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第五章 ブラック会社ダンジョン

第53話

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 ゴミゴブリンの攻撃らしき魔法が炸裂する。

 爆炎、暴風、稲妻と様々な魔法か魔法っぽいの攻撃スキルが俺を襲った。
 俺は躱さない、全ての攻撃を受けた。凄まじい爆音がなり響き、土煙があがる。

「ハッハッハッ! この我に歯向かうから…」

「しかし残念、俺には何のダメージも与えられませんでした!」

「なっなぁんだとっ!?」

 いやまあ俺の服はあんまり無事ではないんだけどな……てかもうないし。
 俺の身体は本当に無傷だ、『神殺し(偽)』のステータス補正のおかげだ。
 ありがとうございます。

「あっそれと気づいてないと思ってるか知んないけどな、魔法かなにかで姿を隠してるそこの2体、さっさと姿を現せ」

 俺の言葉は聞こえたらしく、 ゴミゴブリンが座する椅子の左右にさっきまでいなかった2体のゴブリンが姿を現した。

 共に装飾を施されたフード付きのマントを装備していて手には立派な杖を持っていた。
 ゴブリンメイジだな、あのゴミゴブリンの五味川が真ん中にいるのなら……。

「お前らはあれか? 五味川の嫁と誠和だろう」

 俺の言葉にゴブリンメイジ達が反応した。
 誠和二郎《せいわにろう》コイツは苗字だけはなんか立派な風をしてるが立派なクソ野郎だ。

 七光りこと五味川へのごますりだけで上手いこと生きているだけのヤツで、大した仕事もしてないのにこのブラック企業ででかい顔をしてきた人間だ。
 腰布の同類だな。

 そして五味川の嫁、こいつのイエスマンな態度のおかげでこの五味川という化け物が生まれたかと思うと本当にムカつく。

 この会社における最も厄介な病巣、つまりは癌《ガン》だと先代の奥さんが頭を抱えていた女だ。

 俺が睨みつけるようにゴブリンメイジたちを見ると、こいつらが少しビビっていたがそのうちの1体、元が誠和らしきゴブリンメイジが口を開く。

「日影……キサマなぜ我々が魔法で姿を消していることがわかった?」

「魔法を使う奴っていうのはな、魔力を発するんだよ。そこのデカブツは錫杖持ち上げただけでそれ以外何もしてない、だったら別のやつが魔法を使ったってことだよバーカ」

 そもそもその七光りは1人じゃ何も出来ねぇんだぞ、余裕綽々で我は~なんて役作ってる時点で近くに仲間がいると思ってたわ。

 俺に役者の才能がないと暗に言われたゴミゴブリンが怒りで肩を震わせている。
 馬鹿は無視して構わず話をする。

「てかっお前ら、相変わらずそのバカの旗持ちしてんのか? 人間だった時だけじゃなくモンスターになってからも相変わらず無駄なことに人生を費やしてんだなオイ」

「ひっ日影~~お前は……!」

 あのゴブリンメイジは声がおっさんの声だったからつまり誠和だ。
 そしてもう1体の雌型のゴブリンメイジも口を開く。

「図に乗らないで、そもそもアンタみたいな雇われの分際で経営者側の我々に歯向かうこと自体間違いなのよ。身の程知らずも甚だしいわ」

  この雇った人間を完全に見下してくる発言、間違いなくこっちは五味川の嫁だな。

 こっちの方は杖を俺に向けると再び攻撃魔法を放ってきた。
 威力も結構高く、おそらくダンジョンの中ボスクラスの力を持ったゴブリンメイジと言ったところか。

 正直その魔法が当たっても何ともなかったのを目にしてよくもまあそんな偉そうな事を言えるな、馬鹿じゃないのか?

「まあ切り札でもあるからそんな上から目線の言葉が口から出るんだろうな。ホラっ腰巾着野郎二号と名前を覚えてない五味川の嫁、さっさと攻撃するならしてみろよ、こんなカスみたいな魔法じゃなくて俺にダメージを与えられるレベルのな!」

 ゴミ川の嫁の魔法?
 そんなの食らったよ、ダメージゼロだよご苦労さまでした~。

「日影! 図に乗るなと言っているでしょうが! 『ダークネスランス』!」

 闇属性の攻撃魔法スキル、魔法への耐性が高いヤツにも効果的な強力スキルだな。
 まあ効かないがな、嫁ゴブリンの魔法を受けながら、俺は少し昔のことを思い出していた。

 俺が五味川、嫁、腰布、誠和の4人を碌でなし四天王と呼ぶのは理由がある。

 どの企業にもヒエラルキーというものがある、そしてそれはこのブラック企業の場合はその碌でなし四天王か、それ以外の雇われ社員かに分けられる。

 当然、向こうの方が上だった。

 うちは焼き物の会社なのだがその物を作る工程というものがいくつかある、連中はその中でも人がした仕事にケチをつけることができる仕事か、仕事をした場合は他の人間からミスを絶対に指摘されない仕事しかしなかった。

 ごくたまに俺たちと同じ仕事をする時もあるのだが、その時は見事なダブルスタンダードが発動する。

  自分たちが人のした仕事でミスを見つけた場合は その物をわざわざ持ってきて当人にやり直せる一方で自分たちが全く同じミスをした場合は、そういうのを見つけたらそっちの方で勝手に直してくれないと仕事が滞るだろうと真顔で言ってくるのだ。

 効率が悪くなるからだなんだと平然と抜かす、ぶっ飛ばしてやりたくなった。
 だったらお前らもそうしろって話だ、特にこの悪癖がひどかったのが五味川の嫁だ。
 性別とか関係なしに叩きのめしてやりたくなったのを覚えている。

 「アイツ1人が消えるだけでだいぶ仕事の効率化が改善されると思うな」というのがこの会社で何十年で勤めてきた先輩たちが俺に話してくれた本音だった。

「無駄よ、無駄無駄! このバリアを破ることは決してできないお前は体力が尽きるまで逃げ回ることしかできないんだよ!」

「流石ですねぇー!」

「良いぞ良いぞ! それでこそ我の嫁だ、その愚か者を蹴散らせーー!」

 あのバリア? また展開してたのか、知らんかった。
 けど本当にそんなこと思ってんの?
 本当に色々と現状を分かってないな…。

「………まず1匹だ」

 その無敵っぽいバリアの向こうにいた五味川の嫁っぽい感じのゴブリンメイジの上半身が吹き飛んだ。

 それを見た誠和ゴブリンメイジとゴミゴブリンが驚愕の表情を浮かべ固まる。

「別にな。そのバリア、本気になれば破れないなんて一言も言ってねぇぞ……『レインボーフレア』」

 本気になるのが面倒くさっかっただけである。
 俺の体からうっすらと虹色の炎が燃え上がった。
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