上 下
97 / 110
第四章 迫る魔の手

第97話

しおりを挟む
 ミルティのやつめ、言いたいことだけ言ってさっさと消えやがった。
 まあいい、ダンジョンの奥に来いって言うなら行ってやろうじゃないか。

 こちとら称号からもらったステータス補正の強さだけなら大抵のやつには負けない自信があるからな、今回も負ける気はしない。

 俺は天空に現れた石の道を進む、左右を確認すると落ちてしまえば下の雲海まで真っ逆さまというのがひと目で分かる高度である。

 そんな想像をすると俺の息子がスンってなってしまった。
 ステータスがどれだけ高かろうが高いところは怖いのだ。

 何でこんな落ちたらゲームオーバーみたいなのをリアルにしました的な悪意の塊みたいなダンジョンがあるんだろうな……。

 ローグライクゲームだとわりと落ちたりとかしない見えない壁とかがあるのだがリアルだったら一度でも吹っ飛ばされたらそのまま……。

 うん、やっぱりこういうのはスンってなるな、こういう仕様のダンジョンはリアルになるべきじゃないんだよ。

 内心愚痴りながら浮いた石の道を進んでいくと結構大きめで平べったい岩の上にたどり着く。

「…………!」

 岩に乗ったらいきなり魔法陣がいくつも出現した。
 なんかこのパターンはあれだよな、どっかで見たことがある気がする…。

 魔法陣から召喚されたものは大小、そして様々な色合いをした─。

 プルルルンプルルルン!

 そうっスライムたちである。

「……やっぱりここってスライムダンジョンなんだな」

 そんなことを俺はしみじみ思ったのだ、そしてキングオーラブレードを発動し構える。

 相手はスライムだからこっちが動かなくても勝手にこちらに接近すると思ったのだ……しかし連中の周囲には魔法陣が出現した。

 そして放たれるのは炎の塊だったり氷の塊だったりカマイタチだったり雷だったりだ。

「いや体当たりしないのかよスライムの分際で!」

 俺は叫んだ、しかしそんなことは関係ないとばかりのスライム共はスキルによる遠距離攻撃ばっかりしてきやがった。

 俺はオーラの刃でその全てを斬りまくる、ザンザンザーンと斬りまくる。
 連中の攻撃はもまたスキルだらならば同じスキルで相殺することは決して不可能ではない。

 もちろん相性次第じゃ無理な時は無理なんだがな、何かやってみたらできたので別にいいだろう。

「このクソスライム共が! 雑魚モンスターの分際でそんな強力なスキルを使っていいなんて思うなよ!」

 どいつもこいつも良さげなスキルをこれみよがしに使ってくる、ちょっとイラついた俺だ。

 俺のスキルはオーラの刃の長さを変えることができる、距離を取ったところで意味はない。
 やつらの魔法を捌きながら一気にオーラブレードを伸ばした。

「オーラブレードスラッシュ!」

 なんとなく意味のないわざ名を叫ぶ。
 別にスキルじゃないので叫ぶ必要はないのだが叫ぶ俺だ。

 俺の攻撃は瞬く間にスライムたちを切り刻む。小さいスライムは一撃なのだが 大きめのスライムは何度か切りつけてもすぐにやられない奴らが現れた。

 そんなやつらはどうすればいいのか、それは簡単な事だ。

「よいっしょおぉおおっ!」

 俺と距離を取りたい為か、わざわざ落とされやすいように岩の端っこに寄りやがって。だったらお望み通り叩き落としてやる!

 俺はオーラの刃を何本も突き刺した大きめのスライムをグッと押した。
 そうすると大きなスライムたちは岩の端っこからドンドン落ちていった。

 ヒュゥゥンと言う効果音が聞こえてきそうな感じで落ちていった。

「さらばだ、スライム共…」

 そんな感じで小さいクライムはバラバラに、大きめのスライムは岩の外に力任せに押し出していく。

 今回の探索では最早スライムの魔石なんてのは執着するつもりはない。
 金になるのは分かっているがそれでも今は今宮と守咲の安否を確認するのが優先だ。

  しかし……落とされたされたスライムたちの魔石は回収不可能…それは悲しい事実だ。 
 そしてバラバラにされた小さなスライム、あの魔法を使う強めのスライムたちが魔石になった。

 それらが俺の視界に止まった。

「……こっちの方は回収しとくか」

 あの2人を助けた後にでも何か奢ってやるかなと思う。
 懐には余裕を作っておきたいからな、もんじゃ焼きとかいいかもと思うのだが。

  そんなことを考えながら召喚されたスライムたちが全滅するまで俺はオーラブレード振り続けた。
 そしてようやくスライムたちを全滅させることができた。

「にしても、先は長いな…」

 この広めの岩は一番向こうに行くまで何カ所かある。
 最初の一個目にしては現れるスライムの数が異常に多すぎる気がした。

 大方ミルティのやつも内心はビビっているんだろう。
 だから数に物を言わせた感じで俺を攻めたのだ。

 まさに七光りによくあるパターンだな。
 自分に自信がないやつほど信用出来るのか出来ないかも分からない変なのを周りに置いて自分を強く見せようとしやがる。

 憎むべきは馬鹿な七光りだ。

 以前ヤツとの戦いで手に入れたレインボーフレアのステータス超強化も踏まえた俺の攻撃があの野郎をぶっ潰してやるからな。
 そんなことを考えながら俺は再び石の通路を進み始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チートを貰えなかった落第勇者の帰還〜俺だけ能力引き継いで現代最強〜

あおぞら
ファンタジー
 主人公小野隼人は、高校一年の夏に同じクラスの人と異世界に勇者として召喚される。  勇者は召喚の際にチートな能力を貰えるはずが、隼人は、【身体強化】と【感知】と言うありふれた能力しか貰えなかったが、しぶとく生き残り、10年目にして遂に帰還。  しかし帰還すると1ヶ月しか経っていなかった。  更に他のクラスメイトは異世界の出来事など覚えていない。  自分しか能力を持っていないことに気付いた隼人は、この力は隠して生きていくことを誓うが、いつの間にかこの世界の裏側に巻き込まれていく。 これは異世界で落ちこぼれ勇者だった隼人が、元の世界の引き継いだ能力を使って降り掛かる厄介ごとを払い除ける物語。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。 しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。 相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。 そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。 無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

処理中です...