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第一章 不人気ダンジョンと後輩

第8話

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「これは……」

 キングスライムを瞬殺してしまった俺、その俺の目の前に消滅したキングスライムから生まれた光が集まっていた。

 これはあれだ、魔石以外のドロップアイテムが発生した時に起こる現象だと聞いたことがある。
 その光が何かの物体に変化し、それがドロップアイテムとなるのだ。

 光が集約しその形が変わる、それらは四つのアイテムに変わった。

 一つは青色の結構大きめの魔石。
  二つ目は青いキューブとなる、これはスライムキューブと呼ばれる高ランクのスライム系モンスターを倒した時に稀にドロップするドロップアイテムだ。

 三つ目はキングスライムが頭に載っけていた金色の王冠、換金アイテムだな。本物の金が含まれているらしく結構高値で売れる。

 そして四つ目が青い刀身を持つ美しい短剣だった。
 この短剣についてはスマホでスクショを取り検索をしてみるとすぐに正体がわかった。

 これは『腐食の短剣』と呼ばれる短剣でレアなダンジョン産の武器である。

 何でも斬り付けた敵の防具や身体をまるで酸で溶かしたみたいにするエグい効果のある短剣だそうだ。

 しかしその青い刀身は錆び付くことがないと言われているらしい。

 あんだけバカでかいスライムを倒して得られるドロップアイテムはこれだけかよと言いそうなものだが世の中そんなに甘くないのだ。

 大物を一体狩っただけでバカみたいな財宝が手に入るなんてことはない、結構渋めのハクスラゲームみたいな感じなんだよ探索者のダンジョン活動って。

 とにもかくにも『神殺し(偽)』の称号についてわかったのは、これはマジでチートですなっということくらいでそれ以外はさっぱりだ。

 あとは分かったことといえばマジで今の俺ならダンジョンで稼げちゃうなっということくらいか。

「ぶっちゃけそれだけ分かりゃ十分だわ」

 俺はキングスライムのドロップアイテムも抱えてダンジョン探索を終わりにする、次の行き先は決まっている。
 こういうダンジョン 関連の品物を売り買いできる唯一の場所、すなわち探索者センターである!

「ま……その前に帰って寝るけどな!」

 だって俺、深夜の夜勤からそのままダンジョンに来てんだぜ? 外は絶賛深夜五時過ぎ、こんな時間じゃ探索者センターも開いてないのである。
 二十四時間営業なんてのは国営の施設じゃ有り得ないのよね~~。

 と言う訳で、これから帰って寝ます。


 ◇◇◇◇◇◇


 探索者センター、その手のゲーム好きたちのせいか知らないが通称は探索者ギルドと呼ばれている場所である。

 もっともギルドの受付嬢だったりとかはいない、普通に公務員やってる人が職員をしているだけだ、もちろん普通に女性職員もいるけどな。
 服装だってスーツ姿でありファンタジーみたいな服装はしてない。

 まあそれはそれとして今のダンジョンがそこかしこにある現代社会じゃ探索者ギルドっていうのは都会でも田舎でも結構な数あるのだ。

 決まった場所にしかないとそこに探索者たちが集中してしまい職員たちの仕事がパンクしてしまうかららしい。
 そして俺がいた不人気ダンジョンの近くにもそこまで大きくはないがその探索者ギルドの支部があった。

 しっかり睡眠を取った俺は起きるとスマホに勤め先のクソ七光りから鬼メールされてたが全て無視した。
 最初のメールを読むとムカついてな…。

 ともかく予定通りに探索者センターにドロップアイテムを持ち込んだ。

「すいません、これ買い取ってもらえます?」

「はいっ承りまし……何ですかこれは?」

  いきなりちょっと俺を睨んできたのは若干目つきの悪いギルドの受付嬢…いや探索者センターの職員の女性だった。

「なにと言われても、ダンジョンでモンスターを倒して手に入れた魔石とかドロップアイテムですが?」

「…さすがにこのサイズはこの辺りにあるダンジョンで手に入るわけがないじゃないですか、余所で手に入れたアイテムをわざわざ別の遠くにある探索者センターに持ち込んでも買い取り価格は変わりませんよ?」

 ああっなんか探索者センターが出来たばっかりの頃って探索者センターごとに買い取り価格が違っていて、探索者が高く売れる所にばっか集中したっていうアレか? あんなの都市伝説かなんかだと思ったわ。

 ネットがある現代でそんな真似は無理だろ。
 いやっ転売ヤーとかは確かにいるけどさ。

 それともう一つの彼女の言い分はある意味正しい、不人気ダンジョンというのはたいして強くもなければ金にもならないモンスターしか出ないから不人気ダンジョンなのである。

 キングスライムクラスのモンスターが出るようなダンジョンであれば多かれ少なかれ探索者たちが腕試しに現れるもんだ。

 つまりあの古民家のダンジョンにキングスライムが出るなんて情報はほぼ出回っていないのだろうな。

「そんなこと言われたってこの近所にあるダンジョンでキングスライムの襲われたんで返り討ちしたんですけど…」

 俺の話を聞いてもその女の職員は胡散臭気な感じある、目の前のドロップアイテムやらが本物だっていうことはわかるんなら現状は俺の能力については信用してくれてもいいのでは?

 あるいは俺がこの魔石をどっかから盗んできたと思ってるのか、失礼な。

「……分かりました、それでは鑑定します」

「あっそれとすいませんがこっちの魔石もお願いします」

 そう言いながら俺は左右のパンパンに膨らんだポケットからちっこいスライムの魔石を取り出した。
 いちいち数えるのもめんどくさい、今後はなんか袋でも持って行くか、ポケットの中に入りきらないしな。

 その魔石の量を見た職員の女は目つきをさらに厳しくしてしばらく俺の方を睨みつけるように見た後、ため息を一つ吐いて「分かりました」と答えた。

 思うんだけど、この現代の日本社会においてここまで態度の悪い接客サービスも珍しいと思うわ、以前健康診断で会ったおっさんの医者並に不愉快な対応にちょっとイラッとした。

 まあコンビニでアルバイトしてた俺も無愛想だったことはあるけど、ここまでは流石にな~。

 最近はコンビニとかは接客とかはほぼしないでいらっしゃっませー以外はスマイル一つしなくなったコンビニが目立つ、そんな人間しかアルバイトなんてしなくなったのだろうか。

 まっ俺もそっち側の人間なので文句は少ししか言わないけどな話しかけられても困るし、それでも愛想くらいは良くしろよ思わなくもないが……。

「まっ気にしてもしゃあないか。距離感なんて人それぞれだしな、気にするだけ腹が立って疲れるだけだ……」

 魔石とスライムキューブや王冠の査定が終わるまで探索者ギルドにてしばらく待つ。
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