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隣国偏-交換生

姉妹

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 リーヴァの手を引き、元の国《グレイバニア》へと帰ってきた。

 ミルザを置き去り、
 黒に染まった……俺はその存在《クロノ》を誰にも認識されることなく……

 リーヴァの手を引きここにもう一度帰ってきた。


 そんなデタラメを信じたのか……
 それでも、この俺の視界から見える世界はとっくに……
 どこか騙されているような気がした。

 それは俺が騙されているのか世界《それ》が騙されているのか……
 すでに俺の理解は追いついていなくて……


 「リーヴァ?」

 長い青い髪の女性がこちらを見てる。


 「確か……お前はアクア家の……」

 目の前の彼女がどれだけ……アクア家と素質を持っているかはわからない。
 多分……リーヴァには、神としての器という資格があったにしろ……

 目の前の彼女に成り代わり、その能力を存分に発揮するだけの素質はないかも知らない。

 ただの女の子……そんなアクア家の少女に成り代わる。
 それは、残酷な運命なのかもしれない。

 それでも……


 リーヴァの願いはそこにあるんだ。

 そんな世界の誕生は……

 俺もミルザも……望んでいる……それで俺たちは救われる。


 セシルがそんな俺たちの前に立つ。

 そして、この男の……長い反抗《せんそう》の始まりだ。


 世界を騙し、父《かみ》をも騙す……


 彼の中の頭の中で、一つ、また一つ駒が動いていく。


 チャンネルは揃った……
 合わさった映像《じんぶつ》は、次第にこの世界で動き出す。

 時間なんてものは……人間が都合で描いた造物に過ぎない。

 過去も未来も……今《ここ》を基準とした……妄想に過ぎない。


 それでも……今にそれらが集結するとするのなら……


 遊戯はそこから始まる。

 全ては計算どおりのはずだった……


 ひとつ……ひとつ誤算があるとするのなら……


 神代理……それに選ばれた召喚者《おんな》が……

 余りにも素敵《いとしい》と……そう思ってしまった。


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 「しかし……随分だね、イブ……お目当ての王子様《しょうかんしゃ》に会って、私なんてどうでもよくなったかい?」

 リプリスが少し寂しそうにイブに言う。


 「いやだなぁ……ねぇさんには、私たちは一生感謝しているよぉ、もう一人の男の方は受け付けないけどねぇ」

 キカが向かった先に居る男を指し、イブが返す。


 「ねぇさんは、異世界《こっち》に来てから、ずっと私たちの味方でいてくれたからね」

 「そういえば……あんたは、神は悪だと言っていたな……何か理由があるのか?」

 俺はリプリスにそう尋ねる。


 「……言ったろ、視点の問題さ……どんな熱弁をしたところで、君にとって私の言い分など、ただの逆恨みだろうね」

 手にした銃で、巨大な化け物を打ち抜きながらリプリスが言う。


 「……怖がるな、ノア……今、私が助けてやるからな」

 優しくリプリスが、今も自らの瘴気で巨大な化け物の傷を癒す、黒い影の女性に語りかける。


 「ねぇ……さぁん、ありがと、でもさ……二つを助けるなんてさ……無理なんだよ、障りに落ちた人間はさ……戻らないんだよ」

 寂しそうにイブが……リプリスに言い、その瞳を同じく黒い影の女性に向ける。


 「レス君……私はね、現世《あっち》で……助けてやれなかった人が居たんだ……ずっと神様を信じて、いつか自分を救ってくれると信じていた奴が居たんだ……私なんかよりずっとずっと幼くて、未来のある子だった……」

 何かを悔いるように……

 「……現世《あっち》では、神なんて存在、信じていなかったんだけどさ……こっちに居るっていうのなら……救わせるのさ……それができないと言うのなら……何が神だ……そんな無能な奴は私が修正をくだす」

 瞳の光が消えるように、虚ろな瞳で巨大な化け物を睨む。
 それが、怒りの神《たいしょう》であるように……


 サリスやクリアもその巨大な化け物に幾度も攻撃をしかけるが……
 その傷はすぐに彼女の瘴気に再生される。


 「ねぇ……レス……私もさ、あなたの英雄《ヒロイン》にしてくれるかなぁ……希望は……巨大瘴気《あれ》に勝つことができる?」

 再び黒い球体がミサイルランチャーに代わり、巨大な化け物を打ち落とすが……
 やはり瘴気がその傷を再生していく。


 ごとっとその武器を投げ捨てる。

 再び……集う黒き球体の瘴気に……


 「あは……さっすがにコレは私も想定外だなぁ」

 楽しそうに笑うイブの右腕を、サリスもクリアも……リプリスも驚くように見ている。


 装甲車《せんしゃ》のヘッド部分の砲台を形どる。


 さらに、その巨大な砲台の弾とそれを砲台に発射させる羽根が具現化される。

 そして、その弾にイブの魔力による電流が放電するようにまとわりつく。


 「ごめんねぇ……たぶん、建物ひとつくらい壊しちゃうかなぁ」

 ドンっと発射される砲撃……

 そんな巨大な化け物の上半身を吹き飛ばし……

 その後ろに立っていた無人のビルの建物を同様に半分が消し飛ぶ。

 そんな上半身をノアがその自分の身体《しょうき》で回復させようとするが……

 さらにその一撃で化け物の身体が爆破するよに消滅するように吹き飛ぶ。



 「アアアアアーーーーーーーッ」

 ノアが怒るように叫ぶが……
 今ある彼女の瘴気ではその化け物を再生することは難しい。

 そう悟ったノアは再び黒い霧となり、風に流れるように姿を消す。


 「あちゃーーーっ……損害どれくらいだしちゃったかなぁ」

 逃げられたことを気にもせず、イブは自分が破壊してしまった建物の心配をしている。


 「……気にするな、必要最低限の被害だ……必要ならその費用は私が持つ」

 リプリスがイブの肩に手を置いて言う。


 「ほんっと……ねぇさんには一生頭が上がらないなぁ」

 素直にその好意を受け入れる。


 「ヘルプ・ミーーーーーっ!!」

 突然そんな叫び声が機械の中から聞こえる。

 イブの持つ小型テレビのような機械。


 映し出されている映像を全員で見る。


 キカの到着で、レグサスの率いる部隊を見事に蹴散らしている。

 が、それに疲れ果てたようにキカはその場で大の字で眠っている姿が見える。


 そして、投下されていた火の手は今もセラを苦しめている。


 「キカ、キカぁーーー起きなさい、寝るならわたくしをたすけてから、それが常識でしょ」

 「おいくらぁー、おいくらで起きるのかしら?払う、払うから……わたくしをここから開放して頂戴っ」

 

 ・  ・  ・



 「まーーーた、無駄遣いしようとしてる……」

 困り果てたようにイブが言うが……


 「自分の命の危機だ……正当ではないのか」

 サリスがそんな正論を返すが……


 「セラの命とセラのお金……どちらが大事だと思いますか?」

 そんな鬼畜な返しをイブがする。


 「……それは、考えどころではあるが……」


 「ちょっと、あなたたち人でなし、人でなしだわぁーーーっ、レスちゃん、あたしを助けて、たちゅけてぇ……ヘルプ・ミーっ!!」

 まるで、こちらの会話が聞こえていたかのように、セラが必死に俺に助けを求めている。
 しかも、いつの間にか首から『Help me!!』と書かれたプレートを下げている。


 「案外……この状況すら楽しんでいるマゾなのか?」

 俺はそんな疑問を抱くが……


 「……レスさん、早く助けてあげましょう」

 クリアが俺の袖をつかんで言う。


 「……だよな」

 俺はそう言いながらもゆっくりとセラの居る場所に向かう。


 「さて……次会うときが……敵ではないと願うよ、レス君」

 リプリスはそう言いながら反対側に歩いていく。
 少し離れた場所で、オメガとカイがその両隣を歩いてついていく。


 もしもの時は……いつでも彼、彼女が助っ人として現れたのだろう。


 「ねぇ……レス……どうだったかな?」

 イブが歩く俺の後ろを追うように問いかける。
 なにが……という顔でイブを見る。


 「だって……今回、あの巨大な化け物を追い払ったのってさ……私たちだよ」

 少しだけ得意げにイブが言う。


 「もっと……認めてくれても、褒めあってもいいと思うけどなぁ」

 乗りの悪い俺に少しだけ不貞腐れたような顔を向けるイブ。


 「もちろん……俺のあんな無茶な希望《ほうだい》を具現化するなんてたいした者というか……想定以上だったよ」

 俺はそんな素直な意見を言うが、イブは不貞腐れた顔のまま……


 「ひどいなぁ……人を化け物みたいにっ」

 年頃の女の子の扱い方は難しい……
 俺はそう思いながらも苦笑いを返し、隣を歩くイブの頭を、
 意味もなくポンポンと叩く。


 なぜか、それで機嫌を少しだけよくしたように笑い……


 「……どんな人の召喚に協力したかって思ってたけど……妥協点かな」

 少しだけ偉そうにイブが俺を評価する。


 
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