上 下
24 / 30

(※)番外編2

しおりを挟む
「ねぇ、レイラ。俺を飼って?」

「なにおかしなこと言っているの。帰りなさい。」


現在、執務をしている私と、机を挟んだ私の反対側に腕を枕にして顔を伏せているユーグアルトがいる。

出禁にしたはずなのに、使用人達がなんとか引き留めようとしていたのに...強引に突破してきて何故こんな格好をしているのかしら?

伯爵家である私の家よりも身分が高いから、突破されると追い出せないのよね。

顔を伏せたユーグアルトの周りで使用人達がおろおろして困っていたから、仕方なく使用人達を下がらせたぐらい。

なんなのよ、こいつ。

しばらくそのままだったから、無視して執務していたけれども。

で、やっと喋ったと思ったらこの意味不明な発言。

もう一度言うわ。

なんなの、こいつ。


「俺さ、考えたんだ。
俺はレイラをとろっとろに甘やかしたいし、レイラのお世話をしたいし、レイラの為に作ったドレスを俺がレイラに着せて脱がせたいし、レイラのことを抱き潰して軟禁したいぐらい愛しているんだけど...。
正直、俺以外の誰にも触れさせたくないし、レイラを見せたくないし、侍女とか護衛にすら嫉妬してしまう...いや、レイラの側に俺が居れないのがおかしいと思う。」


...執務机に顔を擦り付けないでくれないかしら。

さっきからゴリゴリと音が聞こえるのよ。

それに、おかしな発言が聞こえるからスルーしているけれど。


「でね?俺がレイラの側に居られるなら片時も離れたくなくって止まらなくなっちゃうから...それならレイラに俺を飼って貰えれば良いんじゃないか?って思って。
...だめ?」

可愛い顔を作りながらこっちを見てもだめとしか答えられないのだけど...。

「はぁ...おかしなこと言ってないで良いから帰りなさい。」

心の底から呆れて、目元を手で押さえながら天井を仰ぐ。

う~ん...頭が痛くなってきた。


ため息をつきながらじっくりと時間を掛けて目元をほぐし、視線を元に戻すと...なぜか私の目の前に来ていたユーグアルトが跪いて、私に向かってなにかをソッと渡してきた。

視線をそっちに移動させると...革で出来た首輪を差し出していた。

しかも、鎖つき。

キッと鋭い視線をユーグアルトに向けると...ユーグアルトは目をとろんとさせ...

「わんっ。」

と言った。


...つまり、犬になるのはユーグアルトで、私は鎖を持ってユーグアルトを連れて歩けと?

「くぅ~ん...。」

とろんとした目から、寂しそうな...なにかを懇願するような目に変えてこっちを見てくる。

大切なことなので、何度でも言おう。

なんなの?こいつ。


ニッコリ笑顔で首輪をどっかに投げたいと思ったけど、犬になりきっているらしいこいつは首輪を持って再び私の前にくる。

そう、嫌な確信がある。

「きゅぅ~ん...。」

どうしようかと悩みながらじっと見つめあっていたが...ハッと思い当たった。

「私、犬派じゃなくって猫派なのよね。」

と言いながら、差し出されていた首輪ごと手を押し返し。

「ハウス。」

出口に向かって指差した。

だが、ユーグアルトは跪いてこちらにしょんぼりとした顔を向けながら、嫌々と首を横に振った。

「ハ・ウ・ス」

...私にハウスと言われたユーグアルトは深く俯いてプルプルし始めた。


あ...なんか嫌な予感する。


ジリジリと後退った甲斐もなく、突然襲いかかってきたユーグアルトに体当たりされ倒されそうに...




------

「ハッ...!」

勢い良く周りを見渡し、見覚えがある天井、住み慣れた自分の部屋が見え...。


思わずホッとした。

良かった...夢か。

私は深呼吸をしてもう一度周りをゆっくり見渡す。


にしても嫌な夢だった。

首を左右に振り、気分を入れ換え私は支度を始めるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

オークションで競り落とされた巨乳エルフは少年の玩具となる。【完結】

ちゃむにい
恋愛
リリアナは奴隷商人に高く売られて、闇オークションで競りにかけられることになった。まるで踊り子のような露出の高い下着を身に着けたリリアナは手錠をされ、首輪をした。 ※ムーンライトノベルにも掲載しています。

我が姫君

桃色デイジー
恋愛
女性向け。 執着と輪廻の話。 2021/2/19悠馬視点の話を追加。

輝夜に手折られる

東屋 志季
恋愛
両親に先立たれて天涯孤独のゆりは真面目に生きていた。珍しく深夜に目を覚ましてキッチンに水を飲みに行くとそこには見知らぬ絶世の美丈夫がいて___!? 「貴方誰ですか!?」「オレは君の旦那さんだよ♡」 自称:殺し屋、推定:ストーカー、事実:不法侵入者に犯されちゃう可哀想な女の子のお話。 ※♡喘ぎ・表記あり ※淫語表現あり ※ムーンライトノベルズでも公開しています

【R18】今夜、私は義父に抱かれる

umi
恋愛
封じられた初恋が、時を経て三人の男女の運命を狂わせる。メリバ好きさんにおくる、禁断のエロスファンタジー。 一章 初夜:幸せな若妻に迫る義父の魔手。夫が留守のある夜、とうとう義父が牙を剥き──。悲劇の始まりの、ある夜のお話。 二章 接吻:悪夢の一夜が明け、義父は嫁を手元に囲った。が、事の最中に戻ったかに思われた娘の幼少時代の記憶は、夜が明けるとまた元通りに封じられていた。若妻の心が夫に戻ってしまったことを知って絶望した義父は、再び力づくで娘を手に入れようと──。 【共通】 *中世欧州風ファンタジー。 *立派なお屋敷に使用人が何人もいるようなおうちです。旦那様、奥様、若旦那様、若奥様、みたいな。国、服装、髪や目の色などは、お好きな設定で読んでください。 *女性向け。女の子至上主義の切ないエロスを目指してます。 *一章、二章とも、途中で無理矢理→溺愛→に豹変します。二章はその後闇落ち展開。思ってたのとちがう(スン)…な場合はそっ閉じでスルーいただけると幸いです。 *ムーンライトノベルズ様にも旧バージョンで投稿しています。 ※同タイトルの過去作『今夜、私は義父に抱かれる』を改編しました。2021/12/25

手切れ金代わりに渡されたトカゲの卵、実はドラゴンだった件 追放された雑用係は竜騎士となる

草乃葉オウル
ファンタジー
上級ギルド『黒の雷霆』の雑用係ユート・ドライグ。 彼はある日、貴族から依頼された希少な魔獣の卵を探すパーティの荷物持ちをしていた。 そんな中、パーティは目当ての卵を見つけるのだが、ユートにはそれが依頼された卵ではなく、どこにでもいる最弱魔獣イワトカゲの卵に思えてならなかった。 卵をよく調べることを提案するユートだったが、彼を見下していたギルドマスターは提案を却下し、詳しく調査することなく卵を提出してしまう。 その結果、貴族は激怒。焦ったギルドマスターによってすべての責任を押し付けられたユートは、突き返された卵と共にギルドから追放されてしまう。 しかし、改めて卵を観察してみると、その特徴がイワトカゲの卵ともわずかに違うことがわかった。 新種かもしれないと思い卵を温めるユート。そして、生まれてきたのは……最強の魔獣ドラゴンだった! ロックと名付けられたドラゴンはすくすくと成長し、ユートにとって最強で最高の相棒になっていく。 その後、新たなギルド、新たな仲間にも恵まれ、やがて彼は『竜騎士』としてその名を世界に轟かせることになる。 一方、ユートを追放した『黒の雷霆』はすべての面倒事を請け負っていた貴重な人材を失い、転げ落ちるようにその名声を失っていく……。 =====================  アルファポリス様から書籍化しています!  ★★★★第1〜3巻好評発売中!★★★★ =====================

とりかへばや物語  人は複雑すぎて、面倒くさい、

酒原美波
ファンタジー
 都が地震に見舞われ、東国で噴火が相次ぐなか、駿河守に娘が誕生した。娘の誕生に沸く駿河守邸だが、霊峰富士の女神から、「この娘には重大な使命があるから、結婚させてはならない」と命じられた。  娘の誕生から数ヶ月後、右大臣から「この女を正妻にしてほしいと」と、駿河守は高貴な女性と生まれて半年程の姫を押し付けられた。この女性、右大臣正室の妹で、うっかり右大臣が手を出して妊娠させてしまい、家に置くわけにもいかないので、信頼のおける者に託すことにしたのだ。天下の右大臣に逆らえず、駿河守は泣く泣く本来の妻を側室に、右大臣に押し付けられた妻子を正妻と嫡子とした。  任期が明けて都に戻ると、駿河守は受領から一気に参議にまで引き上げられた。右大臣の采配によるものだが、元駿河守からすれば余計な気遣いで、本来の妻子と受領生活を続けたかった。  富士姫は成長と共に、幽霊や物の怪を倒す力を身につけた。ある貴族の、怨霊に取り憑かれて死にかけた息子を全快させたことで、榊の参議邸は連続、物の怪を恐れる貴族たちに押しかけられた。  慎ましやかな駿河の参議の名ばかりの正室朱華の御方と対照的に、我儘いっぱいに育った桜姫。実は桜姫は朱華の御方の娘ではなく、右大臣正室が生んだ双子の片割れだった。右大臣家に残された双子の姉は、将来の中宮になるべく大切に育てられたが、入内手前で急死してしまう。そこで桜姫が身代わりに女御として入内することとなった。桜姫がいなくなったことで、朱華の御方は正室の座を本来の正室に返し、駿河の参議の実子は嫡子に戻った。  後宮という伏魔殿で生きるには、桜姫には知性も教養も足りなかった。後宮で孤立した桜姫は、帝の弟と密通して不義の子を宿した。それがきっかけとなり、桜姫の実母は自害、右大臣は出家して、右大臣家は傾いた。捨てられるように監禁され孤独となった桜姫は、富士姫の仲介によって、養母の朱華の御方に救い出された。不義の子は命令通り、誕生後1年で遠い東国の寺院に送られた。桜姫と朱華の御方は都を離れて、懐かしい駿河の国に住み着いた。  成長した富士姫は、自身の誕生の真の理由を知る。国を次々襲う天変地異の正体は、本来、玉座に座る資格のない帝のせいだった。神々は、隠された正統な皇位継承者を探し出し、帝を交代させる使命を富士姫に託したのである。  昔、殺害された皇太子と皇后の怨霊が御所に現れる。それがきっかけで、帝は自身に皇位継承の資格がなかったことを知る。ショックだったが、国を思う心は本物だったので、富士姫の皇位継承者のすり替え計画に協力することとなった。その協力者として中宮、左大臣、その他が加わった。  富士姫が見つけ出した皇位継承権を持つ赤子を、中宮は実子として育て上げ、ようやく正統な血統の新たな帝を立てることに成功した。

男が妊娠する社会

廣瀬純一
ファンタジー
男が妊娠して出産する社会の話

異世界転移したら山羊の獣人のお嫁さんになって幸せになった女の子の話

NA
恋愛
タイトルそのまま、えっちいことしてるだけの話です。倫理観ゆるゆる、一人称で淫語多め、なんでも許せる方向け。他の投稿作とだいぶカラー違います。気ままにエピソード追加しています。 2022.4.30【完結】 長らく更新を止めてしまい、申し訳ありません。 荒い状態なのですが、ふたりのエンディングをお知らせしたくて最終話まで更新しました。 2024.5.28【番外編】 創作のリハビリがてら、メモ帳に残っていたエリーとロイの番外編を少し直して追加。本編完結からリアル2年ぶりなのに作者が一番驚いてます。 ①②の前後編の予定です。

処理中です...