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本編

第57話 三つ巴

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 レティシア様とマリアナ様が笑いながら近づいてきた。

「「アイリ、お疲れ様」」
「2人ともお疲れ様。レティとカイデール殿下は見ているこっちが赤面するぐらいラブラブだったわね」

「アイリ、ラブラブ?って言葉なに?赤面するぐらいって、そんなにではないわよ」
といって、赤くなっていた。レティかわいいよ。さすが番との2人の世界に入ると、周りの視線は気にせず熱々っぷりですね。

 私なんて、一曲踊っただけでもう無理だわ。
「ダンスって、一曲踊るだけでも疲れるのに、他の方々は、別の人とも踊るわけでしょ。私にはムリね。ねぇ、王城の料理、美味しそうだわ」

「アイリ、食べ物の方に目がいっているのね。他のどの令嬢も、ドレスや宝石を良く見て、人の粗探しをしようとするのよ。でも、やっぱりそのドレスいいわね。傷もうまく隠せているわよ」
 
 粗探しって、令嬢怖い。レティは公爵令嬢で第二王子の婚約者だから文字通り、トップにいるのよね?

「レティは公爵令嬢で、カイデール殿下の婚約者だけど、レティにもそんなことしてくる人いるの?」

「それはいるわよ。貴族派などは特にね。こそこそって少し聞こえるぐらいの距離にいて言ってくるのよ。本当に困った令嬢たちがいるのよ。アイリも言われても、気にしないことよ」

「わかったわ。気にしない、全く気にしないようにするわ。ありがとう,レティ。
 
 その貴族派の令嬢たちが粗探ししているのよね。このドレス、おかしいところ、あるかしら?お母さまはこれの青色に染めたものなの。この前はドレスをみたけど、着てみたら、どう?なんではない?」

「やっぱりすごくいいわ。そのドレスの光沢は美しいわ。蔦とお花の刺繍も素敵だわ」

「このオーガンジーはつけ外しが可能なのよ。オーガンジーの色や刺繍を変えれば、何パターンでも同じドレスで変更が可能なのよ。節約術よ」

「節約術って、アイリー」

「これにボレロやショールを羽織ればまた違ったドレスに見えるでしょ」

「まぁ、アイリ、一つのドレスをそんなに着回ししなくても良いのじゃないの。」
公爵令嬢のレティはドレスをいっぱい作ったのかしら?

「着回し術は必要なのよ」

 女子トークに花開いていた。

 その頃、スタンフォート公爵は、別室で両親に話をしていた。
「番がいた」

「えっ、番がいたのか」

「ジェイシス、一体誰だったの?」

「アイリ嬢が番だった」

「えっ、だって、何度も会っているじゃない。その時は番反応なんてしていなかったのにどうして?」

「わからない、ただ、アイリ嬢が番だということがわかった」

「そうなの、うちで主催したパーティでのあの時から変わったということは聞いているわ。ロベルトにも全く関心がなく、婚約者のマリアナ様とレティシア様と仲良くなっているという話は聞くわ。」

「これから、ダンスに誘おうかと思う。そうすれば、あの時のことを公爵家では気にしていないという意思表示になると思う」

「そうね、まずはダンスにお誘いして、公爵家としては怒っていないということの意思表示をしてあげないとね。それにアイリ様の料理は美味しいと聞くし、企画は楽しいと聞いているから、私のお茶会のデザートを作ってもらう足掛かりになって良いかも」

「母上」

「はいはい、ジェイシス、ダンスを誘ってきなさい。ほらほら」

「まさか、モンテスキュー侯爵令嬢のアイリ様とは。なぜ、最近まで番の反応が出なかったのかしら」

「そうだな、様子を見ていこうではないか」
ジェイシスさまのご両親が心配そうに息子の背中を見ていた。

 アイリ達3人でおしゃべりしていた時に、意外な人が来た。

 王女様ルルーシュ様が近づいてきた。

「ち、ちょっと、モンテスキュー侯爵令嬢様。少しお話があるのですが」

 3人でルルーシュ様の方を見た。お話って何?私、何かやらかしたの?

「ど、どう言ったご用件ですか。何か王女殿下様の不興を買うことがありましたでしょうか」

「いえ、そうではないの。あの、一緒に来てもらえるかしら、お願いだから」
 
 レティ、マリアナ、私の3人は顔を見合わせて、訝しんだが、話が進まないので、一緒について行くことにした。

「レティ、マリアナ、私行ってくるわ」

 そして、私はルルーシェ様のあとをついて行く。
どこに行くのかしら?王族の住んでいるエリアじゃないの、ここ??扉番の人にお辞儀されたわ。どこに行くのよー。無言だから余計怖いわ。暗殺されてしまうのか?拘束されてしまうのか?何?何?

「ごめんなさい、ここが私の部屋よ。入ってちょうだい。人払いしているから大丈夫よ」
いえいえ、大丈夫じゃないよ。だって、ここでもしも、もしもよ、毒など自分で飲んだ場合、私が第一容疑者じゃないのよ。怖いわよ。

「あのー、自殺しないでくださいね。私、第一容疑者で、断罪されたくないので」

「そんなことしないわよ。話が聞きたかったのよ。お座りになって」

 王女様のお部屋。かわいいわね。薄いピンクと薄いオレンジのホァッとしたかんじのお部屋ね。

「ごめんなさい、ここにきてもらったのには理由があるの。単刀直入に聞くわ。あなた、転生者なの?なぜ、小説の話と違う状況になっているのか知りたかったのよ」

「えっ、えぇー、やっぱりここは何かの乙女ゲームか悪役令嬢小説なの?私、読んだこともゲームしたこともないから、まさかなぁと思っていたのだけど、何、何、ここそういうところなのですか?」

「あなた、わかっていて、回避を選んだのではないの?違うの?」

「妹たちがやっていて、話には聞いていたけど、全く興味がなかったので、話だけは聞いていたのです。王女殿下様も転生者?えっ?」
 まさか、まさかの悪役令嬢ものの小説だった。

「本来の小説の話は、あなたと私が断罪され、マリアナ様とロベルト様が幸せになる話なのよ。あなたはロベルト様が大好きでマリアナ様を毒殺しようとする。私はジェイシスお兄さま、スタンフォート公爵のことね、ジェイシスお兄さまが大好きで、お兄さまに懸想する女性たちを拷問し、毒殺しようとする。ジェイシスお兄さまがお怒りになり、断罪の運びになるのよ」

「ちょっと待って、結局、スタンフォート公爵様が私と王女殿下様を断罪することになるの?怖い,怖い。私、一年前のやらかしから、絶対近寄らないって決めているのよ。私、そのやらかした後に、前世の記憶を思い出したのよ。だから一年ちょっとしか、経っていないわよ」

「私は14歳の時よ。今から3年前。ジェイシスお兄さまの顔を見たら、恐ろしくて,恐ろしくて、それから引きこもりよ。周りとの交流を絶てば、断罪されないと思っていたのよ。でも、ロベマリは婚約者になっているし、あなたは家族と仲良しだから、もしかしてあなたも転生者で、断罪回避を狙ったのかと思っていたのよ」

「王女殿下様も転生者だったなんて、びっくりだわ」


「お願い、王女殿下様ではなく、ルルーシュと呼んで欲しい。もしくはルーで。前世が、"るい"だったので、るーと呼ばれていたの。タメ語でもいいわよ。ずっと1人で耐えていたの。断罪されるかもと、それがいつも頭によぎって怖かったの」
 
お互い転生者だった。そして、改めて言おう、ここは小説の悪役令嬢の世界だったようだ。私が断罪。いやー、ムリムリ、やっぱり私も領地は引きこもりしようかしら。

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