リピートライフ

花畑 空間

文字の大きさ
上 下
19 / 113
第3章

#18 2日目終了

しおりを挟む
「今日はカレーライスよ~!」
キイックが昨日と同じように夕飯を持ってきた、お昼ごはんが無かったからその分お腹ぺこぺこだ。
「はい、どうぞ~…」
僕の番になるとキイックから少し笑顔が消え、僕の方を見て真剣な顔で頷いてきた。
きっと、みたいなことだろう。
「キイックぅ!めっちゃうめぇ!」
砕は笑顔でキイックに向かって叫んだ、まるで子供のようだ。
「よかったよ~、ふふふっ」
キイックは優しい表情をしていた、ほんとに機械なのか疑えるほどに穏やかな笑顔だ。
僕達はまた昨日と同じように夕飯食べ終わり、作業を始めた。
明日は他の班とも相談して、軽くリハーサルをすることにした。
もう道具も揃ったし、本番でウコイックにような演技をしないとだしね。
「今からお風呂に入っていいけど~、入るのは自由だからね~、めんどくさいなら入らないでいいよ~」
お風呂に入れるのか、サッパリするし入っておくか。
「みんな、お風呂入りに行こうよ」
「おうぅ!とも会えるかもだしなぁ」
たしかに情報共有とかしたいし、京君達に会いたいな。
僕らはお風呂に向かった。砕と僕は脱衣所に入るや否や、浴槽を覗いた。
お、京君がいるぞ。
「おーい、京…君…?」
様子が変だ。
「……」
京君は一点を見つめていた。
とりあえず僕と砕は服を脱ぎ、風呂へ向かった。
「どうしたんだぁ?具合でも悪いのかぁ?」
「……」
あんないた京君がここまで暗くなるのはおかしいぞ。
「おい、2人とも、こっち来い…」
北条さんがもう1つあった小さな風呂から手招きしてきた。
「何かあったんですか?」
「あのな…俺も正直やっと立ち直れたんだけどよ…メンバーがちまったんだ… 」
落とされた…そんな…
「あいつはああ見えて仲間思いでよ、だからなっちまったんだ、アオイックが「とりあえずてめぇら風呂入ってこい」って言うから京をとりあえず連れてきたんだけどな」
「そうだったんですね、なんて声をかけたらいいか…」
「お前が気にすることはねぇ、はバカなとこがあってよ、ちょっとしたことでアオイックと喧嘩になっちまってそのまま…くっ…」
北条さんは目頭を押さえた、よっぽど心に来たのだろう、出会ってまだ少ししか立ってないとはいえ、だったから。
「あんま聞いちゃ悪ぃかもだけどよぉ、落とされたのってチームのどんなやつだぁ?」
「ふっ、泣いてるのに聞くなんてお前らしいな、そっちのと戦ってたやつだ」
あの筋肉のある女性か…少し元気な印象だったが、少しおバカなところもあったんだな。
「すみません掘り下げるような聞き方して、今はそっとしておいた方が良いですかね?」
「京はそうだな、今は泣けるだけ泣かせてやろう、無理に触らないのも大事だからな」
僕と砕はそっと着替えてお風呂を出た。
一緒にお風呂に行った櫻さんと日向ちゃんはもう上がって待っていた。
「長かったわね、のぼせたんじゃない?」
「実は対抗戦の時戦ったチームの女性1人が落とされたらしいんです…」
「あら…それは残念ね…」
「たしかに対抗戦の時にお姉ちゃんと戦ってた人いなかったかも…朝に入った時は2人で仲良さそうにしてたから…」
「「……」」
少し重い空気が流れたが、とりあえず勝利側の部屋に着いた。
お風呂の方をチラッと見ると、北条さんに抱えられた京君がいた。
京君は来る時もこんな感じで入ったのだろうか、それより京君の脱力感がすごい、力が完全に抜けている。
「とりあえず入りましょう…」
僕達は部屋に入った。
「君たちおかえり~、お風呂どうだった~?気持ちよかった~?」
お風呂はたしかに良かったんだが、何より空気が重い。
「あれ、大丈夫~?何かあった~?」
「なんでもないわ、キイック」
「そう~?分かった~とりあえず歯磨きしてね~」
僕達は何か喋ることも無く歯を磨き、僕達の部屋に入った。
コンコンっ!
扉がノックされた、人が用事なんて珍しい。
扉を開けるとそこにはキイックがいた。
「君達、稗田君から何か?」
僕が秘密をバラしてないか聞きに来たのだろう。
「え、何も聞いてないけど」
「私も何も、なんかあったんですか?」
「なんだなんだぁ、怖いじゃねえかキイックぅ」
みんな演技力すごいな…これが噂の演技力か、自然すぎる…ん?砕は元々聞いてなかったのか。
「そうか、もう君も隠すの辛いだろうしここのチームには僕から伝えるね、実は行方不明者はもう見つかってるんだ、それも僕の部屋で、今は何かおかしくなってて、まともに話せない状態だから僕がどうにかするまでこの事は黙っていてくれ」
結局言うんかい、とも思ったが僕からばらすのではまた違うのだろう。
「…!見つかってるのね、でも何かおかしいなんて…心配ね…」
「まじかよぉ、俺ずっと心配してたんだぜぇ、見つかって良かったぁ」
「ちょっと安心しました、おかしいの治るといいですね」
「まあ、僕も頑張るから君達も明日と明後日の本番頑張ってね~」
「ちなみに先に君がみんなに言ってたら怒ってたからね~」
キイックはそう言い残し、部屋を去った。
怖…ここで咄嗟に2人が演技してくれてなかったらかもしれないなんて。
僕は少しだけ怯えつつ、布団に入った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

反魂

主道 学
ホラー
 空から天の恵みが降ってきた。  それも激しくザンザンと。  風はなくて。  ただ、暗闇の中で二人で佇む。 「きっと……ねえ……ん? そうでしょ」 「そうね……」  不思議な夏休みのお話です。  表紙画像にはフリー素材をお借りしました。  ぱくたそ様。素敵な表紙をありがとうございました。

深き水の底に沈む

ツヨシ
ホラー
通行止めの先には、あるはずのない村があった。

ヘリオポリスー九柱の神々ー

soltydog369
ミステリー
古代エジプト 名君オシリスが治めるその国は長らく平和な日々が続いていた——。 しかし「ある事件」によってその均衡は突如崩れた。 突如奪われた王の命。 取り残された兄弟は父の無念を晴らすべく熾烈な争いに身を投じていく。 それぞれの思いが交錯する中、2人が選ぶ未来とは——。 バトル×ミステリー 新感覚叙事詩、2人の復讐劇が幕を開ける。

とあるアプリで出題されたテーマから紡がれるストーリー

砂坂よつば
ホラー
「書く習慣」というアプリから出題されるお題に沿って、セリフや行動、感情などが入りストーリーが進む為予測不可能な物語。第1弾はホラー×脱出ゲーム風でお届け! 主人公のシュウ(19歳)は目が覚めるとそこは自分の部屋ではなかった。シュウは見事脱出するのことができるのだろうか!?彼の運命は出題されるお題が握るストーリーの幕開けです!

兄が届けてくれたのは

くすのき伶
BL
海の見える宿にやってきたハル(29)。そこでタカ(31)という男と出会います。タカは、ある目的があってこの地にやってきました。 話が進むにつれ分かってくるハルとタカの意外な共通点、そしてハルの兄が届けてくれたもの。それは、決して良いものだけではありませんでした。 ハルの過去や兄の過去、複雑な人間関係や感情が良くも悪くも絡み合います。 ハルのいまの苦しみに影響を与えていること、そしてハルの兄が遺したものとタカに見せたもの。 ハルは知らなかった真実を次々と知り、そしてハルとタカは互いに苦しみもがきます。己の複雑な感情に押しつぶされそうにもなります。 でも、そこには確かな愛がちゃんと存在しています。 ----------- シリアスで重めの人間ドラマですが、霊能など不思議な要素も含まれます。メインの2人はともに社会人です。 BLとしていますが、前半はラブ要素ゼロです。この先も現時点ではキスや抱擁はあっても過激な描写を描く予定はありません。家族や女性(元カノ)も登場します。 人間の複雑な関係や心情を書きたいと思ってます。 ここまで読んでくださりありがとうございます。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

冷甘メイドの怪奇図書

要 九十九
ホラー
亡くなったじいちゃんの遺産として受け継いだお屋敷。辿り着いたその先で……。 「……お帰り下さい」 「俺のじいちゃんの家なのに!?」 何故か帰らされそうになる俺。 そこで手渡された一冊の本……。 怪談が書かれたその本は、じいちゃんが直接見て書いたものだと、屋敷のメイドは言う。 半信半疑のまま俺が案内されたのは、屋敷の地下に隠された大きな図書館……。 怪しく、不思議な物語が数多蔵書されたその場所は、俺の祖先が未来や過去、現在の様々な出来事を、その特殊な能力で見て記した怪奇図書が眠る場所だった。 だが、じいちゃんが残したのはそれだけじゃない。 落ち着いた雰囲気、キラキラと輝く金髪に誰もが振り向く美貌、スタイルまで完璧な上に、とんでもなく強い。 でも、何故か俺を見る目だけがおかしい不思議なメイド……。 そもそもこんな人がいるなんて聞いてないんですけど!? どうして怪奇図書館は作られたのか? メイドの正体に、じいちゃんとの関係、最近何度も見る同じ夢に、闇から突如現れる口の裂けた女……。 やがて、それらは警察をも巻き込んだ大きな事件へと発展していく。 全てを知った時、俺は何を決断するのか? 顔も名前すらも知らなかったじいちゃん……。 俺はじいちゃんの事を知りたい。ちゃんと知って悲しんで、しっかりと向き合いたい。その為に、俺は……。 一冊の本を開いた瞬間から、俺の人生は終わり、物語が動き始める。 怪しく、不思議な物語。 怪奇図書の世界へようこそ……。 奇々怪々な沢山の物語があなたをお待ちしています。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

処理中です...