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1章
闇の魔法
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闇・・・この場を表現するのであれば、それが一番相応しいだろう。
周りは黒一色で何もない、見渡す限りの闇である。
「ここは・・・?」
私はさっきまで化け物になった盗賊と戦っていたはずだ。
そう、とんでもなく強く、私の合成魔法もクオンの剣も効かない化け物・・・。
「クオンは!・・・一体ここはどこ!?」
一面闇の世界、ここはどこ?
周りには目の前に小さな光があるだけで、誰もいない。
もしかして私は死んじゃったのかな?
『落ち着きなさい』
「ひゃわ!?」
突如、頭の中に響いてくるような声が聞こえ、私は驚く。
「・・・だれ?どこにいるの?」
『目の前にいるわよ』
目の前?目の前にはフヨフヨと浮く小さな明りがあるだけで出れもいない。
今気づいたけど、この目の前の光が無かったら本当に何も見えなくなっちゃうんだろうな。
だけど、目の前に光があるおかげで人がいないことが分かる。
「目の前って・・・誰もいないよ?」
『ここにいるわよ』
いるわよと言われても誰もいないのだ。
目の前には光が上下に動いているだけである。
・・・・・ん?
「え?もしかして」
『そうよ、ここよ』
そう言いながら、目の前の光は上下した。
もしかして目の前の光が?と思うとまるで自己主張をしているようにピョンピョン飛び跳ねているようにも見える・・・ちょっとかわいい。
「えっと、目の前の光の玉さん?」
『正解』
光の玉がしゃべってるうううう!?いや、口から言葉は出てないけど頭に直接響いているけど!
これって人魂ってやつなんじゃ!!!!
「お、お、お・・・・」
『お?』
私が言葉に詰まっていると人魂が『どうしたの?』私の顔の目の前に移動した。
「おばけえええええええええええええええええええええええええええ!?」
『ええええええええええええええ!?』
私は半狂乱である・・・おばけこわいもん。
私が半泣きになりながら闇の世界を逃げ出すと人魂は追いかけてきている。
その状況にさらに私はパニックになった。
時折、後ろで『お化けじゃなわよ』とか『逃げないで』とか『泣いてるカモメも可愛い』とか『カモメが逃げる・・ぐす』とか聞こえて来たけど
今の私はそれどころじゃない、とにかく逃げて逃げて逃げた。
お化けに捕まったら呪い殺されちゃうかもしれない!
私が必死になって逃げていると・・・
『カモメ、時間が無いのよ!あなたの相棒が死んでしまうわ!』
その言葉を聞いて私は急速に現実を思い出した。
そうだった、さっきまでいきなり化け物と変わった盗賊と戦っていて殺されかけていたのだ。
いや、心の片隅ではその盗賊に殺されてここは死後の世界なんじゃなんて思ってもいたのだ・・・そしてそれを認めたくも無かったから半ばやけになって逃げていた。
だが、後ろの人魂は「相棒が死ぬ」と言った。
つまり少なくともクオンはまだ死んでいないのだ。
なら、こんなことをしている訳にはいかない。
「クオンはまだ無事なの!?」
『ぷぎゅる!』
いきなり止まり振り返った私の顔に人魂が止まり切れずぶつかってくる。
「人魂さん!クオンは!」
そんなことお構いなしに私はクオンの事を人魂に聞く。
『ま、まだ生きているわ、でもこのままじゃ殺されるのは時間の問題ね』
「!・・・ならすぐに助けにいかきゃ!どうやったらクオンの所にいけるの!」
人魂が人の形をしていれば肩を持って揺さぶられるように私は人魂をガッチリつかみながら前後にゆする。
『あばばばば』と言っていた人魂がするりと私の手から逃れて、一つ溜息を吐いた。
『落ち着きなさい』
「落ち着けるわけないよ!!」
クオンが死んじゃうかもしれないのに落ち着いていられるわけがない。
私が再び人魂を掴もうと足を前にすと、人魂はさらに強い口調で言った。
『落ち着きなさい!!!!』
私は驚き竦む。
『今のままじゃ一緒に殺されるだけよ』
「でも、だからってクオンを見捨てるなんてできない!」
『でしょうね』
人魂は大きくため息を吐くと私に聞き取れないくらい小さな声で『貴方があの根暗坊主に惹かれてることくらい・・・あなたの中で見てたのだからしってるしぃ』とか言っていた。
『見捨てろなんて言わないわよ』
「え、だったらっ」
『話は最後まで聞きなさい』
だったら、すぐに連れて行ってと言おうと思ったのだがその言葉は途中で遮られた・・・。
『あなたの合成魔法でもあの魔鬼は倒せなかったでしょう』
「魔鬼?」
『ああ、あの化け物のことよ、魔族が作る醜悪な魔物よ』
どうやら、あの化け物は魔鬼というらしい。
そして、魔族が作るということはヘインズはお父さんの言う通り魔族だったのだろう。
『だから、あなたにあの魔鬼を倒せる力をあげるわ・・・欲しがったわよね?』
そうだ、私は確かに力を欲した。
あの魔鬼を倒せるだけの力が欲しいと願った・・・それを叶えに来てくれたの?
「・・・・」
『いきなり警戒されたわね・・・』
ちょっとショックと言いながら目の前の人魂は少しだけ小さくなった。
ショックを受けると小さくなるのか・・・。
『まあ、普通力をくれるなんて言ったら悪魔とか、そう言うのを警戒するわよね』
「うん・・・うまい話には裏があるってよくお父さんが言ってるもん」
『あの髭め』
「お父さんを知ってるの?」
私がお父さんというだけでお父さんの特徴である髭を言い当てた。
もしかしてお父さんの知り合い?
『面識はないわよ、あなたの中で見ていたから知っているだけ』
「私の中?」
『そのあたりの説明は後にするわ、今は時間があまりないもの』
そうだ、クオンは今も一人であの魔鬼と戦っているのだ。
悠長に話をしている場合ではない。
『本来ならちゃんと説明するところだけど、簡潔に言うわね・・・私は闇の女神ディータ、あなたに私の力を授けるわ』
闇の女神?・・・光の女神なら知っているけど闇の女神って初めて聞いたよ。
それに力を授けるってその力があれば魔鬼を倒せるって事?
『そう、私の力があればあの魔鬼に負けるなんてことはないわ・・・どうする?』
うさん臭さ100%である。
まるでこの不思議なツボを購入するとあなたの力が倍増します、ふふふ、どうです、普段なら金貨3枚のところを大銀貨5枚でお譲りしますよと言ってタダのツボを売りつけてくる悪質商人のようだ。
『信じられない?』
「うさん臭さ1000%」
『ぐはっ!』
ちょっと桁を増やして正直に言ってみると、自称闇の女神はショックをまた受けていた。
・・・しかし
「でも、それでクオンを助けられるなら信じてみようと思う」
『ホント!?』
私がそう言うと人魂は勢いよく私の方へと寄ってくる・・・犬みたいとちょっと思ってしまった。
『よかった、私、説明とか苦手なのよね・・・正直信用してもらえないんじゃないかと・・・』
「後で説明してくれるんだよね?」
『え、ええ、頑張ってするわ』
「ならお願い、力を貸して!」
『分かったわ』
そう言うと光は輝きを増した。
『私があなたに授けるのは闇の魔法、ちゃんと使いこなすには時間と訓練が必要だけどあの程度の魔鬼相手なら十分戦えるわ』
「闇の魔法・・・?」
『まあ、使い方はなんとなくわかるはずよ』
説明が苦手というだけのことはあってなんとアバウトであろう・・・なんとなくな上に筈なのか・・・。
光はさらに輝きを増し、一面闇の世界だった景色が今度は白一色へと変わった。
白い光に包まれると自分の内側からいつもと違う魔力があふれ出てくるのが分かる。
これが闇の女神の力?
次第に光が小さくなっていきもとの人魂の姿が見えてきた。
『ふう・・・これでちゃんとあなたに闇の女神の力を授けることが出来たわ・・・以前は失敗したからちょっと心配だったのよ』
「・・・以前?」
『あ、ううん、こっちの話よ。どう、闇の魔法の使い方理解できてそう?』
出来たと言った割に聞いてくるあたり本当に心配だったのだろう・・・大丈夫かな?
と、思った私だったけど、闇の魔法・・・と頭の中に思い浮かべるとそれがどんなものか理解できた。
「すごい・・・」
『でしょ!カモメならこの魔法のすごさ解ってくれると思ったわ♪』
私がそう言うと闇の女神は嬉しそうに飛び跳ねた・・・怖い人かなと思ったけどちょっと可愛いなこの人。あ、人じゃないのか。
『貴方には少し不快かもしれないけどしばらくは貴方の頭の中に直接話しかけてフォローするわね』
「あ、うん、ありがとう」
助言をしてくれるのは助かるね。
確かに使い方は分かったけど不安なことが多いのも確かだった。
「えっと、よろしくお願いします、闇の女神様」
『普通でいいわよ、私は堅苦しいの苦手なの。あとディータと呼んでほしいわ』
「わかった、ディータ。よろしくね!」
『それじゃあ、あの魔鬼を倒しちゃいなさい、話の続きはその後ね』
「うん、クオン大丈夫かな。結構時間経っちゃってるけど」
私がこの闇の世界に来てからかなり時間が立っている。
ここに来る前、クオンはすでにボロボロだった。
今もまだ無事でいるのか正直不安である。
『大丈夫よ、ここはあなたの心の中。現実ではまだそれほど時間が経っていないわ』
「え・・・?どういうこと?」
『そうね、えーっと・・・ここでの会話はあなたの頭の中で思い浮かべているようなものなのよ』
うんと・・・どういうことかな?
それがどう大丈夫なのだろう?
『えっと、だからね・・・頭の中でぱっと思いつくことってあるじゃない?』
「うん、ひらめいた!って感じの時かな?」
『そうそう、でもそれってひらめいた瞬間って一瞬でしょ?』
まあ、確かに・・・それまで色々考えている時もあると思うけど、ひらめいた瞬間ってことなら一瞬なのかな?
『ここでの会話はそのひらめいた瞬間なのよ』
「えっと、つまり今長いこと話していたけど、現実では一瞬のひらめき変わらないって事?」
『そうそう!さすがカモメ賢いわ♪』
ってことは現実ではまだ時間がほとんどたっていないのか・・・あれ?
「だったら、ここで全部説明してもらった方がいいんじゃない?」
時間がないから説明は後でってディータ言ってたよね?でも時間が経たないなら今教えてもらった方が確実にクオンを助けられるんじゃ?
『ごめんなさい、もうあんまりこの状態を保っていられないのよ』
「・・・え?」
もしかして、ディータにかなり無理をさせていたんだろうか?
そうだよ、よく考えたら女神さまがこんな姿で私の心の中にいるなんておかしいもんね。
もしかして、あまり力が残っていなくて力を振り絞って私たちを助けてくれているんじゃ・・・。
『私こういう繊細な魔法って苦手なのよね・・・疲れるわー』
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
『ん?どうしたの?』
「ナンデモナイ」
『そう?なら、とりあえず、この状態を解除するわね。後は現実でアドバイスしながら実践してみましょう』
「うん、お願い」
ディータは再度光を増した。
そして、今度はその光が収束すると私は急速に意識を取り戻した。
周りは木に覆われている。そして目の前には魔鬼の攻撃を躱しながら左腕に剣を持ち戦うクオンの姿があった。
『さあ、いくわよカモメ!』
「うん!」
周りは黒一色で何もない、見渡す限りの闇である。
「ここは・・・?」
私はさっきまで化け物になった盗賊と戦っていたはずだ。
そう、とんでもなく強く、私の合成魔法もクオンの剣も効かない化け物・・・。
「クオンは!・・・一体ここはどこ!?」
一面闇の世界、ここはどこ?
周りには目の前に小さな光があるだけで、誰もいない。
もしかして私は死んじゃったのかな?
『落ち着きなさい』
「ひゃわ!?」
突如、頭の中に響いてくるような声が聞こえ、私は驚く。
「・・・だれ?どこにいるの?」
『目の前にいるわよ』
目の前?目の前にはフヨフヨと浮く小さな明りがあるだけで出れもいない。
今気づいたけど、この目の前の光が無かったら本当に何も見えなくなっちゃうんだろうな。
だけど、目の前に光があるおかげで人がいないことが分かる。
「目の前って・・・誰もいないよ?」
『ここにいるわよ』
いるわよと言われても誰もいないのだ。
目の前には光が上下に動いているだけである。
・・・・・ん?
「え?もしかして」
『そうよ、ここよ』
そう言いながら、目の前の光は上下した。
もしかして目の前の光が?と思うとまるで自己主張をしているようにピョンピョン飛び跳ねているようにも見える・・・ちょっとかわいい。
「えっと、目の前の光の玉さん?」
『正解』
光の玉がしゃべってるうううう!?いや、口から言葉は出てないけど頭に直接響いているけど!
これって人魂ってやつなんじゃ!!!!
「お、お、お・・・・」
『お?』
私が言葉に詰まっていると人魂が『どうしたの?』私の顔の目の前に移動した。
「おばけえええええええええええええええええええええええええええ!?」
『ええええええええええええええ!?』
私は半狂乱である・・・おばけこわいもん。
私が半泣きになりながら闇の世界を逃げ出すと人魂は追いかけてきている。
その状況にさらに私はパニックになった。
時折、後ろで『お化けじゃなわよ』とか『逃げないで』とか『泣いてるカモメも可愛い』とか『カモメが逃げる・・ぐす』とか聞こえて来たけど
今の私はそれどころじゃない、とにかく逃げて逃げて逃げた。
お化けに捕まったら呪い殺されちゃうかもしれない!
私が必死になって逃げていると・・・
『カモメ、時間が無いのよ!あなたの相棒が死んでしまうわ!』
その言葉を聞いて私は急速に現実を思い出した。
そうだった、さっきまでいきなり化け物と変わった盗賊と戦っていて殺されかけていたのだ。
いや、心の片隅ではその盗賊に殺されてここは死後の世界なんじゃなんて思ってもいたのだ・・・そしてそれを認めたくも無かったから半ばやけになって逃げていた。
だが、後ろの人魂は「相棒が死ぬ」と言った。
つまり少なくともクオンはまだ死んでいないのだ。
なら、こんなことをしている訳にはいかない。
「クオンはまだ無事なの!?」
『ぷぎゅる!』
いきなり止まり振り返った私の顔に人魂が止まり切れずぶつかってくる。
「人魂さん!クオンは!」
そんなことお構いなしに私はクオンの事を人魂に聞く。
『ま、まだ生きているわ、でもこのままじゃ殺されるのは時間の問題ね』
「!・・・ならすぐに助けにいかきゃ!どうやったらクオンの所にいけるの!」
人魂が人の形をしていれば肩を持って揺さぶられるように私は人魂をガッチリつかみながら前後にゆする。
『あばばばば』と言っていた人魂がするりと私の手から逃れて、一つ溜息を吐いた。
『落ち着きなさい』
「落ち着けるわけないよ!!」
クオンが死んじゃうかもしれないのに落ち着いていられるわけがない。
私が再び人魂を掴もうと足を前にすと、人魂はさらに強い口調で言った。
『落ち着きなさい!!!!』
私は驚き竦む。
『今のままじゃ一緒に殺されるだけよ』
「でも、だからってクオンを見捨てるなんてできない!」
『でしょうね』
人魂は大きくため息を吐くと私に聞き取れないくらい小さな声で『貴方があの根暗坊主に惹かれてることくらい・・・あなたの中で見てたのだからしってるしぃ』とか言っていた。
『見捨てろなんて言わないわよ』
「え、だったらっ」
『話は最後まで聞きなさい』
だったら、すぐに連れて行ってと言おうと思ったのだがその言葉は途中で遮られた・・・。
『あなたの合成魔法でもあの魔鬼は倒せなかったでしょう』
「魔鬼?」
『ああ、あの化け物のことよ、魔族が作る醜悪な魔物よ』
どうやら、あの化け物は魔鬼というらしい。
そして、魔族が作るということはヘインズはお父さんの言う通り魔族だったのだろう。
『だから、あなたにあの魔鬼を倒せる力をあげるわ・・・欲しがったわよね?』
そうだ、私は確かに力を欲した。
あの魔鬼を倒せるだけの力が欲しいと願った・・・それを叶えに来てくれたの?
「・・・・」
『いきなり警戒されたわね・・・』
ちょっとショックと言いながら目の前の人魂は少しだけ小さくなった。
ショックを受けると小さくなるのか・・・。
『まあ、普通力をくれるなんて言ったら悪魔とか、そう言うのを警戒するわよね』
「うん・・・うまい話には裏があるってよくお父さんが言ってるもん」
『あの髭め』
「お父さんを知ってるの?」
私がお父さんというだけでお父さんの特徴である髭を言い当てた。
もしかしてお父さんの知り合い?
『面識はないわよ、あなたの中で見ていたから知っているだけ』
「私の中?」
『そのあたりの説明は後にするわ、今は時間があまりないもの』
そうだ、クオンは今も一人であの魔鬼と戦っているのだ。
悠長に話をしている場合ではない。
『本来ならちゃんと説明するところだけど、簡潔に言うわね・・・私は闇の女神ディータ、あなたに私の力を授けるわ』
闇の女神?・・・光の女神なら知っているけど闇の女神って初めて聞いたよ。
それに力を授けるってその力があれば魔鬼を倒せるって事?
『そう、私の力があればあの魔鬼に負けるなんてことはないわ・・・どうする?』
うさん臭さ100%である。
まるでこの不思議なツボを購入するとあなたの力が倍増します、ふふふ、どうです、普段なら金貨3枚のところを大銀貨5枚でお譲りしますよと言ってタダのツボを売りつけてくる悪質商人のようだ。
『信じられない?』
「うさん臭さ1000%」
『ぐはっ!』
ちょっと桁を増やして正直に言ってみると、自称闇の女神はショックをまた受けていた。
・・・しかし
「でも、それでクオンを助けられるなら信じてみようと思う」
『ホント!?』
私がそう言うと人魂は勢いよく私の方へと寄ってくる・・・犬みたいとちょっと思ってしまった。
『よかった、私、説明とか苦手なのよね・・・正直信用してもらえないんじゃないかと・・・』
「後で説明してくれるんだよね?」
『え、ええ、頑張ってするわ』
「ならお願い、力を貸して!」
『分かったわ』
そう言うと光は輝きを増した。
『私があなたに授けるのは闇の魔法、ちゃんと使いこなすには時間と訓練が必要だけどあの程度の魔鬼相手なら十分戦えるわ』
「闇の魔法・・・?」
『まあ、使い方はなんとなくわかるはずよ』
説明が苦手というだけのことはあってなんとアバウトであろう・・・なんとなくな上に筈なのか・・・。
光はさらに輝きを増し、一面闇の世界だった景色が今度は白一色へと変わった。
白い光に包まれると自分の内側からいつもと違う魔力があふれ出てくるのが分かる。
これが闇の女神の力?
次第に光が小さくなっていきもとの人魂の姿が見えてきた。
『ふう・・・これでちゃんとあなたに闇の女神の力を授けることが出来たわ・・・以前は失敗したからちょっと心配だったのよ』
「・・・以前?」
『あ、ううん、こっちの話よ。どう、闇の魔法の使い方理解できてそう?』
出来たと言った割に聞いてくるあたり本当に心配だったのだろう・・・大丈夫かな?
と、思った私だったけど、闇の魔法・・・と頭の中に思い浮かべるとそれがどんなものか理解できた。
「すごい・・・」
『でしょ!カモメならこの魔法のすごさ解ってくれると思ったわ♪』
私がそう言うと闇の女神は嬉しそうに飛び跳ねた・・・怖い人かなと思ったけどちょっと可愛いなこの人。あ、人じゃないのか。
『貴方には少し不快かもしれないけどしばらくは貴方の頭の中に直接話しかけてフォローするわね』
「あ、うん、ありがとう」
助言をしてくれるのは助かるね。
確かに使い方は分かったけど不安なことが多いのも確かだった。
「えっと、よろしくお願いします、闇の女神様」
『普通でいいわよ、私は堅苦しいの苦手なの。あとディータと呼んでほしいわ』
「わかった、ディータ。よろしくね!」
『それじゃあ、あの魔鬼を倒しちゃいなさい、話の続きはその後ね』
「うん、クオン大丈夫かな。結構時間経っちゃってるけど」
私がこの闇の世界に来てからかなり時間が立っている。
ここに来る前、クオンはすでにボロボロだった。
今もまだ無事でいるのか正直不安である。
『大丈夫よ、ここはあなたの心の中。現実ではまだそれほど時間が経っていないわ』
「え・・・?どういうこと?」
『そうね、えーっと・・・ここでの会話はあなたの頭の中で思い浮かべているようなものなのよ』
うんと・・・どういうことかな?
それがどう大丈夫なのだろう?
『えっと、だからね・・・頭の中でぱっと思いつくことってあるじゃない?』
「うん、ひらめいた!って感じの時かな?」
『そうそう、でもそれってひらめいた瞬間って一瞬でしょ?』
まあ、確かに・・・それまで色々考えている時もあると思うけど、ひらめいた瞬間ってことなら一瞬なのかな?
『ここでの会話はそのひらめいた瞬間なのよ』
「えっと、つまり今長いこと話していたけど、現実では一瞬のひらめき変わらないって事?」
『そうそう!さすがカモメ賢いわ♪』
ってことは現実ではまだ時間がほとんどたっていないのか・・・あれ?
「だったら、ここで全部説明してもらった方がいいんじゃない?」
時間がないから説明は後でってディータ言ってたよね?でも時間が経たないなら今教えてもらった方が確実にクオンを助けられるんじゃ?
『ごめんなさい、もうあんまりこの状態を保っていられないのよ』
「・・・え?」
もしかして、ディータにかなり無理をさせていたんだろうか?
そうだよ、よく考えたら女神さまがこんな姿で私の心の中にいるなんておかしいもんね。
もしかして、あまり力が残っていなくて力を振り絞って私たちを助けてくれているんじゃ・・・。
『私こういう繊細な魔法って苦手なのよね・・・疲れるわー』
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
『ん?どうしたの?』
「ナンデモナイ」
『そう?なら、とりあえず、この状態を解除するわね。後は現実でアドバイスしながら実践してみましょう』
「うん、お願い」
ディータは再度光を増した。
そして、今度はその光が収束すると私は急速に意識を取り戻した。
周りは木に覆われている。そして目の前には魔鬼の攻撃を躱しながら左腕に剣を持ち戦うクオンの姿があった。
『さあ、いくわよカモメ!』
「うん!」
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