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嫌い

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「それに私のこと好きだっていうけど、私は貴方のこと知らないし、私の意思を無視してそういうことをするし!そんな貴方を好きになるわけないじゃない!」

ユーグアルトは悲しそうな顔をしていたが、次第に諦めた表情になった。

「知ってるし、分かっている。でも、俺のことを知ってほしいんだ。なのに、レイラは俺を避けて逃げるばかりで知ろうともしてくれない。
だから、強行手段に出るしかないじゃないか。」

「だからといってこんなことしないでよ!」

「ごめんね...。でも、レイラが他の男を好きになったり追い掛けるようなことをするかもしれないって考えただけでも、俺は辛くって耐えられない。
だったら、嫌われても良い、憎まれても良い...どんな思いでもレイラから俺に向けてほしいし、俺を意識してほしいんだ。
自分勝手なのは分かっている。」

悔しそうに、辛そうに、悲しそうに、切々と訴えてくるユーグアルトに、私は思わずため息がついてしまった。

「逃げたり避けたりするのは当然じゃない。前回森で会ったときに貴方は私になにしました?顔を知ってるかどうかぐらいの仲で、あんなことをしてきた人を警戒するのは当然でしょ?」

「俺はレイラのことたくさん知ってる。」

「私とは挨拶しかしたことないでしょ。なんで知っているのよ。」

「俺は君のことよく知っているよ。君の好きな食べ物も花も色も、よく飲んでいるお茶の種類も君の交遊関係も...。」

「うわぁ...ストーカーがいる。」

「そんな反応する君も好き。」

「キモい。」

真剣な顔をして言う話じゃない。

思わずドン引きしてしまうが、後ろが壁なので物理的に距離を離すことは出来なかった。

思わずため息をついてしまう。

一体、この人の前でどれだけため息を吐いたのだろう...。

私の目が死んだ魚のような目になっている気がするわ...。

「とにかく、私のことは諦めて。両親からまだ返事が来てないからわからないけど、例え婚約しろと言われたってすぐにはしないし認めない。私はいま誰とも婚約する気はないし。」

「レイラが俺と結婚したいと思わせれば良いんだよね?既に求婚しているし!」

目をキラキラ輝かしてこっちをガン見するな。

思わず首を左右に振る。

「いや、あり得ないし。」

「そんなことない!俺、めっちゃ頑張る!」

「頑張らなくって良い。」

「いっぱいデートしようね!どこが良いかなー?」

「無理、ストーカーと一緒に行きたくない。」

「そんなつれないこと言わないでよー。」

「いや、そもそももう卒業だし、卒業したら関わることは無くなるから。もう諦めて。私は別の男性と結婚するから。」

「わかった。俺以外と結婚できないように妨害する。」

「なんでよ!やめてよ!諦めろって言ってるでしょ!最低!もう顔も見たくない!失せろ変態!」

どう頑張っても諦める気が無さすぎてブチッと怒りが沸き上がってしまい、ジタバタしながら怒る。

怒りが収まらない私はその後も罵倒をしたけれど、自分が何を言ったかは覚えてない。

しかし、私の怒りを受けたユーグアルトは表情をみられないように顔を伏せて呟く。

「ごめんね、どうしても君を逃がしてあげられないんだ...。」

悲痛な声で小さく呟くと身体を私から離して魔法を解除し、そのまま出ていった。 
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