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第五章 トリプル七光りとの決戦

第109話

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「それにしても先輩、その変な石版は一体何なんですか?」

「こいつか…」

 俺は自身が手に入れたドロップアイテムを見てみる、あの七光り姉妹たちを倒して手に入れたアイテムが何の能力もないゴミアイテムとは思えないが…。

 ただ見覚え自体は確かにあった何だったか~えっと…。

「…おそらくですがそれはスキルを得ることができるアイテムではないかと」

 守咲に言われてみると確かにそうかもと思った。
 ダンジョンで得られるアイテムの中には何かしらのスキルを得ることができるアイテムというのは確かにある。

 その形は様々で小さな宝箱のようなものをだったり一枚のカードだったり、あるいはこんな石版だったりしているものらしかった。

 アイテムを使って得られるスキルというのはそのアイテムに触れてみると分かるといった仕様だ。

「ミルティとアミラを倒して得たアイテムか、どんなスキルを得られるか楽しみだな」

「少し前に一緒に冒険したやつを倒して得たアイテムを手に笑顔でいる先輩、はっきり言って不気味ですね」

「俺は俺の敵になったやつに容赦しない、それだけだ…ただ確かにどこぞのポンコツと違ってあのピンク髪はなかなか使えるやつだったような気もしないでもないな」

「そんなこと言わないでくださいよ~」

 今宮とのしょうもないやり取りをしながら俺は手にする石版の妙な絵が書かれた部分に触れてみる。

 3体の天使っぽいのが空を舞っている様子が描かれているらしい。
 なんか見てると無性に腹が立ってくる絵である。
 それに触れるとどういうスキルを得られるのかが分かった。

「なるほど…得られるスキルが分かったぞ」

「ほうっそれを何なんですか先輩」

「手に入るスキルはサモン系のスキルだ」

  俺が以前出会った愛華のやつが持っているスキルみたいなもんだな。
 あいつは宙に浮く事が出来る生きた剣を召喚し使役していた。

 ちなみに俺の方は何を召喚し使役することができる存在が何者かについてもわかっている。
 それはなんと……あのミルティとアミラ!
 …それとあの無言だったやつだ。

 そういえばあいつらアバターがどうのとか言ってたな…やっぱりあのピンク色のスライムは本体でも何でもなかったってことか。

 連中との会話のやり取りとか思い出すと変なフラグが立ちそうだから思い出したくもないのだが…。

「ちなみにこのタイプのサモン系スキルを得られるアイテムは一個で億単位の金で取引されることがある。その上であのクラスのやつら3体を使役できるとなれば数十億単位か、あるいは数百億の金が動いてもおかしくないぜ?」

 俺の言葉に今宮は両目をスッと細める、コイツが真面目な気配を醸し出すとはな。

「……先輩、ついに私たちは一生涯働かなくてもいい本物の金持ちの領域に踏み込んだってことですか?」

 珍しく今宮のやつが一切の遊びなく真剣な顔でいる。
 お前ならそういうことを言ってくると思っていたぜ。

「そんな! 私は歩さんが数多のダンジョンを踏破し、ダンジョンの脅威から人類は救う瞬間を目にしたいと思っているんですよ!?」

 守咲、お前はそういうどうしようもないことを言ってくるような時がいつかくるだろうなと思ってはいたよ。

「凛、そのヒーローみたいな話を俺にどうしろって言うんだ? 何とか出来る範囲の事じゃないんだろそれ、それと今宮、仮に俺が途方もない大金を得たとしてもお前に分け前なんかやらんからな」

「「そんなーーーーっ!」」

 2人が内心は全く別の理由で同じ言葉を叫んだ。
 まっ守咲が言うダンジョンどうこうってやつは……多少なりともペースが遅くしてコツコツやってみるかもな。

 今宮はお小遣い制だな、こいつは金を渡すとドブ(パチのことな)に捨てるからそこら辺の管理を俺がする必要があるのだろう。

 ……なんか以前コイツが言ってた馬鹿な話を実現させる気になってしまってる自分がいる。

 まあいいかっ俺の頭の中ではすでに石版を売っ払っい、そしてついにたどり着くスローライフを夢見ていた。

 お金があれば働かなくて良い、働かないなら時間が出来る。
 その時間を自分の興味を引くことや物にお金と共に遠慮なく使うのだ、それが勝ち組の夢のスローライフ。

 血統書付きのモフモフ猫とか豆柴を飼いたい、ソイツらと共に旅行とかしたい。
 そんな希望を俺は夢見た。

 しかし現実はあまりにも残酷だったのだ。

 俺の手に触れる石版が、独りでに粉々に砕け散った。

「これはどういうことだ!?」

 そして頭に無常に響くあのアナウンス。

【おめでとうございます、アイテムの使用により新たなスキル『サモン・ワルキューレ・ミルティ』『サモン・ワイキューレ・アミラ』『サモン・ワルキューレ・エランジェ』を獲得しました】

「ふざけんなよ! なんで俺の意思を完全に無視して勝手にスキル獲得させてんだよ意味がわからないぞ!?」

「やっぱりミルティたちってただのモンスターじゃないってことだったりするんですかね?」

「もしかしたら、こちらの会話を聞いていて何か細工をしたのかも、或いは歩さんの行動を先読みして予め…?」

「細工って何だよ、そもそも何で俺があんな連中たちを召喚するスキルを手に入れなきゃならねぇんだよ! 元から戦力は過剰気味なのに、別にいらんだろ3体も!」

「そんな事女子に言ったらダメですよ先輩~それに~そこはまあ何なんでしょうね~もしかしたらミルティさんはツンデレなのかもしれませんね!」

 意味が分からない。
 ツンデレなのと強制スキル入手イベントが俺の頭の中では繋がらなかった。
 しかしここでウジウジしてもらちが明かないので頭を切り替える。

「はぁっ……もういい、大金を逃すのは残念すぎるが過ぎたことを気にしても仕方がないからな、俺はもうそこまで過去にこだわらないことにしたんだ」

「さすがです歩さん!」

「先輩~その未練タラタラの残念そうな表情をしてる顔で言っても全然説得力がないですよ~」

 俺をまっすぐ見てくる守咲とニヤニヤしながら舐めた視線を向けてくる今宮だ。

「……とりあえずお前たちを助けたわけだ、少し腹が減ったし…もんじゃ焼きでも食いに行くぞ、但し今宮、お前には奢らないからな見てるだけだ、食いたきゃ自分で金だして食え。行くぞ」

 俺の言った言葉に守咲は笑顔で返事を今宮はブーブーと文句を言ってきた。
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