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迫られる

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私は俯き、無言を貫く。

「レイラ、こっち見て。」

座席側の手を離して、無理矢理顎を持ち上げられる。

こっち見て(強制)とか最悪だ。

目線を合わせないように必死に逸らす。

私が目線を合わせない、無言を貫いていることにユーグアルトは不満なようだ。

「レイラ...どうして贈ったドレスを着てくれなかったの?質問に答えないなら...お仕置き...するよ?」

目線を逸らしていてもわかる程の威圧感に思わず身体が、声が震える。

「だ...だって...あんな色のドレスなんか着ていったら、貴方と...こ...こん...婚約したって...思われちゃうじゃない...ぐっ。」

「ふぅ~ん...。」

ユーグアルトは囲う範囲を狭め、隣同士で座っているにも関わらず身体を密着してくる。

身体の正面側は壁に、背中側はユーグアルトに挟まれ...ぺちゃんこになっちゃいそうだ。

壁に押し付けられるのを阻止しようと、両手を壁について押し返していたのだが...いまでは顔の両側ですがりつくように置いているだけになってしまった。

「ちょっと...はな...れて...息しづら...い。」

馬車の振動で身体が弾む為、息は出来るのだが...ユーグアルトが私に寄りかかり圧迫しているから息しづらい。

「婚約者、もしくは婚約者以上のことをしているのに...認めないんだ?」

ユーグアルトは耳元で囁きながら、私の片手に自分の手を重ね、指と指の間に自分の指を入れてきた。

そして、もう片方の手は私の腰を撫で回している。

「ちょっと...触らないで!」

「レイラ、俺はレイラのことが好きだよ。だから触れたくなるし、くっつきたくなるし、なんだったらいまのドレスを脱がせて俺が贈ったドレスに着替えさせたいぐらいなのに。」

ユーグアルトはそう言いながら私の首筋に顔を埋めてきた。

首筋に吐息と髪の毛が触れてゾワッとして、思わず身体がビクッと動いてしまう。

「卒業してからレイラと会えなくなって寂しかった。会いたかった。けど、レイラだって頑張って領地経営を手伝ってる。俺も頑張らなきゃって。
でも...レイラが俺のこと...忘れてしまうのではと思ったら怖かった。
レイラが他の男と婚約するんじゃないかって...思うだけで胸が張り裂けそうだった...。」

腰を撫でていた手がいつの間にか私の腰を抱いていて、少し抱く力が強くなった。

「レイラ...好きなんだ...好きで好きでおかしくなりそうなんだ...。お願い...俺の所に堕ちてきて?」

そう言いながら、私の頬に手を添えて唇を合わせようとしてくる。

と、ガタンッという音がして馬車が停止した。

どうやら会場に着いたらしい。

力が少し弱まった隙を狙って、ユーグアルトを押し返す。

「チッ...。」

ユーグアルトはちょっと不機嫌になりつつも先に降りて、私が降りるときに助けてもらった。

そのまま何事もなかったのようにエスコートされ、会場に入っていった。
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