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第二章 クラフトスキルと依頼

第81話

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「さてそろそろ寝ますかー」

「待て、今宮…」

「どうかしたんですか?」

「ああ…どうやら来ないと思っていたお客さんが来たようだぞ」

 焚き火の明かりに照らされたテントと鉱石と俺たち、それ以外の大半が真っ暗闇の中、俺の感知センサーは徐々に接近するモンスター達の存在に気付いていた。

「先輩、まさかここってモンスター出たんですか?」

「事前の情報じゃ出ないって話だったんだがな…」

「そんな…昼間は全く出なかったのに?」

「もしかしたら夜は勝手が違ったのかもな、不人気ダンジョン故の情報の少なさが仇になったか」

 探索者たちのダンジョン攻略の情報というのはそのダンジョンに探索者が行けば行くほど集まるものだ。
 故に禄に人が集まらない不人気ダンジョンの情報というのはなかなか集まらない。

「まあまずは敵モンスターの情報を少しでも集めるか……『キングオーラブレード』!」

 俺はスキルを発動するとオーラを刃状に変化させたオーラブレードを振るい闇夜に向かって一閃する、感触的に複数のモンスターたちをぶった切った。

 すぐにライセンスカードを取り出して確認し、どんなモンスターを倒したのかその名前を確認する。

「……『夜盗のビルゲーター』だと?」

「ビルゲーターはあの雪山にたモンスターですか?」

「おそらくな、ただ夜盗とつくからにはやっぱり夜限定で出現するモンスターなんだろう、そして盗賊ということは…」

 俺はちらっと積まれた鉱石の方を見る。

「おそらくだが、このダンジョンは夜、そしてあの雪山から採掘した大量の資源をこの辺りに放置しているとあの夜盗共が大量に出現するじゃないかと思うんだが…」

「そんなピンポイントな条件で出てくるモンスター引き当てるとかさすが先輩~無駄な悪運持ってますねぇ~」

「やかましいわ、とにかくこの真っ暗闇の中では分かり難いが、かなりの数の『夜盗のビルゲーター』が来てるはずだ。お前たちはここを動くなよ」

「えー先輩、私たちも腹ごなしに少しは戦いますよ?」

「歩さん、私たちだって探索者です、モンスターとの戦闘くらい出来ます」

「…分かったそれじゃあちょっと準備するから待ってろ」

 俺はキングオーラブレードのスキルを操る、細いケーブル状の部分で俺のオーラの大元の方へと繋がったオーラブレードを二本を用意する。

 そしてそれ以外の俺の背中や肩の辺りからオーラブレードを更に生やす、そのオーラブレードにさらなるスキルを上乗せだ。

「『レインボーフレア』」

 新たに生やしたオーラブレードの部分に虹色の炎を纏わせる。
 そのオーラブレードをさらに伸ばすと虹色の光に照らされた光が『夜盗のビルゲーター』とやらの姿を照らし出した。

 ワニ人間なのは変わらないが全身が真っ黒だな、確かに夜襲するなら納得のカラーリングだ。

「よし、もういいぞっ好きに戦え。お前らの死角に入った奴らは俺のスキルで始末するしお前ら手に持っているその虹色の炎を纏ったなんちゃって武器なら連中にかすり傷をつけるだけでも奴らは虹色の火だるまにしてくれるから一撃必殺だ、適当にやってても連中を倒すことが出来るだろう」

「…… 先輩って何て言うか、本当にあれですよね~~」

「そうですね、過保護と言うか何と言うか…… 歩さんは本当にあれですね」

 あれの部分を全部言っちまってるんじゃねぇかな、まあいいや。

「その事はいいとして、奴らは向こうから魔石集まってきてくれたんだと思うことにしましょう、行きますよ守咲さん」

「そうですね弟子としてこれからは戦闘でも役に立てるというところも見せたいと思っていたところです、頑張りましょう今宮さん!」

 金に取り憑かれた後輩と直向きに精進しようというする弟子。
 実に分かりやすい対比が見て取れるな、どちらが禄でもないなのかは言うまでもあるまい。

「……よしっやるぞ!」

 迫る黒ゲーターを俺はオーラブレードで突き刺しまくる。数が多いのでテキトーに振り回してもどんどん攻撃が当たるな。

 俺自身も両手にオーラブレードを出して無双ゲーよろしく切り倒しまくる。
 オーラブレードを持つ今宮と守咲はお互いに背中を合わせて死角を作らない様にしながら1体ずつ倒していく。

 その調子だぞ2人とも俺のやり方とか見ていても何も手本になんてならん、それぞれが自分に出来る方法で経験を積むしか成長する方法はないんだ。

「コイツら全員倒したら一体どれだけの数の魔石になるですかね? 夢が広がりますね先輩!」

 俺をその卑しい考えの先輩みたいな感じで呼ぶな。

「突撃あるのみ、とりゃああっ!」
「守咲さんちょっ離れちゃ駄目ですって!」

 守咲はテンション上がると回りが見えなくなるのか…。
 仕方ないフォローするか。
 俺は守咲の背後にいた黒ゲーターを始末した。

 そんな感じの闇夜での戦いが続いた。
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