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学園編-交流戦
教師
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学園……とある教室内。
「……おや、これは随分と恐ろしい顔ぶれだな……」
呼び出された、アストリア……
「ルンライト=ブレイブ……勇者の血筋を持つ英雄様に……」
美しい金髪の女性をトリアは眺め、目線をずらす。
「スコール=アクア……全て科目に置きトップクラスの成績……選ばれるべきして選ばれた生徒会長様に……」
青髪の冷酷そうな男……
「ナイツ=マッドガイア……実力もありながら、主への忠誠心と誇り高き志を持つ騎士様か」
少し体格の良い茶髪の男……
「この学園の現トップ3と言われる方々が私ごときに何ようだ?」
そんなすごいメンツを前に臆する事もなくトリアは逆に食ってかかるように切り出す。
「……ミストを逃がしたそうだな」
そうスコールがトリアに言う。
「……そんなつまらない話のために私を呼んだのか?」
そうトリアはスコールの言葉に臆する事無く返す。
「私に殺人鬼を捕らえる命があるわけでもない、貴様にその責任を問われる筋合いはないが」
スコールの冷たい視線を、薄笑みの冷徹な目でにらみ返す。
「ミストによる被害は、知っているだろう……アストリア、少しは事態を真剣に考えろっ」
そうナイツとアストリアが読んだ男が言う。
「ナイツ……そいつはお互い様というところだろう」
そう薄笑みの冷徹な目をそのままナイツとおいう男に移す。
「あの殺人鬼がみすみすその姿を、貴様等の前に現すとは思えぬが、貴様等がその事態とやらを真剣に考えているのならすでに事件は終結と思うがな」
そうトリアがナイツに言葉を返す。
「やめろ……」
今まで黙っていた金髪の女性……その言葉一つで一瞬でその場に緊張が走る。
「お前たちの会話には品がない……言葉で罵り合うだけなら弱者でもできる……それとも貴様等はその程度か?」
その場に居る全員が彼女の言葉で口を閉ざす。
そんな沈黙を破るようにコンコンとその部屋のドアが叩かれる。
誰一人と返事をしなかったが……その叩いた主はドアを開けその顔を現す。
灰色の髪の生徒……
そこに居る誰もがその身の程知らずの男が誰かを知らない。
「初めまして……1学年A組、ハイト=クロックタイム、やがて、この学園のトップに立つ男の名前です、以後お見知りおきを」
ハイトと名乗った男は得意げにその場に居合わせる強者を眺め不敵に笑う。
「去れ、お前ごときの相手をしてる暇は無い」
そうスコールが返す。
「それ……いいバッジですねぇ、少し借りていいです?」
徐に、スコールが制服の襟元につけている生徒会のバッジを指差す……
「二度言わせるな、去れ……貴様ごときが触れられる代物じゃ……」
その場にいる者が感じた……一瞬意識が飛んだ感覚……
「……ない」
そうスコールが台詞を言い終える。
「いやーーーカッコいいっすねぇ」
ちゃらちゃらと金色に輝くバッジをお手玉のように遊ぶハイト。
「!?」
スコールが自分の首元に手を置く……
あるべきバッジが無い。
「貴様っ……」
その屈辱に殺意の満ちた目をハイトに送る。
「冗談ですよ……でも、理解したでしょ、僕の実力……1学年にもあなたたちと同じ領域に居る人間が居る事を」
そうハイトが言う。
「笑わせるな……」
冷たく笑いトリアがハイトに告げる。
「少し特殊な能力を持っている……ようだが貴様はその能力に過ぎん」
そう謎めいたトリアの言葉に
「……何を言っている……」
そうハイトがトリアに返す。
「……お前があっての能力では無いと言っている、能力があっての貴様、むしろ……その能力に貴様という存在は必要がない」
トリアがそう返す。
「……ふん、今回の交流戦……僕は勝利しお前らに兆戦する……その寝首を狩る」
そのハイトの言葉にトリアがくくくと笑い
「無駄だ……お前は1学年……そこですら勝利を掴み取れん、断言してやろう、貴様はレスという男の前に無様に散る」
そうトリアが言う。
「レス……?誰だ……そいつ」
そうハイトは返すが……
「くだらん……アストリア、あんな男に一目置いているのか……」
スコールがそう口を挟む。
「……ふむ、スコール……奴の可能性を見極められぬのか……貴様の底も見えたな」
「くくくっ、今年の交流戦、少しは楽しめそうだな」
そうトリアが一人笑った。
・・・
5日目……変わらずアクア家の与えられたベッドで目を覚ます事に安堵する。
自分の知るRPGゲームのように、一晩眠ればHPとMPが満タンというような、簡単な仕組みでは無さそうだし、自分のステータスがどんなものかは解らない。
もしかすると、それに似たようなものがリヴァーには見えるのかも知れないが……
学園に着き、俺は席に座ると……
一人の男が俺に近寄ってくる。
俺の前の席の椅子を自分の席の椅子のように、
以前のように背もたれを前に跨り、俺と向かい合う。
「おっす、レス……交流戦、いよいよ明日だな」
そうヴァニは昔からのダチに話しかけるように言う。
「……あぁ、そういえば、もう明日なのか……」
以前の会話を思い返す。
「そろそろ、いい返事を聞かせてくれよ」
そうヴァニが笑顔で言う。
「……えっと、レスくん、君にお客さんみたい」
正直会話するのが初めてだと思う同クラスの女子生徒
そう言われた先に、立っている灰色の髪の男。
「ふーん、あんたが噂の転入生……レスくん?」
全く見覚えの無い男……
「……いい加減だなぁ、あの女……この僕とこんな男を比較するとか」
そう……薄笑みを浮かべ目の前の男が言う。
「なんだ、てめぇ」
すぐさま、クラスの問題児はその男に凄む。
「……レスくん、君をこの場で殺してあげよっか♪」
灰色の髪の男はナイフを取り出すと俺にその刃先を向ける。
「てめぇ……ぶっとば……」
ヴァニが拳を振りかざし、その男を殴り飛ばそうとするが……
「……すぞっ!!」
意識が一瞬飛んだ気がした……
拳を振りかざしたヴァニが対象にした男は、その横を何時の間にかすり抜け……
俺の頬にそのナイフを突きつけている。
「……なっ?」
ヴァニが驚いている。
当然、ヴァニだけではない……俺もそれを見ていた者も同様だった。
「僕は支配者だ……貴様等では僕の足元にも及ばない……3学年の連中も僕のこの能力の前に楯突く事なんて不可能だっ」
目の前の男はゲラゲラと笑う。
ゲラゲラと笑っていた顔が真顔になる……
「この僕がコイツに負ける?笑わせるな……今回は見逃してやるが……明日の交流戦、A組とのダブルス戦……参加しろ、そこで、てめぇを完膚なきまでにぶっ潰す」
そう男が言葉を放つと再び一瞬意識が飛ぶ感じがした。
気がつくと、頬に突きつけられたナイフが消え……
目の前から男の姿が消えていた。
教室の出入り口を見ると……男が立ち去るところだった。
「……決まったな、明日のA組とのダブルス戦……レスと俺であの野郎をぶっ飛ばすぜ」
そうヴァニが言う。
「……そう簡単に決めるなよ」
そう言ったものの……あんな危険な奴の相手を他の誰かにさせるか?
俺がもし、あいつとの対戦から逃げた場合……何をしでかすかわからない。
「……まぁ……それでダブルス戦ってのはなんだ?」
いろいろと考えたあげく、疑問はそこに行き着く。
「クラス対抗の2対2での対決……対抗戦初日の種目だ」
予鈴が鳴り、担任の女教師が入ってくる。
「よし、それじゃ……明日の交流戦……まずはダブルス戦に置ける各、クラスごとのチーム分けをするぞっ、一つ言っておく、たかが交流戦と高をくくるなぁ、負ければとんでもない罰ゲームつきだからなぁ」
教師はその罰ゲームの内容は説明しない。
誰もが……対してその言葉の意味を理解せず気にもしないようだったが……
なんだか……少し気になった。
チーム分けの話は進む。
A組には、もちろんヴァニが一人目で選ばれる。
B組には、クロハが選ばれる。
C組に、レインが選ばれた。
そういえば、レインの能力……まだ見たことが無かった。
そして……それぞれのパートナー。
A組、B組、C組の二人目……
「3人とも、レス……お前をご指名だ」
教師がそう告げる……
「はぁ?」
そんな間抜けな声をあげる……
「……ま、まて……1人が3回出場とか有りなのか?」
さすがにそれは想定外過ぎる展開だ。
「……反則にはあたらないな……なんせ、同じ人間が3回出場するなど普通に考えれば不利なだけだ」
そう教師が返す。
「だったら……止めろよ」
そう……返すが……
「……とんでもない罰ゲーム……受けたくないだろ?てめぇの本気を見せてみろ……転入生」
その教師の目……虚ろな目……最初からだっただろうか……
その言葉とは裏腹……何も期待などしていない……そうとも取れる。
「そんじゃ、解散……明日に備えろ」
そう言って教師は、教室の外に出る。
「待てよっ!!」
廊下に出た教師を追いかけそう声をかける。
「いや、お前だよ、先生!!」
一瞬足を止めたが再び歩き出した教師を慌てて止める。
「……教師に向かい、お前だの、タメ口とはぶっ飛ばされる覚悟はあるのか?」
少しだけ顔を後ろに向け睨むように教師が言う。
「……悪い……じゃなくてスイマセン」
そう修正する。
「……罰ゲームってのは……何なんですか?」
そう尋ねる。
「……聞いてどうする?」
少しだけ見える顔……寂しそうに笑ったように見える。
「……そりゃ、知る権利ありますよね?」
その俺の言葉に……
「……屋上、少し付き合え」
教師はそう言い……辿り付いた階段をどんどん登って行く。
黙って、俺はその後ろをついていった。
屋上に辿り着く。
「悪い……1本いいか……」
タバコ……?のようなものを口にすると火をつける。
実に美味そうにそれを吸っている。
何よりタバコが絵になる人だと少し関心さえしてしまう。
「……解散だ」
そして、徐に教師が言う。
「はぁ……あんた何言って」
ここに連れてきてその台詞……
「フレア=インストラクトだ」
教師は、またも唐突に名乗る。
「……そう何度も、目上に対し相応しくない二人称を使うな」
そうフレアと名乗った教師が言う。
「……負ければ晴れて、このクラスは解散だ」
そして、続けてフレアは言った。
「……はぁ?ただの交流戦だろ?」
「口実だろうな……私を追い出す、私をよく思わない奴がこの学園には居ると言う訳だ……はぐれ者の寄せ集めのクラスを受け持たされ、あげくそのクラスが功績をあげられなければ、クラスごと解散という訳だ」
……理解が追いつかない。
「……あんたはいったい誰に怨まれてるんだよ……」
すでに敬語を使う事すら忘れていた。
「……解散といえど、優秀な生徒はそれぞれ……3クラスの何処かに振り分けられるだろうが」
そんな事を聞いているわけじゃない……
「……今のクラスがバラバラになっちまうんだろ?」
たかだか……5日間……
それでも俺は……あいつらと。
どこまで……できるかはわからない……
何ができるか……わからない……
それでも……
「守るさ……このクラスは……」
口だけかもしれない……それでも……
「……そのついで……フレア《せんせい》の事も守るよ」
「……変な奴だよ、お前は……」
そう言いフレアは少し寂しそうに笑う。
「もう少し年を取って……もう少しイケメンだったら、間違いなく惚れてるよ」
そう少しだけフレアは笑顔になる。
「……絶望的に希望薄だな……」
俺の嫌味を込めた言葉に……
「違いないっ」
何が面白かったのか、フレアはゲラゲラと笑い出す。
この夢にはきっと意味があるのだろう……
俺が今……ここに居る……
それに意味があるというのなら……
必死で探せ、必死にそれを成せ……
意味の無い現世を知っている。
だからこそ……意味を与えられる事のその喜びを……
俺にそれを守る力があるというのなら……
掴んだ手を放すな……
この腕が引きちぎれても……
放すな……
欲張りと言われても構わない……
掴んだもの……
全部、全部、手放すな……
「……おや、これは随分と恐ろしい顔ぶれだな……」
呼び出された、アストリア……
「ルンライト=ブレイブ……勇者の血筋を持つ英雄様に……」
美しい金髪の女性をトリアは眺め、目線をずらす。
「スコール=アクア……全て科目に置きトップクラスの成績……選ばれるべきして選ばれた生徒会長様に……」
青髪の冷酷そうな男……
「ナイツ=マッドガイア……実力もありながら、主への忠誠心と誇り高き志を持つ騎士様か」
少し体格の良い茶髪の男……
「この学園の現トップ3と言われる方々が私ごときに何ようだ?」
そんなすごいメンツを前に臆する事もなくトリアは逆に食ってかかるように切り出す。
「……ミストを逃がしたそうだな」
そうスコールがトリアに言う。
「……そんなつまらない話のために私を呼んだのか?」
そうトリアはスコールの言葉に臆する事無く返す。
「私に殺人鬼を捕らえる命があるわけでもない、貴様にその責任を問われる筋合いはないが」
スコールの冷たい視線を、薄笑みの冷徹な目でにらみ返す。
「ミストによる被害は、知っているだろう……アストリア、少しは事態を真剣に考えろっ」
そうナイツとアストリアが読んだ男が言う。
「ナイツ……そいつはお互い様というところだろう」
そう薄笑みの冷徹な目をそのままナイツとおいう男に移す。
「あの殺人鬼がみすみすその姿を、貴様等の前に現すとは思えぬが、貴様等がその事態とやらを真剣に考えているのならすでに事件は終結と思うがな」
そうトリアがナイツに言葉を返す。
「やめろ……」
今まで黙っていた金髪の女性……その言葉一つで一瞬でその場に緊張が走る。
「お前たちの会話には品がない……言葉で罵り合うだけなら弱者でもできる……それとも貴様等はその程度か?」
その場に居る全員が彼女の言葉で口を閉ざす。
そんな沈黙を破るようにコンコンとその部屋のドアが叩かれる。
誰一人と返事をしなかったが……その叩いた主はドアを開けその顔を現す。
灰色の髪の生徒……
そこに居る誰もがその身の程知らずの男が誰かを知らない。
「初めまして……1学年A組、ハイト=クロックタイム、やがて、この学園のトップに立つ男の名前です、以後お見知りおきを」
ハイトと名乗った男は得意げにその場に居合わせる強者を眺め不敵に笑う。
「去れ、お前ごときの相手をしてる暇は無い」
そうスコールが返す。
「それ……いいバッジですねぇ、少し借りていいです?」
徐に、スコールが制服の襟元につけている生徒会のバッジを指差す……
「二度言わせるな、去れ……貴様ごときが触れられる代物じゃ……」
その場にいる者が感じた……一瞬意識が飛んだ感覚……
「……ない」
そうスコールが台詞を言い終える。
「いやーーーカッコいいっすねぇ」
ちゃらちゃらと金色に輝くバッジをお手玉のように遊ぶハイト。
「!?」
スコールが自分の首元に手を置く……
あるべきバッジが無い。
「貴様っ……」
その屈辱に殺意の満ちた目をハイトに送る。
「冗談ですよ……でも、理解したでしょ、僕の実力……1学年にもあなたたちと同じ領域に居る人間が居る事を」
そうハイトが言う。
「笑わせるな……」
冷たく笑いトリアがハイトに告げる。
「少し特殊な能力を持っている……ようだが貴様はその能力に過ぎん」
そう謎めいたトリアの言葉に
「……何を言っている……」
そうハイトがトリアに返す。
「……お前があっての能力では無いと言っている、能力があっての貴様、むしろ……その能力に貴様という存在は必要がない」
トリアがそう返す。
「……ふん、今回の交流戦……僕は勝利しお前らに兆戦する……その寝首を狩る」
そのハイトの言葉にトリアがくくくと笑い
「無駄だ……お前は1学年……そこですら勝利を掴み取れん、断言してやろう、貴様はレスという男の前に無様に散る」
そうトリアが言う。
「レス……?誰だ……そいつ」
そうハイトは返すが……
「くだらん……アストリア、あんな男に一目置いているのか……」
スコールがそう口を挟む。
「……ふむ、スコール……奴の可能性を見極められぬのか……貴様の底も見えたな」
「くくくっ、今年の交流戦、少しは楽しめそうだな」
そうトリアが一人笑った。
・・・
5日目……変わらずアクア家の与えられたベッドで目を覚ます事に安堵する。
自分の知るRPGゲームのように、一晩眠ればHPとMPが満タンというような、簡単な仕組みでは無さそうだし、自分のステータスがどんなものかは解らない。
もしかすると、それに似たようなものがリヴァーには見えるのかも知れないが……
学園に着き、俺は席に座ると……
一人の男が俺に近寄ってくる。
俺の前の席の椅子を自分の席の椅子のように、
以前のように背もたれを前に跨り、俺と向かい合う。
「おっす、レス……交流戦、いよいよ明日だな」
そうヴァニは昔からのダチに話しかけるように言う。
「……あぁ、そういえば、もう明日なのか……」
以前の会話を思い返す。
「そろそろ、いい返事を聞かせてくれよ」
そうヴァニが笑顔で言う。
「……えっと、レスくん、君にお客さんみたい」
正直会話するのが初めてだと思う同クラスの女子生徒
そう言われた先に、立っている灰色の髪の男。
「ふーん、あんたが噂の転入生……レスくん?」
全く見覚えの無い男……
「……いい加減だなぁ、あの女……この僕とこんな男を比較するとか」
そう……薄笑みを浮かべ目の前の男が言う。
「なんだ、てめぇ」
すぐさま、クラスの問題児はその男に凄む。
「……レスくん、君をこの場で殺してあげよっか♪」
灰色の髪の男はナイフを取り出すと俺にその刃先を向ける。
「てめぇ……ぶっとば……」
ヴァニが拳を振りかざし、その男を殴り飛ばそうとするが……
「……すぞっ!!」
意識が一瞬飛んだ気がした……
拳を振りかざしたヴァニが対象にした男は、その横を何時の間にかすり抜け……
俺の頬にそのナイフを突きつけている。
「……なっ?」
ヴァニが驚いている。
当然、ヴァニだけではない……俺もそれを見ていた者も同様だった。
「僕は支配者だ……貴様等では僕の足元にも及ばない……3学年の連中も僕のこの能力の前に楯突く事なんて不可能だっ」
目の前の男はゲラゲラと笑う。
ゲラゲラと笑っていた顔が真顔になる……
「この僕がコイツに負ける?笑わせるな……今回は見逃してやるが……明日の交流戦、A組とのダブルス戦……参加しろ、そこで、てめぇを完膚なきまでにぶっ潰す」
そう男が言葉を放つと再び一瞬意識が飛ぶ感じがした。
気がつくと、頬に突きつけられたナイフが消え……
目の前から男の姿が消えていた。
教室の出入り口を見ると……男が立ち去るところだった。
「……決まったな、明日のA組とのダブルス戦……レスと俺であの野郎をぶっ飛ばすぜ」
そうヴァニが言う。
「……そう簡単に決めるなよ」
そう言ったものの……あんな危険な奴の相手を他の誰かにさせるか?
俺がもし、あいつとの対戦から逃げた場合……何をしでかすかわからない。
「……まぁ……それでダブルス戦ってのはなんだ?」
いろいろと考えたあげく、疑問はそこに行き着く。
「クラス対抗の2対2での対決……対抗戦初日の種目だ」
予鈴が鳴り、担任の女教師が入ってくる。
「よし、それじゃ……明日の交流戦……まずはダブルス戦に置ける各、クラスごとのチーム分けをするぞっ、一つ言っておく、たかが交流戦と高をくくるなぁ、負ければとんでもない罰ゲームつきだからなぁ」
教師はその罰ゲームの内容は説明しない。
誰もが……対してその言葉の意味を理解せず気にもしないようだったが……
なんだか……少し気になった。
チーム分けの話は進む。
A組には、もちろんヴァニが一人目で選ばれる。
B組には、クロハが選ばれる。
C組に、レインが選ばれた。
そういえば、レインの能力……まだ見たことが無かった。
そして……それぞれのパートナー。
A組、B組、C組の二人目……
「3人とも、レス……お前をご指名だ」
教師がそう告げる……
「はぁ?」
そんな間抜けな声をあげる……
「……ま、まて……1人が3回出場とか有りなのか?」
さすがにそれは想定外過ぎる展開だ。
「……反則にはあたらないな……なんせ、同じ人間が3回出場するなど普通に考えれば不利なだけだ」
そう教師が返す。
「だったら……止めろよ」
そう……返すが……
「……とんでもない罰ゲーム……受けたくないだろ?てめぇの本気を見せてみろ……転入生」
その教師の目……虚ろな目……最初からだっただろうか……
その言葉とは裏腹……何も期待などしていない……そうとも取れる。
「そんじゃ、解散……明日に備えろ」
そう言って教師は、教室の外に出る。
「待てよっ!!」
廊下に出た教師を追いかけそう声をかける。
「いや、お前だよ、先生!!」
一瞬足を止めたが再び歩き出した教師を慌てて止める。
「……教師に向かい、お前だの、タメ口とはぶっ飛ばされる覚悟はあるのか?」
少しだけ顔を後ろに向け睨むように教師が言う。
「……悪い……じゃなくてスイマセン」
そう修正する。
「……罰ゲームってのは……何なんですか?」
そう尋ねる。
「……聞いてどうする?」
少しだけ見える顔……寂しそうに笑ったように見える。
「……そりゃ、知る権利ありますよね?」
その俺の言葉に……
「……屋上、少し付き合え」
教師はそう言い……辿り付いた階段をどんどん登って行く。
黙って、俺はその後ろをついていった。
屋上に辿り着く。
「悪い……1本いいか……」
タバコ……?のようなものを口にすると火をつける。
実に美味そうにそれを吸っている。
何よりタバコが絵になる人だと少し関心さえしてしまう。
「……解散だ」
そして、徐に教師が言う。
「はぁ……あんた何言って」
ここに連れてきてその台詞……
「フレア=インストラクトだ」
教師は、またも唐突に名乗る。
「……そう何度も、目上に対し相応しくない二人称を使うな」
そうフレアと名乗った教師が言う。
「……負ければ晴れて、このクラスは解散だ」
そして、続けてフレアは言った。
「……はぁ?ただの交流戦だろ?」
「口実だろうな……私を追い出す、私をよく思わない奴がこの学園には居ると言う訳だ……はぐれ者の寄せ集めのクラスを受け持たされ、あげくそのクラスが功績をあげられなければ、クラスごと解散という訳だ」
……理解が追いつかない。
「……あんたはいったい誰に怨まれてるんだよ……」
すでに敬語を使う事すら忘れていた。
「……解散といえど、優秀な生徒はそれぞれ……3クラスの何処かに振り分けられるだろうが」
そんな事を聞いているわけじゃない……
「……今のクラスがバラバラになっちまうんだろ?」
たかだか……5日間……
それでも俺は……あいつらと。
どこまで……できるかはわからない……
何ができるか……わからない……
それでも……
「守るさ……このクラスは……」
口だけかもしれない……それでも……
「……そのついで……フレア《せんせい》の事も守るよ」
「……変な奴だよ、お前は……」
そう言いフレアは少し寂しそうに笑う。
「もう少し年を取って……もう少しイケメンだったら、間違いなく惚れてるよ」
そう少しだけフレアは笑顔になる。
「……絶望的に希望薄だな……」
俺の嫌味を込めた言葉に……
「違いないっ」
何が面白かったのか、フレアはゲラゲラと笑い出す。
この夢にはきっと意味があるのだろう……
俺が今……ここに居る……
それに意味があるというのなら……
必死で探せ、必死にそれを成せ……
意味の無い現世を知っている。
だからこそ……意味を与えられる事のその喜びを……
俺にそれを守る力があるというのなら……
掴んだ手を放すな……
この腕が引きちぎれても……
放すな……
欲張りと言われても構わない……
掴んだもの……
全部、全部、手放すな……
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勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました
遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。
追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。
やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。
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