上 下
12 / 21

家族との対面

しおりを挟む
 緊張しながら、中に入った。見回したが記憶が蘇ることはなかった。どうしよう、部屋の間取りがわからない。私の部屋はどこ?

 応接室?に入り、私の立ち位置どっち側?と思ってしまった。ウィルの方に行くとおかしいわよね。

「どうしたの?ホワイティス。こちらに座りなさい」
 お母さまの隣を指してくれた。よかった。とりあえず、そこに座ると、ウィルと向かい合う形になった。

「先ほどは取り乱してすまなかった。ホワイティスが体調を崩したと聞いて、気が動転してしまったようだ。改めて、ありがとう」

「いやいや、ホワイティス嬢をこちらで預かってしまい、さぞ心配であったろう。こうして皆で集まるのは、婚約式以来か、オスカー。久しぶりだな」

「そうだな、アーサー。お互いの子供たちが婚約したが、お前は辺境での討伐が忙しいからなかなか王都に来ないしな。今回会えてよかったよ」
 父親たちが久しぶりの再会で喋りに夢中になっていた。お父さまたちはメイサ様、お母さまそれぞれに2人だけで喋らないでと、諭されていた。

 辺境伯様と目があった。これから告白する。

「ホワイティス嬢のことなのだが、体調を崩したと言っていただろう?それなのだが・・・」
 話が終わる前にお父さまがまぁた、勘違いなことを言っている。
「アーサー、歯切れの悪い物言いだな。やはりウィリアム殿、きさまぁー、うちのホワイティスにー」
「お父さま違う、違うのよ。私に記憶がないのよ。ホワイティスの記憶がないのよ」
「「えっ」」
 お父さまとお母さまが一斉に私を見た。

「どういうことなんだ?記憶がない?記憶喪失になってしまったのか?大丈夫か?どこか怪我とかしていないかい」
 すごく心配している。

「あの、私の話を聞いていただけますか?本当のことをこれからお話しします」
2人が心配そうに見つめてきた。テーブルの向こうでもウィルやみんなが心配そうに見つめていた。

「私、ホワイティスですが、ホワイティスの記憶が全くないのです。数日経てば思い出すかと思ったのですが、全く思い出すことができませんでした。ただ、私には別の記憶があります。私は、白井すずという名前で、この世界より高度な技術を持った世界にいました。そこでは、32歳独身、保育士という仕事をしていました。保育士というのは共働きをする夫婦を支援するために子供達を預かり、面倒を見たり、教育をしたりする場所で働いていました。そういった白井すずの記憶はあるのですが、ホワイティスの記憶がないのです。体がホワイティスで、精神が私、白井すずになっている状態です。あなた方のホワイティスではなくてすみません。受け入れられないなら、私はウィリアム様の家で働きます。聞いていただきありがとうございました」

 目の前にいる2人は戸惑っていた。やはり受け入れられないよね。

「オスカー、この話を私たちも聞いた。信じられない話かも知れないが、私たちは受け入れた。その、なんだ、だいぶホワイティス嬢の性格や態度が違うのだ。そして、知識がある。前にいた世界の記憶で、我々も助けられたのだ」

「助けられたというのは何を助けられたのだ、アーサー」
「うん、妻のメイサが8ヶ月前にセーラを産んだのは覚えているか。妊娠中も年齢の関係でかなり不安なことを周りから言われていた。メイサも精神的に不安定だったと思う。それで産まれた後体調を崩してしまって、余計精神的不安定になっていたのだ。私たちは、どうしていいかわからず、メイサとの溝が深まっていったのだ。メイサはどんどん自分の殻に閉じこもり孤立してしまったのだ。家全体が暗く沈んでいたのだよ」

「アーサーそんな状態だったのか」

「そして、記憶がないホワイトティス嬢をウィリアムが連れてきた。ホワイティス嬢は、ほいくし?という子供の面倒をみる仕事をしていた知識で、私たちを助けてくれた。本当に感謝している。こうして笑顔でいられるのもホワイトティス嬢のおかげだ。もし、オスカー達が受け入れられないなら、うちで花嫁修行として受け入れるよ」

 辺境伯様ありがとうございます。そう言っていただけてありがたいですが花嫁修行、恥ずかしい。

「アーサー、受け入れられないのではない、頭を整理しているのだ。ふう、確かに今までのホワイトティスとは今までの態度が違いすぎることに戸惑っていたのだ。恥ずかしい話、ホワイティスは落ち着いて話すことができないぐらいワガママだった。家人みんなが疲れ切っていたのは事実なのだよ。そうか」

「あなた、確かに今までのあの子はワガママで話を聞かない子でした。あの子が何を考え、何にイライラしているのかがわからなかったのです。歩み寄ろうとしても突っぱねられる日々でした。ですが、ここにいるホワイティスもホワイティスです。私は受け入れますよ、ホワイティス」

「何を言っている、私だって受け入れるよ。当たり前だろう。親子なのだから。ホワイティス。まだ、嫁に行くのは早いからな。ずっとここにいればいいのだ。ということで、アーサー、嫁にはやらん」

「おねちゃま、大丈夫?」
 その一言でみんなが私の方を一斉に見た。

 私は、知らずに泣いていたようだ。

「あれ、私泣いているの?」

 それからガバッと両親に抱きしめられた。大丈夫だから,大丈夫だからと背中をさすってくれてくれた。

「ありがとうございます、おとうさま?おかあさま?」

「ふふふっ、なぜ疑問形なの?お父さま、お母さまで大丈夫よ」
温かいなぁ。前世、両親を小さい時亡くしているので、今、前世32歳の私が抱きしめられると恥ずかしい
。でも嬉しいなぁ。

「なんだ、花嫁修行でこちらに早く来られないのは残念だな。だが嫁には来てもらうぞ、オスカー」

「ふん、嫁にはやらんぞ。アーサー」
 父親同士で、嫁にやるやらない論争をしている。

 今後のことを話、学校へはこちらの生活が慣れるまで休学し、徐々に復帰していこうという話になった。

 さあ、この世界での生活が始まる。
 その前に我が弟、リカルド君との対面だ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

妻と夫と元妻と

キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では? わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。 数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。 しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。 そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。 まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。 なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。 そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて……… 相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。 不治の誤字脱字病患者の作品です。 作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。 性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。 小説家になろうさんでも投稿します。

新婚なのに旦那様と会えません〜公爵夫人は宮廷魔術師〜

秋月乃衣
恋愛
ルクセイア公爵家の美形当主アレクセルの元に、嫁ぐこととなった宮廷魔術師シルヴィア。 宮廷魔術師を辞めたくないシルヴィアにとって、仕事は続けたままで良いとの好条件。 だけど新婚なのに旦那様に中々会えず、すれ違い結婚生活。旦那様には愛人がいるという噂も!? ※魔法のある特殊な世界なので公爵夫人がお仕事しています。

【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!

はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。 伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。 しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。 当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。 ……本当に好きな人を、諦めてまで。 幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。 そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。 このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。 夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。 愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

【書籍化決定】断罪後の悪役令嬢に転生したので家事に精を出します。え、野獣に嫁がされたのに魔法が解けるんですか?

氷雨そら
恋愛
皆さまの応援のおかげで、書籍化決定しました!   気がつくと怪しげな洋館の前にいた。後ろから私を乱暴に押してくるのは、攻略対象キャラクターの兄だった。そこで私は理解する。ここは乙女ゲームの世界で、私は断罪後の悪役令嬢なのだと、 「お前との婚約は破棄する!」というお約束台詞が聞けなかったのは残念だったけれど、このゲームを私がプレイしていた理由は多彩な悪役令嬢エンディングに惚れ込んだから。  しかも、この洋館はたぶんまだ見ぬプレミアム裏ルートのものだ。  なぜか、新たな婚約相手は現れないが、汚れた洋館をカリスマ家政婦として働いていた経験を生かしてぴかぴかにしていく。  そして、数日後私の目の前に現れたのはモフモフの野獣。そこは「野獣公爵断罪エンド!」だった。理想のモフモフとともに、断罪後の悪役令嬢は幸せになります! ✳︎ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)

夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。 ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。  って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!  せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。  新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。  なんだかお兄様の様子がおかしい……? ※小説になろうさまでも掲載しています ※以前連載していたやつの長編版です

処理中です...