。
「あ、あれって・・・魔女殿だよな?」
「ああ、あの黒髪・・・間違いない」
「確か午前中に門から外に出た魔女殿がなぜ、街の中から?」
「そんなの!ツァインの危機に飛んで戻って来てくれたにきまってるだろ!」
「じゃあ、俺たち助かるのか・・・?」
絶対的強者を遠目に見て死を覚悟していた兵士たちに希望の光が見える。
闇の魔女と言われる少女の力は以前ウェアウルフに襲われたときに自分の眼で確かめている兵士たちが多い。
その為、彼女の力もまた人知を超えたものだということを兵士たちは理解していた。
それゆえ、尊敬もしていたし、また恐怖もしていたのだが・・・。
「魔女殿!負けるな!」
「いいぞ、押してる!さすが魔女殿だ!!!」
死を覚悟していたところに舞い降りた魔女が魔人と戦う姿を見て、魔女に対しての恐怖など無くなっていた。
魔女が放つ魔法は徐々に魔人を押していく。
「勝てる!あの化け物に勝てるぞ!」
一人の兵士がそう叫んだ直後、魔人がさらに異形の化け物の姿に変身した。
「なっ・・・」
そのあまりにも凶悪な姿に兵士たちは絶句する。
そして、魔女が魔人の一撃を喰らってしまう。
「ああ・・・魔女殿・・・」
「あんな化け物、いくら魔女殿でも・・・」
見るからに勝てそうにない化け物を見て、今度こそ終わりだと観念してしまう。
だが、次の瞬間、魔女の周りに黒い雷のようなものが纏われた。
パチっピリッと時折、魔女の周りに雷のようなものが見える。
「魔女殿様子が・・・」
「なんだあれ・・・雷を纏った戦乙女みたいだ・・・」
彼らの中で戦乙女というのがどういうものなのかわからないが、黒雷を纏いバトーネを構える姿は雷のせいで淡く光る魔女の身体も相まってなかなかに神々しいものであった。
「かっこいい・・・」
「魔女様・・・神々しい・・・」
魔女様、魔女様と、その姿に兵士たちは完全に魅了されていた。
もちろん、カモメにそんなつもりは全然ない、ただ、まじめに戦っているだけである。
だが、一瞬優勢に戻ったかと思った魔女と魔人の戦いだったが、魔人が瞬間移動をしているかのように消えては攻撃を繰り返し始める。
その予想外の攻撃に戸惑っているのか魔女は次第に押され始めた。
「魔女様が!」
「あのくそ魔人・・・よくも俺の魔女様に・・・」
「馬鹿野郎!俺たちの魔女様だ!!」
先ほどまで魔人に恐怖していたはずの兵士たちが魔人へと怒りを向ける・・・ちょっとこわい。
だが、押されていたと思った魔女が自分の周囲を爆発させ、敵の魔弾を消滅させた。
そして、相手の近くに踏み込み逃げた魔人に、強烈な黒い魔法を放ったのである。
「いいぞ、魔女様!」
「かっこいい!」
「フレーフレー魔女様!」
いつの間にか応援団のようになっている兵士たち、すでに彼の頭の中に国のピンチはないのだろうか・・・と思わせるくらい応援に熱中している兵士たちだったがいきなり現実に引き戻された。
「な、なんだよあれは!?」
「あの魔人・・・こっちを向いてないか!?」
「もしかして、勝てないと諦めて、街だけでも破壊しようと・・・?」
一人の男の言葉が的中する、魔人はこのツァインに向けて全魔力を注ぎ込んだ攻撃を仕掛けてきたのだ。
「そんなっ」
「嫌だああ、死にたくない!!」
兵士たちの悲鳴を上げる。
「魔女様!」
一人の兵士が自分たちと魔人の間に移動していた魔女の姿を発見した。
「魔女様!逃げてください、いくら魔女様でもあれは無理です!」
自分たちは傷のせいで動くことも出来ない、いや、仮にあれを避けれたとしても自分たちの帰る場所は無くなってしまう。
でも、魔女様はツァインでなくてもやっていけるのだ、心中する必要はない。
そう思っての発言であったのだが、兵士たちの前に立った魔女からとてつもない魔力が溢れ出した。
「魔女様・・・?」
そして、凄まじい黒い炎が自分たちに襲い掛かってくる魔人の巨大な魔力撃を焼き尽くし消滅させ、そのまま天高く浮かぶ雲をも突き抜けていった。
「すごい・・・」
自分たちは魔女に救われた・・・そう、確かに認識したのだった。
魔人は全ての魔力を使い果たし魔女の魔法によって跡形もなく消えていた。
そして、自分たちを救ってくれた魔女はその場に倒れるのだった。
「ま、魔女様!」
傷により駆け寄ることの出来ない兵士たちが体を引きずりながらも魔女の元へと向かう。
「だ、大丈夫、息はある」
自分たちを救ってくれた英雄は魔力を使い果たし倒れただけで命に別状は無かった。
「こうしてみるとただの女の子なのにな・・・」
「俺、魔女様のファンクラブ作ろうかな・・・」
「お、いいな、俺も入る」
「俺もだ!」
魔人という恐怖が去り、ツァインの国は闇の魔女の手によって救われた。
しかし、闇の魔女の受難は別の方向で続くのかもしれない。
2章 完
「ぐっ・・・一体何が・・・」
「わからん、いきなり衝撃が走ったと思ったら門が崩れていた」
傷つきながらも生き残った兵士たちは何が起きたのか見ておらず、なぜ門が崩壊したのか解らず、戸惑っていた。
そんな不安と困惑を抱える兵たちを嘲笑うかのように街では爆音と炎が上がっているのだ。
「あれを起こした何者かが門を壊し街に侵入したのか・・・」
「だとしたら、街の人たちは!」
「すぐに助けに行かないと・・・ぐっ」
必死に立とうとするも傷が響いて立ち上がれない。
ツァインの危機という焦燥が兵士たちをさらに不安にした・・・そして。
一際大きな爆音が響き街の中で大きな爆発が起きる。
「な、なんだ・・・今の・・・」
「くっ、住民は無事か!・・・俺の生まれたばかりの赤ん坊と女房が街にいるんだぞ!」
「俺だって母ちゃんがまだ・・・くそっ、這ってでも助けに・・・」
足を折ってしまっている兵士の男が這ってでも門の瓦礫を登ろうとする。
だが、男が瓦礫に手を掛けた瞬間、男の上を何かが通ったのか影が移動した。
「な、なんだ?」
影の飛んでいった方向に視線を向けると少し離れた場所に砂煙が上がっていた。
あそこに落ちたのだろう。
煙が晴れると、そこには赤い悪魔のような姿をした異形の化け物がいた。
「な、なんだよ・・・あれ!」
兵士たちは魔人の姿を見るだけで恐怖に襲われた。
絶対的な強者に対する動物の本能なのだろう、腹の底から湧き上がる恐怖が傷ついた体をさらに動けなくした。
「あれは・・・魔人だ!」
一人の青年があの悪魔のような姿をした化け物の正体を言った。
「知ってるのか?」
「ああ、以前知り合いの学者が言っていたんだ、昔のこの国を襲った赤い魔人の話を。その魔人は人間の魂を生贄として呼び出される、そしてその呼び出された魔人は呼び出した人間の願いを必ず叶えるんだと」
「じゃあ、誰かがこの街を襲えって願ったって言うのかよ!」
「きっとそうだ、学者の言う昔の話だとその時は、ツァインの貴族に殺された家族の仇を取ってほしいと願ったらしい」
「それでどうなったんだよ・・・」
「その貴族の屋敷は跡形もなく消え、近くにいた人たちも巻き添えに当たり一面が焦土となったらしい・・・」
「見境なしかよ・・・」
「そんな化け物・・・どうしろって言うんだ・・・」
兵士の話を聞き他の者たちは絶望した表情になった。
遠目に見える赤い魔人はそれを軽々こなすだろう、そして、もし街全てが破壊の対象だとしたら・・・。
そんな怯える兵士たちの上をまた一つ小さな影が飛んでいく。
その影は魔人のいるところに着地すると魔人と会話をしているのかなにやら言い合っている。
「あ、あれって・・・魔女殿だよな?」
「ああ、あの黒髪・・・間違いない」
「確か午前中に門から外に出た魔女殿がなぜ、街の中から?」
「そんなの!ツァインの危機に飛んで戻って来てくれたにきまってるだろ!」
「じゃあ、俺たち助かるのか・・・?」
絶対的強者を遠目に見て死を覚悟していた兵士たちに希望の光が見える。
闇の魔女と言われる少女の力は以前ウェアウルフに襲われたときに自分の眼で確かめている兵士たちが多い。
その為、彼女の力もまた人知を超えたものだということを兵士たちは理解していた。
それゆえ、尊敬もしていたし、また恐怖もしていたのだが・・・。
「魔女殿!負けるな!」
「いいぞ、押してる!さすが魔女殿だ!!!」
死を覚悟していたところに舞い降りた魔女が魔人と戦う姿を見て、魔女に対しての恐怖など無くなっていた。
魔女が放つ魔法は徐々に魔人を押していく。
「勝てる!あの化け物に勝てるぞ!」
一人の兵士がそう叫んだ直後、魔人がさらに異形の化け物の姿に変身した。
「なっ・・・」
そのあまりにも凶悪な姿に兵士たちは絶句する。
そして、魔女が魔人の一撃を喰らってしまう。
「ああ・・・魔女殿・・・」
「あんな化け物、いくら魔女殿でも・・・」
見るからに勝てそうにない化け物を見て、今度こそ終わりだと観念してしまう。
だが、次の瞬間、魔女の周りに黒い雷のようなものが纏われた。
パチっピリッと時折、魔女の周りに雷のようなものが見える。
「魔女殿様子が・・・」
「なんだあれ・・・雷を纏った戦乙女みたいだ・・・」
彼らの中で戦乙女というのがどういうものなのかわからないが、黒雷を纏いバトーネを構える姿は雷のせいで淡く光る魔女の身体も相まってなかなかに神々しいものであった。
「かっこいい・・・」
「魔女様・・・神々しい・・・」
魔女様、魔女様と、その姿に兵士たちは完全に魅了されていた。
もちろん、カモメにそんなつもりは全然ない、ただ、まじめに戦っているだけである。
だが、一瞬優勢に戻ったかと思った魔女と魔人の戦いだったが、魔人が瞬間移動をしているかのように消えては攻撃を繰り返し始める。
その予想外の攻撃に戸惑っているのか魔女は次第に押され始めた。
「魔女様が!」
「あのくそ魔人・・・よくも俺の魔女様に・・・」
「馬鹿野郎!俺たちの魔女様だ!!」
先ほどまで魔人に恐怖していたはずの兵士たちが魔人へと怒りを向ける・・・ちょっとこわい。
だが、押されていたと思った魔女が自分の周囲を爆発させ、敵の魔弾を消滅させた。
そして、相手の近くに踏み込み逃げた魔人に、強烈な黒い魔法を放ったのである。
「いいぞ、魔女様!」
「かっこいい!」
「フレーフレー魔女様!」
いつの間にか応援団のようになっている兵士たち、すでに彼の頭の中に国のピンチはないのだろうか・・・と思わせるくらい応援に熱中している兵士たちだったがいきなり現実に引き戻された。
「な、なんだよあれは!?」
「あの魔人・・・こっちを向いてないか!?」
「もしかして、勝てないと諦めて、街だけでも破壊しようと・・・?」
一人の男の言葉が的中する、魔人はこのツァインに向けて全魔力を注ぎ込んだ攻撃を仕掛けてきたのだ。
「そんなっ」
「嫌だああ、死にたくない!!」
兵士たちの悲鳴を上げる。
「魔女様!」
一人の兵士が自分たちと魔人の間に移動していた魔女の姿を発見した。
「魔女様!逃げてください、いくら魔女様でもあれは無理です!」
自分たちは傷のせいで動くことも出来ない、いや、仮にあれを避けれたとしても自分たちの帰る場所は無くなってしまう。
でも、魔女様はツァインでなくてもやっていけるのだ、心中する必要はない。
そう思っての発言であったのだが、兵士たちの前に立った魔女からとてつもない魔力が溢れ出した。
「魔女様・・・?」
そして、凄まじい黒い炎が自分たちに襲い掛かってくる魔人の巨大な魔力撃を焼き尽くし消滅させ、そのまま天高く浮かぶ雲をも突き抜けていった。
「すごい・・・」
自分たちは魔女に救われた・・・そう、確かに認識したのだった。
魔人は全ての魔力を使い果たし魔女の魔法によって跡形もなく消えていた。
そして、自分たちを救ってくれた魔女はその場に倒れるのだった。
「ま、魔女様!」
傷により駆け寄ることの出来ない兵士たちが体を引きずりながらも魔女の元へと向かう。
「だ、大丈夫、息はある」
自分たちを救ってくれた英雄は魔力を使い果たし倒れただけで命に別状は無かった。
「こうしてみるとただの女の子なのにな・・・」
「俺、魔女様のファンクラブ作ろうかな・・・」
「お、いいな、俺も入る」
「俺もだ!」
魔人という恐怖が去り、ツァインの国は闇の魔女の手によって救われた。
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