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本編

第100話 夜会決戦の時

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 お兄さまたちはすごい。スピーカーを作り上げた。どの距離まで離れても可能か、壁がある場合どうなのかなど色々検証していた。映像機から流れる会話がスピーカーから聞こえる。映像は転写という魔法を応用し、スクリーンに映し出される。今は、マーガレット様の動画をイーサン様がみている。マーガレット様は自分がどんように人に見られていたのか、映像を通して見ていて恥ずかしがっていた。マーガレット様、お綺麗です。どーんとしていていいと思いますよ。恥ずかしがることはない。さぁ、女狐侯爵夫人よ。成敗す!

「これはまたすごいものを作り出したな。今後どのように運営していくか決めて行かないとパンクする。アレクセイ、夜会が終わったら、お義父上と今後の話をしたいと席を設けて欲しい」

「そうですね、うちの商会も次から次へとかなり運営を回しているのですが、手が回らなくなることが心配なのです。ジェイシスお義兄様のところへもお願いしていますが、他にも色々ありまして、手一杯が現状です」

「そうだな、本当に考えて行かないとな。フフフッ、アイリは色々と考えるよな。大変だったな。アレクセイ」

「本当ですよ。全くあいつは、これ作って、あれ作って。これ便利だからと言って、あっ、すいませんジェイシスお義兄様」

「いいんだよ、苦労が目に見えるよ。フフフッ。これで、母上の苦痛が取れればありがたい。本当にアイリには母のためにこんなすごい魔道具を考え出してくれたことに感謝している。あとは、あの侯爵夫人たちがいつも通り動いてくれればいいのだが、ダメなら次がある。この後も魔道具さえあればいつでも撮れる。1番いいのは、今回の夜会で早々に決着がつけばいいのだがな。アレクセイも今日と明日ゆっくり休んで、目の下のクマを取るように。そしてルルーシェのエスコートだろう」

「そうです、ルルーシェ様のエスコートです。なぜ自分がと思いますが、精一杯大役を務めます」

「まぁ、気負いすぎずがんばれ」

「お兄さま、待ってください。このポーション持ち帰ってください。これを飲んで寝てくださいね。翌日はすっきり爽やかになるかもしれませんよ。目の下にクマを作ってルーのパートナーでは恥ずかしいので、これを飲んで、今日明日ゆっくりして、夜会に向けて準備してください。お願いします」

「ありがとう、アイリ。しかし誰が言い出してこんなに忙しかったのかなぁ、全く。では、夜会の時に会おう」
 てへっ、ごめんなさい、お兄さま。

 そして夜会開催です。
 朝から大忙し。女性は大変だ。されるがままに準備が進んでいく。

「アイリ、私の色を身に纏った貴女は綺麗だ。あぁ、嬉しい」
 抱きしめてきた。
「ジェイシス、それにあなた、もうこれから夜会なのですから乱さないでください。朝から大変だったのですから」
 マーガレット様がジェイシス様とイーサン様を諭していた。

 番を得た龍人の血を引く男たちは、それはそれはすぐ抱きしめ、あちこちに口づけしようとする特性を持つのかしら。イーサン様もジェイシス様も同じ行動を取っている。冷静沈着なメレディス様が必要だわ。

 マーガレット様にはブローチ型映写機とICレコーダーを装備。

「では、行こうか」

「「「はい」」」

 イヤモニもそれぞれに渡し、最終調整もバッチリ。

 王族側ではお兄さまがルルーシェ様の隣でエスコート。これにはみんなザワザワした。

 そして第一筆頭スタンフォート公爵家、ジェイシス様と私、続いて前公爵のイーサン様とマーガレット様が王族は挨拶。

「ジェイシス、番を得て初めての夜会だな。表情が違いすぎるぞ。冷徹と恐れられたジェイシスの無表情と違うぞ。くくくっ」

「叔父上、国王陛下。アイリに変なことを吹き込まないでください。私の評価が下がったらどうするのですか」
 国王陛下は笑いながら、私に尋ねた。

「アイリ嬢も息災か。ジェイシスはしつこくないか?まぁ、龍人の血を引くものは番に対してしつこいからな。ジェイシスもほどほどにな。アイリ嬢の兄であるアレクセイもルルーシェのパートナーになってくれてよかったよ。今後ともよろしくな」
 ?今後ともよろしくなって、えっ?お兄さまの方を見たがお兄さまもわからないという顔だ。ルーも苦笑いしている。あとで問いたださないと。うちの両親が卒倒する。

 次々と王族への挨拶が行われた。挨拶が終わった両親のもとへ行った。

「お父さま、お母さま、お兄さまのことは何か聞いているの?」

「いや、ここではまだ言えない。何となくわかっているかもしれないが帰ってきたら言うからな」
 お母さまが青い顔をしている。

「お母さま大丈夫ですか?」

「ええ、アイリ、何とか気を張って堪えているわ。でも倒れそうよ。あなたもスタンフォート公爵様の番としたの挨拶があるだろうからお行きなさい。お父さまに支えてもらうわよ」

「お父さま、しっかりお母さまをみていてくださいね」

「ああ、わかっている。もしくは早めに退席させてもらう。だから帰ってきたらまたゆっくり話をしよう」

「はい、お父さま、お母さま」

 私はジェイシス様と挨拶回りをした。そして女狐侯爵夫人を紹介してもらった。

「私、侯爵のジマール フォン サイエンスと申します。こちらが妻のカルデラです」

「カルデラ ルーデ サイエンスと申します。スタンフォート公爵様はこのような可愛らしい番様に出逢われてお祝い申し上げます。私、あなた様のお義母様になられるマーガレット様とは学園の頃からの知り合いなのですよ」
 目が笑っていないよなぁ、これが女狐侯爵夫人?ジェイシス様を見るとそうだというような目だった。

「まぁ、お義母様と学園が一緒だったのですか?」

「そうですのよ。マーガレット様はそれはそれは勤勉家だったのですか、田舎のご出身だったでしょう。少しマナーの方が疎かにだったのよ。仲良く教えて差し上げていたのですよ」

「まぁ、そうだったのですか。何でも教え合える信頼できる友達がいるって心強いですわ」

「アイリ様、いつでも頼ってください。私には社交界のお友達がたくさんおりますので、お力になれると思います」

「本当ですか?嬉しいです。私、デビュタントデビューをしたばかりでよくわからないことがたくさんあります。サイエンス侯爵夫人のような洗練された貴婦人に教えていただけるなんてありがたいです」

「そうだわ、こちらが私の娘のローダリアンですのよ。今後お友達になるかもしれないですわね」

「スタンフォート公爵様。私、ローダリアン サイエンスと申します。この前の大嘗祭の夜会の時に挨拶させていただいたのですが覚えておりますでしょうか?」
 うわー、上目遣いで可愛く見つめているよ。ははは。

「私が君に対して知り得ることは何もないが、なぜ私に挨拶する!サイエンス侯爵殿、それに夫人、先ほどあなたは私の母にマナー教育をしたと言っていたが、貴殿の娘教育はしなかったということなのか。不愉快だ」
 ジェイシス様の冷たい声が響き渡り、その広間がシーンとした冷たい空気が流れているような気がする。

「誠に申し訳ございません、スタンフォート侯爵様。娘は貴方に会えたことで舞い上がってしまったようで大変申し訳ございませんでした。今後このようなことがないようしっかり教育いたします」

「ここではっきり言っておいた方がいいな。我々龍人の血を引くものは番以外考えない。そなたの娘の邪な考えで紹介や近づくことは絶対許さぬ。そこのところ十分教育するように。夫人もよろしく頼むぞ」

「「は、はい。申し訳ございませんでした」」

「アイリ、行くよ」

「あっ、はい」
 一応、下手に出て、お辞儀しておこうかな。弱々しくがいいかしら。

「そ、それでは、すみません、失礼致します」

 少し離れたところで、素で話をした。
「ジェイシス様、あれはジェイシス様狙いでしたよね。私に挨拶ではなく、ジェイシス様に挨拶していたから。それも上目遣いで可愛く言っていたわね。なるほど、この母にしてこの子あり、ですね。ふふふ」

「的を得た言葉だね。この母にしてこの子あり、全くもってその通りの言葉だ。あれは番が見つからなかった時、再三紹介をされていたが無視していた。私はあれの母親は絶対許さないから」

 これを機にあの女狐侯爵夫人が動き出すかしら。

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