咲き誇る陰で、

藤岡 志眞子

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10 こっちの家も、必死。

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舞踏会開けの日曜日。書斎で本を読んでいると、ひとり手土産もなくカンナがキアヌの家にやって来た。

「カンナ、舞踏会行ったんだよな?」

メロンを揺らしながら溜息をつく。

「行ったわよ。でもねぇ…良い男がいなかったっていうか。」

「そうなのか?負け惜しみじゃなくて?」

「キアヌ兄様って本当は薔薇なの?」

ガチャンッと音を鳴らし持っていたグラスをテーブルに置く。イラッとした顔でキアヌを睨んだ。…おまえも本当に桜か?

「カンナは桜だよな。一人娘だけど、まぁ、結婚しなくても大丈夫だろ?」

「継承問題はどうでもいいのよ…結婚はしたいの。」

(銀)しかない桜だから、そんなこと言えるんだよ。

「俺も子供が五人いるから、蜂太郎は無理に結婚しなくても(よかったんだ)。だが、剥奪されたらそうはいかない。」

…?

「銅になっても孫の代まで白百合は継承できるじゃない。」

「…銅にはなれない。」

「え…?」

「今は親父の銀の称号だが…その、」

「…なに?」

「王様に俺の過去の不貞がバレた。多分、俺の代から白百合も称号も消える。」

え。

「は!?ば、バカなの?じゃ、じゃあハチが結婚しなくちゃ白百合は?称号は??」

「な~い。みんな揃って(蒲公英)だ。」

バカ息子。

「ち、ちなみに、アイリス様はどの(花)だったの?」

「アイリスは蒲公英だ。初めは(牡丹)って言ってたけどな。結婚した時わかった。腹にガキがいたからさぁ、参ったよ。牡丹だったとしても今更婿にはいけないけどさぁ~。」

…バカ息子。

「ライオネル伯父様は、知ってるの?」

「知ってる。祖父ちゃんにも糞怒られたよ。祖父ちゃんの時は菊の銅で、親父が白百合の銅に婿にいって、やっとの思いで銀になれたのに…やっちまったなぁ~。」

……糞バカ息子。

「ハチは知ってるのよね。」

「知らな~い。ははっ。」

ばきっ (鉄拳)
(ゔぅぅっ…) (失神)

「あら、キアヌさん?どうしたの、鼻血なんて…って寝てる?」

部屋に入ってきたアイリスが、床でノビる夫の顔を足で蹴る。…もっとやれ。

権田原家、好きとか嫌いとか独身がいいとか言っいてる場合ではなくなった。
美少女じゃなくても、キューティクルぼろぼろの女でもいい、(五花)の女と結婚するんだ!

権田原 ライオネル(41)、妻マリサ(47)も燃えていた。










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