鬼と小夜の物語り

 宇宙には、星の秩序を守る組織がある。

星間連絡協議会の監視システムが、ある星の終焉を予想した。

この星はやがて自滅する。

 命を育む水で覆い、色彩豊かな植物群と、あらゆる種類の生命体で、数百光年内には比類するものがないほど美しく育った『地球』と名付けたこの星が、星を維持管理するために存在させた『人間』の手によって破壊されると予想したのだ。

 地球を見守る担当者はある時期から、『人間』は殺し合い、共倒れするか或いは他民族を消滅させる危険性を持ち始めた事に気がついていた。

 地球にあるものはどれ一つとして一個人のためのものはないのに、人間は土地を、資源を『欲』によって占有し始めたからだ。

 担当者は、人間の『欲』を分析し五つの種類がある事を知った。その欲を抑制するために五色の『鬼』を地球に降ろした。だが、双方が持つ磁場エネルギーの違いから、人と鬼は、それぞれ別の世界に棲み分ける状態になってしまった。
担当者が目論んだ鬼と人間が混在して人の欲を制御する世界にはならなかったのだ。
 
 このままであれば、原子核をもてあそび破壊兵器を手にし始めた人間は、協議会の予想通り、自らの手で地球を壊滅させてしまう。
  
人間と地球を救わなければ。担当者は苦悩した。
 そもそも人間が争う原因となる欲の発生は何によって生じるのか、どの時代からなのか、担当者は分析とシミュレーションを繰り返した。

 その結果あるターニングポイントをみつけることができたのだ。

 それは 地球年で刻んだ指標1400年の、小さな島の民族がキーになっていた。

 この島でも多分に漏れず、あちらこちらで争いが繰り広げられてはいたが、この島の中心に位置するある集落の争いを無くしてみたところ、波が広がるように次々と争いが収まっていったのだ。 

 この時代の人間に争いを起こさせていたのは、貧しさや飢えからくる生命の危機感が原因だと判明した。
 
 人間社会が複雑化する前に、この集落を富と平和のモデルケースにして波及させることで、人間の欲望と争いが収束する。

 しかし、『欲望』にしても、争いの原因になる『怒り』にしても、これらを完全に人間から無くしてしまえば、やはりこの星は荒れ果ててしまうとシミュレーションは告げていた。

 この微妙な問題に対して担当者は、協議会に連絡して一組の男女をその集落に派遣するように要請した。
 男女は夫婦となり、一応の成果をえたので最後の仕上げに娘を村に残した。

 村に残された少女、小夜は、鬼に身を挺し、統領となり、豊かさと平和を得るために村を牽引する。

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