不可抗力

SHIZU

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確かめたい

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 同窓会の会場から出る。
「じゃあ帰るか!  一回実家帰って着替えないとだな」
「確かに」
 颯人、奏多、凱、俺は他のみんなと共に、エレベーターが来るのを待ちながら話していた。
 ピン。
 降りてきたエレベーターにぞろぞろとみんなが乗る。
 あっ……
「俺乗れなそうだから階段で行くわ!」
「え!?  そんな格好で階段?」
 という奏多の声を背中で聞きながら、俺は非常階段の方に向かった。あのまま乗ってたら、きっと凱の体に触れてしまう。
「あんな逃げ方ヤバかったよな……」
 非常階段をゆっくり降りながら考えていた。
 全然忘れてないじゃん。俺の2年何だったんだ。
 ガチャン。
 いくつか下の階の非常階段の扉が開いた。
「え……凱?」
「なぁ。お前なんなの?」
 踊り場まで上がってきた凱が俺に壁ドンして言った。
「なんなのって……」
「さっきの絶対おかしいじゃん」
「いや、乗ってからブーって言われると気まずいからさ」
「そうじゃないだろ! ……お前が言ったのに。あのキスもこの気持ちもなかったことにしようって」
「そうだよ……だからもう何とも……」
「黙って」
 そう言うと俺にキスをした。
 あの時みたいに。いや、もっと激しく。
 耳や首筋にも凱の息遣いを感じる。
 どうしよう……立っていられない。
「やめて……」
「やめない」
「やめてってば!」
 凱を突き放した。
「俺は確かめたかった。やっぱり藍も俺と同じ想いだろ? あの時も、それに今も」
「違うよ……もう行くから! 奏多たち待ってるから!」
 俺はそこに凱を残して、急いで階段を降りた。

 家に帰り、俺は服を着替えて奏多たちの元へ急ぐ。
「よく行ってたカラオケ屋さんで待ってる!」
 言われた部屋に行くと凱もいた。
「何で?」
「せっかくだから凱も誘ってみた!  暇だって言うし」
「お前ら卒業式からずっと変だぞ。あれから全然会ってないみたいだし」
「喧嘩したんなら仲直りしろよ?」
 2人が部屋を出ていこうとする。
「ちょっ……どこ行くの?」
「俺ら隣の部屋にいるから」
「仲直りしたら呼んで!」
と行ってしまった。
 約2年ぶりの再会で、キスの後に2人っきりは気まずいって……
 最初に静寂を破ったのは凱だった。
「俺、卒業式の日に萌と別れた」
「……」
「卒業旅行で藍にキスして自分の気持ちに気付いてさ。いや、本当はもっと早くから気付いてたと思う」
「……」
「萌に触れようとした藍の手を掴んだ時、その帰りに抱きしめた時、もしかしたら電話して声が聴きたくなった時。それか水族館」
「……」
「もしかしたら中学生の時かも」
「は!?  そんな前……」
 しまった。びっくりして反応してしまった。
「やっと喋ってくれた」
「……」
「水族館のペンギン見て、可愛いってずっと言いながらニコニコしてるお前見て、藍のこと可愛いなって思った。それまで俺たちは笑かけるどころか、まともな会話だってしたことなかっただろ?」
「……」
「だからきっと珍しいもん見たから嬉しかっただけだって思ってた。けど颯人たちに"藍のいいところ10個言って"って言われて、俺たちずっと距離があったから、10個も言えるわけないじゃんって思ってたのに、出てくる出てくる。悩まなくても簡単に言えた。だから俺はもっと前からお前のこと見てたのかもな」
と眉を少し下げながら笑ってる。
「俺にはもうずっと前から藍はただのライバルじゃなかったんだ、きっと」
「……」
 泣きそうなのを堪える。
「萌のことも大事にしたかったけど、藍にキスしたら自分の気持ち誤魔化せなくなった。もう無かったことに出来なくて、というかしたくなくて萌とは別れた」
「……」
「理由は言えなかったけど、別れてくださいって言ったら、そう言われるような気がしてたって。その後、藍と別れたって恵美に聞いて、きっと俺たち同じ気持ちなんだって思った」
「……」
「お前が恵美や萌のこと気にしてるのはわかってる。俺たちの家が仲悪いのも。でもそれは俺の藍に対する気持ちには何の関係もない。俺はずっと……藍が好きだった。卒業してからも変わらない。お前が応えてくれなくてもいい。でも気持ちはちゃんと伝えたかった」
「ありがとう。でもやっぱり応えられない……」
「うん。仕方ないよ。でも一つだけお願いがあるんだ。ひいおじいさんが遺した秘密箱。俺に貸してくれない?」
「どうして?」
「今度箱根に行くから、その時お店の人に開け方がわからないって相談してみようかと思って。俺はあの中に、俺たちの家族の諍いの原因がある気がしてさ。もし、解決出来るならしたいんだ」
「……わかった。紡に言っておくから後でもらって」
「うん。ありがとう。じゃあ俺お手洗い行ってくるから、颯人と奏多呼び戻しといて?」
「わかった」

 凱がお手洗いに行ってる間に、隣の部屋の2人の元へ。
「話し合い終わった?」
「うん」
「何で喧嘩したの?」
「喧嘩じゃないよ……」
「でもずっと変な感じだったじゃん」
「うん。神様がいたずらしたんだよ……」
「なにそれ」
 って言いながら奏多は、マイクを握りしめて歌い始める。
 颯人は俺の顔を見て、背中をトントンと2回ほど優しく叩いた。








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