5 / 31
1話
5 *
しおりを挟む『六……。僕も、君の姿を見て、興奮してきたよ……』
耳元にはぁ、はぁと荒い呼吸音が当たる。それは俺の呼吸と重なった。彼が俺を見て興奮しているわけがないのに、目の前にいない彼の挙動を想像して、ぎゅんと身体の熱が上がる。
『五……、まだイくなよ……ゆっくり……、四……』
カウントダウンはのろのろと進み、射精への期待で、足先がシーツを滑る。身体の中に熱が溜まって、吐き出したく仕方ない。俺は身を捩りながら、手を動かすしかなかった。
『三……、いっぱい溢れてる。ぐちゅ、ぐちゅって、音聞こえる?』
扱くたびに先走りがこぷりと溢れて、竿と会陰を伝い、尻の方へと流れていく。先走りが手に絡み、卑猥な水音が断続的に部屋に響いた。
『もう少し……、二……、イきたくなってきた?』
「イきたい、もうっ……むり……イく、イくからっ……」
俺は我慢の限界で、じわりと涙が滲む。声も涙混じりで、叫ぶように訴えた。竿をしこしこと強く扱いても、先端にぐりぐりと爪を立てても、イくことができない。身体の中に熱が溜まりすぎて、頭がおかしくなりそうだった。
『ほら、カウントダウンが終わる……、一……』
「イく、イかせて、お願いっ……」
俺の性器はばきばきに勃ちあがり、痛いほどだった。早く、早くとゼロのカウントダウンを待つ。一からゼロまで、永遠にも一瞬にも感じられたが、ようやくその時がおとずれる。
『ゼロ……、イけ……』
耳に飛び込んできたのは、念願の命令だった。
「イく、っ、あ、イく、あ、ああああっーー!!」
溜めこまれた精液が、勢いよく吐き出された。その瞬間に、俺は目を見開き、口を大きく開けて、解放感に浸る。びゅくびゅくと白濁が飛び散り、快感が一気に襲う。思考が一瞬真っ白になり、すぐに酸素を求めて息を吸いこんだ。
どっと汗が吹き出し、鼓動は速い。何度も呼吸を繰り返すうちに、冷静になってくる。精液がついた手で額の汗を拭い、生臭い匂いに眉根をひそめながら、俺はベッドに身体を沈ませた。
自慰でこれほどまでに気持ちよくなれたのは初めてだった。速くなった鼓動を落ち着かせようとするが、再び彼の声が聞こえる。
『まだ終わってないよ』
もう十分だと思ったが、身体は貪欲で、熱がぶわりと湧きあがってくる。
しかし、俺は怖くなり、イヤホンを外した。スマホが汚れるのも構わずに、画面をタップして音声を止める。
ベッドから起き上がり、全裸のまま浴室へと移動した。熱い身体に冷たいシャワーを浴びせ、大きく息を吐いた。逃れなければいけないと本能的に悟ったのだ。
けれど、俺が声の主である犬飼(いぬかい)の虜になるのに、時間はかからなかった。
1
お気に入りに追加
154
あなたにおすすめの小説
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる