命の雫

SHIZU

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嫉妬

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「どうしたの?」

家に着いてすぐソウが俺に尋ねた。

「……」

俺はその質問に返事をする前にソウにキスをした。

そして髪を撫でる。

あの男が触れた髪……

舞台では肩、手、頬にも触れていたか。

俺は自分のシャツを脱ぎながら、ソウをベッドに連れて行き押し倒した。

暗い部屋の中で、ベッドサイドのライトだけが俺たちを照らす。

「アリス!? だからどうし……」

「お前は誰にも渡さない」

驚いた顔でこっちを見ているソウの顔を見ながら、俺はもう一度髪に触れる。

柔らかい。

普段黒く見える髪がライトに照らされ、茶色みがかって見える。

目を見るとソウもこっちをずっと見ていた。

見つめ合ったまま、俺はソウの頬に触れる。

キスをする。

ソウの吐息。

お互いに昂揚しているのがわかる。

まだだ。

肩も腕も手も。

あの男が触れたところ。

全部俺で塗り替える。

そして俺はソウの首にもキスをした。

「ん……」

ドクン。

ソウの声と匂いと感触。

ソウの全てで俺を満たす。

そして俺の全てで……


~~~~~~~~~~


「急にどうしたの?」

シャワーを浴びて出てきたソウが、バスタオルを身体に巻いたまま俺の隣に座った。

「分からない。だけどセイラだったか……?  あの男と楽しそうに話をするのも、お前の髪に触れるのも。肩や手や頬に触れるのだって……」

「ふーん」

「ふーんって。あの男だってあいつの手下かもしれないんだぞ? なのにあんなに近くにいたら襲われるかもしれないだろ! だから……」

「だから?」

「だから、あの男から引き離すために……」

「引き離してこんなことするの?」

「うっ……だってお前は俺の……」

「俺の?」

恋人? 友人? ボディガード?

それとも本当に兄弟かなんかだと?

「……なんでもない」

「ふ。アリスは嫉妬したんだね?」

嫉妬?

「そんなんじゃない」

「嘘だー」

「嘘じゃない」

「もう。素直じゃないなぁ」

そう言いながら着替え始めたソウは、何故か嬉しそうだった。
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