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本編

第62話 帰宅後、それぞれの思い

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 私たち家族は、退出し馬車に乗り帰路についた。1日が長かった。

 思い起こせばと言っても今朝ですが、体を磨きに磨かれ、ドレス着用、化粧を施し、王城に行き、ダンスをし、料理を少しだけ食べた。少しだけよ、食べられたのは。その後が思いもよらぬ展開で、心身共に疲れた1日だった。

「ふぁー、疲れましたね。デビュタントが終わりましたので、もう晩餐会など出なくていいですか?お父さま、お母さま」
 
 返事がない。寝ているのかしら?
 ちがった。放心状態だった。

「アイリ、あの状態で、今普通にしているのはお前だけだよ。父上も母上も俺もだが今後どうすればいいかわからないよ」

「今後の晩餐会は欠席して、みんなで領地に籠りましょう。領地の方が楽しいですよ」

「はぁ、アイリ、それはムリだろうなぁ。特にアイリ、お前はスタンフォート公爵様からのお誘いがたくさん来るのではないか?」

「いやいや、それはないでしょう。公爵様もお忙しい人でしょう?そうですよね、そうと思いたいです」

 実際のところ、アイリではなく、兵藤愛莉が番だったってことなの?こんなことあるの?

お父さま、意識が復活したみたいだ。
「お父さま,私はこれからどうしたらいいでしょうか」

「そうだなぁ、成り行きに任せよう」
お父さま、考えるのを放棄しましたね。

「そうですね、父上。私たちが考えてもわからないですからね。アイリ、頑張れよ」
お兄さままで考えを放棄した。

「アイリ、どんな選択しても、父さまも母さまもアレクセイもお前のことを応援する。だから、のびのびと今まで通り過ごしていけばいいのだよ」
 お父さまが頭を撫で撫でしてくれた。

「そうよ、アイリちゃん。これから学園もあることだから、ゆっくり考えていけばいいのではないの。スタンフォート公爵様は大人だから、そんなにあなたの気持ちを蔑ろにすることはないと思うわよ」
 そうかな、番と分かった途端、グイグイ来ていたけどなぁ。
 
「そうだよ、アイリ。もうすぐ学園に入学だから忙しいぞ。アイリ、生徒会に入らないか?」
 何を今馬鹿なことを言っているのだ、我が兄よ。成績が優秀な方々が生徒会に入っているのよね。私の学力がどのくらいかわからないじゃないのよ。

「お兄さま、私の学力がこの世界で通用するかわからないので、生徒会はムリです」

「アイリが入れば、色々イベントを考えてくれるかなぁと期待しているのだけど、ダメか?」

「そんな都合よくいきませーん。いやでーす。私は私の学園生活を満喫するのです。お兄さまたちに振り回されたくありません」

「そう言うなよ。まぁ、学園のことは色々教えてあげるよ」
 なんだかんだ面倒見の良い兄だが、生徒会に振り回されるのはごめんだ。第二の高校生活を満喫するのよ。

 はじめは嫌だった学園入学も、錬金・薬学コースに入るので楽しみになってきた。淑女コースではなくても大丈夫よね。

~side 王城~
 
 その頃、王城では誰もがジェイシスが性急すぎるという話になった。

「でも、あなただって、私が番だとわかった時には、すぐ行動に移していたじゃないの。こちらの気持ちとか全く考えもしない行動だったわよ。ジェイシスの方がまだマシよ」
 ジェイシスの母が父親に言った。女性陣はみんな経験から頷きあっていた。番とわかってからの行動が男性陣は性急だということがよくわかった。本能なのだろう。

「わかるわ、国王陛下も、性急すぎるほどだったわね。番反応が、うちのカイデールのように小さい頃から出る人もいれば、成人してから反応が出る人もいる。今回はアイリちゃんがデビュタントで成人に達したから番反応が出たのか、それとも前世の記憶が蘇ったから出たのかわからないわよね。それよりも、アイリちゃんとうちのルルーシェが転生者だなんて。フフフッ、アイリちゃんなんて42歳よ。どうりで、お泊まり会でフェルナンドと一緒に泊まった時、夜女子会をしたのよ。同い年ぐらいの人とおしゃべりしているようなかんじだったのわ。面白いわね」
 今度は転生者の話で盛り上がった。

「最近,モンテスキュー侯爵殿は商会を立ち上げて、新しいものを作り出しているのはアイリ嬢の知識なのか。大したものだな。うちも縁続きになるから、手を貸してあげたいな」
 ジェイシスの父親のイーサンが徐に言った。

「父上、そういうことはやめていただきたい。無理に我が公爵家がでしゃばっては不信感を与えかねません。私は純粋にお互いを思いやれる関係になりたいのです」

「すまん、すまん。そう怒るな。ジェイシス。ただ、モンテスキュー侯爵家だけでは手に負えないものをうちが後ろ盾になってあげればいいのではないかと思ったのだよ」

「父上、すみません。ありがとうございます。ところで伯父上、私に番が見つかったことを大神殿に公表するのですか?まだ、公表しないで欲しいのです。やはり、アイリ嬢の心の準備ができないないところに、大神殿からの通達で大々的に貴族新聞に載せることになるのは、その、私に対するアイリ嬢の印象が悪くなります」
 ジェイシスが国王陛下にお願いしている。

「そうしたいのだが、番が見つかったことは大神殿に報告しないといけない。特にジェイシスの番が見つかることを待ち望んでいたからな。そこから貴族新聞に通達が行き、新聞に載ってしまうのだよ。明日朝一番に、手紙が届くようにした方がいいな」

「そうよ、ジェイシス。お花を添えて手紙を出すのよ。初めての贈り物なのだから宝石などではなくお花にしなさい」

「はい、助言ありがとうございます、伯母上」
 伯母である王妃様も色々助言と称して、口を出してくる。ふぅ、貴族新聞に載ってしまうことを怒るだろうなぁ、アイリ嬢。手紙と宝石ではなくていいのか?女性は宝石の方が喜びそうだが、アイリ嬢は宝石よりお菓子の方が合いそうだが今回は花を添えよう。喜んでくれるといいな。
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