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こんな熱い日に鍋かよ!
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前回お話し。
エアコンが壊れ熱さを凌ぐ為にかき氷を食べる事になったが大きな氷を求めて商店街に行く次女。次女を待っていると業者が現れ無事エアコンが復活する。だが、肝心の次女は中々帰って来ない。心配した母と姉。母は探さに行こうとすると商店街の人達と氷を運ぶ次女が帰ってき一日限定のかき氷屋が開催された。皆はそれぞれかき氷を作って食べてと夏とかき氷と交友を楽しみ夕暮れにお開きとなる。
そして、今現在。次女は………。
「お腹痛い~」
腹をくだしていた。
「そりゃあ、長女が作ったかき氷二杯と私や他の人達のかき氷食べ歩きしたらお腹も壊すよ」
「この子の胃は鉄で出来てるのかと思ってたわ。あの子でもお腹壊すのね」
「普通に壊すよ」
晩御飯の手伝いをしてくれる長女にツッコミを入れて白菜等を切っていく。トイレから未だに出て来ない次女は唸りながらトイレに籠っておおよそ三時間は経つ。もしかして気を失ってるのかとも心配してしまう。そろそろご飯も出来るし呼ばないと。
私はエプロンを脱いでスプーンを持ちトイレに引きこもってる次女を呼びに行く。最悪鍵掛けて気を失ってたら大変だし。
「ちょっとあの子の様子を見てくる。肉団子はもう入れちゃって」
「はーい」
トイレの扉の前に立ちノックを三回。死にかけだけど「は~い」と言う元気の無い声が返ってきた。
「大丈夫? 生きてる?」
「かろうじて」
かろうじてか。
「ご飯もそろそろ出来るから出てきて。暖かいお茶淹れてあげるから。でないとスプーンで抉じ開けるよ」
「すぐ行きまーす」
その言葉を最後に私はリビングに戻りスプーンを直した。
「あの子は?」
「すぐ来るって」
テーブルの上にカセットコンロを置いて鍋を置く。お椀と箸と茶碗を置いて後はあの子が来るのを待つのみ。
「ただいま~」
「お帰りなさい。お腹の調子はどう」
「出し過ぎてお腹ぺこぺこです」
「今日の晩御飯は暖かい鍋だよ」
私がそう言うと次女は固まり私達とテーブルに置いてある鍋を見比べた。どうしたのだろう。今日は次女の好きな鳥の肉団子も入れたのに。気分では無いのかな。
私はあれやこれや悩んでいると次女は何やらプルプル震えていた。
「こんな熱い日に鍋かよ!」
出た言葉がそれだった。まるで何処かの芸能人見たいなツッコミが凄く良かった。私はパチパチ拍手を送ると次女は更に顔を険しくする。
「いや、なに普通に拍手送ってるの! 笑うところでも拍手送る所でも無いよ! これは言いたくなるよ、言いたくなるよ! だってこんな熱い真夏にぐつぐつと煮えてる鍋だよ! 普通冬でしょ、鍋と言ったら」
「確かにツッコミたくなるわ。でもやっぱりコタツがあればもっと幅が広がるような……」
確かに長女は今日は鍋にするよって伝えたら「ならカセットコンロと鍋とコタツを出さないとね」なんてボケをかまして私も思わずツッコミでしまったな。ほんと、この二人は面白い娘達だよ。二人で漫才芸人になれるんじゃないかって漫才番組を見た時に思ってしまう。
私が笑うと「ママ笑い過ぎ」と脇を突かれてしまう。
気を取り直して私達は席に着き手を合わせる。
「頂きます」
「頂きます」
「頂きます!」
三人のうち一人は凄く元気だ。
お互いお椀を持って鍋の中の具材を取っていく。今日の鍋は寄鍋。色んなお出汁に色んな具材を入れて楽しむ事が出来る。たまにごま豆乳やキムチ鍋もするが我が家はこれが一番好きでよく出していた。
長次の好きな白菜に豚バラスライスのミルフィーユに次女の好きな鳥の肉団子と花に切った人参。そして私の好きな少しお高いウインナーとジャガイモ、人参、キャベツ、玉ねぎを入れたポトフ風。お互いに好きな物を入れて食べる。
鍋って最高だ。
「それにしても。リビング寒いね。鍋なかったら凍えて死んでたよ」
「鍋だし熱いかなって。それに冬の気分を味わっていいでしょ。こたつがあればもっとそれなりに味わえるけど」
「お姉ちゃんの仕業かい!」
食事中でも姉妹漫才をする二人。鍋を食べながら漫才を見るのもまたシュールで良い。夏に鍋を食べながら漫才を見るなんて中々無いよ。
「〆は何にする?」
「中華そば!」
「うどん」
意見が分かれ睨み合い火花を散らす二人。麺も良いがご飯も捨てがたい。溶いた卵とネギ入れて雑炊にしたいな。
「じゃあここは平和的にじゃんけんで決めよう」
二人も頷き納得してくれた。
手が鍋に当たらぬよう互いに立ち上がり拳を出す。
ぽん。ぽん。ぽん。ぽん。ぽん。
五十二回以上あいこが続き私達も息が切れる。
そろそろ終わりが近い。これが最後。
「あいこで」
しょ!
結果はあいこ。
「これじゃあキリがないわね」
冷凍うどんを出す長女。
「そうだね。でもこれは譲れない」
中華そばを出す次女。
「これだけじゃんけんをしても決まらないなんて」
丼にご飯を大盛りで盛り卵とネギを出す私。
私達の結論は……汁を分けてそれぞれ食べる事に決めた。
「何で最初っからそうしなかったの?」
「ここは場のノリに合わせて?」
「楽しかったしいいじゃないか」
楽しかったと一言で終わる私に長女は納得していない顔だが、どんぶりにそれぞれうどん、中華そば、ご飯を入れて汁を注ぐ。エアコンの温度は下げたままで涼しいはずが額から頬にかけて汗が流れ中で暖まっているのだと感じる。
「ネギいる?」
「いる。生姜のチューブは?」
「それ私いる!」
夏の日だけど、こうして皆で鍋を囲むのも良い。
明日のご飯は何にしよう?
エアコンが壊れ熱さを凌ぐ為にかき氷を食べる事になったが大きな氷を求めて商店街に行く次女。次女を待っていると業者が現れ無事エアコンが復活する。だが、肝心の次女は中々帰って来ない。心配した母と姉。母は探さに行こうとすると商店街の人達と氷を運ぶ次女が帰ってき一日限定のかき氷屋が開催された。皆はそれぞれかき氷を作って食べてと夏とかき氷と交友を楽しみ夕暮れにお開きとなる。
そして、今現在。次女は………。
「お腹痛い~」
腹をくだしていた。
「そりゃあ、長女が作ったかき氷二杯と私や他の人達のかき氷食べ歩きしたらお腹も壊すよ」
「この子の胃は鉄で出来てるのかと思ってたわ。あの子でもお腹壊すのね」
「普通に壊すよ」
晩御飯の手伝いをしてくれる長女にツッコミを入れて白菜等を切っていく。トイレから未だに出て来ない次女は唸りながらトイレに籠っておおよそ三時間は経つ。もしかして気を失ってるのかとも心配してしまう。そろそろご飯も出来るし呼ばないと。
私はエプロンを脱いでスプーンを持ちトイレに引きこもってる次女を呼びに行く。最悪鍵掛けて気を失ってたら大変だし。
「ちょっとあの子の様子を見てくる。肉団子はもう入れちゃって」
「はーい」
トイレの扉の前に立ちノックを三回。死にかけだけど「は~い」と言う元気の無い声が返ってきた。
「大丈夫? 生きてる?」
「かろうじて」
かろうじてか。
「ご飯もそろそろ出来るから出てきて。暖かいお茶淹れてあげるから。でないとスプーンで抉じ開けるよ」
「すぐ行きまーす」
その言葉を最後に私はリビングに戻りスプーンを直した。
「あの子は?」
「すぐ来るって」
テーブルの上にカセットコンロを置いて鍋を置く。お椀と箸と茶碗を置いて後はあの子が来るのを待つのみ。
「ただいま~」
「お帰りなさい。お腹の調子はどう」
「出し過ぎてお腹ぺこぺこです」
「今日の晩御飯は暖かい鍋だよ」
私がそう言うと次女は固まり私達とテーブルに置いてある鍋を見比べた。どうしたのだろう。今日は次女の好きな鳥の肉団子も入れたのに。気分では無いのかな。
私はあれやこれや悩んでいると次女は何やらプルプル震えていた。
「こんな熱い日に鍋かよ!」
出た言葉がそれだった。まるで何処かの芸能人見たいなツッコミが凄く良かった。私はパチパチ拍手を送ると次女は更に顔を険しくする。
「いや、なに普通に拍手送ってるの! 笑うところでも拍手送る所でも無いよ! これは言いたくなるよ、言いたくなるよ! だってこんな熱い真夏にぐつぐつと煮えてる鍋だよ! 普通冬でしょ、鍋と言ったら」
「確かにツッコミたくなるわ。でもやっぱりコタツがあればもっと幅が広がるような……」
確かに長女は今日は鍋にするよって伝えたら「ならカセットコンロと鍋とコタツを出さないとね」なんてボケをかまして私も思わずツッコミでしまったな。ほんと、この二人は面白い娘達だよ。二人で漫才芸人になれるんじゃないかって漫才番組を見た時に思ってしまう。
私が笑うと「ママ笑い過ぎ」と脇を突かれてしまう。
気を取り直して私達は席に着き手を合わせる。
「頂きます」
「頂きます」
「頂きます!」
三人のうち一人は凄く元気だ。
お互いお椀を持って鍋の中の具材を取っていく。今日の鍋は寄鍋。色んなお出汁に色んな具材を入れて楽しむ事が出来る。たまにごま豆乳やキムチ鍋もするが我が家はこれが一番好きでよく出していた。
長次の好きな白菜に豚バラスライスのミルフィーユに次女の好きな鳥の肉団子と花に切った人参。そして私の好きな少しお高いウインナーとジャガイモ、人参、キャベツ、玉ねぎを入れたポトフ風。お互いに好きな物を入れて食べる。
鍋って最高だ。
「それにしても。リビング寒いね。鍋なかったら凍えて死んでたよ」
「鍋だし熱いかなって。それに冬の気分を味わっていいでしょ。こたつがあればもっとそれなりに味わえるけど」
「お姉ちゃんの仕業かい!」
食事中でも姉妹漫才をする二人。鍋を食べながら漫才を見るのもまたシュールで良い。夏に鍋を食べながら漫才を見るなんて中々無いよ。
「〆は何にする?」
「中華そば!」
「うどん」
意見が分かれ睨み合い火花を散らす二人。麺も良いがご飯も捨てがたい。溶いた卵とネギ入れて雑炊にしたいな。
「じゃあここは平和的にじゃんけんで決めよう」
二人も頷き納得してくれた。
手が鍋に当たらぬよう互いに立ち上がり拳を出す。
ぽん。ぽん。ぽん。ぽん。ぽん。
五十二回以上あいこが続き私達も息が切れる。
そろそろ終わりが近い。これが最後。
「あいこで」
しょ!
結果はあいこ。
「これじゃあキリがないわね」
冷凍うどんを出す長女。
「そうだね。でもこれは譲れない」
中華そばを出す次女。
「これだけじゃんけんをしても決まらないなんて」
丼にご飯を大盛りで盛り卵とネギを出す私。
私達の結論は……汁を分けてそれぞれ食べる事に決めた。
「何で最初っからそうしなかったの?」
「ここは場のノリに合わせて?」
「楽しかったしいいじゃないか」
楽しかったと一言で終わる私に長女は納得していない顔だが、どんぶりにそれぞれうどん、中華そば、ご飯を入れて汁を注ぐ。エアコンの温度は下げたままで涼しいはずが額から頬にかけて汗が流れ中で暖まっているのだと感じる。
「ネギいる?」
「いる。生姜のチューブは?」
「それ私いる!」
夏の日だけど、こうして皆で鍋を囲むのも良い。
明日のご飯は何にしよう?
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