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第1話 主人公の好感度チェックタイム
しおりを挟む「義人、現在の彼女たちから俺への好感度を教えてくれ」
「……わかった」
この世界の主人公であると日々豪語する彼、青野卓哉は一つの机を挟んで向き合って座っている男に尋ねた。彼の質問に対し、友人である友田義人は頷いた。市販のメモ帳を開くとそこには四人の女子の名前と数字が書かれている。
卓哉の幼馴染でちょっと強気な同級生、名波優紀。
冷たい雰囲気を纏った麗しき生徒会長、瀬戸氷織。
いつも気だるげそうなネトゲ女子、唐沢千紗。
人見知りがちで内気な後輩お嬢様、一ノ瀬夏蓮。
四人の名前の横にはそれぞれ数字が記載されている。友田は淡々と上から順に読み上げる。
「まずは名波優紀、好感度は四十六って所だな」
「マジかよ……始めたての頃は六十ちょっとじゃなかったか?」
「そうだな。昨日放課後一緒に帰る約束をすっぽかしたのが大きく響いたらしい」
「あれはそうだよなあ……でもさぁ! 氷織先輩とのお出かけイベントが突然発生するなんて聞いてなかったんだから仕方ないだろ!?」
「いや、前からの約束ドタキャンして当日の予定を優先するとか怒って当然だろ」
「けど最初のスチルを見逃すわけには……」
(また言ってんな……、スチルとやらがそんなに大事なのか?)
ちなみに好感度という数字は、彼女たちからの卓哉に対する印象を百分のいくつかという形式で数値化したものである。結果に納得がいかずに唾を飛ばしながら言い訳する卓哉を見て、義人は内心ため息をつく。不貞腐れる卓哉に構うこと無く義人は次に進んだ。
「スチルとか訳わからん話は置いとくぞ。じゃあ次は瀬戸氷織先輩、十二だ」
「結構頑張ったのに全然上がってないだと!? 荷物持ち頑張りすぎて腕パンパンなのに……」
「お前が頼んでも無いのに付きまとってたって噂されてたぞ?」
「いやいや! 俺はただボディーガードとしてだな……、まあ頼まれては無かったけど」
「よく通報されなかったなお前……」
仮にゲームの世界だったとしても、女性に男が執拗に付きまとうのは犯罪である。これも既に忠告したが当然卓哉はまともに聞いていない。卓哉は自分の行動を一切悪びれずに気持ちを切り替える。
「で、次は?」
「……唐沢千紗。二十二ってお前何やらかしたんだ?」
「こっちが聞きてえよ!? ネトゲ数年来の仲なのに何でそんな低いんだよ!?」
ここで言う好感度とは三十程度で知り合い、五十以上で親しい仲という感じだ。三十を下回った場合、好感どころか嫌われ始めているという事になる。つまりネトゲ仲であるはずの千紗からは嫌われ始めてしまっているのだった。
「身の回りの噂に一番敏感だからな。悪い噂でも流されてるんじゃないか?」
「何だよそれ……、最近誘っても『ごめ、寝てたわ』とかで全然遊べてないとは思っていたが……」
(二十二って書いたけど、もっと下っぽいなこりゃ)
卓哉についての悪い噂は、実際流れていた。その内容は氷織への付きまとい問題についてである。そう、完全に自分のせいだった。
「最後は一ノ瀬夏蓮、これはまあ零だな」
「全然出会えないんだよな……転校とかしてないだろうな?」
「そんなニュースあったら千紗辺りがもう知ってるはずだろ」
「確かに……。はぁ、早く会いてえなぁ」
出会っていない、相手の事を知らなければ好感度が無いのは当然である。しかし卓哉は何故、まだ出会ってもいない彼女を放課後のほぼ毎日探し回しているのだろうか。本人はそういうゲームだからと勝手に納得しているが、義人からすれば底知れぬ恐怖でしか無かった。
「はぁ……とにかくサンキュな、また頼むわ」
「ああ、捕まらない程度に頑張れよー」
「大丈夫だって、俺には主人公補正があるんだからさ!」
「……」
自信満々に親指を立てながら卓哉は教室から出ていった。姿が見えなくなったのを確認してから、義人は大きくため息をついた。
「……わかった」
この世界の主人公であると日々豪語する彼、青野卓哉は一つの机を挟んで向き合って座っている男に尋ねた。彼の質問に対し、友人である友田義人は頷いた。市販のメモ帳を開くとそこには四人の女子の名前と数字が書かれている。
卓哉の幼馴染でちょっと強気な同級生、名波優紀。
冷たい雰囲気を纏った麗しき生徒会長、瀬戸氷織。
いつも気だるげそうなネトゲ女子、唐沢千紗。
人見知りがちで内気な後輩お嬢様、一ノ瀬夏蓮。
四人の名前の横にはそれぞれ数字が記載されている。友田は淡々と上から順に読み上げる。
「まずは名波優紀、好感度は四十六って所だな」
「マジかよ……始めたての頃は六十ちょっとじゃなかったか?」
「そうだな。昨日放課後一緒に帰る約束をすっぽかしたのが大きく響いたらしい」
「あれはそうだよなあ……でもさぁ! 氷織先輩とのお出かけイベントが突然発生するなんて聞いてなかったんだから仕方ないだろ!?」
「いや、前からの約束ドタキャンして当日の予定を優先するとか怒って当然だろ」
「けど最初のスチルを見逃すわけには……」
(また言ってんな……、スチルとやらがそんなに大事なのか?)
ちなみに好感度という数字は、彼女たちからの卓哉に対する印象を百分のいくつかという形式で数値化したものである。結果に納得がいかずに唾を飛ばしながら言い訳する卓哉を見て、義人は内心ため息をつく。不貞腐れる卓哉に構うこと無く義人は次に進んだ。
「スチルとか訳わからん話は置いとくぞ。じゃあ次は瀬戸氷織先輩、十二だ」
「結構頑張ったのに全然上がってないだと!? 荷物持ち頑張りすぎて腕パンパンなのに……」
「お前が頼んでも無いのに付きまとってたって噂されてたぞ?」
「いやいや! 俺はただボディーガードとしてだな……、まあ頼まれては無かったけど」
「よく通報されなかったなお前……」
仮にゲームの世界だったとしても、女性に男が執拗に付きまとうのは犯罪である。これも既に忠告したが当然卓哉はまともに聞いていない。卓哉は自分の行動を一切悪びれずに気持ちを切り替える。
「で、次は?」
「……唐沢千紗。二十二ってお前何やらかしたんだ?」
「こっちが聞きてえよ!? ネトゲ数年来の仲なのに何でそんな低いんだよ!?」
ここで言う好感度とは三十程度で知り合い、五十以上で親しい仲という感じだ。三十を下回った場合、好感どころか嫌われ始めているという事になる。つまりネトゲ仲であるはずの千紗からは嫌われ始めてしまっているのだった。
「身の回りの噂に一番敏感だからな。悪い噂でも流されてるんじゃないか?」
「何だよそれ……、最近誘っても『ごめ、寝てたわ』とかで全然遊べてないとは思っていたが……」
(二十二って書いたけど、もっと下っぽいなこりゃ)
卓哉についての悪い噂は、実際流れていた。その内容は氷織への付きまとい問題についてである。そう、完全に自分のせいだった。
「最後は一ノ瀬夏蓮、これはまあ零だな」
「全然出会えないんだよな……転校とかしてないだろうな?」
「そんなニュースあったら千紗辺りがもう知ってるはずだろ」
「確かに……。はぁ、早く会いてえなぁ」
出会っていない、相手の事を知らなければ好感度が無いのは当然である。しかし卓哉は何故、まだ出会ってもいない彼女を放課後のほぼ毎日探し回しているのだろうか。本人はそういうゲームだからと勝手に納得しているが、義人からすれば底知れぬ恐怖でしか無かった。
「はぁ……とにかくサンキュな、また頼むわ」
「ああ、捕まらない程度に頑張れよー」
「大丈夫だって、俺には主人公補正があるんだからさ!」
「……」
自信満々に親指を立てながら卓哉は教室から出ていった。姿が見えなくなったのを確認してから、義人は大きくため息をついた。
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