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第5話 転生させたクラスに国が振り回されます
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舞台はとある王室、敵国からの襲撃に対抗すべくクラス転生の準備が進められていた。三十人程度の異世界人を召喚するためには莫大な魔力と技術が必要になる。
そのために優秀な召喚士が十数名王家に雇われた。自国の劣勢を覆せる程の戦力となりうる者を呼び寄せられなければ、間違いなく敗北するだろう。王室は緊張感に包まれていた。
「し、失礼しまーす……」
そんな中に入室して空気を一気にぶち壊してしまうのが、他でもないディレクタなのである。彼が来たという事は異世界からの召喚は間違いなく成功するため、王家としてもこれは朗報ではある。
但し、物語の中心が召喚されたクラスの少年少女であるため、これから自分の国がその少年少女によって振り回されるという面倒事も同時に確定したのだ。国王であるアルカードは台本を片手にため息をついた。付き人である大臣が横から大声で異議を唱える。
「陛下! やはりこんな作り話通りに動く必要などありませぬ!」
「そう言われましても、クラス転生を準備したのはそちらじゃないですか。……久しぶりの非番だったのに」
「馬鹿者! 我が国の一大事だと言うのに、貴様のシフトとやらなぞ気にしていられぬわ!」
「アルカードさん、まあそれはごもっともなのですけれど……」
常に荘厳な姿勢を崩さないアルカードと大臣だが、この時ばかりは思わず声を荒げてしまう。次期王となる息子はまだ赤子であり、まだまだ自らが国を導いていかねばならない。それなのに国は窮地となり、ディレクタに台本を渡されて非常に困惑している。
「おい。そのクラスとやらは仲が非常に悪いと書いてあるが、本当か?」
「はい、そこが物語として重要な要素なんです」
「国にとっては邪魔なだけであろうが……」
その上召喚されるクラス内では、酷い虐めが行われているという。台本によると、これまで虐めによって虐げられてきた主人公、拓海が底力を発揮して成り上がるというものらしい。
アルカードも似たような境遇を体験したことがあったため、拓海の心境に共感できる所はある。しかし、正直それはそれ、これはこれである。
「何故わざわざこんなにも問題を抱えている連中を召喚してしまうのか……」
「……まあ、全員良いやつだと物語的に面白味ゼロですからね」
「国の危機を勝手に物語にしておいて言う事がそれか……」
「陛下、この無礼者を今すぐ処しましょうぞ!」
「……生憎そんな暇はない。もう召喚の儀式は始まってしまっているのだからな」
クラス召喚は膨大な魔力とエネルギーを持って既に起動してしまっている。誰にも止める事は出来ない。大臣ももう避けられないと観念したのか、台本を読み始めた。そこそこ読み進めたアルカードは、転生者のプロフィールを確認する。
「ほう、猿山の対象である毒島とやらが勇者に匹敵する聖なる力を所持していると」
「ええ。ですが、いじめの主犯格とだけあって性格が劣悪です」
「なんでそんな奴に勇者の力が与えられるのだ! おかしいであろう!?」
大臣の真っ当なツッコミにディレクタは内心頷く。けれどこれはストーリーに深みを出すためには必要な理不尽なのである。対して、主人公の能力を見た大臣がより一層声を荒げた。
「対してこの主人公である拓海とやら! 能力『ゴミ』とはなんなのだ!?」
「ディレクタよ、本当に拓海が主人公で合っているのか?」
「はい、合っていますよ」
「はっ! これではまるでお話になりませんな! 能力ゴミなど、本当にただのゴミではないか!」
まるで三下のような言い草をする大臣にアルカードは少々呆れてしまう。しかしディレクタはそうそれです、と明るい表情で大臣の発言を取り上げた。
「大臣今の言い方良いですね! 本番もそんな感じでお願いします!」
「は?」
「おい大臣。貴様、拓海の力で国中から集められた大量のゴミに押しつぶされて意識不明の重症になるらしいぞ」
「へ?」
拓海の能力は『ゴミ』という名前である。一見だと大臣やクラス達から大笑いされてしまうのだが、実際には世界中のゴミを操れるというとんでもない能力だ。しかも一度誰かにゴミだと認定された物であれば全て対象となる。
「毒島の散々周囲をゴミ扱いする事を逆手に取った拓海が、毒島にゴミ認定された全ての物や人達を利用して見事いじめの仕返しを成し遂げる。これが物語の全容です」
「成程。まあ、痛快ではあるな」
「そういう事ですので、召喚が終わり次第台本の通りにお願いいたしますね」
アルカードは物語に納得したようで、台本を受け入れた。横にいる大臣はこの後ゴミに潰されるという最悪な宣告を聞いて絶望していた。頭を抱えて床を見つめながらブツブツと言っている。
「既に今後の展開が決まっているというのであれば仕方あるまい。ほれ、大臣も覚悟を決めろ」
「い、嫌だ……ゴミに圧縮されるなんて嫌だ……」
「では、私は失礼しますね。後は宜しくお願い致します、アルカードさん、ゴミ大臣」
「ああ」
「誰がゴミ大臣だ!!」
無事にクラス召喚が完了した後、能力の活かし方を覚えた拓海はクラスメイト達への反逆に成功した。その後拓海は、反骨精神を買った敵国の王女からの求婚を受けて幸せに暮らせるようになったのである。
拓海の婚姻によって国の平和は守られたという、アルカードにとって一番欲しかった吉報はナレーション処理で済まされた。
そのために優秀な召喚士が十数名王家に雇われた。自国の劣勢を覆せる程の戦力となりうる者を呼び寄せられなければ、間違いなく敗北するだろう。王室は緊張感に包まれていた。
「し、失礼しまーす……」
そんな中に入室して空気を一気にぶち壊してしまうのが、他でもないディレクタなのである。彼が来たという事は異世界からの召喚は間違いなく成功するため、王家としてもこれは朗報ではある。
但し、物語の中心が召喚されたクラスの少年少女であるため、これから自分の国がその少年少女によって振り回されるという面倒事も同時に確定したのだ。国王であるアルカードは台本を片手にため息をついた。付き人である大臣が横から大声で異議を唱える。
「陛下! やはりこんな作り話通りに動く必要などありませぬ!」
「そう言われましても、クラス転生を準備したのはそちらじゃないですか。……久しぶりの非番だったのに」
「馬鹿者! 我が国の一大事だと言うのに、貴様のシフトとやらなぞ気にしていられぬわ!」
「アルカードさん、まあそれはごもっともなのですけれど……」
常に荘厳な姿勢を崩さないアルカードと大臣だが、この時ばかりは思わず声を荒げてしまう。次期王となる息子はまだ赤子であり、まだまだ自らが国を導いていかねばならない。それなのに国は窮地となり、ディレクタに台本を渡されて非常に困惑している。
「おい。そのクラスとやらは仲が非常に悪いと書いてあるが、本当か?」
「はい、そこが物語として重要な要素なんです」
「国にとっては邪魔なだけであろうが……」
その上召喚されるクラス内では、酷い虐めが行われているという。台本によると、これまで虐めによって虐げられてきた主人公、拓海が底力を発揮して成り上がるというものらしい。
アルカードも似たような境遇を体験したことがあったため、拓海の心境に共感できる所はある。しかし、正直それはそれ、これはこれである。
「何故わざわざこんなにも問題を抱えている連中を召喚してしまうのか……」
「……まあ、全員良いやつだと物語的に面白味ゼロですからね」
「国の危機を勝手に物語にしておいて言う事がそれか……」
「陛下、この無礼者を今すぐ処しましょうぞ!」
「……生憎そんな暇はない。もう召喚の儀式は始まってしまっているのだからな」
クラス召喚は膨大な魔力とエネルギーを持って既に起動してしまっている。誰にも止める事は出来ない。大臣ももう避けられないと観念したのか、台本を読み始めた。そこそこ読み進めたアルカードは、転生者のプロフィールを確認する。
「ほう、猿山の対象である毒島とやらが勇者に匹敵する聖なる力を所持していると」
「ええ。ですが、いじめの主犯格とだけあって性格が劣悪です」
「なんでそんな奴に勇者の力が与えられるのだ! おかしいであろう!?」
大臣の真っ当なツッコミにディレクタは内心頷く。けれどこれはストーリーに深みを出すためには必要な理不尽なのである。対して、主人公の能力を見た大臣がより一層声を荒げた。
「対してこの主人公である拓海とやら! 能力『ゴミ』とはなんなのだ!?」
「ディレクタよ、本当に拓海が主人公で合っているのか?」
「はい、合っていますよ」
「はっ! これではまるでお話になりませんな! 能力ゴミなど、本当にただのゴミではないか!」
まるで三下のような言い草をする大臣にアルカードは少々呆れてしまう。しかしディレクタはそうそれです、と明るい表情で大臣の発言を取り上げた。
「大臣今の言い方良いですね! 本番もそんな感じでお願いします!」
「は?」
「おい大臣。貴様、拓海の力で国中から集められた大量のゴミに押しつぶされて意識不明の重症になるらしいぞ」
「へ?」
拓海の能力は『ゴミ』という名前である。一見だと大臣やクラス達から大笑いされてしまうのだが、実際には世界中のゴミを操れるというとんでもない能力だ。しかも一度誰かにゴミだと認定された物であれば全て対象となる。
「毒島の散々周囲をゴミ扱いする事を逆手に取った拓海が、毒島にゴミ認定された全ての物や人達を利用して見事いじめの仕返しを成し遂げる。これが物語の全容です」
「成程。まあ、痛快ではあるな」
「そういう事ですので、召喚が終わり次第台本の通りにお願いいたしますね」
アルカードは物語に納得したようで、台本を受け入れた。横にいる大臣はこの後ゴミに潰されるという最悪な宣告を聞いて絶望していた。頭を抱えて床を見つめながらブツブツと言っている。
「既に今後の展開が決まっているというのであれば仕方あるまい。ほれ、大臣も覚悟を決めろ」
「い、嫌だ……ゴミに圧縮されるなんて嫌だ……」
「では、私は失礼しますね。後は宜しくお願い致します、アルカードさん、ゴミ大臣」
「ああ」
「誰がゴミ大臣だ!!」
無事にクラス召喚が完了した後、能力の活かし方を覚えた拓海はクラスメイト達への反逆に成功した。その後拓海は、反骨精神を買った敵国の王女からの求婚を受けて幸せに暮らせるようになったのである。
拓海の婚姻によって国の平和は守られたという、アルカードにとって一番欲しかった吉報はナレーション処理で済まされた。
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